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「クリスマスの計略」警戒(1/7)

停戦中 ロシア「反撃」で死者多数(1/8)

「ロシアが朝鮮半島方式提案」(1/12)

集合住宅にロシアミサイル(1/17)

独、主力戦車供与結論出ず(1/21)

独、戦車供与を見送り(1/22)

欧米の戦車供与対抗へ(1/23)

召集回避へロシア出た若者たち(1/24)

独製戦車供与承認 ポーランド要請へ(1/24)

セルビアで戦闘員募集(1/25)

米も主力戦車31両供与(1/26)

配備に時間 膠着継続か(1/27)

第2次大戦激戦地プーチン氏が訪問(2/3)

ウクライナ国防相辞任へ(2/7)

ウクライナ老兵前線へ(2/15)

ロシア失墜、空白狙う中国(2/17)

ザポロジェ州都 必死の生活防衛(2/19)

ドローン操縦者 民間が養成(2/21)

【ウクライナ侵攻1年】自由守る不断の努力を(2/21)

【ウクライナ侵攻1年】問われる平和(上)「防衛戦争」内実は地獄(2/19)

【ウクライナ侵攻1年】問われる平和(下)ポスト国連時代 対応を(2/21)

ロシア反戦画家「敗北認めよ」(2/21)

【識者評論】フェイクが「武器に」(2/23)

残る地雷 穀物収穫6割減も(2/26)

ロシア 新たな「祖国戦争」に(2/26)

子ども連行1万6千人特定(3/1)

ウクライナ15万棟全半壊(3/4)

東部要衝制圧「重要」(3/8)

親ウクライナ勢力 独ロガス管攻撃か(3/9)

数日でバフムト陥落も(3/10)

ロ軍機衝突で 米無人機墜落(3/15)

周氏「大国」外交で攻勢(3/19)

首相「戦争犯罪の責任追及」(3/22)

英、劣化ウラン弾供与決定(3/24)

国連「双方が捕虜処刑」(3/26)

ロシア、ベラルーシに核配備(3/27)

仏中、ウクライナ和平訴え(4/7)


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「クリスマスの計略」警戒(2023/1/7 京都新聞)

 ロシアのプーチン大統領が5日、軍に36時間の停戦を命じた。ウクライナは、ロシア正教のクリスマスの善意を装って、戦闘停止中に部隊を再配置して劣勢を巻き返そうとする「計略」とみて応じない構えだ。プーチン政権はウクライナ軍が6日も攻撃を続けたと発表。停戦を拒んだのはウクライナと決め付け、戦争長期化の責任を同国と欧米に転嫁しようとしているとの見方が出る。

 「ウクライナはロシアのように他国領を攻撃していないし、民間人を殺してもいない。ロシアが占領地から撤退して初めて停戦できる」

 ポドリヤク大統領府長官顧問はツイッターにこう投稿し、ロシアの動きを「偽善」と断じた。ゼレンスキー大統領も「世界は侵略者が戦争激化を準備していると知るだろう」と警戒した。

 東部ドネツク州マケエフカでは年越しの前後、ロシア軍の拠点がウクライナ軍に攻撃され、少なくとも89人が命を落とした。一度の攻撃による死者数としては最大規模の被害。ウクライナは、プーチン政権が激戦地での逆境を挽回しようと、停戦中に兵士や武器を送り込み次の攻撃を準備しようとしていると疑う。

 ロシア大統領府は5日午後6時ごろ、プーチン氏の命令を発表した。伏線はあった。同日昼ごろプーチン氏と親交が深いロシア正教会最高位のキリル総主教が、信徒にクリスマス礼拝の機会を与えるため停戦を促すと表明。示し合わせたように速やかに命令が下った。

 10ヵ月以上続く侵攻によって世界各国でエネルギーや食料の価格が高騰しており、中国やインドなどロシアに近い国からも停戦交渉を求める声が高まっていた。命令には国際社会の声に配慮する姿勢を見せ、戦争長期化への批判をかわす狙いが込められたとみられる。

 ウクライナが停戦に応じない場合は、停戦交渉を再開できない責任はウクライナ側にあると主張し、軍事支援を拡大する欧米を批判する根拠にできる―。そうした思惑も見え隠れする。

 米シンクタンク戦争研究所はロシアに停戦を実現する腹づもりはないとみる。呼びかけが拒否されるとの目算に基づき、攻撃をやめないウクライナが和平を阻んでいるとの印象付けを狙ったとの見方を示した。

 そもそも全占領地の奪還を目指して成果を上げるウクライナに今、停戦に応じるメリットはない。能勢を立て直すための時間を稼ぎたいロシアとは、立場が異なる。

 戦争研究所はクリスマス停戦を命じることで、プーチン氏をキリスト教的価値観の守護者として演出する意図があるとも分析。プーチン政権は欧米の世俗的価値観を取り入れるウクライナを「悪魔」と見なし、侵攻を「聖戦」として正当化してきたとして、情報戦の側面があるとした。(キーウ共同)


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停戦中 ロシア「反撃」で死者多数(2023/1/8 京都新聞)

【キーウ共同】ロシア国防省は7日、侵攻したウクライナでの作戦状況説明で、正教のクリスマスに合わせてプーチン大統領が6日正午(日本時間同午後6時)から命じた一方的停戦を予定通り8日午前O時まで続けると表明した。一方でウクライナ軍が攻撃を継続したため反撃し、東部八リコフ州で20人以上、東部ドネツク州南部でも20人以上を殺害したと発表。各地で交戦が続き、停戦は実態を伴わなかったことが明らかになった。

 東部ルガンスク州のガイダイ知事は6日、ロシアが一方的に設定した停戦期間中の3時間に、ロシア軍が同州を14回砲撃し、集落への突入も3回試みたと通信アプリに投稿した。隣接するドネツク州のキリレンコ知事も7日、前夜にロシア側の砲撃があり、激戦地のバフムトと周辺で民間人2人が死亡したと明らかにした。州内の集合住宅や病院も被害を受けた。一方、ロシア国防省は、親ロ派が支配する同州の州都ドネツクに過去約24時間で60回以上の 砲撃があったと主張した。

 また米政府は6日、ウクライナへの約30億ドル(約4千億円)の追加軍事支援を発表した。1回の支援額としては過去最大。ブラッドレー歩兵戦闘車50台や対戦車ミサイル500発を供与し、領土奪還を後押しする。

 ドイツも歩兵戦闘車の供与を表明しており、ぜレンスキー大統領は6日のビデオ声明で謝意を示した。さらに、岸田文雄首相と6日に電話会談したとし「先進7力国(G7)議長国の日本と一緒に共通の安全保障のために行動できる」と期待した。


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「ロシアが朝鮮半島方式提案」(2023/1/12 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナ国家安全保瞳7国防会議のダニロフ書記は11日までに、同国に侵攻するロシアが停戦に向けて、北緯38度線で半島を南北に分断した「朝鮮半島方式」をウクライナ側に提案しようとしていると述べた。ダニロフ氏はこれを受け入れれば、国を分断する「大きな過ち」になると指摘した。ウクライナの独立系通信社ウニアンがテレビ番組での発言を報じた。

 ダニロフ氏は「われわれは今、朝鮮半島方式を提案されている。いわゆる38度線のようなものだ」と発言。ロシアが戦闘を停止する代わりに、ロシアに実効支配されている東部・南部地域の占領をウクライナが受け入れる案であることを示唆した。

 ダニロフ氏によると、ロシア大統領府のコザク副長官が欧州諸国で政界関係者と面会し、ロシア側は多くの妥協の余地があるとのメッセージを伝達しているという。これに対し、ロシアのペスコフ大統領報道官は9日、「デマだ」と提案の存在を否定した。

 英国防省は10日、激戦が続く東部ドネツク州バフムトの戦況について、ロシア側が過去4日間で北東郊外のソレダルで大部分の集落を管理下に置いた可能性があるとの見方を示した。バフムトを北側から包囲し、ウクライナ軍の兵たん線を断つ作戦とみられるが、ウクライナ側は安定した防衛線と補給路を確保しており、直ちに包囲される可能性は低いと指摘した。

 ロシア国防省は11日、バフムト近郊の集落を制圧したほか、ソレダルを北と南から封鎖しウクライナ軍の拠点を砲撃していると発表。ソレダル市内では戦闘が続いていると説明した。

 ロシア民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏は同日未明、ソレダルをワグネルの部隊が単独で制圧したと表明していた。ウクライナのマリヤル国防次官は11日、ロシア軍がソレダルで激しい攻撃を続け、ウクライナ軍の防衛突破を図っているが、持ちこたえていると明らかにした。


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集合住宅にロシアミサイル(2023/1/17 京都新聞)

 ロシアが14日、ウクライナ各地へのミサイル攻撃を行い、東部ドニプロの集合住宅では多数の市民が死傷した。ウクライナは飛来したミサイル38発のうち25発を迎撃したとするが、3分の1を撃ち漏らし、それが甚大な被害をもたらした。ウクライナ側は防空網の増強に向けた欧米の支援拡充が不可欠だと訴える。

 「言葉も感情もない。心の中は空っぽだ」

 ドニプロの住宅攻撃で負傷した女性アナスタシヤーシュベツさん(23)はインスタグラムでこう訴えた。建物は巨大な爪でえぐられたように崩れ落ち、住人らががれきの下敷きに。シュベツさんの両親は行方不明のままだ。従軍した恋人は戦死したという。

 ウクライナ空軍などによると、住宅に撃ち込まれたのは、ソ連時代に開発された空対艦ミサイルKh22とみられ、超音速戦略爆撃機ツポレフ22M3から発射された。空母などへの攻撃用と想定され、地上の標的を狙うのには適していないが、通常の巡航ミサイルに比べて高速で飛来するため迎撃が難 しいという。

 Kh22と同種のミサイルはこれまでに210発以上発射されたが、迎撃に成功した例はほぼない。空軍司令官は「ウクライナには現在、これらのミサイルを撃ち落とす能力はない」と認めた。

 Kh22は数百メートルの誤差が出るなど命中精度は低いとされ、市街地への使用は多くの巻き添え被害を生む恐れがある。検察当局は「集合住宅の付近に軍事施設はない」と断言し、「明確な戦争犯罪」と非難した。

 昨年6月に約20人が死亡した中部ポルタワ州クレメンチュグのショツピングセンターヘの攻撃でも、Kh22の改良型が使われたとみられている。

 14日の攻撃では、首都キーウ(キエフ)も標的になった。米ジンクタンク戦争研究所によると、ミサイルは北方のベラルーシに配備されたロシア製地対空ミサイルシステムの「S300」と「S400」から発射された可能性がある。ベラルーシから発射後、2分以内という短時間でキーウに着弾するため、現状では迎撃は不可能だという。

 キーウでは今回、空襲警報が作動する前にミサイルが落ちた。空軍報道官は攻撃を防ぐには、ベラルーシの発射元を破壊するしかないと訴えた。

 ウクライナは、米国が供与を決めた地対空ミサイルシステム「パトリオット」があれば、撃ち漏らしは防げると主張。ただバドリオット使用にはウクライナ兵に訓練を施す必要があり、配備には数力月かかる。ドニプロの攻撃現場の近くに住む男性は米紙に「世界が私たちを見捨てないよう望む」と欧米の支援強化を訴えた。


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独、主力戦車供与結論出ず(2023/1/21 京都新聞)

【ベルリン共同】ロシアの侵攻を受けるウクライナの防衛を協議する関係国会合が20日、ドイツ西部のラムシュダイン米空軍基地で開かれた。ドイツのピストリウス国防相は同日、記者団に対し、同国製主力戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与承認について「議論したが、まだ結論に至っていない」と述べた。製造国のドイツが供与を承認するかどうかが注目されていたが「防空強化が最優先だ」とした。

 ピストリウス氏は、供与には北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとの合意が必要だとし、決まった場合に備え「迅速に送れるよう準備は進める」と述べた。

 オースティン米国防長官は冒頭、ウクライナ支援を「減速するのではなく深める時だ」と強調。ゼレンスキー大統領もオンライン演説し「時間はロシアの武器になる」と訴え、武器支援決定を急ぐよう要望した。

 会合は米国防総省が主催。NATO非加盟国を含む約50力国が参加した。

 レオパルト2を巡っては、ポーフンドが供与に応じると表明したほか、フィンランドも供与の意向を示した。欧州にはレオパルト2を保有する国が多く、戦車提供に慎重だったドイツが容認に転じれば戦局にも影響を与える可能性がある。ウクライナのレズニコフ国防相とクレバ外相は19日に連名で声明を発表し、ドイツやポーランド、スウェーデンなど保有国名を列挙してレオパルト2の供与を求めた。

 一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は20日、欧米がウクライナに戦車供与の決定をすれば「確実に負の結果をもたらす」と述べ、けん制した。

 関係国会合に先立ち、英国とポーランド、バルト3国の国防相ら計11力国の代表が19日、エストニアでウクライナ支援の会合を開催。ドイツとスペインを除く9力国は共同声明を発表し、英国の主力戦車「チャレンジャー2」や自走砲などの支援を表明。国際社会に迅速な支援を訴えた。

 米国防総省は19日、ウクライナヘの最大25億ドル(約3200億円)の追加軍事支援を発表。装甲車「ストライガー」90両を初供与し、ブラッドレー歩兵戦闘車59両も含まれた。スウェーデンも歩兵戦闘車の供与を発表した。

 最新鋭戦車投入ロシアが検討か

【キーウ、ワシントン共同】英国防省は19日、ロシアが最新鋭戦車T14アルマータのウクライナ投入を検討しているとみられるとの分析を公表した。昨年12月下旬に、ウクライナでの作戦に関連しているロシア南部の演習場に出現しているのが衛星画像で確認されたとしている。


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独、戦車供与を見送り(2023/1/22 京都新聞)

【ベルリン共同】ドイツのピストリウス国防相は20日、ウクライナに対し、10億ユーロ(約1400億円)規模の追加軍事支援を発表した。既に供与を表明していた地対空ミサイルシステム「パトリオット」や防空システム「IRIS−T」が含まれる。ウクライナの求める主力戦車供与は見送ったが、`ミサイル攻撃から守るための防空システム支援に力点を置いた。

 ドイツの軍事支援は昨年2月の侵攻開始後、33億ユーロに達した。

 一方、ゼレンスキー大統領は20日、ドイツ西部で開かれたウクライナ支援の関係国会合で、ドイツ製主力戦車「レオパルト2」の提供が決まらなかったことを受け「戦車以外の選択肢がないことは日々明らかになっている」と必要性を強調。欧米各国に対し、供与を早期に決断するよう改めて求めた。

 また、関係国会合後の記者会見で米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長はウクライナ軍がロシアによる占領地を完全に奪還するのは「年内は困難だ」と述べ、侵攻が長引くとの見通しを示した。

 欧州諸国がロシアの侵攻を受けるウクライナへの戦車供与に向け動き始める中、ドイツが同国製の主力戦車レオパルト2供与に二の足を踏ん でいる。「世界最強の戦車」とされる性能を誇り、ウクライナは膠着する戦況打開の切り札として熱い期待を寄せるが、ナチス・ドイツによる侵略の歴史を背負うドイツ国内には戦闘激化への懸念が根強い。世論調査の賛否は二分し、ショルツ政権は難問を前に立ちすくむ。

 英シンクタンク、国際戦略研究所によると、欧州ではドイツを含むスペインやスウェーデンなど14力国が計約2千両のレオパルト2を保有し、事実上の「欧州標準」。既にポーランドとフィンランドが供与に名乗りを上げたが、実際に送るには製造国であるドイツの承認が必要となり、判断が注目されていた。

 ピストリウス氏は20日、供与には北大西洋条約機構(NATO)加盟国など欧米諸国の合意が必要だと説明。ショルツ首相は軍事支援につい て「単独行動せず、各国と共に歩む」と明言しており、それに倣った形だ。

 ドイツが慎重になるのは、第2次大戦で犯した侵略への反省がある。武器輸ほを厳格に管理し、紛争地域への供与は避けてきたが、かつてナ チス・ドイツ軍とソ連軍が激戦を繰り広げたウクライナの前線に敵陣突破のための戦車を送れば、戦いは一層エスカレートすると懸念する。

 世論は桔抗している。公共放送ARDが19日に報じた世論調査では、ウクライナにレオパルト2を供与すべきかとの問いに、46%が賛成、43 %が反対と回答。若年層ほど反対が多かった。(ベルリン共同)


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欧米の戦車供与対抗へ(2023/1/23 京都新聞)

 ウクライナへの侵攻を続けるロシアで、欧米による戦車などの対ウクライナ供与に対抗すべきだとの声が高まっている。プーチン大統領は軍需産業への支援強化を表明。軍事専門家らはウクライナ国内の鉄道を破壊して前線への輸送を阻むべきだと主張しており、民間インフラ攻撃が一層激化する可能性がある。

 プーチン氏は18日、ロシア北西部サンクトペテルブルグで、防空システム製造大手アルマズ・アンテイの工場を視察し、従業員らと意見交換した。ロシアが1年間に製造する対空ミサイルの数は米国の3倍以上で、他国全部を合わせたのとほぼ同じだと自賛。ウクライナでの「勝利は間違いない」と胸を張った。

 プーチン氏はその上で、最終的勝利に必要なのは「国民の団結、兵士の勇気と軍需産業の働きだ」と述べ、兵器製造に向けた財政支援と従業員の福祉を約束した。

 侵攻を非難する欧米側では、英国が主力戦車「チャレンジャー2」14両や自走砲などの支援を表明。ドイツ製の主力戦車「レオパルト2」の供与も検討されている。

 ロシアの元軍幹部ブジンスキー氏は政府系テレビ「第1チャンネル」の情報番組で、戦車の前線への輸送を阻むため、ウクライナ国内の鉄道やトンネルをミサイルで破壊する必要があると指摘する。

 ブジンスキー氏は「なぜ今までやらなかったのか分からない。政治的な決定だろう」と軍事上の有効性を強調。ベラルーシにロシアが供与した弾道ミサイル「イスカンデル」を使えば、戦車が鉄道でポーランドからウクライナに入った直後に狙い撃ちできると主張し「われわれも自制を取り払うべきだ」と述べた。

 ロシアのウォロジン下院議長も22日、ウクライナへの強力な兵器供与は「グローバルな破滅を引き起こす」と通信アプリに投稿、欧米を強くけん制した。(共同)


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召集回避へロシア出た若者たち(2023/1/24 京都新聞)

 ウクライナに侵攻したロシアが昨年9月に部分動貝令を発動したことを受け、多くの若者が軍の招集を回避するため母国を離れた。「納得のいかない戦争で、使い捨てにされるのはごめんだ」。隣国カザフスタンに身を潜める男性らは、侵攻を正当化して愛国心をあおるプーチン大統領の独裁的な政治姿勢に不信感を募らせていた。

 「人生で最も速い決断だった」。首都アスタナのホテル一室。ロシア人男性(26)が緊張した面持ちで語った。中部エカテリンブルクで物流会社を経営、事業は順調だった。親や仕事を残して逃げることにためらいはあった。それでも「自らを守る手段が他になかった」。昨年9月21日、動員令が出された翌朝、5人の友人と車で国を出た。

 「歴史的領土の住民保護のため戦っている」と強弁するプーチン氏は、劣勢を挽回しようと部分動員に踏み切った。「国民の意見を聞かずに突っ走った。気に大らない」。男性は故郷に残る親に危害が及ばないよう、言葉を選びつつ批判した。

 戦場に送られた同世代については「同情はするが罪悪感はない。自分の運命は自分で決めるしかない」と断言。一方で後悔もある。「僕ら若者がもっと政治に興味を持っていれば、戦争を食い止められたかもしれない」

 旧ソ連構成国のカザフには部分動員後、40万人超が入国したとされる。同国はロシア系住民も多いが7割は日本人に顔の似たカザフ系が占める。

 ロシア極東サハ共和国の首都ヤクーツク出身で、アジア系の少数民族ヤクート人のグラフィツクデザイナー、ブラッドさん(26)も昨年9月にアスタナへ逃げ延びた。ロシアでは少数民族に対する差別が強く、白人に比べて高い割合で派兵されているとの指摘もある。ブラッドさんは、出国先にカザフを選んだ理由を「同じ顔をして目立たないから」と笑った。

 「普段は二級市民扱いなのに、戦争になるとロシア人としてのアイデンティティーを押し付けてくる」。真っ先に動員されるのではないかと単独で出国後、妻子と合流した。

 ヤクーツクでは、徴兵事務所の職員が目的を知らせずに人々を呼び集めた集会場のほか、飲食店や路上でも招集令状を強制的に手渡したという。白人が多いモスクワの知人に話すと驚かれた。「不公平だと感じた」

 石油やダイヤモンドなどの天然資源が豊富なサハ共和国だが、妻アナスタシアさん(30)は「ロシア政府に搾取され、私たちは貧しいままだ」と訴える。民族の分断は、戦争で一層深まっている。ブラッドさんは「夢物語だが、プーチンの独裁政権が崩壊したら私たちはロシアから独立したい」とまで口にした。(アスタナ共同=新里環)


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独製戦車供与承認 ポーランド要請へ(2023/1/24 京都新聞)

【ベルリン共同】ポーランドのモラウィエツキ首相は23日、保有するドイツ製主力戦車レオパルト2のウクライナへの供与の承認をドイツに求めると明らかにした。ロイター通信などが報じた。ドイツのペーアボック外相は22日のフランスメディアのインタビューで、ポーランドから正式に供与を要請されれば「妨害しない」と述べていた。

 モラウィエツキ氏は「最終的に承認を得られなくても他の国と一緒に供与する」とも述べた。ウクライナも供与承認を待たずに使用訓練を始める意向を明らかにした。

 ドイツの連立政権内ではベーアボック氏のように前向きな意見も多いが、ショルツ首相は供与に慎重姿勢。ピストリウス国防相は22日に公共放送ARDの番組で、首相が近く決定すると述べた。ゼレンスキー大統領は、ドイツメディアに対し「ロシアが千両の戦車を持っているとして、ひとつの国が10や20、50両の供与を決めても問題は解決しない」と述べ、春にもロシアが大規模攻勢をかけるとの観測がある中、供与決定を急ぐよう改めて求めた。

 ベーアボック氏はニュース専門テレビLCIで「私たちは戦車の重要性を知っており、(供与の可否を)同盟国と話し合っている」と述べた。

 フランスのマクロン大統領は22日、ショルツ氏とのパリでの共同記者会見で、自国軍の主力戦車ルクレールの供与も「排除しない」とし、国防相に検討を求めたと明らかにした。


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セルビアで戦闘員募集(2023/1/25 京都新聞)

【ウィーン共同】ウクライナ侵攻に参戦するロシアの民間軍更覆ワグネルが東欧セルビアで戦闘員を募集し、長年友好的だったロシアとセルビアの間にすきま風が吹いている。同盟国ベラルーシを除けば、セルビアは欧州で最も良好な対ロ関係を維持するが、この問題でセルビアはロシアを非難。関係が悪化すれば孤立が深まるロシア側は火消しに乗り出した。

 「違法だと知りながらどうしてセルビアに呼びかけるんだ」。ロイター通信によると、セルビアのブチッチ大統領は16日、地元メディアでこう述べ、ワグネルヘの参加を呼びかけるセルビア語の広告をインターネット上で流すロシア側に強い不快感を示した。セルビアでは市民の海外での戦闘参加が禁じられている。

 これとは別に、国営ロシア通信は17日、ウクライナのロシア支配地域で戦うセルビア人とされる覆面姿の2人の映像を配信した。武器の訓練を受ける場面などが流され、2人は「ロシアの兄弟を助けに来た」「戦争が終わるまでここにいる」などと訴えた。

 正確な数は不明だが、数十人のセルビア大が2014年以降、ウクライナでの戦闘参加の契約を結んだとの指摘がある。

 こうした中、ロシアのプーチン大統領と近い新興財閥でワグネル創設者のプリゴジン氏は20日の声明で「セルビア人を募集していない」と主張。関係悪化を避けるため、セルビア側をなだめたい考えとみられる。

 セルビアは欧州連合(EU)加盟を目指しており、ウクライナに侵攻したロシアを非難する国連総会決議では賛成した。

「戦後最大の困難」認める

 ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長は、ロシア紙「論拠と事実」が24日報じたインタビューで、ウクライナ侵攻について「現代のロシアがこのレベルの集中的な軍事行動を取ったことはなかった」と述べ、ロシア軍が第2次大戦以降で最大の困難に直面していると認めた。24日で侵攻から11ヶ月となった。

 一方、ウクライナ国防省は24日、軍の食料調達を巡る汚職疑惑が報じられたことを受け、後方支援担当のシャポワロフ次官を解任した。


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米も主力戦車31両供与(2023/1/26 京都新聞)

【ワシントン共同】バイテン米大統領は25日、ホワイトハウスで演説し、ロシアが侵攻を続けるウクライナへの追加軍事支援として、米軍主力戦車エーブラムス31両を供与すると発表した。「世界で最も能力の高い戦車だ」と述べ、ウクライナ軍に必要な訓練も開始するとした。ドイツが同国製主力戦車レオパルト2を14両供与すると発表したのに呼応した措置で、欧米の軍事支援は新局面に入った。

 バイテン氏は同日、英独仏伊の首脳と電話会談し、領土奪還を目指すウクライナへの支援で緊密な連携を確認した。ウクライナ東部などで予想される地上戦の激化に備え、欧州と結束してロシアに対する軍事圧力を一層強める構えだ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はビデオ声明で「歴史的だ」と米独に謝意を表明。欧米との「戦車連合」が形成されたとし、ロシアの専制主義に対抗する 「自由の拳」としなければならないと訴えた。

 バイテン氏は、エーブラムス31両がウクライナ軍1個大隊分に当たると説明。供与計画は「ウクライナ防衛を支援する米国の絶え間ない責務と、ウクライナ軍の能力に対する信頼の証しだ」と強調した。維持管理に非常に手間がかかるため運用までに時間を要するとも話した。国家安全保障会議(NSC)のガービー戦略広報調整官は記者会見で、実際の調達からウクライナへの移送まで「何力月もかかる」との見通しを示した。

 バイテン氏はエーブラムスーについて「ウクライナの主権権と領土の一体性を守るためのものであり、ロシアに攻撃的な脅威を与えるものではない」と指摘。侵攻を停止し撤退するようロシアに改めて要求した。

 国防総省によると、米政府はエーブラムス31両に加え戦闘用車両8両など約4億ドル(約520億円)の軍事支援を実施する。


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配備に時間 膠着継続か(2023/1/27 京都新聞)

 北大西洋条約機構(NATO)陣営を代表する米独英の主力戦車がウクライナに投入される見通しになった。ドイツのレオパルト2、米国のエーブラムス、英国のチャレンジャー2.ウクライナが使う旧ソ連の戦車に比べ操作性や防護力に優れ、塹壕を用いたロシアの防衛線を突破して領土奪還に貢献するとの期待もある。ただ実戦配備には時間を要し、当分は戦局の膠着が続きそうだ。

 ドイツは、ウクライナでレオパルト2の2個大隊の編成を目標として、まずは1個中隊分として14両を提供する方針だ。ドイツだけでなく、欧州諸国に多数配備されており、地理的にもウクライナに輸送しやすいのが大きな利点だ。

 欧米メディアによると、1978年に製造が始まり、79年の配備以降、改良を繰り返した。対戦車砲などから乗員を守る防護力の高さが特徴。これまでに3500両以上が造られ、欧州ではポーランド、フィンランドなど14力国が計約2千両を保有し、事実上の「欧州標準」だ。2国は既に供与方針を発表した。

 米国のエーブラムスは攻撃力に優れ、対戦車砲が直撃しても耐えられるよう特殊な装甲を施しているものの、維持管理が難しい。戦車はレオパルト2を含めディーゼルエンジンが主流だが、燃費が悪いガスタービンエンジンを動力とする。作戦中の燃料補給手段の確保が課題となる。

 ドイツ国防相は26日、レオパルト2が3月下旬にもウクライナに届くと主張。25日には3ヵ月ほどかかると発言しており、時期は流動的とみられる。エーブラムスの場合は1年以上かかる可能性がある。戦車輸送と並行してウクライナ兵に操縦訓練を施す必要もある。

 英国防省の分析によると、ロシア側も最新鋭戦車T14アルマータのウクライナ投入を検討しているとされる。

 一進一退が続く戦局を打開するには、どれほどの戦車が必要なのか。英シンクタンク、国際戦略研究所の専門家は、100両ほどのレオパルト2でつくる機甲旅団が最低でも必要とみる。さらに戦車を歩兵戦闘車、防空システムなどと連動させ、全体を効率的に運用する総合力も求められる。ハードルは高い。

 米欧の戦車供与表明に対し、ロシアでは政界を中心に反発が広がる。プーチン政権与党「統一ロシア」のモロゾフ下院議員は25日夜、ロシア通信に対し「紛争を意図的にエスカレートさせている」と非難。ロシアがこれまで使わなかった、さらに破壊的な兵器で対抗することは避けられないと警告した。

 ロシアの軍事専門家の間では、欧米の戦車が前線に届くのを阻むためウクライナ国内の鉄道や橋、トンネルを破壊すべきだとの意見が出る。モロゾフ氏は「米国やドイツの供与する戦車が全て戦場に到着することはあり得ない」と述べ、戦車は輸送の途中でロシア軍の攻撃目標になるとの見方を示した。 (ワシントン共同)


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第2次大戦激戦地プーチン氏が訪問(2023/2/3 京都新聞)

 ロシアのプーチン大統領は2日、第2次大戦の激戦の一つだった「スターリングラード攻防戦」でソ連軍が勝利してから80年に当たる記念行事出席のため、ロシア南部ボルゴグラードを訪問した。プーチン氏は戦死者らの追悼記念碑に献花し、黙とうをささげた。

 プーチン氏は、今月24日で開始から丸1年となるウクライナへの侵攻を「ネオナチと戦い祖国を防衛する」特別軍事作戦と位置付ける。ナチス・ドイツの部隊を破りソ連の勝利への転換点となったとされる歴史的攻防戦に光を当てることで前線の士気を高め、国民に団結を訴える狙いだ。

 ソ連時代、当時の独裁者スターリンの名を取ってスターリングラードと呼ばれた現地では軍事パレードなどが行われた。

 ドイツ軍は1941年6月に独ソ不可侵条約を破ってソ連に電撃侵攻。南部から北カフカス地域までを占領し、42年夏からボルガ川下流の要衝スターリングラードの攻略を開始した。


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ウクライナ国防相辞任へ(2023/2/7 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナメディアは5日、同国与党幹部議員の話として、レズニコフ国防相が辞任する見通しだと伝えた。ウクライナでは軍を巡る汚職疑惑が報じられており、引責の可能性がある。戦時の国防相交代となり、今後の戦局に影響する可能性がある。

 与党幹部のアラハミヤ氏は、レズニコフ氏が防衛産業などを所管する戦略産業相に横滑りするとの見方を示した。後任には国防省情報部門トップのブダノフ情報局長が就任すると見込まれている。時期は明示しておらず「今週は予定されていない」と指摘した。

 アラハミヤ氏は通信アプリヘの投稿で、レズニコフ氏の辞任について「戦時において国防省といった軍事関連機関は、政治家ではなく軍事や治安の専門家に率いられるべきだ」と説明した。

 国防省は1月下旬、軍が食料調達を巡り、市場価格を大幅に上回る高値を支払っていた疑惑で後方支援担当の次官を解任。レズニコフ氏は監督責任を追及 されていた。欧州連合(EU)への早期加盟を目指すウクライナは汚職対策の取り組み強化を迫られている。

 レズニコフ氏はゼレンスキー政権で副首相を務めていたが、ロシアの侵攻前の2021年11月に国防相に就任。侵攻後は各国との兵器供与や軍事支援の交渉なども主導していた。


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ウクライナ老兵前線へ(2023/2/15 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアによる侵攻から間もなく1年を迎えるウクライナでは、50代以上の民間人の中高年が軍を補完する領土防衛隊に数多く志願した。元来は後方の治安維持や警備を担う役割だったが、今は前線に派遣され犠牲者も少なくない。侵攻後、防衛隊は10万人以上増加。老兵たちはソ連時代の徴兵や過去の職業の経験を生かそうとしている。

 「自分は部隊では若い方」。小売りチェーンの管理職だったナイクさん(51)は侵攻直後、妻と12歳の娘を国外に逃がし、防衛隊に志願した。5月から所属部隊は軍に組み込まれ、派遣された東部ハリコフ方面の前線では偵察に従事した。

 ソ連時代に軍事大学に通ったが、ウクライナ軍の汚職体質に嫌気が差し、1997年に民間に移った。「部隊には中高年のITエンジニア、映像プロデューサーなど多様な職種の人がいる。無人機の運用改善では彼らのアイデアが取り込まれている」と明かした。

 西部リビウの国立オペラ・バレエ劇場のソリスト、アンドリー・ハブンカさん(55)は昨秋の東部戦線での反攻などに加わった。ソ連時代の徴兵経験を買われ、一時期防衛隊の小隊長を任された。ただ昨年11月、実家の父親が骨折し介護のため帰郷。「緊張がなくなった途端、手足や腰が痛くなった」。その後、欧州へ公演旅行にも出かけたが「また前線に戻りたい」と話す。

 2月初旬、首都キーウ(キエフ)郊外であった防衛隊の50人ほどの部隊の訓練を訪ねた。指導する幹部のアナトリー・プリシェディコさん(67)によると平均年齢は40代。25〜62歳の兵士が偵察や前線での身のこなしを学んでいた。かつて大佐だったプリシェディコさんは「元気な若者と経験のある中高年がお互いに補い合える部隊に育てている」と語る。

 部隊の一部は東部ドネツク州の激戦地バフムトに派遣され、犠牲者も出た。今は北方からのロシアの攻勢に備える。国立体育スポーツ大の元教員ウラド・ピグレフスキーさん(61)は子ども5人、孫1人がいる。命を落とす可能性もあるが「心の整理を付けた。ただ人を殺すにも勇気が必要だ。医者ががんの患部を切除するような心持ちになれるよう努力している」と述べた。


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ロシア失墜、空白狙う中国(2023/2/17 京都新聞)

 旧ソ連・中央アジアを裏庭と見なすロシアの盟主としての地位が失墜している。カザフスタンやウズベキスタンは、ウクライナ侵攻を受けた欧米の対口制裁が自らに飛び火するのを警戒。1年近く続く侵攻に国力を割かれるロシアが、地域安定の重しの役割を果たせなくなり、「力の空白」を嗅ぎ取る中国とトルコが影響力強化を狙う。

 「(われわれを)旧ソ連のように扱わないでほしい」。昨年10月、カザフの首都アスタナで開かれたロシアと中央アジア5力国の首脳会議。夕ジキスタンのラフモン大統領がロシアのプーチン大統領に直言した。中央アジアを勢力圏と見なすプーチン氏への異例の発言だった。

 5力国は1991年に独立。ソ連時代を知る政治家らを中心にロシアとの関係は深い。いずれもロシアは主要な貿易相手で、出稼ぎに行く人も多い。軍事同盟「集団安全保障条約機砺(CSTO)」を主導するロシアが圧倒的な軍事力でにらみを利かせてきた。

 だが、昨年2月からの侵攻では各国はロシアと距離を置く。カザフのトカエフ大統領はプーチン氏に苦言を呈し、ウズベクのミルジヨエフ大統領は「平和的解決」を要望。肩入れすれば、欧米から制裁を科されかねないとの懸念が背景にある。

 タジクとキルギスの国境では同9月、治安当局間の激しい銃撃戦が起きた。侵攻で手いっぱいのロシアに軍事介入する余力はなく、プーチン氏は解決へ「専門家レベルでの協議継続を」と提案しただけ。CSTOの存在意義に疑念が膨らんだ。

 ロシアの影響力は依然として根強いものの、苦境を奇貨として対口関係を有利に再構築しようともくろむ動きもある。

 ラフモン氏はアスタナでの首脳会議で、中央アジアに「敬意を示してほしい」と訴え、ロシアの投資を催促した。IT分野育成に力を入れるカザフは税制上の優遇策などを整備し、ロシアから退避した企業や技術者の囲い込みを進めている。

 ウクライナ侵攻後、ロシア依存を脱し、外交や経済の多角化を目指す流れも一層顕著になった。

 中国の習近平国家主席は昨年9月、中央アジア各国首脳と相次いで会談し、中国とキルギス、ウズベクを結ぶ鉄道建設計画を推進すると表明した。ロシアを経由せず、カザフやカスピ海を通じ欧州へつながる物流ルートの確保も目指している。

 トルコは同11月、経済面の連携強化のため、同じ言語圏のカザフやキルギス、ウズベクを含めた「チュルク諸国機構」初の首脳会議を開いた。

 スウェーデンのウプサラ大のステファン・ヘドランド教授は「ロシアは安全保障、経済統合の両面で衰退している」と指摘した。一方、中国が取って代わる可能性は低いとも分析。中央アジア諸国はロシア依存を解消しながら、周辺国との関係も重んじるバランス外交を進めると予測した。(アスタナ共同)


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ザポロジェ州都 必死の生活防衛(2023/2/19 京都新聞)

 ロシアが昨年併合を宣言したウクライナ4州の一つ、南部ザポロジエ州はロシアに約7割を占領されている。その中で州都ザポロジェ市はウクライナ側が支配を維持する。前線から約20キロ、ロシアに占拠されたザポロジエ原発からは約50キロの距離。ロシアの攻撃や原発事故を警戒しながら、避難民を含む約50万人が生活を守ろうと必死だ。

 「占領された南東部マリウポリの避難民を受け入れた経験から、最悪の事態を想定して避難所の整備、食料や薬の備蓄を進めてきた」。アナトリー・クルテフ市長代行(47)が2月上旬、空襲警報が響く中、市役所の地下シェルターで取材に答えた。侵攻後、市は教育機関など100ヵ所超にシェルターを整備。発電機や通信環境も整え、増設や改善を重ねる。

 敷地内に攻撃が相次いだ原発については「事故が起きれば欧州全体に波及するが、中でも市は最大の影響を受ける」と警戒。抜本的な対策はないとしつつも、 緊急時に室内にとどまるなど放射線の影響を最低限に抑える啓発活動を続けている。

 侵攻前の市人口は約75万人だったが、約半数が西部や国外に避難した。一方で州内や東部からの避難民を受け入れ、現在約50万人が暮らす。昨年9月以降は集合住宅やインフラ施設に対するロシア軍のミサイル攻撃が激化し、犠牲者は100人を超えたという。

 鉄鋼や自動車産業が集積するが、閉鎖や移転、電力不足のため操業する企業は侵攻前から4割減。工業生産は半減した。「税収は減り、破壊された住宅の再建や危機対策で支出は膨張。国内外の支援も受けているが、資金が足りない」

 被害を受けた住宅は市が再建方針だが、進んでいない。所有アパートを破壊され、賃貸に移ったエカテリーナさん(62)は「補償と避難民への手当てはわずか」と不満だ。クルテフ氏は「前線の兵士を思い、辛抱してほしい」と理解を求めた。

 市中心部の学校は避難所の一つとなり、教師らが交代制で24時間運営に当たる。保健室では市民が無料で受診できる。家が被害を受けた人や、家で安心して眠れない人がシェルターに泊まる。

 国内外へ避難した生徒も多く、授業はオンラインで継続。リュドミラ・テリフスカ校長(63)は出席率は9割弱とし「戦禍でも学業成績は落ちていない」と胸を張った。

 10月にミサイルが直撃して5人が死亡した集合住宅。別の棟に住む女性リュドミラ・キリロブナさん(73)の子や孫は西部に避難した。「この町で長年必 死に生きてきた。避難はしない」と憤る。「ロシア人は代償を払わなければならない」(ザポロジエ共同)


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ドローン操縦者 民間が養成(2023/2/21 京都新聞)

 ロシアの侵攻が続くウクライナで、前線の偵察などに用いる無人機(ドローン)の訓練学校が民間団体主導で運営されている。火力と物量でロシアに劣るウクライナ側は「戦場の目」となる小型ドローンを索敵や砲撃の照準や弾着の修正に活用し、戦果を上げてきた。戦いの中で技術革新も進むが、軍には活用の蓄積がない。変化に柔軟に対応できる民間組織との協業は欠かせない。

 首都キーウ(キエフ)中心部から車で1時間ほど。幹線道路を抜け舗装されていない砂利道を走ると、荒野に10以上の大型テントが設営されていた。民間団体ビクトリー・ドローンズが運営する訓練学校だ。操縦士と、一体となって活動するオペレーターの訓練を実施している。

 「ドローンや(データを記録する)タブレットが敵の手に落ちた場合は、即座に情報を消去する機能もあります」。この日は、軍を補完する役割の領土防衛隊の兵士20人が座学に参加、熱心に質問を投げかけていた。

 無人機は中国最大手DJI製など市販機を活用している。ただ戦場で鍵となるのはオペレーターがタブレット端末を通じて使う独自開発の地図アプリだ。ドローンが集めた現場の情報をオペレーターが記録し、他の偵察チームや砲撃部隊などと通信で共有する。

 もともと農業企業の技師だった教官のドミトリーさん(35)は「地図アプリなしでは、海図とコンパスなしに航海するようなものだ」と話す。偵察計画や現場の情報を整理する能力にたけたオペレーターを育成するのが現在の課題という。

 これまでビクトリー・ドローンズの学校では50人ほどの民間人の教官が6千人以上の兵士の実地訓練を実施。協力団体とオンラインで学べるプログラムも用意している。創設に関わったマリアーベルリンスカ氏(34)は「ドローンの活用によって兵士の命を救える。「ロシアに勝利するコストを 下げるために必要だ」と世界中から寄付を募っている。

 軍民協力によって、ドローンの改造や地図アプリの刷新など技術革新も続く。視察に訪れた領土防衛隊のイゴル・タンチュラ司令官は「ドローンを活用した技術開発が30以上進んでいる。撮影した動画をもとに即時に砲撃する技術も実現できるだろう」と語った。(キーウ共同)


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【ウクライナ侵攻1年】自由守る不断の努力を(2023/2/21 京都新聞)

学習院大教授 青井 未帆

 ロシアがウクライナに侵攻して1年がたつ。伝えられるあまたの死や苦しみに、世界の多くの人々が胸を痛め、悼みと憤りを共有している。

 市民の惨苦の一方で、欧米の軍需産業は莫大な利益を上げ、ウクライナへの武器供与は各国の国益追求の思惑と相まって、たかが外れつつある。

 ひるがえって日本の今を見るに、平和をめぐる「語り口」が変わりつつある。具体的に言えば、平和国家としてのあるべき姿が語られなくなっている。平和国家とは日本国憲法の下での国柄を指すが、昨年12月16日の「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定の閣議決定に際しても、憲法論は実質的になかった。またこれを疑問視する国民的な議論も弱い。

 ロシアのウクライナ侵攻が日本を変えたのか。そうではなかろう。平和国家からの進路変更は20年近く前から示されており、政権交代にも影響されていない。2014年には、集団的自衛権の行使が容認された。そしてこれが昨年12月の閣議決定により安保戦略レベルへ反映されたのである。

 以前の平和国家観とはどういうものであったか。外務省の05年報告書「平和国家としての60年の歩み」を振り返ろう。

 そこでは@「専守防衛」として防衛費の対国民総生産(GNP)比1%枠、A「国際紛争助長の回避」として「武器の供給源とならず、武器の売買で利益を得ない」、B「国際の平和・安定への積極的貢献」として政府開発援助(ODA)について「軍事への転用を厳格に禁じ、国際紛争を助長しない」などが記されていた。いずれもその後転換されてきている。

 Aでは「唯一の被爆国としての核兵器廃絶に向けた取り組み」も掲げたが、核兵器禁止条約には背を向けたままだ。

 この間の変更では、明治日本が国防国家を造り上げる際、国民精神の掌握に用いた、古式ゆかしい手法が応用されている。

 かつて戦争遂行のために軍事的合理性が最大限に優先された。教育や軍隊により国民を統合し、国家秘密を刑罰で徹底的に管理した。「よらしむべし知らしむべからず」である。今日、13年の特定秘密保護法制定により、私たちが得られる情報は格段に少なくなっている。国会での議論も避けられる傾向が顕著である。安保関連3文書改定の閣議決定も国会が閉じてからなされた。政府からの十分な説明がないのに「防衛力強化もやむなし」といった空気が醸成されているように感じられる。

 しかし思い出したい。「いつの間にか」無謀な戦争に突き進み、人々の命が失われたのではなかったか。

 自由は軍事的合理性と最終的にぷつかるが、憲法9条の一つの機能は異議を申し立てる根拠となる点にある。「祖国を守るために自由や権利が失われるのは当然」といった雰囲気が勢いを持つことへ抗する力を与える。先の戦争で失われた命の重さが背景にある。

 戦争が始まると簡単には止められないことを、ウクライナ侵攻は示しでいる。アジアで戦争を起こさないため、市民もそれぞれ自分なりに平和を追求できる。平和国家を希求し、自由を守る「不断の努力」(憲法12条)の一つの形である。


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【ウクライナ侵攻1年】問われる平和(上)「防衛戦争」内実は地獄(2023/2/19 京都新聞)

 ロシアによるウクライナ侵攻は「平和をどう守るか」という問いを改めて突き付けた。第2次大戦中の独ソ戦を舞台にした小説「同本少女よ、敵を撃て」がベストセラーになった作家の逢坂冬馬さんに思いを聞いた。

 侵攻が始まった時、「同志少女よ―」が思わぬ同時代性を帯び、暗たんたる気持ちになった。本屋大賞受賞時のスピーチで訴えた反戦の志の原点には、海軍軍人だった祖父の戦争体験があった。

 空襲などで凄惨な場面を目撃した祖父は終生「人間を根本的に変えてしまう戦争は絶対にダメだ」と言い続けた。戦争を忌む一方で、その実態を知りたいという知的欲求が結集したのが本作だ。

 この時代に戦争をエンターテインメントで描く意味は何か。難しいが、例えば独ソ戦のソ連側犠牲者は2千万人とも言われる。想像もつかないスケールだが、2千万人には2千万の家族、友人、人生があった。心がけたのは、登場人物を「知っている人」と思えるように造形することだ。女性狙撃兵のセラフィマ、激戦地スターリングラードを守るマクシム隊長…。彼らに感情移入することで、誰かが死んでいく恐怖が歴史書の数字よりも真に迫って心に届くかもしれない。戦争の悲惨さをリアルに感じてもらえたらと期待した。

 ただ、本が売れるにつれ、うれしいと同時に「防衛戦争を賛美している」と誤読されないか恐れた。「防衛」と呼んでも内実は「地獄」だということを伝えたかったのに、「ウクライナのようにならないために国民一丸となって戦う準備をしなければ」と結びつける人がいるかもしれない。

 物語では「戦うか、死ぬか」という問いが繰り返される。極限の戦争状態では「生きるか、死ぬか」でさえないのが現実だ。今のロシア、ウクライナでも動員が行われているが、本当はその時点で敗北者しかいない。どんな理由があっても強制的に戦わせることだけは、僕は肯定できない。

 登場人物の中で、この2択に取り込まれず、自分の信じる倫理の道を歩んだのが看護師の夕ーニャ。家族を皆殺しにされながら敵味方問わず治療し、「みんなが私みたいな考え方だったら戦争は起きなかった」と語る彼女に理想を投影した。

 理想を現実化するのは難しい。けれど、内戦が続くシリアやイエメン、ミャンマーの悲惨な現状は、ウクライナのように世界の厳しい目が注がれていたら違ったのではないか。逆にスエズ危機やベトナム戦争のように、国際世論が戦争を早く終わらせた例もある。当事国ではないからこそ、反戦を繰り返し訴えるのを止めるべきではない。

 今、日本では戦後80年近く、かせをはめてきた軍事力強化の是非について議論が棚上げされているように見える。中国脅威論に加え、ウクライナに自己投影した結果、戦争を『防衛』と言い換えるロシア的な、ひいては米中枢同時テロ以降、連鎖してきた暴力の正当化論理に日本が近づいていないか。その自制心は常に必要だと思う。


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【ウクライナ侵攻1年】問われる平和(下)ポスト国連時代 対応を(2023/2/21 京都新聞)

 ウクライナ侵攻に伴う国際秩序の激変で、世界は「ポスト国連時代」に突入した―。近著「核戦争、どうする日本?」でそう論じた社会学者の橋爪大三郎さんに聞いた。

 ウクライナ戦争の背景は「ヨーロッパはどこまでなのか」問題だ。ヨーロッパの人々はもう何世紀も悩んできた。ロシアはヨーロッパに入るのか。境界のなかったところに境界を決め、幕の内弁当みたいにきっちり暮らすから平和を維持できる。島国の日本には想像の付かない感覚だ。

 ところが突然ロシアが侵攻して、その前提が崩れてしまった。ロシアはヨーロッパに憧れている。仲間に入れてほしい。それが無理なら、立派 な大国と尊敬され、子分を増やしたい。ヨーロッパに愛着と対抗意識の矛盾した感情がある。

 ソ連時代は東欧一帯を支配していたからよかった。冷戦後が聞違いだ。クリミアもウクライナも無論ロシアのもの。そうした帝国の妄想がプーチン大統領を支配している。

 ヨーロッパの国々は、ウクライナ戦争を自分事だと思った。これを見過ごすとヨーロッパの平和が崩れてしまう。だから必死に支援する。避難民を受け入れ武器も提供する。彼らにとって、ウクライナは侵略者と戦う英雄だ。ロシアは権威主義の悪役だ。今は激しいせめぎ合いの途中だが、ロシアに勝ち目はない。大損害を被って撤退する。その後の、ロシアのシナリオがとても読みにくい。

 仮にプーチンが退いても、後釜は似たような人物だろう。石油や天然ガスをたたき売って新興財閥や軍や高級官僚に甘い汁を吸わせ、彼らの力で政権を維持するやり方しかできない。でも後継者にはプーチンほど力はないだろうから、中央アジアなどの周辺国が言うことを聞かず、政治的混乱が起きる可能性が高い。

 ウクライナ戦争は世界を根本的に変えてしまった。ロシアは安全保障理事会の常任理事国で拒否権がある。だから国連は動けない。北大西洋条約機構(NATO)がまだ役に立つと分かった。

 台湾有事でも中国が常任理事国で、国連は動けない。これからはだから「ポスト国連の時代」だ。国連が機能しないなら、軍事同盟に頼るしかない。特に緊張の高まる東アジアに、NATOの東アジア版を構築するのが急務である。その準備があれば、中国や北朝鮮に対する抑止力になる。

 皮肉なことだが、抑止力を備えるから戦争にならずに済む。NATOが機能したのは、ウクライナで証明済みだ。戦争の準備をすると戦争になると、反射的に思う人が日本に多い。その逆だ。日本人は、憲法9条と日米安保条約があれば大丈夫と、その先を考えるのを怠ってきた。

 日本はこれまで平和だった。でもそれは、偶然と幸運の産物。この先も平和を望むなら、自分でそれをつくりだす努力をしよう。さもないと、望まない戦争が起こるのを止められないだろう。


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ロシア反戦画家「敗北認めよ」(2023/2/21 京都新聞)

 ロシアで反戦を貫き、プーチン政権への抗議を20年以上続ける女性画家がいる。第2の都市サンクトペテルブルグに住むエレーナ・オシポワさん(77)。ウクライナ侵攻後、自作プラカードを掲げ路上に立った。  「ロシアが敗北を認め、恥をさらしていると言う日が来ることを夢見ている」。19日までに取材に応じ、まもなく1年を迎える侵攻の即時停止を訴えた。

 「ロシアが悔い改めるまで死者の目は開いたままでしょう」。赤色で描かれた女性たちが大きく見開いた目でこちらを見つめる。オシポワさんの自宅には反戦の言葉が書かれたプラカードが所狭しと並んでいた。

 昨年2月24日、ウクライナ侵攻が始まると、すぐに広場に向かった。多くの若者が「戦争反対」と叫んでいた。当局は情報統制に乗り出し、デモは急速にしぼんだ。

 それでも、オシポワさんは路上に立った。「家族がいるから声を上げられないと、涙ながらに近づいてくる人やウクライナ国旗の色の服を着て声をかけてくる人もいた」

 抗議を始めた契機は、泥沼化したチェチェン紛争を背景に2002年に起きたモスクワ劇場占拠事件だ。特殊部隊が人質を解放する際に特殊ガスで約130人が死亡し、対応に批判も上がった。旧国家保安委員会(KGB)出身のプーチン大統領について「あのような組織の人を国のトップにしてはいけない」と断じた。

 一人息子を早くに亡くしたオシポワさんは「怖いものはない」と語る。終戦直後の1945年生まれで、母親から戦争の悲惨さを聞かされたことが、活動の原点だ。

 人権団体「OVDインフォ」によると、侵攻への抗議で1万9千人超が当局に拘束された。侵攻1年に合わせたオシポワさんの展示会は作品を押収され、中止となった。

 過去に何度も警察に連行されたことがあるが、最近はオシポワさんの体調面の懸念から、当局が「万が一」を恐れ、長時間の拘束はしない。実際、10分と外で立ち続けることはできないが、「私は私の仕事をやる」とまなざしは力強かった。(共同)


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【識者評論】フェイクが「武器に」(2023/2/23 京都新聞)

桜美林大教授 平 和博

 ロシアのウクライナ侵攻の特徴は、ソーシャルメディアも戦場となり、偽情報(フェイクニュース)が「武器」として大規模に使われている点だ。

 「ウクライナ政府はネオナチ」「民間人虐殺はデマ」といったフェイクニュースが氾濫し、国境を越えた混乱を仕掛ける。約70の世界のファクト チェック団体が、この1年で検証したウクライナ侵攻関連のフェイクニュースは2700件を超す。それらは軍事行動やサイバー攻撃と連動する。

 侵攻開始から3週間後の昨年3月16日、ウクライナのテレビ局がサイバー攻撃を受け、生放送中の番組の文字情報にゼレンスキー大統領をかたる偽の「降伏宣言」が流された。相前後して、大統領が同じ「降伏宣言」をスピーチする動画がロシア発祥のソーシャルメディア「テレグラム」「フコンタクテ」や、フェイスブック、ツイッターに拡散した。

 人工知能(AI)を使ったフェイク動画「ディープフェイクス」が、実戦に投入されたのだ。続いて同日中には、プーチン大統領が「和平合意宣言」をするAIフェイク動画も拡散した。フェイク動画の応酬だ。

 『武器』としてのフェイクニュースの影響力を後押しするのが、ソーシ々ルメディアの爆発的な普及だ。ロシアがクリミア半島を強制的に併合した2014年3月のフェイスブックの月間ユーザー数は約13億人。それが昨年末には約30億人と、世界人口の4割に迫る。

 日本もその渦中にある。フェイクニュースは世界を標的に、多言語で拡散される。米調査会社によれば、ウクライナ侵攻をめぐるツイッター上のフェイクニュースを言語別にみると、英語を含む欧州各国語以外では日本語の存在感が際立つているという。どう対処すればいいか。前述のウクライナの事例が参考になる。

 セレンスキー大統領は、サイバー攻撃から30分もたたぬうちに、自撮り動画をインスタグラムなどに投稿し、偽の「降伏宣言」を否定してみせた。

 機敏な対応には前段がある。ウクライナ政府は事前にAIフェイク動画の動きをつかみ、国民に警戒を呼びかけていたのだ。フェイクニュースの危険をあらかじめ告知することで、社会に「免疫」を広める。「プレバンキング(事前暴露)」と呼ばれる手法だ。

 フェイクニュース対策の土台を担うのは情報の真偽検証だ。国内でも昨年10月に日本ファクトチェックセンターという民間組織が発足し、筆者も運営委員を務める。だが、一民間組織の取り組みでは足りない。各メディアが積極的に取り組むことで対策は厚みを増す。

 昨年末に決定された新たな国家安全保障戦略にも、偽情報対策が盛り込まれた。たとえフェイクニュースが広がっても混乱に陥らない、社会としての「免疫」とレジリエンス(強靭さ)も求められる。

 一人一人が、情報の発信元や信頼度に気を付け、共有の前にいったん深呼吸をしてみる。それだけで、条件反射的な拡散は減る。その分、社会の強度は増すはずだ。


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残る地雷 穀物収穫6割減も(2023/2/26 京都新聞)

 農業大国のウクライナで穀物の収穫量が大幅に減少する懸念が強まっている。ロシア軍に占領され、その後奪還した地域では農地に地雷や不発弾が数多く放置された。耕作や牧畜は困難になり、穀物の収穫量は侵攻前より6割減との見方も。物資や物流価格高騰も相まって、ウクライナの戦災は世界の食料安全保障に影を落とす。

 ロシア国境まで16キロの東部ハリコフの近郊シェスタコフ村。牛舎の鉄骨がひしやげ、ミサイルの残骸がある。崩れていない屋根には砲弾や破片による穴が無数に残る。

 「ロシアもここが農場だと知っているはず。なぜ攻撃したのか。動物だって人間と同じ命だ」

 大手農業企業「アグロモル」が経営するハリコフ州最大規模の農場で働く技師長セルギー・ヤツェンコさん(36)は悔しがる。約5千ヘクタールの農地では酪農のほか、小麦やヒマワリを生産する。

 昨年2月28日、ロシアの空軍機5機が低空飛来。爆撃で22棟ある牛舎や穀物倉庫などが全て全半壊した。約3千頭の乳牛のうち約2千頭が空襲やロシア軍が残した地雷を踏み、死んだ。

 避難させた乳牛を戻し酪農を再開するが「今年の作付面積はゼロだ。地雷や不発弾が大量に残っている」。雪で白く覆われた農地に踏み入ることができず、当局に危険物の除去を要請中だ。100台以上あった農業機械も半分が破壊され、2割が一時占領したロシア軍に持ち去られた。

 ウクライナの主要な農業関連企業が加盟するウクライナ農産業クラブによると、2023年の穀物の作付面積はロシア軍の侵攻前の21年に比べ45%減の見通しだ。収穫量は物資高騰などの影響もあり、6割減になると予想する。

 ウクライナの農業生産のうち大規模企業は6割を占めるが、中小農業者への影響はより深刻だ。国連食糧農業機関(FAO)のアンケートによると、ウクライナの4分の1の地方農業者が生産中止や縮小をしたという。

 昨年、首都攻防戦の舞台となったキーウ(キエフ)近郊イルピンの中規模小麦農場を営むミコラ・リマルチュクさん(61)は「国を支えるため生産を続ける」覚悟だ。ただ、ロシアと緊密な関係を保つベラルーシから輸入していた肥料をドイツ産に切り替え、負担増で小麦を作れば作るほど赤字に。「従業員50人のうち7人が徴兵された。これ以上従業員が減ると厳しい」と弱気ものぞかせた。 (ハリコフ共同)


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ロシア 新たな「祖国戦争」に(2023/2/26 京都新聞)

ロシア高等経済学院教授 ドミトリー・トレーニン

 ウクライナでの軍事作戦は国際情勢だけでなく、ロシア自身を変えた。この戦争は事実上、1991年のソ連崩壊後の「繁栄の30年」を終わらせた。従来のロシアは過去のものとなり、国家と経済、社会的関係、価値観の改定が進んでいる。「ロシア・バージョン2」は現れたばかりだが、いくつかの特徴は既に明確になった。

 多くの国民が「ロシア弱体化を狙う米欧との対立」とみる軍事作戦は強い団結を生んでいる。政治的傾向と雰囲気は大きく変化した。抗議行動への政権の対応は一段と厳しくなり、リベラルな親欧米派は社会の隅に追いやられるか、出国した。逆に愛国勢力は勢いづき、ソ辿崩壊後でかつてない影響力を得た。開戦当初の失敗にもかかわらず、プーチン大統領は高い支持率を保っている。

 経済は日米欧の制裁に持ちこたえた。2022年のインフレ率は12%前後だった。国内総生産(GDP)低下は3%以下で、国際通貨基金(I MF)は23年には0・3%、24年には2・1%成長と予想する。旅客機、高速鉄道、船舶の国内大量生産が復活しつつある。

 米欧のロシア外貨準備と個人資産の差し押さえは金融界の急速な脱米ドル化、脱オフショア(海外)化を進めた。国家は以前に増して経済の重要なプレーヤーとなり、新興財閥は相当な資産を失った。最大の貿易相手だった欧州との関係は壊滅的に落ち込んだ。

 その象徴がバルト海底のガスパイプライン「ノルドストリーム」「ノルドストリーム2」の爆破だ(ロシアは米欧特務機関の仕業と見ている)。ロシアはエネルギー資源輸出先の中国、インド、トルコなどへの変更を迫られた。22年に中国はロシアの輸出の約2割、輸入の約3割を占めた。

 ウクライナでの戦争はロシアにとって1945年以降で最大の、おそらく最も流血の多い軍事紛争となった。昨年秋の部分動員は戦争を「特別作戦」から全国民的戦いに変えた。

 米国や北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナを軍事支援している事実が、軍と兵士の家族への幅広い支援を呼んでいる。

 軍事作戦は徐々に、新たな「祖国戦争」になりつつある。国は庶民の生活保障に注意を払わざるを得ない。だが人々は政権に、動員された人や社会的弱者への支援だけでなく、納得のいく戦果も求めている。成功したビジネスマンに代わって軍人やボランティア、医師、学識経験者があこがれの的になりつつある。

 社会の価値観も変化している。実利主義的傾向はまだ強いが、愛国主義的雰囲気がはるかに高まった。学校教育カリキュラムと教科書が見直され、リベラル思想は小さな「飛び地」と化した。伝統的価値観はかつてなく支持されている。ジェンダーや家族の問題でも欧米との溝が拡大した。

 欧米大衆文化の影響は後退した。ハリウッドのボイコットで、映画館で見られる米国映画は激減した。欧州でのロシア文化拒否の動きは人々を憤慨させている。ロシア人の欧州旅行は困難になり、中東やアジアが人気の渡航先になった。

     口口口

 外交分野の変化は巨大地震さながらだ。ロシアは初めて米欧全体との対立に直面し、状況はナチス・ドイツがソ連に電撃侵攻した41年や62年のキューバ危機に近い。ロシアを政治、情報分野で支持しつつウクライナ危機では中立を保つ中国との経済・軍事関係は強化された。ロシアはインド、トルコ、ペルシャ湾岸諸国、イラン、アジア、アフリカ、南米などグローバルな多数派の国々との協力に走っている。反植民地主義、つまり米欧の覇権に対抗する戦いがロシア外交の新たな基盤となった。

 状況は動いており、軍事作戦の終結時期や結果を予想するのは早すぎる。作戦終了後も米欧との対立は長い間続くだろう。だがロシアの方向性は既に本質的に変化し、自国の伝統と経験に基づいた発展のモデルに向かっている。ピヨトル一世の時代に始まった数世紀にわたる「欧州化」の希求は、独立した自給自足の大国になるという欲求に取って代わられた。ロシアの道が平たんだったことはないが、いまやその道はかつてなく困難なものになった。


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子ども連行1万6千人特定(2023/3/1 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアがウクライナの子どもを連れ去っている問題で、ウクライナ当局が1万6千人超について身元を特定したことが28日までに分かった。この問題を担当する、子どもの人権に関する大統領顧問ダリア・ヘラシムチュク氏は共同通信の取材に、違法な養子縁組や国籍変更で「ロシア化」を進めていると懸念。「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だと非難し、国際社会に支援を訴えた。

 ロシアから取り戻した子ども307人の聞き取りなどから「連行は計画的だ」と指摘。@親を殺害したり占領地の検問で親と分離したりして連行A占領地の規則や治療を名目に親元から強制分離面孤児院から連行−などの手口で連れ去り、親との連絡やウクライナ語使用も許さないという。

 ヘラシムチュク氏によると、これまでに家族の証言などから連れ去られた1万6221人を特定した。「占領地奪還が進めば増えるのは確実」として、最大で数十万人規模になるとみる。

 ウクライナ側によるロシアの公開情報の分析では、連れ去りは73万3千人に上る。ロシアは「保護」したと主張するが、ヘラシムチュク氏は「強制連行」だと非難した。

 このほか461人が死亡、927人の子どもがけがをした。家族の犠牲、避難や警報によるトラウマ(心的外傷)を抱える子も多く「侵攻の影響を受けない子どもはいない」と語った。


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ウクライナ15万棟全半壊(2023/3/4 京都新聞)

 ウクライナ環境保護・天然資源省は3日までに、ロシアの侵攻によって2月初旬時点で約14万9千棟の集合住宅や個人宅が全半壊したと明らかにした。ロシア軍は1日数万発の砲弾を放ち、ウクライナ軍も反撃する中、今後もも増加は確実。コンクリートやれんが造りの建造物が多く、危険物や有毒物質が混入している可能性が高いことなど日本の震災がれきとの違いはあるが、約40万棟の住宅が全半壊した東日本大震災に匹敵する規模に膨らむ可能性がある。

 このためウクライナ政府は震災がれきを効率的に処理し、リサイクルしてきた日本の事例に関心を示している。日本政府に一段の協力を要請する考えだ。

 ウクライナ当局は、東部や南部のロシア占領地や、攻撃が続く地域、地雷の埋設地帯では調査が困難なため、実際の被害数はさらに多いとみている。

 戦費がかさむウクライナの国家財政は逼迫し、外国の支援なしに立ちゆかない状況だ。政府は両軍の破壊された戦闘車両、砲弾やミサイルの残骸を含めた廃棄物の処理費用を節約する必要もある。

 日本は震災で発生したがれきを建材やバイオマス燃料などで再利用することで、処理費用を大きく圧縮した実績がある。ウクライナは侵攻前から一般廃棄物の焼却施設不足や低いリサイクル率などに課題を抱え、欧州連合(EU)加盟交渉でも改善を求められてきた。

 日本政府はロシアの侵攻後、国際協力機構(JICA)を通じて宮城県東松島市など、震災の廃棄物処理の事例をオンライン研修でウクライナ政府や州政府幹部に伝えている。一方で、専門家の派遣は危険を伴うため進んでいない。

 ウクライナ政府によると、住宅被害に加え、約3千棟の教育施設や1200以上の病院も全半壊した。商業施設も相当数破壊。約20万台の自動車やトラックも攻撃で壊された。(キーウ共同)

【インサイド】戦災がれき処理 課題多く

 ウクライナの戦災がれきの処理には予算不足や分別、再利用のノウハウ欠如など課題が多い。戦争が続く中、がれきは増え続ける。ロシアの侵攻前から廃棄物処理の分野で立ち遅れが指摘されてきたウクライナ。状況には違いもあるが、東日本大震災の経験を生かせる可能性がある。

 高さ42メートルにおよぷ一般ごみの山の上を無数のガラスやカモメが飛び交っている。ウクライナ第2の都市、東部ハリコフの北郊にある市最大の廃棄物処理場。2月中旬に訪れると、一角にコンクリートがれきがうずたかく積まれていた。

 「見てくれ。この破砕機では大きながれきを砕くことはできない」。市廃棄物管理公社の幹部ユーリー・スヤルコ氏(47)は話した。砲弾やミサイルで発生した戦災がれきを重機が破砕機の口に落とし、ごう音とともにすりつぷす。ただ2メートル四方以上のがれきは周囲に放置されたままだ。

 攻撃で破壊された建物は非常事態庁が不発弾や危険な化学物質の有無など安全を確認した後、解体する。がれきを処理場に運び、破砕後に建材として再利用する方針だ。

 だが、収集量は限られている。運び込まれるのは1日わずかトラック7台分。雪のため計画は遅れ、「春からは大幅に量が増える」(スヤルコ氏)。ロシア軍の攻撃もやんではいない。

 「日本の全てはまねできないが、地方レベルではとても有用だ。問題は(廃棄物を)再利用する処理能力が足りないことだ」。昨年、日本の国際協力機構(JICA)が実施したオンライン研修を聴講したウクライナ環境保護・天然資源省高官は語った。

 参加者の関心を引いたのが東日本大震災で被害に遭った宮城県東松島市のがれき再利用対策「東松島方式」だ。人口約4万人弱の同市では約110万トンの震災がれきが残った。

 市は就労支援として累計約800人の市民を雇用し、震災がれきや混合ごみを19種に分類。金属類は鉄資源、木質はバイオマス燃料、コンクリートは再生砕石などとして再利用率97%を達成。1トン当たりの処理費用を宮城県で最も低く抑えた。

 研修で講師役を務めた東松島市の大久政信復興政策課長は「われわれは2年半で処理を終えたが、戦争が続いておりさらに時間がかかるのではないか」と話した。(ハリコフ共同)


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東部要衝制圧「重要」(2023/3/8 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアのショイグ国防相は7日、ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトについて「制圧することがウクライナ軍へのさらなる攻撃を可能にする」と軍幹部との会合で語った。半年以上に及ぶ作戦が重要局面を迎え、軍を引き締める狙いとみられる。

 バフムトからウクライナ軍が一部撤退を始めているとの見方もあるが、ショイグ氏は「戦闘は続いている」と表明。バフムトがウクライナ軍の東部の拠点になっているとし、東部全体の掌握を狙うロシア軍にとって重要だとの認識を示した。

 ウクライナメディアによると、ウクライナのシルスキー陸軍司令官は5日、バフムトを防衛する部隊を視察し、同地での戦闘がこれまでで「最も緊迫した局面」を迎えていると述べた。

 米国のオースティン国防長官は6日、バフムトは「戦略や作戦上の価値というよりも、象徴的な意味が大きい場所だ」と述べ、陥落したとしても戦況を大きく左右しないとの考えを示した。

 ロシアメディアによると、ロシア軍と民間軍事会社ワグネルの部隊は、西側の一部を残してバフムトをほぼ包囲。ドネツク州の大半を実効支配する親ロ派「ドネツク人民共和国」の幹部は6日、バフムトでは約1万人のウクライナ部隊が抵抗を続けていると述べた。

 米CNNテレビは7日までに、北大西洋条約機構(NATO)当局者の話として、バフムトでの戦いで、ロシア側の兵士の損耗率がウクライナ側の5倍に上っていると報じた。ウクライナ兵を1人殺害するのに、ロシア側は5人を失っている計算となる。一方、ウクライナ政府高官は、損耗率は7倍と主張している。


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東部要衝制圧「重要」(2023/3/9 京都新聞)

【ニューヨーク、ベルリン共同】米紙ニューヨークータイムズは7日、ロシア産天然ガスをドイツに送る海底パイプライン「ノルドストリーム」と「ノルドストリーム2」で昨年9月に起きたガス漏れについて、親ウクライナのグループによる攻撃が原因だった可能性があると報じた。米当局の機密情報に基づくとしている。

 ガス漏れを巡っては、米著名記者が米海軍のダイバーによる爆破だったと主張したほか、ウクライナ軍を支援する英軍関係者の関与をロシアが指摘するなどさまざまな見方が出ていた。

 同紙によると、米当局はウクライナのゼレンスキー大統領や軍幹部を含め、同国が攻撃に関与したとはみていない。実行犯はロシアのプーチン大統領と敵対する立場にあると推測されるものの、素性は不明点が多く、メンバーも特定できていないという。

 ウクライナのポドリヤク大統領府長官顧問は7日「ウクライナ(政府)とは何の関係もない」とツイッターで主張し、政府の関与を否定した。

 また、ドイツメディアは7日、国籍不明のグループが破壊活動に関与した疑いがあると報道。ウクライナ人所有のポーランドの会社が借りた小型船艇が使われたとみられるが、ドイツのピストリウス国防相は8日、ウクライナの仕業に見せかけた「偽旗作戦」の可能性に言及し「結論を急ぐべきではない」と警告した。

 報道によると、グループは男性5人と女性1人で、精巧に偽造されたパスポートを持っていた。


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数日でバフムト陥落も(2023/3/10 京都新聞)

【キーウ共同】北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は8日、ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトの情勢について「今後数日中に陥落する可能性は否定できない」と述べた。訪問先のスウエーデン・ストツクホルムで記者団に語った。ウクライナ全土では9日、2月中旬以来となるロシアによる大規模な波状攻撃があった。

 ストルテンベルグ氏は「ロシアはより多くの部隊を(バフムトに)投入し、不足している質を量で補おうとしている」と指摘。一方でロシアがバフムトを制圧しても「必ずしも戦争における転機とはならない」との見方も示した。

 ロシア民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏は8日、「(バフムト東部を流れる)バフムト川以東は完全にワグネルが制圧した」と通信アプリに投稿した。

 ウクライナでは9日未明から朝にかけて広範囲にロシアのミサイルなどによる攻撃が繰ぴ返され、西部リビウ州の知事によると住宅3棟が全壊し、4人が死亡。各地で停電が発生するなど被害が相次いだ。

 原子力企業エネルゴアトムによると、南部ザポロジエ原発は攻撃により外部電源が切断され、非常用ディーゼル発電機を稼働させた。発電機の燃料は10日分あるというが、現時点では外部電源の復旧のめどは立っていないという。

 首都キーウ(キエフ)では爆発音が3回確認された。


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ロ軍機衝突で 米無人機墜落(2023/3/15 京都新聞)

【ワシントン共同】米欧州軍は14日、黒海上空の国際空域を同日飛行していた米軍無人偵察機MQ9がロシア軍のスホイ27戦闘機に体当たりされ、墜落を余儀なくされたと明らかにした。欧州軍はロシア軍による「無謀な行為」だと非難した。黒海はロシアが侵攻を続けるウクライナに面しており、米ロ両軍機が情報収集などのため上空を飛行している。

 CNNテレビによると、ウクライナ侵攻後、米ロ両軍の航空機が衝突したのは初めて。ハイテン米大統領も報告を受けた。ロシアが米国の対ウクライナ軍事支援に反発を強める中、米ロ間の偶発的な衝突が直接の交戦につながりかねないとの懸念が出ている。

 米国務省は14日、駐米ロシア大使を呼び出して抗議した。同省のプライス報道官は「危険でプロとは思えない行動だ」と批判した。

 一方、ロシア国防省は14日、クリミア半島に近い黒海上空で領空に向けて米軍偵察機が飛来したため戦闘機を発進させたが、武器は使用せず接触もしていないと通信アプリで発表。大幅に針路を変更した偵察機が制御を失い、海上に墜落したと主張した。複数の戦闘機は無事に基地位戻ったとしているが、米国防総省は戦闘機も損傷したと分析している。

 国防総省や欧州軍によると、ロシア軍は2機のスホイ27でMQ9を妨害。近くを30〜40分間飛行し、うち1機がMQ9のプロペラに体当たりして機体が損傷したため米軍はMQ9を海上に落下させた。その直前にもロシア軍の2機はMQ9に燃料を浴びせるなどした。


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周氏「大国」外交で攻勢(2023/3/19 京都新聞)

ウクライナ問題 存在誇示

 中国の習近平国家主席が20〜22日にロシアを公式訪問する。ウクライナ問題への関与を強める姿勢を見せて、「大国」指導者としての存在感を国際社会にアピールする狙い。国家主席3期目に突入したばかりの習氏の外交攻勢が始まった。侵攻で日米欧との対立が深まり、中国への傾斜を強めるロシアのプーチン大統領の対応が注目される。

「知恵試される」

 ロシアの友好国である中国は、ウクライナ侵攻を非難せず、米欧による対ロ制裁を批判してきた。一方で「各国の領土と主権は尊重されるべきだ」と主張してウクライナにも理解を示す「どっちつかずの立場」(外交筋)を取ってきた。

 しかし、今年2月には「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する12項目の文書を公表し、全面停戦と和平対話を呼びかけた。核兵器の使用に反対するとも強調し、ロシアをけん制した。従来の立ち位置を微調整している。

 中国は自らを「責任ある大国」と呼ぶ。習氏は昨年12月にプーチン氏とオンライン会談した際も「大国の政治家の知恵が試されている」と述べ、双方が協力して「人類共通の幸福」を追求するべきだと訴えた。

 3月に入り、中国は、歴史的に米国が影響力を保ってきた中東でイランとサウジアラビアの関係正常化の合意を仲介して、世界を驚かせた。戦闘が1年以上続くウクライナ情勢の打開はさらに難しいとみられる。習氏が停戦機運を醸成するなど、国際社会が期待するような役割を果たせるかどうかが焦点になる。

最重要の生命線

 ロシアにとっては、中国との「戦略的パートナー関係」は国際的孤立を回避して自らの生き残りを図る上で、最重要の生命線になりつつある。

 中国はロシアが外交上重視する国連の場で、安全保障理事会常任理事国として、米英仏と一線を画してロシアに一定の理解を示してきた心強い「味方」だ。

 侵攻長期化に伴って悪化が避けがたい国内経済の維持にも、中国の存在は欠かせない。ロシアの国家財政を支える原油や天然ガスの欧州への輸出による収入は、対ロ制裁で激減した。制裁に加わらない中国は、インドなどと並びロシア産エネルギー資源を買ってくれる貴重な取引相手となっている。

 ロシアとしては習氏の公式訪問を機に中ロの緊密な連帯をアピールして、米欧の圧力に対抗したい考えだ。(北京共同)


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首相「戦争犯罪の責任追及」(2023/3/22 京都新聞)

【キーウ共同】岸田文雄首相は21日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談した。ロシアによるウクライナ侵攻に関し、戦争犯罪や残虐行為の不処罰はあってはならないとして、国際法に従って責任追及するとの共同声明を発表した。5月の先進7力国首脳会議(G7広島サミット)へのオンライン出席を招待し、ゼレンスキー氏は応じた。共同声明は中国を念頭に東・南シナ海情勢への深刻な懸念に言及し台湾海峡の平和と安定の重要性も強調した。

 戦争犯罪を巡っては国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領に逮捕状を出しており、日ウクライナが戦争犯罪の責任追及へ結束を図った形だ。首相は、エネルギー分野などで新たに4億7千万ドル(約620億円)。の無償支援を供与すると表明した。「日本ならではの形で切れ目なく支える」と強調した。ゼレンスキー氏は謝意を示した。

 両首脳は、機密情報の交換を可能にする2国間の「情報保護協定」締結に向けた調整開始で合意した。ウクライナ侵攻は「インド太平洋地域やそれ以外の地域における安全、平和および安定に対する直接的な脅威」との認識を共有。中国を念頭に一方的な現状変更の試みに強く反対し、両岸問題の平和的解決を促した。

 共同声明では、ロシアの核兵器使用の威嚇を強く非難し、77年間に及ぶ核兵器不使用の記録をロシアが破ることがあってはならないと強調した。対ロ制裁の維持強化が必要だと指摘。第三国が制裁措置を回避しないことへの期待も示した。

 首相は今回の電撃訪問中、民間人多数が虐殺されたキーウ近郊のブチヤを訪ねた。ロシアによる侵攻の惨劇を目の当たりにしたと記者団に説明。「G7議長として国際秩序を守る決意を新たにした」と意欲を示した。

 首相が乗ったとみられる列車は21日夜、キーウを出発し隣国ポ上フンドヘ向かった。滞在時間は8時間余りだった。

 会談でセレンスキー氏は「国際秩序を守る日本のリーダーシップに感謝している」と述べ、サミットではロシアによる核威嚇や原発占拠を取り上げてほしいと要請した。


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英、劣化ウラン弾供与決定(2023/3/24 京都新聞)

【ロンドン、キーウ共同】英政府は23日までに、ロシアの侵攻を受けるウクライナに供与する主力戦車「チャレンジャー2」の弾薬に劣化ウラン弾を含めることを決定した。破壊力が強く、敵戦車の装甲を貫通する能力が高い。英BBC放送によると、劣化ウラン弾は米ロも保有する。

 劣化ウラン弾は弾心にウラン238などを主成分とする劣化ウランを使っており、ロシアのプーチン大統領は「核成分」を備えた兵器と主張し英国を非難。ショイグ国防相も。「核による軍事的衝突に、また一歩近づくことになる」と懸念を表明、対抗措置の可能性を示唆した。


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国連「双方が捕虜処刑」(2023/3/26 京都新聞)

【キーウ共同】国連ウクライナ人権監視団は24日。ロシアが侵攻したウクライナでの人権状況に関する報告書を公表し、双方が拘束した捕虜を処刑しているとして非難した。ロシアは15人、ウクライナは25人を処刑したと指摘。国際人道法や国際人権法に抵触している可能性があり、双方に捕虜の人権保護や処遇の改善を求めた。

 報告書について、首都キーウ(キエフ)で記者会見したボグナー団長は「敵対行為をやめた兵士を恣意的に処刑することについて深く懸念する」と訴えた。英BBC放送ロシア語版が報じた。

 ウクライナ外務省は、報告書について「侵略の犠牲者に責任を負わせるようなことは容認できない」と反発。最高会議(議会)人権委員会のルビネツ氏も「ウクライナは国際法を順守している。われわれの領土を侵し、市民を殺したのはロシアだ」と主張した。

 報告書によると、監視団は双方の計432人の捕虜や親族らに聞き取りを実施。50力所を現地調査した。ボグナー氏によると、ロシアは調査に協力的ではなかったが、ウクライナ側は収容施設での調査も許可した。

 ロシア側か拘束したウクライナ人捕虜203人のうち84%が虐待や拷問を受けた。処刑された15人のうち、11件については民間軍事会社ワグネルの戦闘員が実行した。


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ロシア、ベラルーシに核配備(2023/3/27 京都新聞)

 ロシアのプーチン大統領は25日放映の国営テレビのインタビューで、同盟国ベラルーシへの戦術核兵器配備を決めたと明らかにした。7月1日に保管施設が完成する。ウクライナに劣化ウラン弾などを供与する米欧の軍事支援強化への対抗措置だと強調し、北大西洋条約機構(NATO)側を強くけん制した。ロシアが他国領内に核兵器を配備すれば、1991年のソ連崩壊後に核兵器保有を放棄した旧ソ連諸国から引き渡しを受けて以来、初めてとみられる。

 ベラルーシのルカシェンコ大統領と合意した。同国はNATO加盟のポーランドやリトアニアなどと国境を接し、米欧との一層の緊張激化は避けられない。ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は「(ベラルーシ)国内の不安定化への第一歩だ」と非難。米国務省のパテル副報道官は「ロシアが核兵器使用に向けて準備している兆候は見られない」とした上で「NATOの集団防衛に引き続き取り組む」と語った。

 プーチン氏は、ベラルーシ空軍機10機が既に核兵器搭載可能な仕様に改造され、供与を終えた弾道ミサイルシステム「イスカンデル」も核兵器発射が可能だと説明。「米国は長い間、欧州の同盟国に核兵器を配備してきた。われわれも同じことをする」と語った。

 ただ、ベラルーシへの配備は譲渡ではないとして「核兵器不拡散の国際義務に違反しない」と主張した。4月3日から戦術核を運用する要員の訓練を始めることも明らかにした。

 今月20、21日の中ロ首脳会談中に米欧がウクライナへの追加軍事支援を決定したのは、停戦を唱える中国側とロシアの協議妨害が目的だと主張。英国が供与を表明した劣化ウラン弾は「放射性の粉じんを発生させる最も危険な武器だ」と訴え、核関連の兵器使用を進めているのは米欧側だとして戦術核の国外配備を正当化した。

 ロシアも数十万発の劣化ウラン弾を保有していると指摘し、ウクライナ軍が使用すれば対抗する考えを示唆した。

 ロシアとベラルーシは連合国家創設条約を結び経済や軍事面で国家機能の統合を進めている。ベラルーシは侵攻に直接参加していないが、ロシア軍の出撃拠点となった。(共同)


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仏中、ウクライナ和平訴え(2023/4/7 京都新聞)

【北京共同】フランスのマクロン大統領と中国の習近平国家主席は6日、北京で会談した。共同記者発表で、ロシアが侵攻したウクライナの和平実現に向けて当事者らの協議を早期に再開するよう共に呼びかけた。中仏首脳と3者会談を行った欧州連合(EU)のフォンデアライェン欧州委員長は習氏がウクライナのゼレンスキー大統領と対話する用意があると述べたと 明らかにした。

 マクロン氏は会談冒頭、中ロの密接な関係を踏まえ「あなたはロシアを正気に戻し、皆を交渉のテーブルに着かせることができる」と訴えた。習氏は「中仏は自主独立の伝統を備えた大国だ」と述べ、立場の違いを超えて協調する。「能力と責 任がある」と一致点を強調。中国側は米中対立が激化する中でフランスと関係深化を図り、米欧結束にくさびを打ちたい思惑がある。

 習氏は記者発表でロシアは名指しせず、国際社会に「理性と自制を保ち、危機を一層悪化させる行動を避けるよう呼びかける」と述べた。中仏首脳は核兵器の不使用を強く求める点でも歩調を合わせた。

 フォンデアライエン氏はマクロン氏の提案を受けて共に中国を訪問し、3者会談のほか、習氏と2者会談も行った。フォンデアライエン氏によると、会談で習氏にゼレンスキー氏との対話を促すと、時期を見て行う意思があると答えたという。