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6月28日 光華小学校 学生語り部 抑留史実丁寧に

 シベリア抑留や引き揚げの史実を語り継ぐ「学生語り部」に取り組む舞鶴市の中学生2人が27日、京都市右京区の光華小で出前授業を行った。

 舞鶴市の若浦中2年谷口理緒さんと、山本颯姫さん。2人は舞鶴引揚記念館主催の語り部養成講座を今年2月に修了したばかり。光華小が新型コロナウイルス禍前まで同館で平和学習をしていた縁で、授業が実現した。

 6年生29人が参加。2人は資料などを参考に、怖さを強調しないように意識したという手作りのイラストを用いて、抑留が起きた背景や抑留者の生活の様子を伝えた。

 引き揚げに関する知識を深めるクイズもあったほか、抑留者と一緒に引き揚げた犬「クロ」の物語も紹介した。6年安田春子さん(12)は「中学生でも語り部として平和な社会づくりに貢献している姿がかっこよかった」と話した。

 授業後、山本さんは「戦争が二度と起きないよう、途切れることなく語り継いでいきたい」、谷口さんは「経験者の中には思い出したくないという人もいて、経験していない自分たちだから伝えられることがあると思う。1人でも多く自分より年下の人に歴史を知ってほしい」とそれぞれ思いを新たにした。


戦争の語り部とされる人たちの高齢化に伴って以前からその存続を危ぶむ声がある。同時に「教え子を再び戦場に送るな」の世代の教員も現職には存在しない。そんな中、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのパレスチナ攻撃など大規模な戦争が起きている。今後の平和教育の在り方を舞鶴の中学生「語り部」は示唆しているのではないか。アウシュビッツ博物館ガイド、中谷剛さんは、直接のアウシェビッツ経験者ではないが、公式なガイドとして認定されている。こうした、人たちの「語り部」を養成する教育も大切だろう。「史実を誤って解釈している」との批判が左派、右派の人から投げかけるかもしれないが、それにたいする防波堤となるような教育行政が必要dろう。


6月28日 府 障害者雇用率、最下位

 京都府の昨年6月1日現在の障害者雇用率は2・61%(知事部局)となり、全国47都道府県の中で最下位となった。義務化されている法定雇用率(昨年6月時点2・60%)はわずかにクリアしたものの、全国平均(2・96%)は大きく下回った。受験者数の減少が理由といい、府は昨年度から府内在住者に限定していた居住要件を撤廃したり、年齢上限を引き上げたりするなど採用試験の見直しを行った。

 障害者の法定雇用率は1976年、当時の身体障害者雇用促進法に基づき、身体障害者を対象に全ての企業で達成が義務化された。98年には知的障害者、2018年には精神障害者が算定対象に追加された。法定雇用率は創設当初1・5%だったが、段階的に引き上げられ、現在は国や自治体が2・8%、民間企業が2・5%となっている。

 京都府の知事部局の雇用率は11年度2・62%で全国で上から5番目に高かったが、近年は20年度36位(雇用率2・60)、21年度39位(同2・63)、22年度46位(同2・60)と徐々に順位を落としていた。法定雇用率は昨年度まで2・6%だったため「未達成」に陥ることはなかったが、最下位となるのは06年度に都道府県別の数値が公表されるようになってから初めて。府警は2・37(法定雇用率2・6)、府教委1・80(同2・5)でいずれも法定雇用率を下回っており、6月の府議会では議員か ら「早急な改善を」と指摘が上がった。

 府が背景に挙げるのが受験者数の減少だ。14年度の試験で74人いた受験者数は22年度に45人に減った。結果、「必要な採用数を確保することが難しい状態」(人事課)が続いたという。

 そこで、昨年度の試験から府内在住者に限っていた居住要件を撤廃。従来30歳としていた受験上限年齢も見直し、59歳まで受験可能とした。結果、受験者数は106人と倍増し、採用数は前年度の3人から7人に増やせたという。府の試算では雇用率は2・9%台に上昇し、本年度から2・8%となる法定雇用率を上回る見通しという。

 ただ、法定雇用率は26年度に3・O%に引き上げられる。そのため府は今年5月、障害者を対象とした会計年度任用職員の試験を初めて行い、2人を採用した。週10時間以上であれば本人の希望に応じて柔軟に勤務時間を調整できるのが特徴という。府は「法定雇用率達成はもちろんのこと、障害のある職員がいきいいきと活躍し、職場定着につながるよう、障害者雇用の質の向上にも取り組みたい」と説明する。

 一方、府内の民間企業の法定雇用率は2・37%(昨年6月時点)で、対象企業の46・3%に当たる908社が法定雇用率(2・3%)を達成していない。官公庁が違反しても罰則などはないが、民間企業には不足する人数に応じて1人当たり月額5万円を納付するペナルティーがある。府は企業に障害者雇用を呼びかける立場だが、全国最下位という「汚名」を早期に返上しなければ、民間企業に示しが付かないだろう。


令和5年 障害者雇用状況の集計結果」は、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したもであり現状を知る手掛かりとなる。どの事業所も前年比では増加している。合理的な配慮を進めるなかで一層の雇用が期待される。


6月27日 OECD 子どもがいない女性 日本が割合最高

 日本や欧米諸国が加盟する経済協力開発機構(OECD)は20日、各国の出生動向を分析したリポートを発表した。1975年生まれの女性のうち日本は子どもがいない割合が28%に上り、比較可能なOECD加盟国の中で最も高かった。55年生まれの女性の12%から急増した。OECDは仕事と家庭の両立支援や住宅確保、若者雇用など多面的な政策の必要性を訴えている。

 日本の次に割合が高かったのはスペイン、次いでイタリア。一方、加盟国ではないが中国は約5%にとどまる。

 女性―人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は、80年に比べるとほぼ全ての加盟国で低下しており、直近では最も低いのは韓国で、唯一の1未満だった。

 OECDの担当者は「日本では労働市場などで自らを確立したり、信頼できるパートナーと出会ってから子どもを持ちたいと考えるが、時間がなかったりして難しい」と指摘している。


1975年生まれは今年49歳になる。いわゆる就職氷河期と言われた1993年から2004年ごろまでの世代に当たる。日本の社会がバブル崩壊とともに大きく変化している時代だった。その時期に、企業も政治も適切な措置を講じなかった結果であるかもしれない。


6月27日 京都地裁 元同級生2人に賠償命令

 いじめが原因で登校できなくなり心身に不調をきたしたとして、京都市立の小学校に通っていた男子生徒(14)が元同級生2人を相手取り、300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、京都地裁であった。菊地浩明裁判官は、男子生徒側の訴えを一部認め、元同級生2人に計15万円の支払いを命じた。

 判決によると、男子生徒と元同級生らは2022年3月まで市立小に在籍し、4、5年時に同じ学級だった。菊地裁判官は判決理由で、元同級生らが男子生徒の机からドリルなどを無断で持ち出し、コンパスを壊した行為を「所有権を侵害し悪質」と指摘。精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを命じた。

 一方小学生は未成熟で、不愉快な思いをさせた言動を直ちに違法とすることはそぐわないとし、男子生徒の身体的特徴をからかい、悪口を言った行為については「社会通念上許される限度を超えた不法行為ではない」とした。

 男子生徒へのいじめについては、長期欠席があったにもかかわらず京都市教育委員会が、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定していなかったことが明らかになっており、市教委は生徒と保護者への謝罪を検討している。


いじめ問題の解決を裁判に委ねることは被害者・加害者双方にとって利益となるのだろうか。確かに、被害を受けた側からは法廷での判断を求めるしか方策はないのかもしれない。同様に学校の責任については改めて裁判で争うしか手立てはない。双方の当事者、そして教育行政が和解できる方法はないのだろうか。原告が「教室の窓から飛び降りたら楽になると思った」と漏らしたことを母親は公表したが、「いじめ→自殺」とリニアに原告の意識が向かなかったことが何よりといいうしかない。


6月25日 市立小学校 「重大事態」認定せず

 京都市立小に在籍していた男子生徒(14)がいじめを受けて長期欠席を余儀なくされたにもかかわらず、市教育委員会がいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に認定していなかったことが、24日までに市教委への取材で分かった。同法はいじめによる長期欠席は重大事態として対応するよう規定しており、専門家は市教委の対 応を「違法」と指摘する。市教委は「手続きに不備があった」として、生徒と保護者への謝罪を検討している。

 生徒は、いじめによって心身の不調を引き起こされたなどとして、元同級生2人に計300万円の損害賠償を求め京都地裁に提訴している。訴状によると、生徒は京都市立小で4〜6年生だった2019〜21年に、持ち物を机から勝手に持ち出されて壊されたり、先天性の障害で速く走れないことをはやし立てられたりするいじめを同級生から受け、6年時は30日以上欠席した。

 市教委によると、生徒の訴えを受けて元同級生らのいじめを把握していたが、重大事態の認定は見送り、市長への報告や第三者による調査を行わなかった。生徒指導課は「いじめによる欠席ととらえきれていなかった。今から考えると重大事態と判断すべきだった」とし、生徒と保護者に謝罪する意向を示している。

 全国のいじめ疑い事案に携わる石田達也弁護士(滋賀弁護士会)は「客観的な調査を通じていじめの原因を探り、子どもの学習権を回復する道筋を示すのが教育行政機関の役割のはずだ。いじめによる長期欠席が疑われる段階から重大事熊として対処するとの規定がある以上、教官委員会は認定する義務があった」と指摘している。


母親「軽く見ないで」不信感

 いじめよって心身の不調を引き起こされたなどとして、小学校の元同級生2人を相手取り、京都地裁に提訴した原告生徒の母親(45)が26日の判決を前に、京都新聞社の取材に応じた。一時は「死にたい」とまで思い詰めた息子の心の傷は深く、「子ども同士のことだからと軽く見ないでほしい」と、学校や教育委員会による対策強化を訴える。

 物静かな性格だった息子の体調に異変が起きたのは5年の秋。いじめのストレスで頭痛や不眠の症状が表れ、校門を見るだけで腹痛で歩けなくなった。ストレス性過敏性腸症候群や適応障害と診断され、6年の冬以降は全く登校できなかった。

 相談した教員や学校への不信感も募った。「息子が受けた行為の内容が、同級生たちの保護者に正確に伝わっていない」と母親は感じた。学校はいじめの調査を行ったが、結果は自分たちには口頭で伝えられるのみだった。民事訴訟を起こして初めて、対応記録の文書が開示された。「重大事態と報告されていないことに驚いた」と話す。

 息子は卒業後も、元同級生の声が聞こえるなど記憶のフラッシュバックや不眠に苦しみ、通院を続けている。当時を振り返って「教室の窓から飛び降りたら楽になると思った」とこぼしたこともあったという。

 母親は「ぞっとした。死ななくてよかった。裁判にもなることを知って、子どもたちが『いじめはやめよう』と思ってくれれば」と願う。


いじめが後を絶たない。「いじめ防止対策推進法」(2013年)が成立してすでに10年以上の年月が経っているのだが。法の不備を指摘する向きもあるが、やはり現場の人権意識がもっともよりどころになるのではないか。しかし、その人権意識をエンパワーしていくための環境を整えるはずの教育委員会がそれを持てないというのはどうしたことか。


6月24日 【表層深層】防衛力強化「まるで戦前」

 太平洋戦争末期の沖縄戦終結から23日で79年となった。沖縄県民の平和への願いとは裏腹に、政府は台湾や尖閣諸島を巡る有事を念頭に、防衛力強化にまい進、住 民の避難計画も練る。“鉄の暴風”に焼き尽くされた地上戦の惨禍の記憶が頭をよぎり、戦争体験者は「まるで戦前だ」と憂慮。政府に対し、悲惨な歴史を顧み、衝突を避ける外交努力を求めている。

 「抑止力の強化がかえって地域の緊張を高めている」。玉城デニー知事は沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で、各国・地域の軍備拡張が東アジアの不安定化を招いていると指摘。一方、経済的には結び付くなど安全保障環境は複雑になっており「沖縄が地域外交を展開し、緊張緩和に貢献する」と力を込めた。

 政府は九州沖縄の防衛力を強化する「南西シフト」を進め、3月には地対艦ミサイル部隊を初めて沖縄本島に配備した。来年度には、相手国領域内を攻撃するために射程を約200キロから約千キロに延ばす、12式地対艦誘導弾の能力向上型を配備する方針。仮に沖縄に置けば中国本土が射程圏内となり、反発は必至だ。

 台湾情勢は緊張が続く。中国軍は今年5月、台湾を取り囲むように艦艇や航空機を展開させる異例の大規模演習を実施した。自衛隊幹部はこの演習を振り返り「有事に備える重要性を県民に理解してもらえたのではないか。沖縄戦の再来を避けるには抑止力が必要だ」と訴えた。

 日米は連携を深める。両政府は有事に日本の空港や港湾を軍事拠点とする方針を掲げ、エマニュエル駐日米大使は5月、台湾に近い沖縄県の先島諸島を米軍機で巡った。

 玉城知事は「緊張感をもたらす」と懸念を表明。「米軍機の民間空港の利用は緊急時に限る」とした要請もほごにされ、強い不快感を示した。

 有事に自衛隊などの使用を想定した「特定利用空港・港湾」には、那覇空港と石垣港も含まれた。県の担当者は「相手国から標的にされる恐れがある」と危機感を示す。一方で、石垣市など離島5市町は、地元空港の滑走路延伸や、港湾の岸壁整備が見込めるとして前向きな姿勢を隠さず、県側の足並みには乱れもうかがえる。

 「国は有事をあおるように島のとりで化を進めているが、平和を望む県民感情は置いてきぼりだ」。沖縄戦で家族7人を亡くした那覇市の澤地岻(たくし)正喜さん(85)は、旧日本軍が沖縄での任務を活発化させた気憶がよみがえり、不安を覚える。

 1944年には、学童や教員らを乗せた疎開船「対馬丸」が沖縄を出究後、米軍の魚雷攻撃を々けて沈没。1400人以上が命を落とした。

 現在、政府が策定を進める有事の住民避難計画は、先島諸島の住民ら約12万人を船舶と航空機で九州各県と山口県に退避させる想定だ。最短なら「6日同程度で可能」と見込まれるが、80年前の対馬丸の惨劇がダブり、実効性を疑問視する声も多い。

 対馬丸事件を生き延びた高良政勝さん(84)は「運ぶのは米や麦ではなく生きた人間。ミサイルの標的になるかもしれず現実離れしている」と突き放し「戦争で被害を受けるのは国民。有事を招かぬよう、為政者同士で話し合いを続けてほしい」と注文を付けた。


沖縄の軍事利用計画はまるで原発計画と同じ。港湾や空港の整備と引き換えに危機を負担させる構造だ。また、非難計画でも140万人以上の人びとを移動させることなどおそらく不可能だろう、まさに机上の空論でしかない。かつて「東京に原発を!」とのアイロニーが語られたことがあったが、「東京にミサイル基地を!」との思いもふつふつと湧いてくる。岸田首相の不人気だけではない自民党政治への不信感は高まる。


6月24日 【社説】教員と連携し豊かな学びに

 中学校のクラブ活動の地域移行と同様に、普段の授業でも地域の人材や施設を生かす動きが教育現場で進んでいる。

 カリキュラムが多様化し、教員も多忙化する中、各学校にはこれまで以上に指導の工夫が必要になっている。地域との連携を、教育の質の向上につなげられるかが問われよう。

 京田辺市は本年度から、全9小学校の水泳授業を民間のスイミングスクールなどに委託した。直接のきっかけは、各学校のプールの老朽化だ。多額の費用をかけて更新するより割安だったのに加え、民間委託の利点は費用面だけにとどまらない。

 プロのインストラクターの指導を受けられ、水質や水温の管理が徹底された室内プールで泳げるとあって児童の評判もいいようだ。教員にとっても、プール掃除や水質管理などの業務が省かれるため、負担軽減になるという。

 こうした専門的な知識や技能を持った人材の教育現場での活用は、「総合的な学習」や「音楽」、「情報」などの授業でも試みられている。

 ただ、公的な教育活動として実施する以上、外部に内容や責任を丸投げするのではいけない。教員が授業の組み立てを主導し、子どもたちが主体的に学べるような配慮は欠かせない。

 昨秋に京都市立芸術大の新キャンパスが誕生した下京区では、区内の4小学校の教員と市立芸大の学生やOBが協力して、音楽の授業をつくる取り組みが行われている。

 教員と学生が互いの立場から意見を出し合って授業を行うのが特徴で、従来型の出前授業とは大きく異なる。生の演奏に触れることができる子どもと、多くが教職課程を履修している学生の双方に利点があるようだ。新たな授業のモデルとして広がりを期待したい。

 一方で、地域資源を活用する授業の実施には課題もある。

 人口の少ない地方では、学校側が望む人材や施設が見つかりにくい。専門的な技能を持った教員OBや学生らと、学校の二ーズをマッチングさせる仕組みづくり、公共施設やICT(情報通信技術)の積極的な活用が考えられよう。

 継続的に授業を展開するためには、施設の使用料や、指導者への謝礼にかかる費用の確保も欠かせない。

 2020年度から順次実施されてきた現在の学習指導要領は、地域住民や専門家との「協働的な学び」の必要性を掲げている。国には居住地による格差是正を含め、財政や人材の確保への支援を求めたい。

 学外との多様な交流がある学びは、子どもたちが地元の実情や課題に目を向けるきっかけにもなろう。地域社会の協力と担い手を育む意味でも、従来の枠組みにとらわれない授業の在り方を柔軟に模索してほしい。



6月24日 【ブカツは今】 「競技人口減」悪循環を危惧

 全国中学校体育大会(全中)での実施競技の縮小は、日本中学校体育連盟(中体連)が2022年度に活動実態を調査し、全校に対する「部活動設置率」が原則20%未満の競技を選んだ。現行の20競技からほぼ半減する。夏季大会は全国8ブロックの持ち回りで実施されており、縮小される27年度は近畿開催となる。

 除外される競技では、京都府内の中学生も好成績を上げてきた。昨年度はハンドボールで大住中(京田辺市)が女子4強、男子8強に進出。新体操では京都聖母学院中(京都市伏見区)が団体3位に入った。水泳やスケートでも上位に躍進した。

 ハンドボール部の設置率は全国で男子6・9%、女子5・7%。府内の中学校のある顧問は「京都は全国大会で活躍し、日本代表も輩出している。これだけしかいない、のではなく、頑張っている子がいることに目を向けてほしかった。本当に残念」と打ち明ける。その上で「日本協会と一緒に、代替となる大会を模索できればと考えている。目標をしっかり設定してあげないといけない」と語る。

 民間クラブを拠点に活動する選手にとっても、全中は特別だ。出場経験者からは残念がる声が上がる。

 フィギュアスケートで21〜23年度に3連覇した島田麻央さん(木下アカデミー、宇治市・広野中出)は「こんなに大勢の中学生が一緒に試合することはない。楽しみにしていた大会なので、なくなるのはさみしい」と話す。水冰で出場した京都外大西高3年の須磨湧希さん(山科区・音羽中出)は「中学での最終目標が全中だった。同じ学校の仲間とリレー種目で出場を目指すことが楽しく、クラブチームの大会とは違う目標があった」と振り返る。

 府相撲連盟の田村直也理事長は「競技人口が減っている中で、悪循環になるかもしれない」と危惧する。全中からの除外が今月8日に発表された翌日には、京都市内で中学生の大会が行われていた。

 「熱心な指導者は『目標がなくなる』と怒る人もいたが、競技者が減っているのも事実で、冷静に受け止める声もあった」という。

 府中体連の杉本清彦会長(宇治市・槙島中校長)は中体連の評議員会で今回の改革について説明を受けた。「子どもの側に立つと目標が減ってしまうのは申し訳な い。部活動の入部を考える生徒にどう影響するか」と心配する。全中の予選を兼ねた府内や近畿の大会については「今後、早急に議論しないといけない」としている。 (山下悟、後藤創平、井上広俊)


【早大・中澤篤史教授】大会肥大化部活全般見直しを

 全中の歴史に詳しい早稲田大スポーツ科学学術院の中潭篤史教授(スポーツ社会学)に、大会規模の縮小の背景について聞いた。(聞き手・山下悟)

 1979年に始まり拡大し続けてきた全中が、初めて縮小される。歴史的な転換となる大きな決定だ。

 大会が大きくなりすぎたことが根本的な要因だ。競技数、参加生徒数が増え。財務が膨らんだ。教員の負担も大きく、以前から持続可能性が問われてきた。

 そもそも全中は、競技団体任せにして勝利至上主義に陥ることを危惧し、教育者が運営を引き取る形で始まった。一方で教育的な平等の論理からさまざまな種目を抱え込むことになり、肥大化につなかった。

 除外の基準となった「原則20%未満」という数字をどう評価するかは難しい。ただ、これまでの平等志向一辺倒から、今回の決定では参加比率など競技ごとの違いに目を配り判断をした。これは中体連の考え方として非常に大きな変化だ。冷徹に映るが、持続可能性を考え、引き受けられる範囲を決めたのだろう。

 除外された競技では、民間クラブの選手が中学の所属という形にして出ることも多い。そこに学校教育の成果はあったのか。大会を運営する中体連は疑問を感じていたのではないか。

 競技の強化や普及にネガティブな影響は出ると思う。あえて厳しい言い方をすると、競技団体は強化や普及を中体連に依存してきた。部活動は教育のためにある、ということを捉え直すべきだ。

 今回の決定について、中体連はステークホルダー(利害関係者)に説明する責任がある。全中の改革をきっかけに、運動部活動全般の見直しを進めてほしい。



6月21日 【けいざいDig】 高卒者獲得競争過熱

 高卒者を求める企業が一段と増えている。京都府内の新規高校卒業者の求人倍率は3月末で4・74倍となり、約半世紀ぶりの高水準となった。慢性化する企業の人手不足と就職を希望する高校生の減少が続いているためだ。高卒人材は、かつて「金の卵」と呼ばれたほど労働市場で価値が高まっている。(片村有宏)

 「想定外のレベルの伸びだ」。京都労働局の担当者は、今春の高卒者の求人倍率に驚きを隠さない。48年ぶりに4倍を超えた23年3月末の4・32倍をさらに大きく上回ったからだ。京都では高卒者1人に5社近くが殺到している計算になる。

 3月末の新規高校卒業者の求人数は、前年同月比7・2%増の6237人となり、3年連続で増えた。一方、学校やハローワークの職業紹介を希望した求職者数は2・3%減の1316人と4年連続で減少した。少子化に伴う生徒の減少と大学進学などの増加が背景にある。

 地域差も拡大している。京丹波町以南の府南部地域は企業数も多いため、3月末の求人倍率は6・53倍(前年同月末は5・74倍)に達した。逆に府北部は1・85倍(同1・92倍)と低下した。

 京都労働局に残る記録では、府内高卒者の求人倍率は1975年の5・O倍がピーク。「金の卵」と呼ばれた地方の若年労働者を東京に運んだ集団就職列車の運行が終了した年に当たり、今春の高卒人材の争奪は、当時に匹敵するほど激しくなっていると言える。

 企業の採用意欲は当面衰えそうにない。大手・中堅企業も続々と採用の開始や拡大に乗り出しているためで、京都新聞社が5月に京都、滋賀の主要企業108社から回答を得たアンケー卜でも高卒者の採用数を「前年並み」「増やす」とした企業が半数を超えた。

 和装卸の外市(京都市下京区)は、2025年春入社の高卒採用を20年ぶりに再開した。複数人を新卒採用してきた大学・短大卒の入社が今春は1人だったためで、西井恒範取締役は「原点に戻って高校生にアタックする」と意気込む。

 京都市を中心に飲食店9店舗を運営するshioriya(伏見区)も大卒者採用に苦戦し、今春は新卒社員を確保できなかった。人手不足は深刻で、新規開店準備を終えてもオープンできない店舗があるという。西土菜生社長は「状況を甘く見ていた。大卒者だけで人材は充足できない」と話し、初めて高卒採用に乗り出す。

 京都労働局訓練課の野田昌代課長は「大卒採用に限定していた企業が高卒者の労働市場に参入するのは歓迎すべきこと」としたうえで「中小企業の採用難と人手不足は深刻で、求人倍率は今後も上昇傾向が続くだろう」との見通しを示した。


大卒者の採用が当たり前になっているが、人材不足が高卒者への指向に変わってきたということか。企業は人材をどう補うかが主要な課題となるだろうが、どれだけ持続的な雇用を実現するかも重要な問題。一方で、高校では「働くこと」をどう教えるかが一層大きな課題になる。現行のキャリア教育が見落としている課題(労働条件や権利など)を取り上げる必要に迫られる。


6月21日 勤労者学園調査 府内労働者自治会加入率 大幅減

 自治会や町内会に加入する京都府内の労働者の割合が54・2%だったことが、京都勤労者学園(京都市中京区)が昨年実施したアンケートで分かった。2009年の前回調査の76・3%から14年間で大幅に減少した。PTAやボランティアといった活動への参加も減っており、同学園は「地域社会や活動への関わりや参加意欲の低さがみられる」としている。

 調査は連合京都、京都総評など府内の労働組合に加盟する5千人に実施し、2193人が回答した。回答率は43・9%。

 自治会や町内会への加入は、「入っており、役をしたことがある」が32・6%。「家族が役をしたことがある」が14・6%、「役は断っている」が6・9%だった。加入率は半数を超えたが、「入っていない」は36・3%となり、前回調査の14・3%から大幅に増加した。

 地域活動への関わりでは「保育園・学校などの保護者会。・PTA」(20・4%)が最多で、「環境保全の取り組み」「地域活性化の取り組み」「消防団や防災・ 防犯・交通安全ボランティア」の3項目が続いた。

 一方、「関わりがない」は47・7%と半数近くとなった。理由は「時間が確保できない、日時が合わない」が44・7%を占め、「参画する動機がない、参画したいとは思わない」(30・3%)、「地域活動に関わるきっかけや触れる機会がない」(30・0%)も目立った。

 同学園の担当者は「職住分離が進み、居住地から離れた職場で働く世代にとって地域社会が希薄になっている。自然災害への初期対応や日常生活をめぐる諸問題などの課題に対応するには働く世代が地域社会に目を向けることが重要」と話している。


アンケート回答で「参画する動機がない」と3分の1が回答している点は見逃せない。自治会活動が行政の下請け機関となっている現状ではさもありなんということ。PTAの在り方についても同様の傾向があることはこれまでも報道されてきている。「自治」の在り方の見直しが必要であり、行政が自治団体を下請機関として位置づけていることを改める必要もある。


6月20日 日本版DBS法が成立

 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する「日本版DBS」創設法は19日の参院交譲で全会一致により可決、成立した。子どもの安全確保のため、学校や保育所に確認を義務付ける。性犯罪歴がある人は刑終了から最長20年採用されないなど就業を制限される。性犯罪歴がなくても、雇用主側が子や親の相談を受け「性加害の恐れがある」と判断すれば、配置転換など安全確保措置を取る。準備期間を経て2026年度にも始まる。(以下省略)


【「性障害専門医療センター」の福井裕輝代表理事】犯罪抑止効果小さい

 加害者治療などに取り組むの話 法律の内容では性犯罪抑止の効果は小さい。初犯は全く防げない。被害者側との示談で不起訴となった事案は「前科」にならないため、この制度では見落とされる。また性犯罪歴のある大が学校や幼稚園への就業を制限されても、他に子どもと接する仕事は無数にあり、公園などで子どもに声をかけて、わいせつ行為をする可能性もある。再犯防止のために、加害者への医学的治療や子どもと接触しない仕事のあっせんなどの社会復帰支援が欠かせない。


【立教大の浅井春夫名誉教授】現状からは一歩前進

 子どもを性加害から守る策がない現状からは一歩前進したと言える。機能させるには課題は多い。雇用主はどのような場合に「加害の恐れ」があると判断するのか。政府はガイドラインを作ると言うだけで、明らかにしていない。雇用主らと折り合いの悪い人を恣意的に対象とする可能性も排除できず、不服申し立ての仕組みは欠かせない。性犯罪歴のある人の個人情報管理も重要。そもそも性犯罪を生み出さないようにするには、子どもの頃からの人権の視点に立った性教育も大切だ。



6月20日 京都市 新洞小跡地活用 事業者募集

 2013年に閉校した京都市左京区新車屋町通二条下ルの元新洞小跡地について、市は活用を希望する事業者の提案募集を始める。京阪三条駅から北東へ徒歩約10分の好立地にあり、市は引き続き住民活動が行えるようにすることを条件に商業や宿泊施設、住宅など幅広い活用策を募る。

 新洞小は1869年に番組小として開校し、児童数の減少により錦林小と統合した。約7千平方メートルの跡地にはシンボル的な築95年の本館のほか体育館や倉庫、プールがある。

 市は、跡地を年額4300万円以上で貸し付け、既存建物を無償で譲る内容の募集要項を6月10日に公表した。本館を解体する場合、新しい建物は面影をとどめたデザインにするように求めた。

 現在、跡地で行われている住民活動が継続できるように、指定避難所や体育館として使える350平方メートル以上の屋内スペースや、運動会ができる広場、集会所の確保も条件にした。隣接する消防団詰め所や防火水槽の機能も維持するように求めている。

 提案募集は9月6日まで。事業者を選んだ後、住民組織と具体的な活用計画をまとめる事前協議を行い、2025年度以降の契約締結を目指すという。


京都市立小中学校の跡地利用は概ね民間企業に委ねる方向が確立してきている。これは前市長の方向でもあるが、建前的に「番組小学校」の歴史を利用しながら住民への懐柔を測った結果である。跡地をどう利用するするかという住民の意向を反映させるというが、そうした住民自治を育ててこなかったという経過も忘れてはならい。学校が地域住民の要となる自治行政が必要。
跡地利用についてはIKUNO・多文化ふらっとによる元大阪市立御幸森小学校の活用は大きな参考となるだろう。


6月19日 地方自治法 非常時 国の指示権拡大

 参院総務委員会は18日、大規模な災害などの非常時に、自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案を自民、公明、日本維新の会、国民民主各党などの賛成多数で可決した。指示権の行使を必要最小限とするよう国に求める付帯決議も採択。19日に開かれる参院本会議で可決、成立する。

 政府はコロナ禍での行政の混乱を踏まえ、国が迅速な対応をとれるようにする狙いだと説明している。立憲民主党などは、乱用への歯止めが不十分として反対した。採決に先立つ討論で、立民の小沢雅仁氏は「自治体への国の不当な介入を誘発する恐れが高い」と批判した。

 国の指示権は現状、災害対策基本法や感染症法など個別の法律に規定がある場合に行使できる。改正案は「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」であれば、個別法に規定がなくても国が自治体に必要な対策の実施を指示できるようにする。

 国と地方の関係を「対等・協力」と定めた地方分権の原則は維持し、非常時の特例として位置づける。指示権行使には、全閣僚の同意が必要な閣議決定を経る。指示に従わなかった場合の罰則は設けない。松本剛明総務相は協議などを通じて、指示に沿った対応を促す考えを示した。

 審議では、立民などが、指示権が恣意的に行使されかねないと指摘。具体的に行使される場面の説明を求めたが、松本氏は「個別法では想定されていない事態」などと繰り返した。

 乱用への歯止めとして、自治体との事前協議を義務付けるよう求める意見もあったが、自治体から意見を求めることを努力義務とするにとどめた。国会への事後報告は義務付ける。


【土山希美枝法政大教授】自治の力、衰退を危惧

 指示権創設の議論には、国が自治体より的確に状況を把握し、指示を出せるという前提があるが、本当にそうか。想定外の事態こそ、現場の知恵と裁量で対応されてきた。問題は、国が自治体を、非常時には指示を与える必要があると評価している点と、それにあらがわない地方の意識だ。現場で議論しながら難題に対峙するよりも、国の指示を待つ、あるいは国の指示に翻弄される状況が起こりかねない。今回の法改正が、自治の前提やその力の衰退を進めることが危惧される。


【牧原出東京大教授】指示権行使は最終段階

 コロナ禍の混乱状態では、十分な議論なく国が自治体に実質的に指示するケースがあり、全国一律の一斉休校のように過剰な対応が行われた。地方自治法改正案は、指示権行使に閣議決定を必要とするなど要件、手続きを定めて権限をむしろ限定的にし、国に合理的な判断を促す意義がある。指示はあくまで最終段階であり、国は課 題解決へ自治体と密接にコミュニケーションをとるべきだ。政府の姿勢を問いただす国会の役割も重要で、指示が適切だったか検証するため国会への事後報告を義務付けた点は評価できる。


2015年7月に安保法制が強行採決された。それに先立つ2014年、安倍首相は緊急雛する親子のパネルを示し集団的自衛権の必要性を強調した。しかし、実際は米軍が民間人をましてや日本人を救出することは想定されえない。と同様に 「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が全国一律の一斉休校のように根拠もあいまいなまま実施される可能性が強い。また、2022年12月、防衛費の大幅増額・反撃能力の保有などを防衛3文書が閣議決定されたことも実質改憲だし、「緊急事態条項」の議論を放置したままの自治法改正も実質的な改憲でもある。


6月19日 府・市教委 4年制大への進学率最高

 京都府教育委員会は、今春卒業した府立高生の進路状況を公表した。全日制高の4年制大への進学率は前年度から1・4ポイント増の64・9%となり過去最高を更新した。卒業生数に対する国公立大の合格率も14・4%で過去最高だった前年度に並んだ。府教委は「各高校の生徒の進路希望に向けたさまざまな取り組みが実を結んだ。大学共通テストの平均点が高く、国公立大への受験を諦めず挑戦したことが良い成果につながったのではないか」と分析している。

 全日制を卒業した8822人のうち、5724人が4年制大に進んだ。このうち国公立大の合格者数は1269人で、合格先は、東京大が6人(前年度3人)、京都大は特色入試合格者1人を含む44人(49人)、大阪大は学校推薦型・総合型選抜の合格者10人を入れて54人(53大)で、神戸大71大(70人)、京都府立大101人(97人)、京都府立医科大医学科5人(3人)、国公立大医学科19人(15人)など。

 全日制では私立大の合格者延べ人数が過去最多の1万4158人。主な合格先は、同志社大人598人(前年度496人)、立命館大1333人(同1378人)、関西大548人(同518人)、関西学院大178人(同185人)、龍谷大2044人(同1878人)、京都産業大1337人(同1129人)、佛教大1095人(同1049人)。このほか、慶応大5人(3人)、早稲田大19人(22人)。

 就職は希望者836人に対して98・3%に当たる822が内定を得た。

 京都市教委も市立高の全日制・定時制計1642人の卒業生の進路状況を公表した。4年制大への進学率は前年度比O・7ポイント減の70・0%。国公立大の合格者数は23・9%にあたる392人で、過去最多となった京都大76人(70人)をはじめ、東京大6人(7人)、大阪大47人(28大)、神戸大28大(38人)、京都府立大17大(16人)、京都府立医大医学科6人(6人)などとなっている。国公立大の推薦型・総合型の入試では54人が合格。このうち、京都大特色入試では合格者9人を出し、「各 校の特色ある学びの成果」としている。

 就職は109人が内定を獲得。学校あっせんによる88人の内定率は100%だった。


府立では嵯峨野、洛北、福知山など、市立では堀川、西京、紫野が国立大合格者数のランキング上位にある。こうした傾向は公立高校の入試競争率にも反映しているし、進学熱を一層高めているが、果たして「教育の成果」と評価できるのだろうか。


6月18日 骨太方針 教員給与上乗せ10%明記へ

 政府が近く閣議決定する経済財政運営の指針「骨太方針」の教員確保策に関する詳細が17日、関係者への取材で分かった。公立学校教員に残業代の代わりに上乗せ支給している月給4%相当の「教職調整額」について、「少なくとも10%以上に引き上げることが必要とした中教審提言を踏まえる」と明記。負担軽減へ小学校での教科担任制拡大にも触れる。

 11日公表の方針案には具体的数値の記載がなかった。来年度予算の編成作業が今後本格化するのを前に、教員の処遇改善に向けて前進した形だ。

 教員のなり手確保の観点から、長時間労働の解消や給与水準の向上が課題となっている。中教審特別部会は5月、教職調整額を「10%以上」に増額し、残業は「全教員月45時間以内」を目標とする提言をまとめていた。

 関係者によると、骨太方針では、教職調整額引き上げに向け、教員給与特別措置法(給特法)の改正案を来年の通常国会に提出するとした。学級担任の手当加算や管理職手当の増額などと併せて「処遇を抜本的に改善する」と記した。

 業務軽減については、小学校での教科担任制の拡大や、中学校で不登校の生徒の指導に当たる担当教諭の配置拡充を盛り込む。

 文部科学省は今夏の概算要求で教職調整額の具体値を明らかにするとみられる。。仮に10%になれば、公費負担は約2160億円増える見込み。


ほとんど議論らしい議論もされない中で「10%」が既定路線となっている。また「学級担任手当」なるものも登場しているが、現場が要求しているのは賃金改善ではなく働き方の改善だろう。既成の労働組合の動きをマスコミはあまり取り上げないが、公立私立を問わずすべての教員関係労働組合は「給特法廃止」の方向で声を上げる必要がある。


6月18日 カシオ 探求学習の教員支援広がる

 2022年度から高校で履修が必須になった「総合的な探究の時間」(探究学習)を対象とした教員の支援サービスが広がっている。指導に慣れない教員の負担軽減が狙い。カシオ計算機は同社の教育アプリ「ClassPad.net」を活用して、今年8月から東京学芸大と効果的な授業方法の研究を始める。JTBも校外学 習向けプログラムを手がけている。

 探究学習は生徒自らが課題を設定し、問題解決能力の向上を目指す。ただ幅広いテーマを扱う必要があったり、課題解決の過程の評価が難しかったりするため、教員の負担は大きい。

 カシオのアプリは電子辞書や百科事典を搭載し、生徒は課題に関する情報収集がしやすい。またデジタルノー卜の共有で、教員は生徒の取り組みを把握して助言や評価につなげられるという。

 クラスパッドは3月時点で、高校を中心に全国約400校が導入した。文部科学省の構想で1人1台配備された学習端末にダウンロードする。カシオ担当者は「アプリ活用でより良い授業につなげたい」と話す。

 このほか、ネスレ日本(神戸市)は、気候変動などに対する自社の取り組みを教材化して教育機関に無償で提供し、約300校が導入した。

 JTBは、修学旅行の事前学習を通じて地感盾忿どのテーマを探究できるプログラムを開発し、活用が広がっている。


まさに教育の場が民間産業の草刈り場になったいるとの印象。この傾向は今さら始まった訳ではないのだがやはり問題含みのように見える。とりわけ「探究」の設定は世界的な潮流に乗り遅れないとする日本の教育行政のあらわれであった。しかし、なぜ「教員の支援サービス」が企業活動(営利活動)の対象になるのかは問われない。このままでは、「探究を丸投げ」する学校が増加するだろうが、そうなれば本来の目的も棄損されることになる。


6月18日 京都市 特別顧問に5名任命

 京都市の松井孝治市長は17日の定例記者会見で、内閣官房参与の今井尚哉氏や劇作家の平田オリザ氏ら5人を、非常勤の「特別顧問」に任命すると発表しな経済・産業や地方行政の在ぴ方などについて随時助言をもらい、松井市長がスローガンに掲げる「突き抜ける『世界都市京都』の実現」につなげるとしている。

 特別顧問は地方自治法に基づく非常勤特別職の専門委員。他の3人は大阪府副知事などを務めた植田浩氏、京都大教授の内田由紀子氏、元文部科学副大臣の鈴木寛氏。5人はいずれも松井市長とは旧知の仲という。松井市長は特別顧問について「各分野のオピニオンリーダー(世論先導者)というだけでなく、人格的にも信頼できる方々だ。大所高所の視点からアドバイスをいただき、職員の人材育成にもつなげたい」と話した。

 任命日は7月1日。任期は来年3月末までで、1年ごとに更新する。報酬は日額2万2千円で、勤務日のみ支払う。


内田、鈴木、平田各氏は教育にかかわりを持つ人。特別参与という立場でどれだけのことが実現できるかというのは不透明だが一定の方向は示せるのではないかと思われる。特に、前市長の下での教育政策の歪みをどの程度意識した議論が展開されるのかは注目に値する。


6月18日 【現論】 「批判的思考」育成、日本は遅れ

 先日国連インターナショナルースクールの卒業式が国連総会議場で行われ、約130人の卒業生一人一人に卒業証書を手渡した。この学校の理事長は国連事務次長の一人が兼務することになっており、2年前から私か務めている。国際的な教育プログラム「国際バカロレア(IB)」を採用しており、世界共通の卒業試験に合格すれば100力国以上で大学入学資格を得ることができる。

 IBカリキュラムの特徴は、初等教育での基礎的学刀習得後には徹底的に思索型・探究型のクリティカル・シンキング(批判的思考)を養うのを目的としていることだ。高校での必修科目には「知識の理論」という知識の本質を考える哲学的な科目が入っている。

 また、地球市民としての自覚を持ち、より良い世界の担い手となる人間、思いやりのある人間の養成を明確に掲げ、卒業するにはボランティア活動などでも一定の単位を取らなければならない。

  学力は高レベル

 良質な教育へのアクセスが困難な教育格差や、不登校・いじめの問題は世界共通に見られ、日本でも大きな問題となっている。経済協力開発機構(OECD)が定期的に行っている15歳の生徒の学習到達度調査(PISA)の最新データ(2022年)によれば、日本はランクを回復し科学的応用力では2位、読解力が3位、数学的応用力が5位と、学力では世界的に高いレベルを維持している。

 しかし、今や先進国では教育の主要な目的となった「批判的思考」を養うという観点からは、世界に大きく後れを取っている。OECDの国際教員指導環境調査(TALIS)の最新データ(18年)によると、「批判的に考える必要がある課題を与える」ことを自らの授業で「しばしば」または「いつも」行うと答えた教員は中学校では調査参加国平均で61・0%だったが、日本では12・6%と圧倒的最下位だ。

 「批判的思考」という日本語訳は適切でないのかもしれない。クリティカル・シンキングとは自らの思い込みや偏見による推論、既存のアプローチに対し批判的・内省的に深ぐ思考することであり、他者を批判するものではない。

 この思考法は証拠やデータを広く精査・分析し、異なる視点を持つ他者の多様な意見を聞き、議論しながら答えを求めていく。言うまでもなく、これは社会のあらゆる分野で欠かせないものであり、国際社会でも同様である。学びの場や職場で議論を活性化し、新たな発明や創造を生み出していくために、多様な背景を持つ人々がい ることも重要だ。

 デジタル化が進み不正確な情報も蔓延する中、データを批判的に評価して分析する能力は不可欠となった。批判的思考を身に付けるための学びの場で、教師の役割は文献やデータの分析の仕方に指針を与えつつ、その教科の専門的な知見を背景に、グループ議論などを通して思索を深めるプロセスのファシリデーター(進行役)とも 言える。

   最長の労働時間

 教育の在り方の変革が求められることは間違いないが、厳しい労働瑞ぷら教員志望者は減少を続けている。TALIS調査でも日本の小中教員の労働時間は参加国 の中で最長で、その理由の一つは教務以外の一般事務である。また中学教員が職能開発活動にかける時間は参加国平均が週2時間に対して日本はO・6時間であるとい う。

 教育に投資しない国に未来はない。OECD平均を下回る教育への財政支出を増やし、働き方改革や学校の組織改革を推し進め、教師が教育の専門家として尊重される環境を整えるべきだ。

 国連インターナショナルースクール卒業式での生徒代表のスピーチは、世界人権宣言を引用しながら、人類の生存に関わる多くの問題を抱える世界を救うために、自分たちはそれぞれの場で責任を果たしていく、そのためにここで教育を受けてきたのだ、という覚悟表明であった。

 教育こそ、あらゆる問題解決の中核にある。「自分の行動で、社会や国を変えられると思う」と感じる若者が5割を切る今の日本を活性化するために、なすべきことは多い。(中満 泉 国連事務次長)



6月13日 文科省調査 自治体3割 給食無償

 公立小中学校で条件を設けずに給食を無償提供する自治体が、2023年9月時点で30.5%に上ったことが12日、文部科学省調査で分かった。 17年度に行った同様の調査では4.4%で、7倍ほどに大きく増えた。新型コロナウイルス対策でできた地方創生臨時交付金が後押しした。ただ、無償化した自治体の1割以上が、交付金の裏付けがない24年度以降は実施予定がないとしており、継続性や地域間格差の課題も浮き彫りになった。

 条件付きなどで一部無償化した自治体も9・8%あり、条件なしと合わせると4割を超えた。無償化は子育て支援として首長が公約に盛り込む例が増え、政府は全国での実現に向けた実態調査と位置付けた。文科省は「地方の財政状況や少子化対策への成果を分析し、問題点を整理する」としている。

 調査は都道府県や事務組合を含めた1794自治体が対象。小中とも完全な無償化は547自治体(30・5%)。条件を設定して小中ともに無償化したのは145自治体(8・1%)で、多子世帯や低所得層などを対象とした。他に「小学校のみ無償」や「中学校のみ無償」などがあった。

 条件付きを含め無償化に取り組んだ722自治体に複数回答で目的を尋ねると、652自治体が「保護者の経済的負担の軽減、子育て支援」を選んだ。他に「少子化対策」や「定住・転入の促進」との答えもあった。

 財源(複数回答)は「自己財源」475自治体、「地方創生臨時交付金」233自治体、「ふるさと納税」74自治体、「都道府県からの補助」52自治体などだった。

 722自治体に24年度以降の方針を尋ねると、82自治体が「実施予定なし」に転じ、115自治体が「検討中」とした。文科省は、国の当初予算で交付金が計上されておらず、自治体の対応が流動的になっていると分析する。

 文科省は、自治体間の差を比べる目的の調査ではないとして、都道府県別データなどを公表していない。政府が昨年、実態調査する方針を明らかにしていた。

 17年度調査は都道府県を含まず、質問項目の多くが異なっていた。


【表層深層】人気の公約 壁は財源

 家庭が支払うのが一般的だった給食費を、公費で賄う動きが広がっている。この数年で大きく進展し、昨秋時点で自治体の3割が公立小中学校での無償化を実現した。公約に盛り込む首長らが目立ち、子育て支援として人気を得やすいとの思惑もありそうだ。一方、財源が壁となって二の足を踏む自治体も多く、地域格差が生じる懸念は拭えない。政府主導の一律実施を求める声が強まる。

 「給食費は保護者の負担とする」。学校給食法に定められたこの一文により、長年多くの自治体が費用を家庭に求める運用を続けてきた。2017年度調査でも、小中の完全無償化を実現したのは自治体の4%にとどまり、小規模町村が中心という結果だった。

 文部科学省によると、転機は新型コロナウイルスの流行。家計悪化を背景に、支援に乗り出す自治体が増えた。コロナに関連した国の交付金を給食費に回すことが可能だったことも後押しした。大阪市が20年度に無償化を始めるなど、徐々に都市部へ拡大した。

 青森県は今年10月から県内全ての公立小中での無償化を決定。都道府県単位の一律実施は初めてで、本年度の経費は約20億円と見込む。宮下宗一郎知事は「子育て世帯が幅広く恩恵を受けられるようにした」と説明する。

 文科省関係者は「子どもの医療費無償化がかなり浸透し、次の目玉として注目されているのだろう」とみる。

 ただ、財源が限られる中で、全ての自治体が最優先課題とするのは難しい。広島市は交付金を給食費補助に振り向けたが、無償には遠い。「多額の経費が必要なので、国の責任で負担する制度にするべきだ」と市担当者。周辺自治体の動きを気にしながら、国への要請を続ける。

 「ある程度の負担は仕方ないとは思うが、暮らす場所によって差が出るのは不公平感がある」。広島市で小学生2人を育てる女性会社員(45)は不満を口にする。

 いったん無償化し、取りやめた自治体も。愛知県刈谷市は23年6〜12月、物価高騰に対応するため小中学生の給食費を一時的に無償にしたが、その後は保護者負担を軽減する仕組みに変更した。担当者は「交付金を当てに期限を決めて無償化した。今後も続けるとすれば必要額は大きく、慎重な検討が必要」と話す。

 給食は貧困家庭の子どもの栄養を改善する福祉的な視点でも重視される。少子化対策に力を入れる自民党をはじめ、近年は複数の与野党が「安心して給食を食ぺられる状況が必要」などと主張し、無償化を大きな政策目標に据える。全国一律導入なら必要経費は年5千億円程度と試算される。

 政府は昨年6月に公表した「こども未来戦略方針」に、今回の調査を踏まえて具体策を検討すると明記した。埼玉、千葉、神奈川の3県知事が今年5月、居住地によらず無償となるよう文科省に財源確保を求めるなど政府への期待は高まる。

 千葉工業大の福嶋尚子准教授(教育行政学)は子どもが家庭や世の中の状況に左右されず安全で栄養価が高い給食を食べ続けられることが非常に重要だ。国と都道府県、市区町村で費用を分担し、全国一律で無償提供できる仕組みを整えなければならない。政府の責任で進める必要があるだろう」と強調した。


物価高を反映 給食費が最高

  給食に関する文部科学省の2023年度調査で、食材費に当たる給食費の平均月額が公立小で4688円となり、21年度の前回調査から211円(4・7%)上昇した。公立中は3367円で、246円(4・8%)上がり、いずれも1972年度の現行調査開始以来、最高額となった。

 物価高を反映しているが、文科省によると、自治体が補助を出すなどして家計負担への影響を抑えているという。

 主食とおかずと牛乳がそろった「完全給食」の費用を集計した。都道府県別では、公立小で最も高かったのが福島の5314円で、最も低いのは滋賀の3933円。京都は4516円だった。公立中では富山の6282円が曇高額で、滋賀の4493円か最低額だった。京都は5006円。


小中での完全無償化は求められる政策ではあるが、財源確保をどのように進めるかがほとんど分からないままでは不安は募る。過日、財政財政健全化推進本部は25年度のプライマリーバランスの黒字化を目指すとした。しかし、しかし、予算配分がどのように行われるのかが不透明ではどこかで「増税」の懸念は消えない。防衛費の限りない増額は「抑止効果」よりも「軍事拡大」を招くことになりかねない。政治の方向転換が必要。


6月13日 世界経済フォーラム 男女平等 日本118位低迷

【ジュネーブ共同】スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムは12日、各国の男女平等度を順位付けした2024年版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」を発表し、日本は146力国中118位だった。女性の管理職や国会議員の比率が順位の低さに影響した。過去最低だった23年版の125位からは改善したが、先進7力国(G7)では依然として最下位。推定所得にも「かなりの格差」があると指摘した。

 報告は経済、教育、健康、政治の4分野で男女間の格差を分析して数値化。世界全体で23年版に比べ「改善の速度は落ち込み、完全な平等を達成するまで134年かかる」と結論付けた。一方で、今年は各国で国政選挙が相次ぐため、政治分野で格差改善の可能性があると指摘した。

 日本は経済で120位、政治で113位と低かった。指導的な職務では6人のうち5人を男性が占めた。女性閣僚は増えたが、国会議員全体では長期間でわずかな変化しかないとしている。教育では大学や専門学校などの就学でやや差があり、23年版の47位から72位に後退した。健康はほぼ変わらず58位だった。

 全体の首位は昨年と同じアイスランド。フィンランド、ノルウェーが続いて北欧諸国が3位までを占め、4位にはニュージーランドが入った。政治分野での上位4力国と同じ顔触れとなった。G7ではドイツの7位が最上位で、日本は下から2番目のイタリア(87位)にも大きく引き離された。

 東アジア・太平洋地域で日本は下から2番目で、128位のフィジーだけを上回った。韓国は94位、中国は106位だった。

 1に近づくほど男女平等を示す日本の総合的な指数は0・663だった。24年版に口シアとミャンマー、アフガニスタン、マラウイは含まれていない。


【インサイド】鈍い歩み「女性活躍」遠く

 世界経済フォ上フム(WEF)が12日に発表した男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告で、日本は先進7力国(G7)の中で最低の118位だった。特に政治、経済分野の遅れが顕著だ。女性衆院議員の割合は約10%で、企業の女性役員比率も低い。各国が格差解消の取り組みを進める中、日本政府も女性活躍推進を掲げるが、その歩みは鈍く、ジェンダー平等の実現はほど遠い。

 政治分野の女性参画は113位と低水準が続く。衆院議員の定数に占める女性の割合は1946年の8%から11%の微増。G7のほとんどは30%を超え、差は歴然だ。

 自民党は衆参両院議員計374人のうち女性は46人で12%に過ぎない。30%に引き上げる10年計画を昨年発表し、衆院小選挙区の新人女性候補に100万円を給付する制度を始めたが、参院からのくら替えを除く新人女性候補はわずか5人だ。

 執行部の一人は、女性候補を比例代表の名簿順位で優遇するなどの対策が必要だとしながら「保守的な自民では難しいだろう」と嘆く。鈴木貴子青年局長は、男性議員の長時間労働を念頭に「自らの働き方を『男性化』させないことが必要だ」と女性議員の意識改革も必要だと説く。

 野党の女性議員比率も芳しくない。立憲民主党は23%、日本維新の会は15%だ。立民は新人女性候補への貸付金制度の他、交流会を開催して先輩議員に相談しやすい環境づくりにも注力する。辻元清美代表代行は男性中心の各党地方組織の問題点を挙げる。「女性を候補に選ぼうという話にならない。風土を変える必要がある」と強調した。

 経済分野の順位も企業役員や管理職の比率が低く、23年が123位、24年は120位と沈む。国内外の機関投資家は、経営陣の多様性を注視し、企業は対応を迫られている。

 三井住友DSアセットマネジメントは今年から投資に関する基準を厳格化。東京証券取引所の「プライム市場」上場企業に対し、取締役に占める女性比率が10%未満の場合、代表取締役の再任に反対する方針だ。

 取締役会など意思決定機関で、ジェンダーなど属性の不足により、偏った結論に陥ってしまうリスクの軽減が期待されている。昨今は大企業か中心に1人は女性取締役がいるのが一般的だが、社外からの登用も多く、社内での育成も課題だ。

 ジェンダーと政治の問題に詳しい上智大の三浦まり教授(政治学)は、日本は他国に比べ、ジェンダー平等への取り組みへのスタートも、その歩みも「遅い」と話す。男性中心の政治や組織から脱却する「構造的な変化」が重要だが、十分な対策が取られず、効果が表れていないとみる。

 世界で日本だけが義務付ける夫婦同姓に経済界も強く異を唱えるが、選択的夫婦別姓の導入は実現しておらず、八ラスメントを明確に禁止する法も制定されていない。「格差を解消し、ジェンダー平等を下支えする法的枠組みが弱い。機動力を発揮すべき政治が障壁になっている」と指摘。有権者が「政治を諦めてしまう」と危惧する。

 三浦教授は、男女格差指数が公表され「近年ようやく、日本が『男女格差後進国』だと認識され始めた」とするが、「ランキングに一喜一憂せず、多角的に見るべきだ」と語る。女性の議員、管理職の割合を徐々に増やすなど「持続的な取り組みが必要」と訴えた。


経団連は10日「選択的夫婦別姓制度」(希望すれば)導入の提言を公表した。政治よりも経済が先にジェンダーギャップの解消に意識的?。とはいうものの女性の社会的な進出が進んでもほとんどが「男性化」するのでは意味がない。女性も男のようなは働き方ができるようになるのがジェンダーギャップの解消ではないだろう。「フェミニズムとは? 意味や歴史、事例、課題をわかりやすく解説」(朝日新聞SDGs ACTION!)は一読をおすすめ。


6月9日 中体連 全中大会 9競技除外

 日本中学校体育連盟(日本中体連)は8日、全国中学校体育大会(全中)の規模縮小のため、水泳や体操などを2027年度から実施しないと発表した。日本中体連の区分に沿えば実施19競技のうち9競技を取りやめる、抜本的な改革となる。外れる競技の統括団体は新たな全国大会創設や既存の大会への一本化など、対応を進める見通し。公立中学校の運動部活動の「地域移行」も含め、子どもたちがスポーツに親しむ環境は大きく変わりそうだ。

 少子化への対応や教員の負担軽減の観点から、在り方の見直しを進めていた。他に実施されなくなるのはハンドボール、新体操、ソフトボール男子、相撲、スキー、スケート、アイスホッケー。開催地との契約がありスキーは29年度まで実施する。継続する競技も3日間以内での開催を目標とし、参加者数、開催経費とも現在から30%減らすことを目指す。加盟校数に対して活動実態のある部の設置割合を示す「部活動設置率」を競技ごとに調査。原則として20%未満の競技を除外対象とした。民間クラブでの活動が多い水泳や体操は設置率が低かった。駅伝を含む陸上、バスケットボール、サッカー、軟式野球、バレーボール、ソフトテニス、卓球、バドミントン、ソフトボール女子、柔道、剣道は継続する。

 日本中体連の調査によると、13〜15歳の運動部加盟人数は2009年度の約233万人から、18年度には約200万人に減った。スポーツ庁は48年度には約148万人まで減少すると推計。各地で廃部や縮小が進み、これまでのような活動を維持するのは難しいとみられている。中体連は22年に今後の全中の在り方について生徒、保護者、教員の約2万5千人を対象にアンケートを実施。その結果「部活動設置率が6〜8割程度ある競技において大会を行うことが好ましい」との結論に至り、この水準から遠い2割未満の競技は削減する方向で動き出した。


「切ない、悔しい」落胆

 全国中学校体育大会(全中)の大幅な規模縮小が発表された8日、除外される競技からは戸惑いの声が上がった。競技の普及や中学生年代の強化への影響が懸念され、各団体は代替大会の開催などを模索する。

 元中学横綱で大相撲の東関親方(元小結高見盛)は「切ないし、悔しい」と落胆。競技人口の減少につながる恐れもあり「全国大会があるからこそ、切磋琢磨して競争力が上がっていく部分もあった。どうなってしまうのか」と嘆いた。

 日本水泳連盟は競技存続を求め、実施方式の見直しを検討、協議している段階だったという。金子日出澄専務理事は「急転直下の発表でちょっとびっくりした」と驚いた様子。「中学生の大会を検討していかなければならない」と述べた。京都水泳協会の小西太二常任理事(中体連委員長)も「選手の気持ちを考えるとショックで残念。昨年からクラブチームの選手にも門戸が広がり、良い大会になってきたと思っていた矢先だった」と話す。


スポーツの在り方が変わるきっかけになればと思う。「切ない、悔しい」という関係者の心境もわからないではないが、これまでの競技スポーツがやはり「勝利至上主義」となっていることへの反省が必要だと思う。そうした立場からは、英語の早期学習が如何に愚策かも見えてくるのではないか。


6月8日 西脇知事 府内学校に万博意向調査

 京都府の西脇隆俊知事は7日の定例記者会見で、2025年大阪・関西万博の見学を希望するかどうか、府内の小中高校などに意向調査する考えを明らかにした。万博への参加は強制ではなく、「学校側が判断すべき」とした。

 府は小中高校、特別支援学校生が学校行事として参加する場合、入場料を全額支援する方針で、関係費用3億3400万円を確保する。しかし、万博への子ども無料招待を巡っては、交通費の保護者負担などの課題があり、大阪府内では学校単位での参加を見送る自治体が出ている。大阪府が実施した意向調査では選択肢に「希望しない」がなく「事実上、参加を強制するものだ」との批判も出ていた。

 西脇知事は、夏以降にパビリオンや建物の展示内容がまとまってきた段階で意向調査を行う考えを示した。府内の子どもが全員参加すべきかの質問に対し「強制すべきことではない。予算上では全員行っても大丈夫な形にしているが、学校側の需要もあるので最終的には学校側にきちんと判断していただく」と強調した。バス不足の課題については「府に協力依頼があれば、当然協力する。交通問題は万博期間中は対応する必要があり、コーディネートできるところがあれば協力する」とした。

 また、北陸新幹線敦賀−新大阪駅間の延伸ルートに関し、米原駅で東海道新幹線に接続する米原ルートへの変更が一部で挙がっていることに対し(われわれとしては、今のルート(小浜ルート)しか手元にはない。それを前提に対応していく」と述べるにとどめた。


万博参加の意向確認は当然だが、参加を前提とした意向確認になる可能性がある。北部はもちろん南部でもわざわざ交通費を負担してまで見学する必要があるのか疑問。


6月6日 厚労省 出生率 ついに底割れ

 2023年の合計特殊出生率が過去最低の1・20に落ち込んだ。第2次ベビーブーム世代以降の30代を中心に、高齢になる前の「駆け込み出産」などで持ちこたえてきたが、ついに「底割れ」した形だ。岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を打ち出してから約1年半。回復の兆しが見えない中、社会全体で子育て支援の機運を高められるかどうかが鍵になる。

 人口約9400人の鹿児島県徳之島町。厚生労働省が今年4月に公表した18〜22年の市区町村別出生率は全国トップの2・25で、町役場には「子宝のまち」の垂れ幕が飾られている。

 「スーパーに行くと、知らない大でも声をかけてくれて、赤ちゃんを抱っこしてくれる」。4人の子どもを育てる看護師の白山さくらさん(30)は弾んだ声で話す。

 2人目の妊娠時は千葉県に住んでいた。自宅近くの認可保育所に落選し、職場に近い託児所まで第1子をベビーカーに乗せて満員電車に。親や友人も頼れず「もう限界」と、生まれ育った離島に夫と戻ることを決めた。「もともと子どもを4人欲しかった」。願いがかない、11月に育児休業から職場復帰する。

 町には白山さんのような多子世帯が珍しくない。20年度に始まった「祝い金」(子どもの数に応じ10万〜50万円)は高岡秀規町長(64)が役場で「町が支えます」と手渡しする。今後はUターンにも力を入れ、住まいや仕事確保を通じ、子育てを後押しする考えだ。

 ただ徳之島町のようなケースはまれだ。地方から若い世代が流入する都市部では出生率が低く、東京都は0・99と「1」を下回った。結婚、出産観の変化、子育て環境の厳しさなどが影響しているとみられる。

 日本の出生率は1989年に出生数が少ない「ひのえうま」(66年)を下回り「1・57ショック」と呼ばれた。政府は少子化対策に本腰を入れ、94年に保育所整備を盛り込んだ「エンゼルプラン」を策定。安倍政権では、若い世代が希望通りの数の子どもを持てる「希望出生率1・8」を目標に掲げ、幼児教育・保育の無償化を実施した。

 一方、出生率は2005年に1・26まで低下。その後多少持ち直したものの、新型コロナウイルス禍での産み控えや景気低迷もあり、下落に歯止めがかかっていない。

 政府関係者は過去の取り組みを「不戦敗の歴史」と振り返る。第2次ベビーブーム世代の出産による「第3次ブーム」が訪れるとの甘い見通しから、待機児童解消など対症療法にとどまった。「多様な施策で一気に遅れを取り戻さないといけない」と焦りを見せる。

 子ども政策と対照的なのは00年に始まった介護保険制度だ。それまで主に女性が担っていた介護を社会全体で支えるため、保険料などを財源にサービスを実施している。

 岸田首相は昨年の年頭記者会見で「異次元の少子化対策」を表明。児童手当や育休給付の拡充などを柱とし、財源となる支援金制度の創設か盛り込んだ少子化対策関連法が今月5日に成立した。

 しかし支援金を巡っては世論の反発も。政府関係者は誰もが高齢者になる介護とは違い、子どもがいない人の理解も必要な『高度な支え合い』」と強調する。

 子育て政策に詳しい柴田悠京大大学院教授(社会学)は、今後も出生率低下が続くと予想。公的な保育サービスやNPOによる取り組みを充実させるため「国が財政面で後押しすべきだ」と指摘する。


低い出生率 世界的傾向

 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は日本に限らず、世界的に低下傾向にある。韓国やシンガポールでは1を割り込み、「超少子化」による国家衰退への危機感は強い。米ワシントン大などの国際チームは今世紀末に204力国・地域の97%で長期的に人口を維持できる水準とされる2・1前後を下回ると分析した。

 韓国は2023年の出生率が過去最低の0・72となり、8年連続で前年割れした。住宅価格高騰や雇用不安に伴う晩婚化、過熱する受験競争を背景とした教育費負担が要因とされる。

 シンガポールは23年の出生率が0・97となり、独立した1965年以来初めて1を下回った。

 一方、ワシントン大などの国際チームによると、世界の出生数に占める地域ごとの割合は、サハラ以南のアフリカが21年の29%から今世紀末には54%に増える見通し。現状では政治的に不安定で医療体制も不十分な低所得国が、将来的に世界の大半の子どもを抱える構図になると予想される。(共同)


「1・57ショック」が1989年、それからすでに35年。この間少子化に歯止めはかからなかった。政策的にちまちました給付だけでは解決しないことは以前から指摘されていたが、ほとんど無策状態だったといえる。先進国での少子化傾向も日本と同様。労働力不足を移民で補うか、都市化を是正して地域コミュニティを再生させるかしかないだろう。グローバリゼーションによる新自由主義経済が根本的な原因であるのは明白なのだが。


6月6日 京の外国人 強まる排除に不安

 外国人の収容・送還ルールを見直した改正入管難民法が10日、施行される。現在、国会で審議中の技能実習に代わる外国人受け入れの新制度「育成就労」を創設する関連法案では、永住許可の取り消し規定が盛り込まれるなど、在留外国人への風当たりは強まりつつある。「安定した生活が脅かされるのでは」。京都で暮らす外国人らも不安を募らせている。

 同法は、入管施設の長期収容解消に向け、難民申請中の強制送還停止を原則2回に制限。本国で迫害を受ける恐れがある人も送還可能とした。難民申請が認められず母国へ送り返された人を目の当たりにしてきた関西在住のパキスタン人男性は、外国人排除の風潮が広まらないかと懸念する。

 男性は来日後、ある罪に問われ、在留資格を失った。国外退去命令を受けたが、本国では宗教上の理由から迫害される恐れがあるとして命令を拒否。入管施設に4年8ヵ月間、収容された。6畳間に6人が押し込められ、終わりの見えない生活で精神的に不安定になったという。

 半年間、ハンガーストライキをして体調を崩し、一時的に収容を解かれた。ただ、仮放免中の労働は禁じられ、許可なく府県をまたぐ移動もできない。保険に加入できず、医療費が生活を圧迫する。仮放免が延長される保障はなく「再び収容されれば、自分も強制送還になるかもしれない。法律は人を守るためにあるのに、日本は罰を与えるばかりの社会になっている」と顔を曇らせた。

      ◇

 「永住許可まで不安定になるのか。寝耳に水だった」。京都市の20代の韓国人女性は語気を強める。

 女性は、日本人と結婚。子どもが生まれた後、永住権を手にした。所得や納税履歴を証明するなど審査は厳格で、認定された時は言葉では言い表せない安心感があったという。

 新制度「育成就労」は、外国人材の確保・育成を目的に日本で長く働いてもらうことが狙い。そのため、政府は将来的に永住者が増えるとし、納税など公的義務を故意に怠った場合に永住許可を取り消す規定も新設する。

 ただ、税金の滞納などに対してはすでに法律で罰則があり、過剰な制裁との声もある。女性は「労働力としては外国人を受け入れるのにコミュニティーの一員としては認めないのか。生きる権利を簡単に制限するのは疑問だ」と話す。


外国人を労働力としてしか考えない入管制度の在り方は幾度も批判の対象となってきたが、人権的アプローチによる改正が行われ来なかった。少子化と関連させるなら早急に解決すべき問題だが、保守派の国家や家族の在り方が大きな抵抗になっている。


6月5日 府・市教委 教員 志願倍率が低下

 京都府と京都市の両教育委員会は、2025年度の教員採用試験の志願状況を発表した。全職種の平均倍率は府教委が前年度比0・6ポイント減の4・1倍、市教委は1・4ポイント減の4・5倍となった。積極採用方針による募集枠の拡大の影響があるものの、志願者は両教委で計144人減っており、教員を目指す学生らの減少 傾向に歯止めがかかっていない。

 府教委は、前年度比30人増の400人程度の募集に対して志願者は126人減の1622人。市教委は70人増の305人程度に対して、志願者は18人減の1367人だった。

 職種別では、府教委は、小学校が444人(前年度497人)で前年庫比0・6ポイント減の3・0倍、中学校は416人(同448人)で同1・2ポイント減の5・2倍、高校は503人(同521人)で0・4ポイント減の4・6倍、特別支援学校が115人(同131人)で0・3ポイント減の2・3倍だった。栄養教諭は34人(同31人)で、養護教諭は102人と前年度と同数だった。

 市教委は、小学校は473人(前年度503人)が志望した。採用枠を60人増の150人と大きく拡大したため、倍率は2・4ポイント減の3・2倍となった。中学校は15人増の474人だったが、小学校と同様に採用枠を拡大したため、倍率はO・9ポイント減の6・8倍となった。高校は145人で9・7倍、総合支援学校は142人で2・8倍だった。

 1次の筆記試験などの受験が可能になった大学3年生らは、府教委で151人、市教委で200人が応募した。両教委ともに15日に筆記試験を実施する。

 府教委教職員人事課は「教員の働き方が過酷だとのイメージを持つ学生もおり、新卒者が他職種に流れている。志願倍率の緩和で、何度も受験する層が減ったことも志願者減の要因にある」と分析した上で、「全国的に教員を目指す学生が減る中でも、一定の志願者を集められている。試験を通じて優秀な人材を確保したい」としている。



6月5日 子育て支援金法 「負担なし」納得感なし

 政府が目玉政策に掲げた少子化対策関連法が今国会で成立する見通しとなった。公的医療保険料に上乗せして徴収する「支援金」制度を創設し、最大のネックだった恒久財源の確保に道筋を付けた。しかし岸田文雄首相は「実質負担なし」との不十分な説明に固執。国民の納得は得られず、不信感は残ったままだ。

 「若い世代が子どもをもち、安心して子育てができるよう支援を推進していく」。4日の参院内閣萎員会。加藤鮎子こども政策担当相は強調した。

 政府は「若年人口が急激に減少する2030年までが、少子化傾向を反転させるラストチャンス」として、昨年12月に「こども未来戦略」を策定。児童手当や育児休業給付の拡充、親の就労にかかわらず保育を利用できる「こども誰でも通園制度」などを盛り込んだ。

 これまでにない網羅的な内容で、子育て世帯などは好意的に受け止める。ただ希望しても結婚できない人たちへの支援は手薄で、少子化の克服につながるかどうかは不透明だ。

 都内の私立大に通う女性(22)は「児童手当が増えたからといって、結婚や出産をしようとは思わない」ときっぱり。「家事や育児負担が女性に偏っており、仕事との両立が不安」と打ち明けた。私立大に通う別の女性(21)も「給付が増えるのは大事だが、物価や学費が上がる中で、子育てしやすい社会になっているのか疑問だ。自分は家庭を持ちたいと思うが、周りには『ずっと1人でもいい』という人が多い」と話した。

 政府は、今回の関連法を 「子育て先進国」への足掛かりにしたい考えだ。こども未来戦略の重点政策に必要な年3兆6千億円を確保できれば、公的支援の手厚さで、経済協力開発機構(OECD)トップ水準のスウーエーデンに並ぶという。首相は消費税の増税を封印。財源確保のため社会保障費の歳出削減、既存の予算活用とともに「社会全体で子育てを支える」として、幅広い世代から徴収する支援金制度の創設を打ち出した。

 しかし、国会審議で支援金について「実質的な追加負担はない」との言い回しに終始。「歳出削減で社会保険料の軽減効果を生み出せば、支援金の負担が相殺される」との理屈だが、共同通信の5月の世論調査では「納得できない」との回答が82・5%に上った。

 1人当たりの負担額も明らかにせず、今年2月に初めて「月500円弱」と説明。その後、野党の求めに応じ、各医療保険の収入別で50〜1650円との試算を示した。ある野党議員は「一人一人で見れば負担増、となるケースが出てくる。国民をあざむくような説明だ」と批判した。

 国民の不信感を払拭し、少子化の危機を乗ぴ越えられるか。政府関係者は「この国を本当に変えられるか、瀬戸際に立っている」と対策実行への決意をにじませる。

 しかし課題も多い。支援金の使途は法律で児童手当や育休給付の拡充、こども誰でも通園制度などに限定されており、新たな政策を実施するには、支援金を負担する企業も含めた合意が必要だ。

 歳出削減の検討項目には、医療費の窓口負担が3割となる高齢者の範囲拡大や、介護サービス利用料の自己負担2割の対象者を広げるといった難題が並び、「捕らぬたぬきの皮算用」(野党議員)との批判も出ている。


末冨芳日本大教授(教育行政学)の話財源で一定成果

 長年の懸案だった、子ども施策の新たな財源を確保でき、一定の成果はあった。児童手当の所得制限の撤廃や多子世帯の大学無償化など、家庭環境に関係なく子どもを中心に捉えて等しく支援しようとする流れが出てきたことも評価できる。ただ、新たな施策の予算規模や内容は不十分。少子化傾向を抜本的に変えるほどではない。非婚化対策にも課題を残した。若い世代の雇用を安定させ、賃上げを進め、安心して子育てできる環境を整えなければならない。


西沢和彦日本総合研究所理事の話国民分断生じる

 法の目的が少子化対策なのか子育て支援なのかが不明確で、全く評価できない。児童手当の所得制限撤廃など給付ばかり前面に出ており、与党が選挙対策に現金をぱらまきたいだけだ。新施策の財源となる「子ども・子育て支援金」は、公的医療保険に上乗せする形での徴収に問題があり、撤回すべきだ。高齢者や事情があって子を産めない世帯からも徴収する仕組みであり、国民に分断が生じる。本来は国民の理解を得た上で税で対応すべきだ。政治の怠慢と言える。


子どもの支援や子育ての支援は重要であることは疑いがない。しかし、予算の配分において国民の納得が得られているかどうは疑問だ。「社会全体で子育てを支える」という美辞麗句だけでは問題の解決にはならない。この国がお金よりも人を大切にする方向に向かわない限り国民の合意獲得は望めない。現に政権の支持率が低迷しているのはその表れだろう。戦前の社会でも「社会全体で…」とはよく使われたタームだ。そのことで政府は責任を逃れようとしてきた。


6月5日 【らせんの風景】 ゆとり教育は失敗か

 暗記中心の詰め込み教育への反省から授釜丙容や授業時間を減らし、社会の変化に対応する「生きる力」を育もうとした「ゆとり教育」。2002年から本格的に始まったが、学力低下を招いたとして批判を浴び、その後は「脱ゆとり」が推進された。だが、ゆとり教育は本当に「失敗」だったのか。

        大絶賛

 「みんな大絶賛でしたよ」。かつて文部科学省でゆとぴ教育の旗振り役を担った寺脇研は、こう振り返る。高度経済成長期に進められた詰め込み教育は1970年代からその弊害が目立つようになり、政財界からも教育の見直しを求める声が上がっていた。

 「落ちこぼれ」や校内暴力が社会問題となる中、旧文部省は「ゆとりある充実した学校生活」の実現を掲げ、学習量を減らして対応しようとしたが「改善しなかっ た」。首相直属で設置された臨時教育審議会は87年、学歴偏重から個性重視の教育への改革を提言。国際化や情報化への対応が課題だと指摘した。その後、教育現場で 思考力や表現力に基づく「新学力観」が採り入れられるなど、段階的に方針転換が図られた。

 「バブルが崩壊し今までのようにはいかないとの危機感があった。経済団体からも、子どもに『ゆとり』を与えるよう求める提言が出ました」

       批判が過熱

 学習内容の3割削減に週5日制の完全実施、各学校が創意工夫して実施する「総合的な学習の時間」の創設―。これまでの画一的な教育を改めようとしたゆとり教育だが、いざ方針が打ち出されると今度は多くの批判にさらされることに。学習塾の宣伝文句が発端になった「円周率を3で教える」との誤解は世間をにぎわせ、メディアは手のひらを返したように学力低下に結びつける報道を始めた。

 2004年、経済協力開発機構(OECD)が各国の15歳を対象に実施した学習到達度調査(PISA)で日本の順位が下がったことが分かると、批判は過熱。ただPISAは思考力を問うために00年に新しく始まったテスト。これまでの日本の教育で対応できないのは当然だった」と寺脇は語る。その後、順位に変動はあったもの の最新の22年調査ではトップクラスになっている。

 早稲田大教授(教育社会学)の岡本智周は「批判は旧来の学力観に基づいたものだった」と話す。「それとは違う評価軸がある社会を目指してゆとり教育が始まったはずなのに、はしごをはずされてしまったんです」

       なぜ学ぶか

 11年から実施された学習指導要領は学習量の増加が盛り込まれ、「脱ゆとぴ教育」と称された。ゆとり教育を経験した1987〜2004年生まれは「ゆとり世代」とされ、「競争心がない」「飲み会に参加しない」とネガティブな印象で語られるようになった。

 だが寺脇は「ゆとり教育が目指したものが今になって定着してきた」とみる。週5日制や総合学習は継続され、最新の学習指導要領でも「主体的な学び」や「生きる力」の重要性が掲げられている。「若い人の活躍が目立つようになった。米大リーグの大谷翔平もゆとり世代。思考法にこれまでにない新しさを感じる」

 人工知能(AI)など技術が著しく進化し、多様な価値観が認められつつある時代。岡本は言う。「なぜ学ぶか、それをどう生かすのかを考える必要性が高まっている。ゆとり世代が学んできたことは、実は強みになっているんです」(敬称略)


「ゆとり教育」が学力低下批判で挫折したことは残念なことだった。当時も学力一辺倒の「つめこみ教育」は現場を疲弊させたことから、現場的には歓迎されたように思う。しかし、臨教審での方向が明らかに新自由主義的であったことは「格差」拡大の嚆矢であったことは忘れてはならないだろう。その中でうまれた「ゆとり教育」なのだから。現在、再評価されつつあると寺脇さんは認識するようだが、「格差」は一層拡大する方向にある。


6月4日 大阪府教委 万博無料招待 希望校7割超

 2025年大阪・関西万博への子どもの無料招待を巡り、大阪府教育委員会は3日、意向調査を実施した府内の学校中、7割超が学校単位での来場を希望したとする最終結果を発表した。回答の選択肢に「不参加」がないため「事実上の強制だ」との批判が出ている。吉村洋文府知事は記者団に、調査を締め切った後でも変更は可能だとして理解を求めた。

 府は学校行事での来場を前提に、府内の小中高校と特別支援学校に通う約88万人を1回ずつ無料招待する。他に府内の4〜5歳と、府外に通う府在住の児童、生徒も対象。

 府教委が調査した府内約1900校のうち約1740校が回答した。来場については約1390校が「希望」、約350校が未定、検討中」と答えた。残りの未回答校には徊別に聞き取る。来場日時や交通手段を秋ごろまでに通知する予定だ。来場希望の項目は回答の選択肢が二つで「不参加」がなかった。山本景交野市長は「相当な勇気と覚悟がなければ希望せざるを得ず、まるで『踏み絵だ』と指摘。市立全校が学校単位での参加見送りを決めた。


児童生徒の万博参加は大阪だけの問題ではない。近隣府県も予算化しているところも多いが、現状では様子見といったところ。日本維新の会の教育政策の実像がそこに在りはしないのだろうか。同じく教育無償化を考える会の教育政策も、政治が教育を利用する形になっている。かつて保守系政党によって学校の政治的中立を武器に教育介入がったことは記憶しておいてよい。


6月2日 来春大卒者 前倒しで既に内定率78%

 来春卒業を予定する大学生らの就職活動で採用面接や筆記試験が1日、解禁された。政府が要請する日程ルールで罰則が設けられていないこともあり、実際は前倒しで内定が出ている。リクルートの調査では内定率(5月15日時点)は78・1%で同時期の過去最高を記録。ルールの形骸化が進んでいる。人手不足に伴う学生優位の「売り手市場」傾向が影響しており、学生の大手企業志向も高まっている。

 三井住友海上火災保険は1日、1次面接をウェブ形式で実施。面接を受けた中央大の女子学生(22)は取材に対し「結婚や出産といった将来を考えると、フレックスタイムなど制度もしっかりしていて、魅力を感じました」と話した。採用担当者は「1次面接に参加する学生数は前年水準を維持できた。将来のキャリアを決め切れず臨む学生も、まだ多いようだ」と語った。

 一方で、別の大手企業からは「2月から選考を実施している」「最終面接を行う段階」との声が相次いだ。リクルートによると、5月15日時点の内定率は昨年比で6・Oポイント高い。求人倍率は1・75倍になる見通しで3年続けて上昇している。

 今回から、インターンシップ(就業体験)で得た学生の情報を企業が選考に活用できるようになった。参加者を対象にした早期選考を行う企業も多く前倒しに拍車がかかる一因ともなっている。

 就職情報会社マイナビが来春卒業予定者らを対象にした調査(有効回答数約3万9千)で、就職先として「絶対に大手企業がよい」が9・8%。「やりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」が43・9%となった。計53・7%は昨年から4・8ポイント増だった。

 内閣宣房の担当者は、選考早期化に関し「学生が十分な学習時間を取れなくなる恐れがある。ルールを守ってもらえるよう今後も企業に働きかけていく」としている。


仕事・家族・教育の3つの社会領域の間に成り立っている「戦後日本型循環モデル」(本田由紀)はこれまで日本の成長を支えてきたのだが、「失われた30年」はそれが機能しないことを露にしている。にも拘わらず日本は政策転換を行わず依然として「成長」を指向している。中小の大学が再編される中で一層大手大学から大手企業への指向が強まるが、それは学生にとって未来を展望することになるのだろうか。


 
6月1日 中教審 大学の統合・再編支援強化

 中教審の特別部会は31日、急速な少子化を踏まえた大学など高等教育機関の在り方に関する答申の中間まとめ素案を提示した。社会人や留学生の受け入れ拡大とともに、大学の統合や再編の支援を強化し、適正な規模を目指すことが柱。授業料を含めた教育費負担の在り方も年度内の答申に向けた検討課題とした。

 文部科学省の推計によると、2023年に63万人いた大学入学者は40年には約51万人となり、現在の定員の8割程度しか埋められなくなる。

 素案は「定員充足率の悪化が見込まれ、教育研究の『質』を維持できなくなる恐れがある」と指摘。留学生や社会人など、多様な学生の受け入れ拡大が必要だとした。

 一方で少子化の進行により、こうした対策を進めても定員は埋められないと説明。撤退を決めた他大学の学生を受け入れた大学への優遇措置や、早期の経営判断を促す指導の強化、学生募集を停止した学部への継続支援などを検討するとした。

 財政状況が厳しい大学などが増える中、人件費や研究費を確保していくため、教育費負担の在ぴ方にも言及。家計負担とのバランスも踏まえつつ、授業料や公費支援について議論すべきだとした。


【維新・教育無償化の会】「就学前から大学まで無償に」

 日本維新の会と教育無償化を実現する会が近く共同提出する教育無償化推進法案の内容が31日、判明した。基本理念で経済的な状況に関わらず、全世代が能力に応じた教育を受ける機会の確保を掲げ、就学前から大学教育までを無償化の対象としている。

 法案では教育格差の是正や少子化問題への対応、労働生産性の向上や国際競争力の強化が国の緊要な課題だと指摘。「教育を通じてこれらの課題に対処し、国の未来を切ぴ開く」としている。全世代の教育無償化に関する施策推進を国の責務とし、必要な財政措置を求めている。

 教育無償化のほか、幼稚園や保育所などの制度の統合推進、発達障害の早期発見、教員の働き方改革、職業教育と学術研究との役割の明確化など各世代で質の向上に向けた取り組みも盛り込んだ。政府には教育無償化の施策推進ヘエ程表の策定を求めている。社会人が技能や知識を学び直す「リカレント教育」などの負担軽減は検討事項としている。


「少子化と大学」は一つの大きなテーマである。どこをどういじるのかは論者によって様々なのが現状。ただ、学歴志向が強い日本社会で、本来の教育の意味がどこまで認識されているのかは分からない。高学歴だけを求める家庭は、どのような大学になっても、どのような制度保障をしても私的な資本を子どもに投下することは間違いないし、それによる教育格差は一層深まることが考えられる。