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5月30日 西田氏発言 沖縄県議団「満身の怒り」

 沖縄県議会の代表団は29日、自民党本部で森山裕幹事長と面会し、沖縄戦の慰霊碑「ひめゆりの塔」の展示説明を「歴史の書き換え」とした西田昌司参院議員の発言について「満身の怒りをもって抗議する」との決議文を手渡した。森山氏は一連の発言に関し謝罪し「決して県民の苦労を軽んじることはない。党として しっかぴ教育を頑張る」と応じた。

 県議団は続いて国会内の西田氏の事務所を訪れたが、日程の都合を理由に西田氏本人とは面会できなかった。県議団の山内末子団長は「西田氏の謝罪を聞く のが上京の目的だった。反省もなく、真摯に受け止めたくないのではないか」と不快感を示した。

 決議文は、西田氏の発言を「沖縄戦の実相を認識せず、歴史を修正しようとするものだ」と指摘。沖縄戦体験者の証言をゆがめ、否定する発言だったと認めた上で謝罪、撤回するよう西田氏に要求した。自民に対しては、西田氏への厳格な処分と沖縄戦への認識を示すよう要請。再発防止に向けた党内教育体制の再構築も促 した。


西田氏は沖縄県議団の上京を知らなかったわけではないだろうに。あえて謝罪を公的に表明する機会を失ったのは政治的なダメージではないか。西田氏は自身の歴史認識を表明すべきだ、北陸新幹線延伸問題の前に。


5月29日 高松地裁 教諭残業 県に賠償命令

 労働基準法に反する時間外労働(残業)をさせられたとして、元高松市立中教諭の男性(67)が香川県に損害賠償を求めた訴訟の判決で、高松地裁が3月、計5万円の支払いを命じていたことが28日、分かった。校長が合宿や準備の会議で残業を命じたのに、別の日の勤務時間を減らさなかった上、合宿中に休憩時間を与えなかったと認定。労働時間を定めた労基法32条は教員にも適用されると指摘し、労基法に基づく義務を果たさなかったと判断した。

 権利侵害により肉体的・精神的苦痛を与えたとして賠償を命じた。

 教員の働き方に詳しい大阪大の高橋哲准教授は「公立校教員の残業について労基法違反での賠償責任を認めた判決は初めて」としている。公立校教員は教員給与特別措置法(給特法)に基づき、残業代を支給しない代わりに月給4%相当の「教職調整額」が支給されている。長時間労働の温床と指摘されており、額を引 き上げる改正案が国会で審議されている。

 政府内では労基法に基づき残業代を支給する制度への転換案もあったが「指揮命令に基づく業務と自発的活動の切り分けが難しい」と見送られた経緯がある。

 訴訟で県側は、教員は命じられた業務と自主的な業務が混然一体となっており、校長が労働時間を的確に把握するのは不可能だと主張した。3月25日の判決 で田中一隆裁判長は、校長の指揮命令に従って業務に従事する合宿の引率などは時間の管理が容易で、賠償責任を限定的に捉える必要はないとして退けた。

 校長には労基法と県の条例に基づき、週平均勤務時間が38時間45分を超えないよう別の週に勤務時間を割り振る義務があったのに、計画や指導をせず教員に一任したと指摘。「規定を超過して長時間労働を命じられない権利は、教員にとって法律上保護された重要な利益だ」と述べた。

 判決によると、男性は2019年、合宿と準備会議に参加し、前後の時期の週平均勤務時間は39時間21分〜43時間40分だった。労基法は1日の勤務が8時間を超える場合、少なくとも1時間の休憩を与えると規定。男性は2泊3日の合宿中、16時間超の勤務を命じられたのに休憩がなかった。双方が控訴。男性は弁護士に代理人を依頼していない。


教員の超過労働を労働基準法32条違反とした判決の意味は大きい。現在国会では「給特法改正案」が議論されているが、議論の焦点は労基法36、37条の適用除外を「教職調整額」の積み上げで回避しようとするもので、根本的な解決の方策ではない。しかし、今回の裁判所判断が32条を根拠にしたものであることの意味は大きい。このことが国会での議論に影響を与えるのであればさらに意義は大きいのだが。ただ、判断の限界もあるような気がする。それは、「自発的活動の切り分けが難しい」という教員の職務のとらえ方であり、文科省や教育委員会はこの見解を維持することが考えれる。今後36協定なしの超過勤務を命じた場合に、同法119条で刑事罰として6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性がありるとされることによって、現場を預かる管理職がもっとも委縮する可能性がある。「給特法」の廃止は必須である。
ちなみに労働基準法32条には「(労働時間) 第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させては ならない。 2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働 させてはならない。」との規定がある。


5月28日 【視標】 PFAS汚染減に根本対策を

京都府立大教授 原田 浩二

 調理器具のフツ素加工や消火剤、半導体加工などに広く使われた有機フツ素化合物(PFAS)による地下水などの汚染が全国的に深刻化している。海外に比べて日本政府の対応は遅いと指摘されてきたが、2026年から、これまでの暫定目標値が水道法上の基準値とされ、事業者に定期的な調査が義務づけられることになった。

 近年、米国やカナダ、欧州諸国でPFAS対策が急速に進み、基準値を厳しくする動きが出ている。

 各地で汚染が見つかる一方で、動物実験や疫学調査によって発がんや免疫機能の低下、脂質代謝異常など、微量でもさまざまな健康リスクがあることを示すデータが蓄積されてきたからだ。多くの国の基準は水1リットル当たりナノグラム(1ナノは10億分の1)レベルとかなり厳しい。

 PFASには多くの種類がある。有機塩素系などこれまでの有害化学物質に比べても環境中ではるかに分解されにくく、しかも水に溶けやすい。人体への蓄積性もあるという極めて面倒な汚染物質であるとの認識が必要だ。

 沖縄の米軍基地や自衛隊基地周辺での高濃度汚染が問題になり、フツ素樹脂関連の工場などの汚染源が知られているが、分かっていない部分も多い。土壌以外にも下水汚泥を利用した肥料、プラスチックなどPFASを含むごみを埋め立てた最終処分場の浸出水も汚染源として疑われている。

 汚染された土壌を放置したり、汚染源の解明が不十分だったりすれば、水道水や地下水の汚染はいつまでも続くし、汚染がさらに広がることになる。

 基準超過が続けば水道事業者は水源を変えたり、活性炭でPFASを除去したりという対策を求められるが、事業者の財政負担は大きなものとなり、水道料金に跳ね返る懸念もある。深刻な汚染の源を突き止め、汚染者負担の原則も徹底して根本的な対策を取ることが求められる。対策を地方自治体任せ、水道 事業者任せにしてはいけない。

 日本の水質基準は1リットル当たり50ナノグラムだ。これは食品安全委員会のワーキンググループが示した一部のPFASの耐容1日摂取量(TDI)が基になっている。

 だが、TDIの検討過程で健康影響を示唆する重要な論文が検討対象から外される一方で、「重要性が低い」とされた論文が後から加えられるなど、説明が不十分で不透明な形で進められていたことが市民団体から指摘されている。

 もし「水質基準を厳しくしなければならなくなる」といったリスク管理への配慮が科学的なリスク評価に影響を与えたとしたら問題だ。安全委は選定の経緯の十分な説明をする責任がある。

 今後は魚介類などの食品、食品包装容器からの移行など、水道水以外の摂取経路やリスクの評価も課題になる。最新の研究成果に目を配り、遅滞なく基準値を見直すことが重要だ。


かつて宇沢弘文は『社会的共通資本』(岩波新書 2000)で、自然資本、社会インフラ、制度資本の3つを誰にとっても重要な要素として挙げ独占的(私的)な利用を制限する必要を訴えた。水もその一つだ。その先駆けとなった『自動車の社会的費用』(岩波新書 1974)は、改めて読み直してみる価値ある1冊だろう。経済が環境問題を「外部」へと押しやり利益の追求にはしることへの警告としても読める。


5月27日 関西の沖縄県人会 西田氏に抗議文

 京都沖縄県人会など関西の七つの沖縄県人会は26日、「ひめゆりの塔」の展示説明を巡って「歴史の書き換え」と発言した自民党の西田昌司参院議員の事務所に合同で抗議文を送った。「意図的に沖縄戦の真実から目をそらし、ゆがめるもので、戦没者や戦争体験者を冒涜し、県民の尊厳を踏みにじる暴言」としている。

 抗議文では、分断と対立をあおるのみでは、沖縄や日本の将来に大きな禍根を残しかねないと指摘。「今一度沖縄戦の歴史を学び直し、戦争を忌避する沖縄県民や国民の声を尊重し、外交や経済を含む多面的な安全保障に積極的な役割を果たしてほしい」とした。

 京都沖縄県人会の上原任会長(75)は、同じ京都選出の自民党議員には沖縄と対話を重ねた故野中広務氏がいたとし、「西田議員も予断や偏見を持たずに沖縄戦に改めて向き合ってほしい」と話した。


記事と前後するが、28日付の参院選候補予定者へのインタビュー記事「知りたい!あなたの素の姿」には次のようなやり取りがあった。
 村松:これまでに直面した最も困難な経験は。それをどう乗り越えたか。
 西田:それが今だ。今、私の沖縄での(ひめゆりの塔を巡る)発言で、いろんな形で「西田バッシング」の報道がされている。正しいと思うことを言っていても、TPOを考えないと誤解を与えることもあり、そこはまずかった。(主張したかったのは)日本軍が沖縄に侵攻し、それに米国が対抗したなどという話はあり得ないということだ。事実だとは到底認められない。
 このインタビューから西田氏は、発言がTPOを考えなかったがゆえに「西田バッシング」にあっていると考えていることがわかる。しかし、西田氏の主張したかった「事実だとは到底認められない」というのはなにを指して、何を意味するのかは全く不明。西田氏は自身の歴史観を表明し、事実に基づいて説明する責任がある。


5月27日 イスラエル軍 2カ月以内にガザ75%占領

【エルサレム共同】複数のイスラエルメディアは25日、イスラエル軍が2ヵ月以内にパレスチナ自治区ガザの75%を占領する計画だと伝えた。再開した地上侵攻の展開に合わせ、ガザ住民を北、中、南部の3区域に強制移住させて厳格管理する。計画通りに進めば、人口約220万人が25%ほどの地域での生活を強いられることになる。

 イスラム組織ハマスの支配体制を崩壊させ、イスラエルが求める停戦条件の受け入れを迫る狙いだが、国際社会の非難は必至。卜ランプ米大統領は25日、ニュージャージー州で記者団に「この状況をできるだけ早く止められるかどうか見極めたい」と述べ、早期の停戦実現に意欲を示した。

 報道によると、イスラエル軍はこれまでにガザ全城の40%ほどを制圧。一方、ガザ当局は25日、77%が既に制圧されたとの認識を示した。ガザ地区の面積は福岡市よりやや広い約365平方キロ。

 ガザヘの人道支援物資は十分な量が搬入されておらず、人道危機が深刻化。イスラエルと米国が策定した支援物資配給計画は近く始まるとみられる。ただ米メディアによると、同計画で新設された「ガザ人道財団」のトップは25日の声明で辞任を表明。「公平、中立の原則を厳守しながらこの計画を履行することは不可能だ」と訴えた。ガザ人道財団には、国連や欧州各国などがイスラエルによる恣意的な運用を懸念。ガザ封鎖を解除し、戦闘と関わりない人道支援組織を通じて配給するよう求めていた。

 パレスチナ通信によると、イスラエル軍は26日、ガザ北部で住民の避難所になっていた学校を攻撃し30人が死亡。北部の別の場所では住宅を攻撃し子どもや女性を含む19人が亡くなった。ガザ保健当局は、2023年10月の戦闘開始以降のガザ側死者が5万3977人になったと発表した。 


5月26日付「The Huffington Post」は元イスラエル首相オルメルト氏がハアレツ紙に寄稿した「イスラエル元首相がガザ攻撃を「戦争犯罪」と非難」との記事を掲載している。そこでは、反現イスラエル政府の動きを反ユダヤ主義だと強弁するネタニヤフ首相を厳しく批判している。そして「我々がガザで行っているのは絶滅戦争だ。無差別で、抑制されない、残虐な民間人殺害の犯罪だ」とイスラエル政府の行動をジェノサイドだと断じている。


5月25日 「家庭教師のトライ」運営会社のオンライン教材 「水俣病は遺伝する」誤情報配信

【独自】熊本日日新聞 2025年5月23日 19:04

 「家庭教師のトライ」を手がけるトライグループ(東京)が、登録会員にオンラインで提供する映像学習サービスで「水俣病は遺伝する」と誤った動画と文章を配信していたことが分かった。同社は水俣病患者団体からの指摘を受け、該当部分の一部を修正した。現在は閲覧できない状態になっている。

 誤りがあったのは、オンライン学習サービス「トライイット 中学歴史」の四大公害病に関する動画の講師の説明とサイト内の文章。水俣病について「この病気が恐ろしいのは、遺伝してしまうことです。妊婦さんが水俣病にかかり、生まれてきた赤ちゃんまでもが発症することがありました」としていた。動画の配信日は「2016年2月」とあり、視聴数は7万回を超えていた。 トライグループがインターネットで配信した誤った文章。水俣病について「この病気が恐ろしいのは、遺伝してしまうことです」と記載していた。この文章は現在閲覧できなくなっている

 水俣病は、水俣市のチッソ水俣工場の排水に含まれていたメチル水銀に汚染された魚介類を食べたことで発症する中毒。妊娠中の母親が摂取したメチル水銀が胎盤を通過して被害に遭った胎児性患者は存在するが、遺伝することはない。

 患者団体などでつくる水俣病被害者・支援者連絡会が環境省を通じて14日に同社に訂正を求め、16日に文章は削除された。熊本日日新聞は同社に経緯などを尋ねる質問状を送ったが、23日午後6時までに回答はなかった。

 トライグループのホームページによると、同社は全国で家庭教師の派遣や個人学習塾などを展開。24年9月時点のグループ全体の社員数は1546人で、同年3月時点の登録教師数は33万人。「トライイット」は15年7月に始まった。

 水俣病の説明文を巡っては、宇城市が全世帯に配布した25年度の市総合カレンダーに「水俣病などの感染症」と誤って記載したことが今年3月に判明し、市が謝罪している。(久保田尚之、伊藤恩希、宗亮輔)


削除された動画には「熊本県の水俣湾沿岸で発生した公害が水俣病です。原因は工場排水に混じった有機水銀です。有機水銀が海に流れ、魚の体内に入り、魚を食べた人間の体内に入りました。この病気の恐ろしいのは、遺伝してしまうことです。妊婦さんが水俣病にかかり、生まれてきた赤ちゃんまでもが発症することがありました」とあったことを熊本日日新聞は報道している。そこには「熊本県」「水俣湾」「水俣病」「有機水銀」の単語が強調されている。まるで、この4つの単語を覚えることが水俣病の学習であるかのように見える。


5月25日 トライグループ 水俣病教材誤表記 陳謝

 「家庭教師のトライ」の運営会社トライグループ(東京)がオンライン教材に「水俣病が恐ろしいのは、遺伝してしまうこと」と誤表記した問題で、同社は24日までに、誤りを認める文章をホームページに掲載した。「水俣病が遺伝するという事実はなく、不正確な表現となったことをおわびの上訂正する」と陳謝した。教材は非公開にしたとしている。23日付。映像授業サービス「Try IT」の中学生向け教材で、母親の胎盤を通じて影響を受け、生まれた時点で水俣病を発症する事例について「遺伝」と表現していた。

 誤表記を巡っては、水俣病患者や被害者団体でつくる「水俣病被害者・支援者連絡会」や環境省が内容を確認し、トライ側に訂正を求めていた。


大手の学習塾トライのサイト<中学社会の映像授業>の「5分でわかる!四大公害病」はすでに削除されている。かつて水俣病が公害として認定されていない時代の認識のような表記であったようだ。誤りを認めページを削除したということだけで問題はなにも解決されていない。なぜこのような誤りが「教材」として登場したのかが問われなければならない。教材作成者が「水俣病=遺伝」としてとらえていたからではないのだろうか。ホームページの動画サイトをみているとすべての教材が「知識」として学習するという考えの中で列挙されているように見える。「社会」という教科が考えるものではなく覚えるものという発想があるように思える。教育の現状をはしなくも映し出したように思える。


5月25日 パレスチナ ガザ攻撃拡大で16万人避難

【エルサレム、ニューヨーク共同】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は23日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザヘの攻撃を拡大したことで、15〜21日に新たに16万人以上が避難を強いられたと発表した。国連のグテレス事務総長は記者会見で、ガザ全域の8割が軍事区域や退避通告の対象で「立ち入り禁止」となり、住民が狭い地域に閉じ込められていると批判した。

 AP通信は24日、イスラエル軍が拘束したパレスチナ人を組織的に人間の盾に使っていると複数のイスラエル兵やパレスチナ人の話として伝えた。建物やトンネル内で爆発物や戦闘員の有無を調べさせるという。イスラエル軍は以前から、イスラム組織ハマスがパレスチナ人を人間の盾にしていると非難している。



5月24日 厚労・文科 大学生就職率98.0%

 厚生労働省と文部科学省は23日、今春卒の大学生の就職率(4月1日時点)が98・0%だったと発表した。調査を始めた1997年卒以降で最高だった2024年から0・1ポイント減で、18年と20年に並ぶ過去2番目の水準。新型コロナウイルス禍の影響は払拭され、人手不足感が強まる中、学生優位の「売り手市場」の継続が鮮明となった。

 厚労省の担当者は「非常に高い水準が続いている」と話す。一方、企業の採用活動は熱を帯び、就職活動の早期化に歯止めがかからない状況との指摘が ある。

 就職率は、就職希望者に対する就職者の割合で、大学生は今回、国公私立大計62校から抽出した。男女別では男性97・6%(前年同期比0・3ポイント減)、女性98・5%(同0・2ポイント増)。文系・理系別では文系98・2%(同0・3ポイント増)、理系97・3%(同1・5ポイント減)だった。文系は過去最高だった18年に並んだ。

 地域別では、関東98・7%(同0・6ポイント増)、中部98・3%(同0・5ポイント減)、中国・四国98・1%(同1・5ポイント減)、近畿97・8 %(同0・1ポイント減)、北海道・東北97・2%(同1・8ポイント増)、九州96・6%(同2・3ポイント減)の順だった。

 専門学校生は99・2%(同1・7ポイント増)で過去最高を更新した。短大生は97・0%(同0・4ポイント減)となった。

 高校生については文科省が3月末時点の状況をまとめた。卒業生全体の13・8%に当たる12万8914人が就職を希望。12万6316人が就職し、就職率 は前年と同じ98・0%に上った。

 都道府県別では、福島と富山が99・9%でトップ。福井99・8%、広島99・7%が続いた。京都は97・1%、滋賀97・2%。沖縄91・9%、神奈川94・7%、東京95・0%と低めのところもあった。


【インサイド】「就活ばかり」早期化に戸惑い

 今春卒業の大学生就職率は、98・0%となり「売り手市場」が続く。人材を奪い合う側の企業は採用活動を早期化しており、学生から「就活ばかりの大学生活になりかねない」と戸惑いの声が漏れる。専門家は、ミスマッチによる早期離職増加を懸念している。

 「一番苦しかったのは、自分が何がしたいのかが分からなかったこと」。近畿大4年の佐野匠さん(23)が就活を始めたのは昨春だ。当時は早く内定を得ることに目が向き「変な方向に行っていた」と振り返る。

 複数の内定を得て、先月、就職先を決めた。結果的に自分を見つめ直す機会となった。だが面接やインターンに追われ、やりたかった部活動は制限するしかなかった。

 「3年生になった瞬間、学年全体が就活ムードになった。4月末になるとみんな焦りだした」。熊本県立大3年の白坂華恋さん(20)はそう話す。早期に内定を得ようと就活に臨むが「売り手市場と言われても気は休まらない」と言う。

 政府は毎年、就活のルールを企業側に要請している。会社説明会は大学3年の3月1日、面接などの選考は4年の6月1日、内定は10月1日に解禁される。だが法的な拘束力がないため、早期化に歯止めがかからないのが実情だ。文部科学省の担当者は「課題として認識している。それぞれの立場を考え、検討する」と述べるにとどめた。

 大手人材サービス業のインディードリクルートパートナーズの調査によると、来春卒業予定の学生の内定率は今年5月1日時点で既に75・8%。2月時点でも39・3%に上り、同時期は2・3%だった2017年卒と比べ、約20倍だ。

 同社リサーチセンターの栗田貴祥上席主任研究員は「構造的な人手不足から生まれる採用意欲の高まりから、企業側は早期化を加速させている」と指摘する。一方で「早く就活を終わらせたいと、内省が不十分なまま就職先を決めてしまう学生も少なくない。入社後にミスマッチが生じ、早期離職につながるケースが起きている」と懸念を示す。

 厚生労働省の調査では、3年以内離職率は21年卒で34・9%に上り、微増の傾向にある。栗田氏は「企業の選考や内定通知が急速に早まった近年の傾向が今後、3年以内離職率に反映される可能性があり、注視が必要だ」と話した。


学生の就職状況が「売り手市場」だということは、本来歓迎すべきことなのだろうが現状はそうではないらしい。受験競争を経て大学入を果たした上に今度は就活競争という「戦争」を生き抜かなければならないことになってしまっている。たびたび批判される 日本型労働慣行である「新卒一括採用」(ほかには終身雇用、年功序列)の弊害ではないのか。おそらくそれは、「3年以内離職率は21年卒で34・9%」という結果に表れている。教員採用試験を大学3年時点で受験可能とすることが果たして優秀な人材確保策として実効性があるのかをも問わないといけないだろう。


5月24日 米政権 ハーバード大への留学阻止

【ニューヨーク共同】米国土安全保障省は22日、全米屈指の有名私立大のハーバード大に対し、留学生を受け入れる資格の取り消しを決定し、通知した。中東パレスチナ情勢を巡り反米的な活動を容認したと主張し「留学生を入学させることはできなくなり、在籍中の留学生は転校しなければ滞在資格を失う」と警告した。

 ハーバード大のウェブサイトによると、140力国以上の留学生が在籍しており、日本人の学生と研究者は260人。トランプ大統領はハーバード大を極左と呼び、パレスチナ自治区ガザの戦闘を巡ってイスラエルに抗議する学生デモを「リベラルの狂信者」と批判。補助金凍結など圧力を強めている。今回の通知には米国の学生よりも多くの学費を納める傾向にある留学生からの収入を絶つ狙いがあるとみられる。

 ハーバード大は政権の方針に「大学の自治の侵害だ」と反発してきた。今回の資格取り消しを「違法だ」と指摘し「報復行為は大学だけでなく、米国に損害を与える恐れがある」と非難した。差し止めを求めて提訴するとみられる。

 外国人の学生と研究者の最多は中国の2126人で、インドの788人、カナダの769人と続く。9月に始まる新年度までに問題が解決しなければ対応を迫られることになる。

 林芳正官房長官は23日の記者会見で「高い関心を持ってて注視している。日本人学生への影響を抑えるべく米側に働きかけるなど必要な対応を行う」と述べた。

 ノーム国土安保長官は通知文で、留学生を受け入れるためには全ての大学が国土安保省の要求に従わなければならないと指摘した。資格を回復したければ3日以内に抗議デモに参加した留学生らに関する全ての情報を提供するよう求めた。

 ノーム氏は声明で「ハーバード大が校内で暴力と反ユダヤ主義を助長し、中国共産党と連携してきた責任を取らせる」と主張した。


【インサイド】エリート敵視、攻撃激化

【ワシントン共同】トランプ米政権は全米屈指の私立大を「エリート層」の代表格と見なして敵視し、徹底的に非難してきた。多様性・公平性・包括性(DEI)重視策の撤回や学生デモの取り締まり強化など、政権の方針にあらがうハーバード大を屈服させれば保守派の支持固めにつながると踏んでいるもようだ。

 「われわれはハーバード大に何度もチャンスを与えた」。22日、留学生受け入れの資格取り消しの通知文を出したノーム国土安全保障長官はFOX二 ユースで、ハーバード大や他の有力大学が政権の警告に従わず反ユダヤ主義の拡大を許してきたと一方的に糾弾した。

 トランプ大統領はイスラエルを重視するキリスト教福音派を岩盤支持層としている。パレスチナ自治区ガザ攻撃に抗議する学生デモを厳罰の対象とし、協力しないハーバード大をたたけば大口献金者も多い親イスラエルロビーの支持も得られるとの計算もある。

 エリート層による「ディープステート(闇の政府)」が米国を牛耳っているとの陰謀論を掲げ、既存政治に不満を持つ白人労働者たちの支持も集めて きた。

 一方で、行き過ぎた政策により留学先として敬遠されるようになれば、米国の国力低下を招きかねないとの懸念も出ている。ニューヨークータイムズ 紙は「世界中から優秀な学生を集めることが、米国の学問、経済、科学の力の源泉となってきた」と指摘した。


ハンナ・アーレントとは、フランス革命の人権宣言よりもアメリカの独立宣言を高く評価した。それは、個人の自由と権利の保証と政治的な参加を促すという理由からだ。しかし、今のアメリカの政権はこうした歴史評価をかなぐり捨てている。学問の自由や表現の自由が政治に屈服させられることは民主主義の死を意味するものだろう。翻って日本でも学術会議を政府が統制していく法律が5月13日、自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で衆院通過を通過した。このことの意味の重大さを見失ってはいけない。日弁連の日本学術会議法案に反対する会長声明 は、「学問の自由(憲法23条)に由来する独立性・自律性が損なわれるおそれが大きい」としている。


5月23日 文科省 教職課程 必要単位減へ

 文部科学省は、大学で教員免許を取得するための教職課程の必要単位数を減らす方向で見直す方針を固めた。共通して学ぶ内容を精選する一方、教員養成の質を保証するために削減分はデジタル技術の活用で学習機会を確保し、学びの成果の確認も行う。関係者への取材で22日、分かった。今後、新たな制度の詳細を検討し、2027年の国会での教育職員免許法改正を目指す。

 教員免許は教員養成系大学・学部だけでなく、他学部でも教職課程を履修すれば取得可能。ただ、他学部では通常の授業に加えて教職課程の授業を受ける必要があり、単位数の多さが負担となって敬遠される一因との指摘がある。教員不足の解消に向け、他学部でも目指しやすい環境を整備し、質を維持しつつ裾野の拡大を図る。教育現場では探究的な学びを実践できる人材が求められており、文科省は単位数の縮減に併せて教員養成の課程を総合的に見直し、多様な人材を呼び込みたい考えだ。

 教職課程には教科や教職に関する科目があり、59単位以上が必要で、1種免許状が取れる。何をデジタルで学べるようにするかは今後の課題だが、教職に関する基礎的な知識などを想定しており、オンデマンド動画での自学やテストで質を担保する。


なんだかよくわからない改革案。教員免許取得のための単位を削減するが代わりにデジタルで自学。これで学生の負担が減るのだろうか。そもそも教職が敬遠されるのはこうした学習環境ではなく、現場の疲労感が社会化していることだ。「やりがい搾取」という言葉が端的にそれを証明しているだろう。文科はあさっての教育改革の宝庫なのか。


5月23日 文科省 小学校に「情報領域」

 文部科学省は22日、学習指導要領改定を議論する中教審特別部会に情報教育を充実させる方策を示した。小学校は情報に関する学習の領域を新設し、探究的な学びを行う「総合的な学習の時間」の中で扱う。中学は現行の技術・家庭科を技術と家庭の2教科に分け、技術の全ての領域に盛り込むとした。

 小学校で2020年度からプログラミング教育が必修化されたが、指導内容や学ぶ教科が明確化されておらず、地域や学校で取り組みに差があるのが実情。中学は現在、技術・家庭科の技術分野にある四つの領域のうち「情報の技術」のみで扱っている。

 文科省案によると、小学校は情報技術の基本的な活用方法や適切な取り扱いを学ぶ「情報の領域(仮称)」を新たに設け、総合学習での探究的な学びと一体的に指導する。中学は多様なセキュリティー対策や生成人工知能(AI)の基本的な仕組みなどを学習内容に盛り込む。高校の教科「情報」はさらなる内容の充実を図る。

 この日の特別部会では、委員から「情報活用を過度に盛り込むと総合学習本来の目的が曖昧になる恐れがある」「指導教員が不足している中学技術では体制整備や指導力を向上させる施策が必要」といった意見が出た。


学校教育の内容はますます積みあがる一方で、子どもや教員の負担は大きくなるばかりである。一体どんな子どもを育てたいのかが見えない。デジタル機器やソフトは「手段」として活用するものであるはずだが、GIGAスクール構想の中それが目的となっていないだろうか。もちろん情報にかかわるリテラシーを学ぶことは必要なことだが、それは学習のそれぞれの機会に必要があれば学べばよいのである。本末転倒な学習は負担を増やすだけで実にはならない。


5月23日 ガザ 子ども死亡1万6千人

【エルサレム共同】パレスチナ自治区ガザの保健当局は22日、2023年10月の戦闘開始以降に死亡したガザの子どもが1万6503人に上ったと発表した。うち1歳未満が916人。イスラエル軍はガザ北部と南部で改めて大規模な地上侵攻を進めており、犠牲者のさらなる拡大は必至。ガザヘの物資搬入が3月上旬から約2ヵ月半止められたため、人道危機も深刻な状態に陥っている。

 保健当局によると、1〜5歳までの死者は4365人。ガザでは飢餓が広がり、世界保健機関(WHO)は3月2日から今月13日までに子ども57人が栄養失調で死亡したとしている。医療施設の破壊も相次ぎ、スイスの非政府組織(NGO)「欧州地中海人権モニター」は21日、栄養失調や医療資源不足で過去24時間に子ども9人を含む26人が死亡したと発表した。

 イスラエルのネタニヤフ首相は21日の記者会見で、イスラム組織ハマス拘束下の人質奪還のため「一時的に停戦する用意がある」と表明した。全ての人質解放やハマスの武装解除が戦闘終結の条件だとし、攻撃継続の姿勢も強調してハマスを揺さぶった。ガザ全域を制圧すると再び主張した。ネタニヤフ氏は「人質は20人が確実に生きており、最大で38人が死亡している」と説明。ハマスのガザ地区トップとされるムハンマド・シンワール氏を殺害した可能性があるとも明らかにした。


【インサイド】在米イスラエル大使館員 撃たれ死亡

【ワシントン共同】米首都ワシントンの銃撃でイスラエル人2人が死亡した事件の背景は明らかではないが、パレスチナ自治区ガザヘの攻撃を続けるイスラエルへの批判が各地で高まるさなかに起きた。米国ではトランプ政権が「反ユダヤ主義」と問題視する中でも、若者を中心とした抗議デモが続く。オランダでイスラエル人が襲撃される事件もあった。

 ガザ戦闘が始まった2023年10月以降、イスラエル軍の攻撃による犠牲者が増え続け、世界各地で抗議活動が拡大。イスラエルを支援する米国では、攻撃に反対するデモが各地の大学に広がった。

 親イスラエル姿勢が鮮明なトランプ政権は、大学にデモ取り締まりを求め、補助金凍結などを通じて圧力を強化するが、銃撃事件があった21日もニューヨークのコロンビア大ではデモが起きた。

 オランダ・アムステルダム市では昨年11月、サッカーの試合が行われた際にイスラエルのサポーターが襲撃された。米メディアによると、5人が治療を受け、数十人が軽傷を負い、約60人が拘束された。市の報告書によると、襲撃前にサポーターがパレスチナの旗を引き裂き、侮辱的な言葉を叫んでいたという。

 ブラジルでも23年11月、治安当局などがユダヤ人への襲撃を阻止したと発表。サンパウロで、テロ容疑で2人を逮捕した。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの計画だったとした。

 こうした事態を受け、イスラエル政府は国民に警戒を呼びかけ、外国で「イスラエル人やユダヤ人と識別されないように」と注意喚起している。


「暴力行為に悲しみ」

【ワシントン共同】米ホワイトハウスから東に約2キロ。路上に規制線が張られ、警察車両のライトが暗闇を照らしていた。21日夜にイスラエル大使館職員2人が撃たれ死亡したユダヤ博物館の周辺は、小雨が降る中、警察官が慌ただしく巡回し、米政治の中枢は物々しい雰囲気に包まれた。ボンディ司法長官も、事件を担当する連邦地検の当局者と視察した。

 現場は連邦捜査局(FBI)などの政府機関庁舎や教会が並ぶ一角。事件の目撃者はCNNテレビに対し、拘束された容疑者の男が「パレスチナ自治区ガザのためにやった」と話していたと証言した。一方、記者会見した警察当局者は、予断を持たずに背景を調べる方針を示した。

 博物館でイベントを開催していた有力ユダヤ人組織「米国ユダヤ人委員会」の幹部は声明を出し「言葉にできないような暴力行為に深く悲しんでいる」と述べた。


戦闘にかかわる報道で負傷者や死亡者の数が表示されることが多い。少人数の犠牲が大きく報道されたり大規模の犠牲者が小さな記事として扱われる。事件の背景にかかわるのだろうが、一人一人の死はそれにかかわる人にとっては大きな出来事に違いない。カントが『永遠平和のために』で書いたような非戦の誓いを世界が共有できるようになるのはいつ頃なのだろうか。


5月20日 環境省 海藻でCO2吸収

 新たな地球温暖化対策として期待される「ブルーカーボン」の拡大に向け、沖合で海藻類を育てて二酸化炭素(c02)を吸収させ、深海に沈めて貯留する技術開発に政府が着手することが19日、関係者への取材で分かった。環境省は海洋研究開発機構や石油元売り最大手のENEOS(エネオス)などに海藻類の深海での挙動や環境への影響調査を委託する。

 ブルーカーボンは主に海の生態系が光合成でCO2を取り込み、海底に蓄積される炭素を指す。

 政府は2050年までに温室効果ガス排出量の「実質ゼロ」を目指しており、排出量の抑制に加え、吸収量の増加が求められる。2月に閣議決定した地球温暖化対策計画では、吸収能力を高める大規模な藻場造成の検討が盛り込まれており、調査は取り組みの第一歩。海に囲まれた日本は海藻類の生育場所が豊富なため、実現可能性を探る。

 沖合の藻場では、網などに固定したコンブやワカメなどを海上付近に浮かべて養殖する。ブルーカーボン創出には、海藻類が光合成でCO2を取り込んだまま、海底に沈めて堆積させることが重要となる。微生物に分解されると炭素が海水中に戻るため、調査では水深数百メートルに沈めた海藻類が分解されるかどうか調べる。

 具体的な調査場所は検討中で、海洋機構の有人潜水調査船「しんかい6500」も活用。港湾空港技術研究所も参加し、炭素貯留量のシミュレーションなどを行う。エネオスは23年から、脱炭素社会実現に向け100万トン超のブルーカーボン創出を目指すプロジェクトにも取り組んでいる。

 環境省によると、国内の森林は23年度に約4500万トンのCO2を吸収したが減少傾向にあり、他の吸収源の確保が課題。ブルーカーボンによる吸収量の目標を35年度に100万トン40年度に200万トンとしている。日本沿岸の藻類やマングローブによる吸収量は23年度に約34万トンで、目標達成には大幅な増加が必要になる。同省幹部は「CO2を海底に固定させる技術として実証できれば、有力な吸収源になる可能性がある」としている。


【インサイド】脱炭素「切り札に」

 政府は2050年までに温室効果ガス排出量「実質ゼロ」を達成するため、官民連携で「ブルーカーボン」拡大を目指す。再生可能エネルギーの活用などで二酸化炭素(CO2)排出量は減っているが、森林に頼ってきたCO2吸収源の拡大は不可欠だ。政府関係者は、海こそ「日本の脱炭素の切り札になる」と大きな期待を寄せている。

 気候変動の国際枠組み「パリ協定」では、世界全体で産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるため、21世紀後半に温室ガス排出を実質ゼロにすることを目指す。日本は今年2月、「35年度に13年度比で60%減、40年度に同73%減」と決め、国連に報告した。23年度は27・1%減の10億1700万トンで、実質の排出量を50年まで直線で結んで算出した削減傾向に合致するとしている。

 主な減少原因は、電源構成に占める再生可能エネルギーと原子力発電の割合増加などが考えられる。環境省は「順調な推移だ」と強調するが、先行きは見通せない。米国がパリ協定離脱を決めて国際連携の停滞が懸念される中、日本はより高い目標を設定すべきだとの批判の声も出ている。

 現在、国内のCO2吸収源の大部分は森林だが、吸収量は減少傾向にある。森林の“高齢化”が進み、育つために活発に光合成する若い世代の樹木が減っているためだ。そこで新たな吸収源として政府が注目したのが、ブルーカーボンだ。

 海藻など沿岸や海の生態系に取り込まれるブルーカーボンは、海に囲まれた日本にとって好条件。政府は24年、日本周辺の海で海藻・海草による吸収量を世界で初めて推定し、国連に報告した実績がある。ブルーカーボン吸収量の算定方法は確立されていないため、日本が取り組みで先行し、国際ルール形成を 主導したいとの思惑もある。

 大規模な藻場を設置して海藻類を沈める手法は、CO2を効率的に回収し、貯留することで大気中への放出を防ぐ「CCS」と呼ばれる技術の一つ。人工的に藻場を拡大すれば、吸収・貯留量の増加だけでなく、新たな漁場形成や、海藻をバイオ燃料の原料として活用するなど、多面的な価値も期待できる。

 ただ深海に沈めた海藻が時間の経過でどう変化するかや周辺の生態系への影響、漁業への影響は詳しく分かっておらず、科学的に解明が必要な部分も多 い。環境省幹部は「脱炭素社会の実現には、今後も大幅に温室ガスを減らす必要があり、調査を通じて実現可能性を見極めたい」と話した。


「実質ゼロ」が何を意味するのかを考えないといけないだろう。つまり、「脱炭素」とはニュアンスが違っているという点だ。炭素を排出を抑える方向ではなく、それを固定して大気中に戻さないということだ。こうした技術の必要性は各国が認識しているのだろうが、議論が逆転してはいないだろうか。必要なのはますますCO2を排出続ける産業の在り方を問うことではないのだろうか。論者によって資本主義を肯定するか否定するはあるのだけれども、「脱成長」を展望した生活の在り方を視野に入れた議論が必要。


5月20日 文科省 学テ、自治体別は8月以降

 小学6年と中学3年が対象の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果公表方法について、文部科学省の作業部会は19日、4月に実施した2025年度調査から変更し、全国の結果は7月、都道府県・政令指定都市別は8月以降と、別々に公表する案を大筋で了承した。24年度までは全国と自治体別の平均正答率や結果分析を7月下旬に一括公表していた。

 案によると、25年度は全国の平均正答率などを7月14日に、結果分析を7月末に公表する予定。自治体別は、得点分布や習熟度といった特徴を把握しやすいように表やグラフを充実させる。学校への調査結果のデータ返却は7月14日に早める。

 25年度調査は国語と算数・数学に加え、3年ぶりに理科を実施。中学理科は、デジタル端末を使いオンラインで出題・解答する新方式(CBT)を初めて導入した。紙で実施した小中の国語と箇数・数学、小学理科は平均正答率を公表し、CBTの中学理科は生徒ごとに異なる問題を解いているため段階別で成績を示すこととした。



5月19日 イスラエル軍 ガザ大規模侵攻を開始

【エルサレム共同】イスラエル軍は18日、パレスチナ自治区ガザ北部と南部で大規模な以上侵攻を開始したと発表した。ロイター通信などによると、イスラエルとイスラム組織ハマスは17日、仲介国力タールで停戦交渉を再開したが、イスラエル軍は攻撃を強化。交渉に進展がなければ、さらに攻勢を強めるとみられ、被害拡大が懸念される。

 イスラエル軍は攻撃拡大の初期段階だとしている。中東メデrアによると、18日のガザ側の死者は130人を超えた。停戦交渉では2ヵ月程度の停戦と引き換えにハマスが人質を解放する案が軸になっているもようだ。

 地元メディアによると、イスラエル首相府は18日、戦闘終結を含む「あらゆる可能性」を模索して交渉しているとの声明を出した。戦闘終結には全人質の解放やハマス戦闘員の追放、ガザの「非武装化」が含まれる必要があると主張した。ハマスは武装解除を拒む考えをこれまで示しており、協議の行方は不透明だ。

 停戦交渉は恒久停戦を求めるハマスと、一時的な停戦にとどめたいイスラエルの隔たりが埋まらず、停滞していた。

 パレスチナ通信によると、イスラエル軍は18日、南部ハンユニス西方マワシ地区の避難民テントを空爆し、20人以上が死亡、負傷者も100人を超えた。ガザ保健当局は、ガザ北部の全公立病院がイスラエル軍の攻撃で機能停止に追い込まれたと発表した。英BBC放送は、ハマスが約2ヵ月の停戦と引き換えに人質9人を解放する案を提示したと伝えた。40〜50日停戦し、人質10人を解放する案を中心に協議が進められているとする報道もある。


人質の人命を救出するために人命を犠牲にする、この矛盾。イスラエルの行動はジェノサイド(民族浄化)以外の何もでもない。


5月19日 ボランティア日本語教室30周年 夜間中学の役割 大切

 ボランティアが日本語を教える「京田辺市民日本語読み書き教室」が30周年を迎え、「記念のつどい」が18日、市社会福祉センター(同市興戸)で開かれ、約50人が参加した。教室の生徒らや参加者はこれまでの歩みを振り返り、課題や今後の展望を語り合った。

 設立当初から同教室に通う中国残留孤児の80代の男性は、自らの人生の歩みをつづった作文を参加者の前で読み上げ、「子どもと孫の成長が励み。これからも日本語の勉強を続けたい」と語った。

 元文部科学事務次官の前川喜平さんが講演し、「年齢や国籍に関係なく、学びたいと思う人は誰でも受け入れる場所であるべき」と夜間中学に求められる役割を説明。また、府 内の公立夜間中学が京都市内にしかないことに言及し、設立の必要性を訴えた。

 市民団体「京田辺自主夜間小・中学校」と「京田辺市民日本語読み書き教室」が共催。同教室には現在、小学生から80代まで、中国残留孤児やベトナム、ボリビアの出身者など 多様な立場や背景を持つ人が通っている。

 奈良市立夜間学級の非常勤講師で、同教室を支える次田哲治さん(74)は「ボランティアで30年続くのは本当にすごいこと。多くの人に関心を持ってもらいたい」と話す。


各地で様々な形態でボランティアなどのよる学習機会が設けられている『ルポ 無料塾』はその一面をルポしたものだが、「教える」ことを考える好材料ではないだろうか。いずれにしても公的な教育制度の枠外の活動であり、見方によれば公教育のオルタナティブの視点を与えるものである。ただ、学校教育を無償のボランティアによって再現するということだけではもったいない気もする。


5月17日 沖縄県議会 ひめゆり発言に抗議

 沖縄県議会は16日の本会議で、自民党の西田昌司参院議員が「歴史の書き換え」とした「ひめゆりの塔」の展示説明を巡る一連の発言への抗議決議を賛成多数で可決した。自民、公明両党の会派も賛成。西田氏は9日の記者会見で「おわび」したが「自分の言っていることは事実」などと持論を展開しており、改めて発言の撤回と謝罪を求めた。

 西田氏に議員辞職を求める日本維新の会派は反対した。

 抗議決議は、発言が「沖縄戦の実相をゆがめ、戦没者や戦争体験者を冒涜し、県民の尊厳を踏みにじるものだ」と指摘。「西田氏に求められているのは、戦争体験者や遺族の深い悲しみの声に真摯に向き合い、沖縄戦の実相・史実を正しく認識することだ」と訴えた。

 自民党に対し西田氏への厳格な処分や、再発防止のために党内の教育体制を再構築することを要請した。


県議会の対応はまっとうなもの。西田氏は改めて「自説」を歴史を含めて弁明すべき。これにかかわらず西田氏の独断的な発言は京都の保守層にも反発は広がっている。元国家公安委員長・二之湯智氏の子息で真士氏が今夏の参院選への立候補を表明、西田氏との確執が取りざたされている。


5月17日 中学部活 休日の地域移行「31年度までに」

 公立中学校の部活動を地域のスポーツ団体などに委ねる「地域移行」に関し、スポーツ庁と文化庁の有識者会議は16日、提言を取りまとめ、休日は2031年度までに全ての部活動での移行を目指すことを盛り込んだ。26年度からの6年間を「改革実行期間」と設定し、平日の取り組みも進める。少子化や教員の過大な負担を背景とした部活動改革は想定より長期化しているものの、新たな段階に入る。

 国は23〜25年度の3年間を「改革推進期間」として、地域移行の実証事業などを実施。有識者会議では改革の評価と、今後の方向性を昨夏から協議してきた。

 提言には、地域移行の名称を今後「地域展開」に改めることも明記した。学校と地域を分断する印象を避け、地域全体で部活動を支えることを明確にする狙いがある。民間クラブの活動費については、保護者負担額の目安を示すよう国に求め、クラブの信頼性を国と地方公共団体で担保する仕組みの構築も要請した。

 提言を受け取った武部新文部科学副大臣は「全国的な実施に向け、制度の具体化など改革に全力で取り組む」と述べた。


部活動の地域移行が問題になってからずいぶんと時間がかかっている印象。何のための地域スポーツなのかという議論が盛んにおこなわれたという話はあまり耳に入ってこない。「スポーツを楽しむ」ことと「勝利すること」との隔たりは大きい。それをどう分別するのかは大切な議論なのだが。


5月17日 府・市教委 洛北・西京・南陽の定員増

 京都府と京都市の両教育委員会は16日、2026年度入学の公立高付属中5校の募集定員を発表した。国の中学校の学級人数上限変更方針や各校の志願状況を考慮して、洛北(京都市左京区)、西京(中京区)、南陽(木津川市)の3校の定員を増やす一方で、園部(南丹市)、福知山(福知山市)の定員は減らす予定。定員の変更は全校初めてとなる。

 募集定員の変更は、国がきめ細やかな教育を実現するため、26年度から中学校の学級人数を40人から35人に順次定数の改善を行う方針を示していることを受けた対応。

 府立校の定員は、洛北が現行の80人から105人に増やし、学級数を2学級から3学級とする。南陽も40人から30人増の70人とし、学級数を1から2学級に増やす。一方、園部と福知山はそれぞれ40人から35人に減らし、学級数は1学級のまま。

 京都市立の西京は120人を140人に増やして、学級数を3から4にする。

 洛北、西京、南陽3校は志願倍率で2〜3倍台を維持している一方、少子化の影響が都市部に比べて大きい園部は25年度の0・95倍を含め3年連続定員割れ、福知山も定員充足はしているものの、同年度1・35倍と過去最低となっていた。


公立高付属中の定数改善は、一般中学校の水準に合わせるいわば事務的な内容。例えば洛北の場合、現行80人で2学級だが、35人学級とすれば2学級で70人となる。10人の定員オーバーとなる。結果的に定員増で対応するしかないのだろう。しかし、南部の3校での定員増は一層の受験競争を煽る懸念はないのだろうか。


5月16日 政府 学校欠席連絡 デジタルで

 デジタル庁や文部科学省などは15日、教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるため、2029年度までに実施する施策を示した工程表改定案を公表した。学校現場の「やめることリスト」として、電話での児童生徒側からの欠席連絡受け付けなど12項目を挙げ、デジタルに切り替えていくとした。

 ほかは「保護者に紙のお便りの配布」「教材費などの現金徴収」「紙による保護者や児童生徒へのアンケート」など。デジタル化すれば、教職員の業務 負担が軽減し、児童生徒に向き合う時間が増える効果が特に大きいと考えられる12項目を選んだ。

 各地の教育委員会や学校に働きかけ、段階的な普及を目指す。デジタル機器がない家庭や小規模校には配慮する考えだ。単に紙からデジタルに変えるだけでなく、保護者向けお便りや教材などの素案作りに生成人工知能(AI)を使い、業務を効率化することも促す。


学校への連絡をデジタル化することで教員の業務が削減できるのか。フランスの小学校では親(保護者)が子どもを校門まで送り届けるという光景を目にする。これがいいのかどうかはそれぞれの判断によるが、親の労働が子どもの安全以上に優先される日本の状況は決して当たり前ではない。


5月16日 国会 教員給与増法案、衆院通過

 教員の処遇改善や長時間労働是正に向けた教員給与特別措置法(給特法)改正案など関連法案が15日、衆院本会議で自民、立憲民主両党などの賛成多数で可決された。参院は21日の本会議で審議入りする。

 法案は、公立学校教員に残業代の代わりに基本給の4%相当を支給する「教職調整額」を2026年1月から毎年1‰ずつ引き上げ、31年1月に10%とするのが柱。他に学級担任への手当を加算し、新たな職位として若手のサポートなどを担う「主務教諭」を設ける。


正式に決まった呼称ではないにしても「教員給与増法案」と表記されることが審議の過程を明確に示している。社会的にあるいはマスコミ報道も「廃止」が先行していたはずなのに、いつのまにか「給与増」へと議論がするり変わっていた。おまけに、縦型管理を強化する「主務教諭」まで紛れ込ませて。学校現場はより「ブラック化」する方向に向くだろう。見出しは「ブラック化推進法案、参院通過」となるのでは。


5月16日 パレスチナ 「ナクバ」77年 帰還権求め

【ラマラ共同】パレスチナは15日、1948年のイスラエル建国で約70万人が難民となったパレスチナのナクバ(大惨事)から77年を迎えた。この日に先立つ14日、ヨルダン川西岸ラマラで多数の市民がパレスチナ旗を掲げて目抜き通りを行進。「ナクバはまだ終わっていない」と訴え、故郷への帰還権を求めた。2023年からの戦闘が長期化するガザでは人道状況が深刻化する。

 行進には子どもから高齢者までが参加した。イスラエル中部テルアビブ近くの村を追われたスブヒール・オベドさん(83)は「(西岸でも)イスラエル軍の占領が続き、ガザは攻撃を受けて壊滅的だ。これほど長い間、世界はなぜ黙っているのか」と憤った。

 ガザの戦闘では多数の避難民が発生している。ガザ南部ハンユニスのファラ医師(53)は電話取材に「物資が入らず、状況は危機的だ。われわれが目撃しているのはまさにナクバだ」と訴えた。


イスラエル首相米圧力もガザ停戦応じず

【エルサレム共同】イスラエル紙ハーレツ電子版は14日、パレスチナ自治区ガザの停戦交渉で合意を求める米政府の働きかけにネタニヤフ首相が応じず、強硬姿勢を堅持していると報じた。米国のウィツトコフ中東担当特使が過去24時間に複数回圧力をかけたが、イスラエルはガザ攻撃激化の構えを崩していない。

 仲介国カタールで米国を交え、イスラエルとイスラム組織ハマスの間接交渉が続いている。報道によると、イスラエルは約40日間の停戦と引き換えに人質10人と遺体の返還を要求。恒久停戦を求めるハマスの主張と隔たりがある。

 一方、解放された元人質のうち67人は、ネタニヤフ氏やトランプ米大統領に宛てた連名の書簡を公表した。米国籍を持つ人質男性の12日の解放を受けて「流れを止めてはならない」と強調。軍事作戦を停止してでも交渉による人質返還の実現を訴えた。

 ロイター通信は14日、ガザでの物資配給を担うため、イスラエルと米国が新設を計画した財団が、月内に活動を開始すると報じた。イスラエル政府は配給拠点の増加に同意したという。3月初めに物資搬入が停止したガザでは、人道危機が悪化の一途をたどる。

 イスラエル軍は15日もガザ各地で攻撃を継続した。パレスチナ通信によると、未明からの死者は82人に上る。南部ハンユニスでは多数の住宅を攻撃し27人が死亡。北部ガザ市では、西側にある複数の建物から退避するよう再び通告した。ガザ当局は、西側には避難住民が密集しているとして退避通告を非難している。


ガザの現状には言葉を失う。それでも、イスラエルの姿勢を批判しなければならないし、人質とされたひとや予備役の人たちからの「攻撃停止」の訴えに一縷の望みをかけないわけにはいかない。


5月15日 厚労省 出産 26年度にも無償化

 厚生労働省は14日、出産にかかる費用の自己負担を無償化する方針を決めた。有識者検討会が了承した。早ければ2026年度からの実現を目指す。地域によって自己負担にばらつきがある状況を解消し、少子化対策につなげたい考えだ。正常分娩に公的医療保険を適用した上で無償にする案などがあり、具体的な制度設計は今後検討する。

 現在、帝王切開などによる出産には病気やけがの治療と同様に保険が適用されている。これに対し正常分娩は保険適用の対象外で、医療機関ごとに自由に価格設定でき、地域差も大きい。健康保険組合などを通じて「出産育児一時金」50万円が支給されているが、実際には足りないケースが目立つ。

 具体策として保険が適用されれば全国一律の価格となる。産婦人科医側は収入が落ち込み、経営が悪化する医療機関が出てくると懸念している。一時金を増額して無償化する案もある。(以下省略)


【深層表層】出産費ばらつき 具体化難題

 政府は出産費用の自己負担を無償化する方針だ。少子化に歯止めがかからない中、価格が地域によってばらつく現状を是TFし、全国どこに住んでいても家計を気にせず産めるようにする。ただ、どの水準まで公的に賄うのかなど具体化に向けた調整は難航しそうだ。制度設計次第では。物価高で苦しい経営がさらに悪化しかねないと警戒する産科医院もある。

 出産費用は都市部ほど高い傾向がある。厚生労働省の集計によると、2024年度上半期の都道府県別平均は最高の東京が64万6千円に対し、最低の熊本が40万2千円。20万円を超える差があった。

 現在の仕組みでは、加入する公的医療保険から妊婦側に50万円の「出産育児一時金」が支払われるものの、居住地によっては持ち出しが生じる。

 今年9月に東京都内で出産予定の女性会社員(32)は費用が100万円を超える見込みだ。一時金では「全然足りない」と嘆く。政府は23年4月、一時金を42万円から50万円へ増額したが「一時金が増えても医療機関がその分値上げすれば意味がない」と指摘する。

 全国一律の一時金による不公平感などを受け、岸田政権が「次元の異なる少子化対策」として打ち出したのが、出産費に公的医療保険を適用する案だ。保険適用後の自己負担分も何らかの手法でゼロにすれば、無償化が実現する。

 ただ保険適用には難題がある。現在は医療機関ごとの経営判断で価格を決めており、保険制度の基本である全国一律の診療報酬で「標準的な出産費用」を決めるのは難しいからだ。診療報酬は2年に1度の改定が原則で、物価や賃金動向の反映にタイムラグが生じるという課題もある。

 「経営に余裕はない。物価高が追い打ちをかけている」。「松田母子クリニック」(埼玉県所沢市)の松田秀雄院長の表情は険しい。「一人一人に寄り添えるお産」を目指し、約40人の常勤スタッフらと年間約550件の分娩を取り扱う。

 お産で使う針や糸の価格はこの10年で約2倍に。新生児用保育器は機種によって150万円から500万円程度に値上がりした。食材費の上昇も著しい。松田さんは、閉院を決めた産科医仲間もいると話し「急激な物価変動という『有事』の中でやるべきではない。もっと時間をかけ検討してほしい」と求める。

 日本産婦人科医会によると、少子化や経営悪化により、全国の分娩の半数近くを担う産科クリニックは年々減少している。会員を対象とした24年の調査では、590施設のうち、保険適用が導入された場合に「分娩取り扱いを中止」「制度内容により中止を考える」との回答は計401施設に上った。

 同会の石渡勇会長は「地域の周産期医療が崩壊してしまえば本末転倒で、少子化対策に逆行する」と訴える。政府の有識者検討会も14日に取りまとめた報告書で「産科医療機関の経営実態にも十分配慮しながら、具体的な制度設計を進めるべきだ」と強調した。

 政府は社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会などで検討を進める方針だ。しかし具体策が固まるまで時間がかかる可能性もあり、政府関係者は「妊婦側と医療現場の双方の納得を得られる制度設計は容易ではない」と危ぶんだ


子育てにかかわっての「無償化」があいついでいる。いわゆるベーシックサービスといわれる課題であり、それ自体は歓迎すべきものである。しかし、子どもを社会が育てるという基本的な理念の中での議論なのかというと心もとない。医療や教育が市場原理主義において利益優先の経営が行われていることへの切込みが必要だろう。そこで働く人たちの報酬を削るということではないは当然。


5月15日 ウルグアイ ホセ・ムヒカ元大統領死去

【評伝】極左ゲリラの闘士でもあるウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領が13日、亡くなった。初めて世界的に脚光を浴びたのは2012年、「世界の70億〜80億人が西洋と同じ消費生活をできるだろうか」と訴えた国連持続可能な開発会議でのスピーチだった。清貧の価値観に裏打ちされた質素な生き方 は、国境を越え多くの人々の共感を呼んだ。

 「世界で最も貧しい大統領」という愛称が定着するのに時間はかからなかった。物質主義に覆われた現代に一貫して警鐘を鳴らし、生きることの本質を世に問い続けた。7歳の時に父が死去。自宅敷地で母が栽培した花や野菜を売り歩いた。1960年代に社会主義思想に傾倒し、極左ゲリラ組織、民族解放運動(トウパマロス)を結成。銀行襲撃や政治家誘拐に関わり長く投獄されたこともある。大統領在任中は報酬の約9割を寄付し、公務の合間に畑仕事と養鶏をして暮らした。

 2015年に54年ぶりに実現した米国とキューバの国交回復の前にはオバマ米大統領(当時)のメッセージをキューバのラウル・カストロ国家評議会議長(同)に届け、両者の信頼醸成を後押し。中南米地域の融和に重要な役割を果たした。

 16年に訪日。滞在で最も印象に残った訪問先に広島を挙げた。原爆資料館を見学後、芳名録に「倫理を伴わない科学は、想像もできない邪悪なものに利用されかねない。地球上で人間だけが同じ過ちを繰り返す。私たちは過去の過ちから学んだだろうか」と記した。

 上院議員を務めていた20年に政界を引退。議会の最後の演説で「人生で成功することは(人を)負かすことではない。倒れるたびに起き上がることだ」と呼びかけた。

 日本人を「勤勉で、とても優しい人たち。大切な時に団結力を発揮する人々」と評する一方、「高齢者が孤独にさいなまれ、若者は夢を持てなくなっていると聞いた」とも指摘した。「果たして日本人は幸せなのか」。元大統領の言葉は今も私たちに重い問いを投げかけている。(中川千歳・共同通信前サンパウロ支局長)


ホセ・ムヒカ元大統領の言葉の中に示唆に富む様々なものがある。印象的なのは、働く人たちは労働時間短縮の制度を勝ち取ったのに余った時間を別の仕事に充てている、有益な時間を過ごすことをしなければすぐに年を取ってしまうのに。という主旨のものだった。自然の収奪批判を含めた資本主義社会への警鐘は、脱成長社会実現への言葉として聞かなければならないだろう。


5月15日 ユニセフ 日本の子供、心の健康低迷

 国連児童基金(ユニセフ)は14日、先進・新興国43力国に住む子供の「幸福度」を調査した報告書を公表した。日本の子供は高い自殺率などが要因となり「精神的な健康度」が32位と下位に低迷した。2020年公表の報告書では37位だった。「身体的な健康度」は20年に続き首位だった。

 経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)に加盟する国が対象。「精神的な健康度」「身体的な健康度」「学力・社会的スキル」の3分野でラ ンク付けした。日本はスキルが12位(20年は27位)で、総合順位は14位(同20位)だった。

 林芳正官房長官は14日の記者会見で、報告書公表を受け「全ての子供や若者が安心して過ごせる居場所づくりを推進する」と述べた。日本の子供の「精神的な健康度」が下位になったことについても「重く受け止める」と語った。

 報告書によると、日本の若者の自殺率は4番目に高かった。貧困問題に詳しい東京都立大の阿部彩教授は「日本では子供が精神的な問題を抱えるという意識が薄い。政府の対策も効果が出ていない」と強調。身体的な健康に関しては「肥満は少ないが、痩せ過ぎの問題はある」とした。

 報告書は、先進国では新型コロナウイルス禍によって子供の学業の成績や精神的・身体的な健康度が著しく低下したと指摘。現代の子供は疫病や紛争、異常気象に見舞われている世界で成長せざるを得ず、各国の対策が必要だとした。


この調査は「先進国」を対象としたものだからパレスチナの子どもたちは含まれていない。この間のイスラエルのガザ攻撃の中で最も大きな被害を受けていることを忘れてはならいだろう。加えて、日本の子どもたちの心と体のアンバランスとても気になる。学校教育体がその要因の大きな部分を占めていることは想像できる。日本の子どもたちにとっての戦争は教育かもしれない。2020年のユニセフの報告「先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果」も参考になるだろう。


5月15日 シリア 止まらぬ地雷被害

【カイロ共同】昨年12月にアサド政権が崩壊したシリアで、10年以上続いた内戦の地雷や不発弾の被害が続いている。国連によると全土に30万発以上が残っており、支援団体の集計では政権崩壊以降、子どもを含む300人以上が死亡した。政権崩壊の混乱や資金不足で処理は進まず、関係者は「国際支援が必 要だ」と訴えている。

 シリアは2011年の反政府デモをきっかけに内戦に陥り、旧政権を支援したロシアなどが軍事介入。混乱の中、過激派組織「イスラム国」(IS)も台 頭し、さまざまな勢力が入り乱れた。

 民間団体「シリア人権ネットワーク」、によると、旧政権軍やロシア軍は大量の子爆弾をまき散らし不発弾を残すクラスター(集束)弾を使用した。地雷に関しては、あらゆる勢力が使い、広範囲に埋めたという。

 地雷などがある危険地域の情報は周知されず、シリア人権ネットワークは11年3月から24年末までに民間人3500人以上が地雷被害で亡くなったとする。政権崩壊で難民らの帰還が進む中、危険地域と知らずに立ち入る住民は依然多い。

 市民組織、シリア民間防衛隊(ホワイトヘルメッツ)で地雷や不発弾処理に関わるサミ・ムハンマド氏は、ロシア軍などが反体制派を激しく空爆した北西部や、ISの拠点があった東部デリソール県で被害が多く発生していると指摘した。毎日のように処理を依頼されるが人員や装備不足で対応できないという。

 専門知識がない住民が処理を試みて被害に遭うこともある。ムハンマド氏は「危険地域の情報収集や明確な処理計画の策定が重要だ」と強調。暫定政府に国際団体との協力を進め、資金や技術支援を受けるよう求めた。


戦争が終わってもその後始末に膨大な人的損失と費用が必要であることは明らかだ。その戦いで得たものは一体何だったのだろうかと考えてしまう。ロシアとウクライナの戦後が話し合われるというが、これを商機とみる人は大勢いるのだろう。戦争が本当に終わるまで(戦後処理をふくめて)にどれだけの犠牲を払えばいいのだろうか。


5月14日 国会 学術会議法人化法案が衆院通過

 日本学術会議を現行の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる法案が13日の衆院本会議で、自民、公明、日本維新の会の各党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。活動や会員選考に対する政府介入が強まり、独立性が損なわれる恐れがあるとして立憲民主、国民民主、共産、れいわ新選組の各党などは反対しているものの、今国会での成立の公算が大きくなっている。

 法案は、2026年10月に学術会議を国から切り離して特殊法人に移行させる。首相が新会員を任命する現行の方式はやめ、学術会議の総会で決議する形に変更する一方、運営の透明性を高めるとして、首相任命の監事や評価委員を新設。新会員の選定時には外部有識者でつくる選定助言委員会が意見を述べる。

 立民の山登士繕議員は本会議で、20年に菅義偉首相(当時)が学術会議側から推薦された新会員候補者6人の任命を拒否したことをきっかけに学術会議の組織見直しの議論が浮上したと強調。法成立で政府の関与が強まり「排除したい学者が選別され、任命拒否と同じことが行われる」と批判した。

 財政面ではこれまで政府は年10億円前後の予算を支出してきたが、法人化後は「必要な金額を補助する」としている。学術会議側は補助金では自由度が低く、安定的な財政基盤に懸念があるとしている。

 立民は、法案に問題点が多いとして参院の審議に向け修正案を検討している。他党との協力も模索するが、党内では「野党間でまとめられる状況ではない」と消極的な声もある。

 法案に賛成した維新の三木圭恵議員は「国からの独立を掲げるならば民営化の道を進むことが真の姿であり、法案がその第一歩だ」と主張した


【インサイド】軍事研究巡り自民と対立

 日本学術会議の特殊法人化法案が衆院を通過した。これまで独立性を保障されてきた学術会議側は、政府の干渉が強まり学問の自由が侵されると懸念。一方の政府は「監視強化の意図はない」と主張し無修正で乗り切る構えだ。対立の根底には、軍事研究に慎重姿勢を示してきた学術会議と、反感を抱く政府、自民党の長い相互不信がある。

 学術会議は科学者の代表機関として1949年に設立。科学技術政策の提言や国際交流を担ってきた。日本学術会議法は「日本の平和的復興」への貢献をうたい、「独立して職務を行う」とも明示。兵器研究など科学者の戦争加担に対する反省が色濃く反映された。

 朝鮮戦争直前の50年、戦争を目的とする科学研究を拒絶する声明を発表。67年に日本物理学会主催の国際会議に米軍の資金が入っていたことが判明すると、改めて「軍事のための科学研究は行わない」と強調した。

 自民党からは「左翼偏向だ」などと批判がたびたび噴出。政府からの諮問や予算は減り、政策提言の役割も59年に設置された首相の諮問機関、科学技術会議(現・総合科学技術・イノベーション会議)へ移っていった。

 2017年、学術会議は軍事応用が可能な基礎研究に対する防衛省の助成制度を批判。安全保障を重視する自民党議員らの憤激を買った。20年には新会員候補のうち6人の任命を菅義偉首相(当時)が拒否。対立は深まり、組織見直し論に火が付いた。

 こうした中、学術会議は妥協的な姿勢を見せる。22年、人工知能(AI)や量子といった軍事応用可能な「デュアルユース技術」とそうでない技術の厳密な区別は困難だとの新見解を公表。23年には適切な管理の下で、研究者や大学に研究実施の判断を委ねた。当時の政権幹部は「現実路線だ」と歓迎したが、会員の間では政府介入への懸念が強まる結果となった。

 今回の法案は、菅政権の時代が去り、声高に学術会議改革を叫んだ党重鎮らが落選した“空白”の中で提出。現行法でうたわれている「平和」や「独立」は消え、業務をチェックする監事や、活動を評価する委員会の委員を首相が任命するとの内容だ。学術会議は4月に法案修正を求めたが、林芳正官房長官は即座に応じない考えを示した。

 13日の衆院本会議では少数与党に加え、日本維新の会が法案に賛成した。三木圭恵議員は「今後は大いに防衛技術の研究に貢献していただきたい」などと求めた。

 論戦は参院に移る。立憲民主党は反対の立場を維持し、修正案の提出も視野に入れる。だが「野党でまとまるのは難しい」と気弱な声も漏れる。

 国会前では連日、市民や研究者らが「学術の終わりの始まりにするな」などと抗議。学術会議会員の川嶋四郎同志社大教授は「自由に物を言い、科学的な知見に基づく意思の表出ができるのか」と先行きを案じた。


少数与党という状況の中で維新の賛成を得ての衆院通過。維新の主張は国からの独立は民営化が必須とのことだが、新自由主義の典型的な発想だ。民営化が多くの公的な事業を縮小・破壊してきた事実はCOP19の流行下での事態を想起するだけでも十分だろう。また、こうした発想で教育の無償化が推進されることへの危惧も強くなる。教育・研究の公的な性格を担保することはいずれの政権であっても義務だ。


5月14日 西田氏発言 謝罪・撤回「納得できず」

 自民党の西田昌司参院議員の「ひめゆりの塔」の展示説明を巡る一連の発言を受け、沖縄県議会は13日、ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長を招き、議員勉強会を開いた。普天間館長は資料館の現状や展示を説明し「謝罪・撤回という言葉は言っているが、納得できない。本質的なことを謝っていないと感じた」と西田氏を批判した。

 普天間館長は展示は元ひめゆり学徒隊や沖縄戦体験者の膨大な証言や記録に基づいている」と話した。終了後、報道陣の取材に「自分の歴史観ではなく、沖縄に関する資料を勉強して現地に来て、真摯に向き合ってほしい」と語った。

 西田氏の発言後、資料館には寄付が約190件寄せられ、励ましのコメントが多く添えられていた。西田氏から問い合わせや確認はないという。

 県議会は抗議決議案の採決に向け調整。勉強会後、自民県連の座波一幹事長は「(西田氏は)沖縄戦の事実に対する認識を改めなければならない」と述べた。

 西田氏は3日、那覇市でのシンポジウムで、展示説明について「歴史の書き換え」と主張。9日に記者会見を開き謝罪したが「自分の言っていることは事実」などと持論を展開し、批判が強まった。


「東京裁判史観」として戦後の歴史教育を批判してきた保守派の議論を自分流に曲解した西田氏の発言に対して多くの批判が寄せられている。沖縄県議会での動きを西田氏は重く受け止める必要がある。戦後80年の節目での発言は不適切ではあるが、改めて「戦後」を考えなければならない。とりわけ、サンフランシスコ条約と日米安保条約によって作られた「繁栄」を再検討することが肝ではないか。


5月14日 地方議会 PFAS対策 意見書が急増

 発がん性などが指摘される有機フツ素化合物(PFAS)が、河川や地下水で高い濃度で検出されている問題を巡り、衆院と参院が2024年度に21の地方議会の意見書を受理したことが13日、衆参両院への取材で分かった。22年度の3議会、23年度の11議ふぶら急増しており、健康被害への懸念の高まりが背景にあるとみられる。

 PFASの代表物質にはPFOAとPFOSがある。体内に蓄積すると健康に影響する可能性が指摘されている。

 意見書は主に国の対策を求めるもので、衆参両院によると、22年度に受理されたのは大阪府と沖縄県の地方議会。23年度は岐阜、滋賀、京都など9都府県、24年度は15都道府県に所在する議会からのものだった。同じ議会から1年度に複数受理したり、2年度連続で受理したりしたケースもあった。

 24年度の兵庫県の意見書は「健康被害や農水産物への風評被害が引き起こされる不安が高まっている」とし、人体や環境への影響調査を求めた。神奈川県の意見書は、隣接する東京都でPFOSを含む泡消火薬剤の流出があり「下流に位置する本県自治体が水質調査を行うなど、県域を越えた対応が必要な事案も生じている」と強調。泡消火薬剤の使用を規制するための法整備を要望した。


国による早急な実態調査が求められているにもかかわらず、動きは鈍い。早急な調査と対策が必要。もちろん米軍と自衛隊への立ち入り調査も伴うことは確認しておかなければならない。


5月14日 支援団体調査 ヤングケアラ―指針「なし」7割

 大人に代わり日常的に家族の介護や家事を担うヤングケアラーに関し、支援団体が全国の小中高校の教員309人に実施した調査で、統一的な対応指針が学校にあったかどうかについて「なかった」との回答が71・2%に上ったことが13日、分かった。ヤングケアラーに関する研修を受けた教員は22・3%だった。

 調査は一般社団法人ヤングケアラー協会(東京)がインターネットで2月に実施。対応指針の設問は、「なかった」の他は「あった」8・1%、「分からない」20・1%などだった。

 協会の代表理事は「ヤングケアラーを適切な支援につなぎ、教員の負担を減らすためにも明確な指針の策定が必要だ。自治体など外部との連携強化や、教員への研修充実も求められる」と指摘している。

 調査結果によると、ヤングケアラーを把握するのが難しい理由(複数回答)としては「家庭内の事情に立ち入ることへのちゅうちよ」が64・7%で、「生徒本人が自覚していない場合がある」55・0%、「普段の関わりでは分からないケースが多い」51・1%と続いた。校内での支援策(同)は「情報共有」が56・6%。「養護教諭や担任中心の個別支援」が54・4%。「自治体との連携」が39・2%だった。

 自由記述では「福柾関係の機関との連携があいまい。はっきりとした役割分担が必要だ」といった意見があった。


子どもの家庭環境がどのようなものであり、どのような問題を抱えているのかを知ることは大切なこと。そして、それを知る手がかりは学校であるだろう。そうした観点からのアンケート調査だと思う。結果は、学校では十分な対応(発見と事後処理など)ができないというものだった。もちろん教員の手が足りないことやSSW(スクールソーシャルワーカー)の配置が十分でないことなどが挙げられるのだろうが、そもそもかつて見られたようなコミュニティの核としての学校が消滅していることへの注目も必要だろう。


5月11日 【教育】 残業減と働きがい 両立へ

 時間外勤務(残業)が過労死ラインとされる80時間を超える教員をゼロにするー。京都府教育委員会は2025年から5年以内の達成を目指す「働き方改革推進計画」をまとめた。(生田和史)

 同推進計画は、昨年8月に中教審が公立学校の教員確保に向けた総合的な方策を答申したことなどを受けて策定された。

 残業削減の目標では80時間以上の割合をゼロにするほか、全教職員の月平均45時間以内も引き続き据えた。勤務時間の削減に向けては、5分野に分けて重点取り組みを例示しており、授業・学級経営では教科担任制の推進のほか、初任者の授業時間や担任業務の軽減を図るとした。部活動は、休日行事や大会を精選し、校内で複数種目をまとめて実施する。学校行事・学校経営・事務では、生成AIを活用した業務改善の検討などを明記した。

 業務を効率化し、勤務時間を減らす一方で、教員のやりがいも重視した。

 18年3月策定の前計画では、勤務時間の削減に主眼を置いた取り組みを進めてきた。ただ、多くの教員は授業や生徒指導、学校行事についてはやりがいを感じるが、事務仕事や保護者対応などは労働時間がいくら短くても負担に感じるとされる。また、部活動は教員によってやりがいを感じる層と負担に感じる層が二分されており、こうした傾向は府教委の調査でも裏付けられている。そのため、一律的に業務削減を目指すのではなく、働きやすさと働きがいの両立も図るとした。

 計画が掲げる取り組みの進み具合は毎年実施する勤務実態調査で把握。府内小中学校など4校を実践推進校に指定するほか、府教委にワーキングチームを設置して、大学教授の助言を受けながら改善策の実施や成果を検証する。得られた成果は他校にも広げる考えだ。教職員企画課は「高い目標だが、教員定数改善など国の協力も得ながら達成したい。やりがいを感じていない教員は良い教育などできない。最大の力を発揮してもらうために、いきいきと働くことを通じた働き方改革を目指したい」としている。

 府教委は京都市を除く府内公立小中学校、高校、特別支援学校の教員の2024年度勤務実態調査の結果を公表した。全校種で勤務時間は減少したものの、中学校の残業は平均で月80時間を上回っており、勤務実態は依然として厳しい状況にある。

 校長など管理職を含む教員の月平均の時間外勤務は、小学校は前年度比で8時間8分減の59時間52分、中学校は2時間16分減の80時間40分、高校は7時間減の63時間56分、特別支援学校は3時間52分減の37時間44分。特別支援学校のみ、新たな働き方推進計画でも掲げる45時間以内を達成している。

 残業時間が月80時間を超える教員の割合は小学校が18・0%、中学校48・8%、高校34・9%、特別支援学校5・2%だった。

 平日の1日当たりの平均在校時間は小学校10時間46分、中学校10時間59分、高校は10時間14分、特別支援学校9時間44分。土日は小学校34分、 中学校2時間37分、高校2時間24分、特別支援学校22分。

 全教員の約1割に当たる1100人を無作為に選び、昨年10月とい11月のそれぞれ1週間の出退勤時刻を調査した。

 今回調査で初めて働きやすさや働きがいの指標も公表した。気分障害や不安障害を選別する調査「K6」は0〜24点で評価し、点数が低いほど良好で、10点以上でうつ病、不安障害の疑いがあるとされる。結果は、小学校が5・5点(前年度5・7点)、中学校が5・5点(5・8点)、高校が4・8点(5・4点)、特別支援学校が5・O点(5・9点)。いずれも点数が下がり、改善が見られた一方で、仕事に関連する充実した心理状態(UWES)の分析(0〜18点で評価し、得点が高いほど良い状態)では、小学校が9・5点(10・O点)、中学校は9・7点(10・2点)、高校9・7点(10・8点)、特別支援学校10・2点(10・9点)と悪化した。

 働きやすさの数値が改善された一方で、働きがいの数値は悪化していることについは、府教委教職員企画課は「働きがいを感じる業務を削った可能性は否定できないが、この1年を見ても不登校や特別支援教育を必要とする児童生徒が増えており、対応も高度化している。教員に求められる業務のハードルが上がって、負担に感じているのではないか」としている。


この調査からすぐに働き甲斐と働きやすさがトレードオフの関係にあるとは断言できないにしても、何らかの相関があるように思える。府教委が言う「やりがいを感じていない教員は良い教育などできない」との考え方には疑問が残る。なにをやりがいと感じるかは個々によってかなりの温度差がある。ある職場ではプラスであり、別の職場ではマイナスであることはしばしばみられることである。まずは、勤務時間の削減が必要なのだろう。給特法の廃止ではなく改正でお茶を濁したい文科省の意図は残業を前提とした教育の在り方が現実味を帯びているなかで、地方自治体での取り組みに限界があるのだが国の後追いや補完でない発想が必要。


5月11日 西田氏発言 沖縄 批判と憤り拡大

 自民党の西田昌司参院議員が「ひめゆりの塔」を巡る展示説明を「歴史の書き換え」とした発言の撤回を表明した。だが、謝罪を口にしながら自身の認識を「事実」と語る姿勢は沖縄県民の感情を逆なでし、怒りと批判は拡大。数少ない“根拠”は正確性が疑問視され「不十分な事実確認で、沖縄の歴史を否定している」と憤りの声が上がる。

 「日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの隊が死ぬことになった。そして米国が入ってきて、沖縄が解放されたと、そういう文脈で書いているのではないか。亡くなった方々は本当に救われない。歴史を書き換えられると、こういうことになってしまう」

 発言は3日、那覇市での改憲派のシンポジウムであった。地元メディアが報じると批判が噴出。連休明けの7日、東京で各社の取材に応じ、撤回を否定した。与党内からも苦言が相次ぎ9日、改めて記者会見した。

 冒頭で「おわび」しつつも「言つていることは事実」と強調。具体的な根拠としてあげたのが、20年ほど前にひめゆり平和祈念資料館で見たとする「年表式」の展示だ。

 西田氏は「日本の侵略に始まり、米軍の侵攻または反攻で戦争が終わったと書かれていた」として、日本が「侵略」米軍が「侵攻」「反攻」という表現になっていたことを問題視してみせた。

 こうした展示は存在するのか。普天間朝佳館長は「2021年の改装前に展示していた、太平洋戦争の戦況図のことではないか」と話す。

 実物は残っていないが、同じ図が載った当時の資料館ガイドブックには、日本軍の「侵攻」米軍の「反攻」と記されており、他国の主権を不当に侵害する印象がより強い「侵略」の文言はない。西田氏がこの図に基づき「歴史の書き換え」を主張したのならば、根幹部分が間違っていることになる。

 沖縄戦の状況を解説する別の図には「米軍の進攻状況」との文言があった。普天間館長は「『米軍の反攻によって戦争が終わった』という記述はない。資料館では、西田氏が言うような説明は過去も現在も一切していない」と断言する。

 9日の記者会見で「県民の心に寄り添う」とも述べた西田氏。だが、沖縄では「かなりむちゃくちゃな教育のされ方をしている」との発言は撤回しなかった。

 沖縄戦の遺骨を収集する団体「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(71)は「沖縄では地域の教育として体験者の証言を伝えている。歴史と事実に根付いた平和教育を否定するのは、沖縄の歴史そのものを否定することだ」と声を詰まらせた。


西田氏の基本的な発想には平和教育=東京裁判史観(自虐史観)というドグマが存在しているのだろう。戦争を正義の戦争と不正義の戦争とに分けて考える思考方法をとると、日本が行った戦争はどちらなのかという判断を迫られることになる。しかし、ガザやウクライナの現状を見るとき正義の戦争などないことは明らかではないのだろうか。朝日新聞(2021年8月11日)の記事「自決前、大田中将が海軍次官にあてた電文(全文)」は、軍人の目から見た戦争の理不尽さが綴られている。


5月10日 西田氏発言 批判浴び強気の姿勢一転

 自民党の西田昌司参院議員が9日、沖縄戦の「ひめゆりの塔」の展示説明を巡る発言で与野党から批判を浴び、強気の姿勢から一転、撤回に追い込まれた。自民執行部は、問題が長期化すれば夏の参院選に影響しかねないと懸念し、火消しを急いだ。

 西田氏は撤回しないと7日に明言したばかりだが、8日には自民の小渕優子沖縄振興調査会長が党会合で非難。参院選への影響や保守系の反発を懸念した自民参院幹部は処分は見送ったものの西田氏を呼び出し、口頭で注意。7日の記者への説明では逆に火に油を注いだと苦言を呈し、9日の謝罪につながった。

 公明党は夏に改選を迎える西田氏の推薦を決めていたが、謝罪と撤回を要求。西田実仁幹事長が8日、自民の松山政司参院幹事長に抗議すると、松山氏は「大変迷惑をかけ申し訳ない。おわびするよう指導している」と述べ、沈静化に走った。

 撤回理由について西田氏は「憲法改正の講演で言うべきではなかった。TPO(時間や場所、状況)を、もう少しわきまえるべきだった」などと釈明したが、「問題なのは事実より、私の発言で無神経に県民の心を乱してしまった」と述べ、展示説明を巡る自身の発言については正当性を繰り返し主張した。官邸幹部は「沖縄の皆さんに本当に申し訳ない」と強調するものの、火種はくすぶりそうだ。


「納得できない」

 自民党の西田昌司参院議員が「ひめゆりの塔」を巡る自身の発言を撤回、謝罪したが、沖縄県では「心の傷は消えない」「事実確認が甘く納得できない」と批判的な受け止めが広がった。

 「撤回」「おわび」を口にしつつ「自分の言っていることは事実」などと主張を繰り返したことに「許せない」との声が漏れ、県民の理解は到底得られていないもようだ。

 ひめゆり平和祈念資料館(糸満市)の普天間朝佳館長は西田氏の記者会見の中継を視聴。報道陣の取材に「前に言ったことが正しいと言っている。非常に納得がいっていない」と不満をあらわにした。

 その上で「誠実さがない。印象の話や、非常に曖昧な表現をしていた。国会議員として、確認して発信しなくてはならないのではないか」と苦言を呈した。

 9日に資料館を訪れた三重県四日市市の男性(74)は「展示を見ても西田氏の言うような印象はなかった。騒がれたから撤回したんだろうが、軽はずみに発言しては政治家として駄目だろう」と憤った。沖縄戦で女学生として動員され、戦後は小学校教諭として歴史教育に携わってきた翁長安子さん(95)=那覇市=は「謝罪しても県民の心の傷は消えない。沖縄戦の実相を知らず、勉強不足のまま発言したことは許せない」と涙声で訴えた。


西田氏会見発言要旨「事実関係は私が申し上げた通り」

 自民党の西田昌司参院議員の記者会見要旨は次の通り。

  「ひめゆりの塔」に関する発言は非常に不適切だった。沖縄県民におわび申し上げ、発言を訂正、削除する。撤回する。

 県民にとって、ひめゆりの塔は苦しみを思い出させるものだ。あの場で触れる必要はなく、配慮が足りなかった。島民の皆さんの心に傷を負わせてしまったのは否めない事実だ。 TPOを、もう少しわきまえるべきだった。しっかり反省し、県民の心に寄り添うと誓う。近々ひめゆりの塔を訪れたい。

 沖縄在住の知人が、ひめゆり平和祈念資料館を訪れたが、私が発言したような展示説明はなかった。2021年に改修されて、展示が変わったのだろう。 21年前、ひめゆりの塔に掲示されていた年表には、日本の侵略により戦争が始まり、米軍の反攻により戦争が終わったと書かれていた。事実関係は私が申し上げた通りだと思っているが、争点にする必要はない。問題の本質は、そちらではない。

 (「沖縄の場合、地上戦の解釈を含めて、かなりむちゃくちゃな教育のされ方をしている」との発言は撤回)しない。米国占領下の沖縄では、日本が悪いとの、ある種の反日教育をされてきた。歴史を取り戻すべきだ。全部を流さない切り抜き報道だ。


「沖縄県民におわび申し上げ、発言を訂正、削除する。撤回する」という言葉の軽さに驚く。記者会見の発言をみればそれらが空虚であることがひしひしと伝わる。そして、沖縄の教育を「反日教育」と再度指摘したことはなんの「おわび」にもなっていない。一度口から出た言葉は「削除」などできないことを西田氏は理解すべきだ。戦後史を直視するなら日米安保条約とりわけ地位協定に改訂・破棄に言及するのが政治家の務めではないのか。


5月10日 城陽市 全学童の民間委託スタート

 城陽市は、直営してきた学童保育所全10力所の運営を4月から民間に委託した。環境や利用料は変えないが、受託業者が季節行事や遊びの充実を図る。夏休みなどの長期休みに昼食を提供することも、保護者から希望があれば、市と協議し検討する。

 学童保育所は共働き家庭などの小学生を放課後に預かる。城陽市は市内10小学校にそれぞれ設けており、平日は午後7時まで、土曜や長期休み中も預かっている。業界大手の「シダックス大新東ヒューマンサービス」(東京都渋谷区)が運営を受託した。

 同社は今後、ハロウィンなど新たな季節行事を追加する。他の学童保育所とインターネットで結び「けん玉大会」を開くなど遊びも充実させる。今年の夏休み以降の長期休み期間中は、これまでの持ち込みを基本としつつ、保護者が希望すれば昼食として弁当を有料で提供することも検討する、という。

 保護者に安心してもらうため、児童たちを預かる支援員は雇用を継続している。保育所の設備などの環境、開設時間、利用料は直営だった昨年度と同じにしている。おやつと保険料はキャッシュレス決済を導入した。

 城陽市の学童保育所の登録児童は2013年度は503人だったが、共働きが増え、23年度は821人に増加した。一方で支援員の不足と高齢化が進み、市が求人しても集まらず、補助員で対応する状況が続いている。支援員不足になると待機児童が出る恐れがあるとして、人材確保が得意な民間事業者への委託に市が踏み切った。

 委託期間は昨年9月末から2030年3月末までで、今年3月末までは引き継ぎのための準備期間だった。委託額は11億4400万円。


公的な教育・福祉の場で次々と民間事業者が参入している。シダックス大新東ヒューマンサービスのHPには「全国で約1,000カ所以上の学童保育所等の運営を受託。地域・家庭と連携しながら、子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりと、楽しみ、学びながら生活できる施設の運営」とあるり、全国各地で事業展開がすすんでいることがわかる。しかし、この事業での収益はすべて東京へ還流し地域の経済還流にはつながらない。市当局は「人材確保のため」というが他の方法の検討は行ったのだろうか。


5月10日 東山のゲストハウス イスラエル人に誓約要求

 京都市東山区のゲストハウスが、イスラエル人宿泊客らに「戦争犯罪」への関与を否定する誓約書に署名するよう求めていたことが9日までに分かった。ゲストハウスは旅館業法が禁じている「宿泊拒否」はしていないとする一方、在日イスラエル大使館は「差別的な行為だ」と京都府や京都市に対応を求めている。

 ゲストハウスでは昨年から、イスラエルやロシアなどから来た男性客に対し、「戦争犯罪に関与したことがない」などと誓う誓約書に署名を求めてきた。男性オーナーによると、戦争犯罪を許さないとの思いを伝えるのが狙いといい、「署名を拒んでも宿泊を拒否するつもりはなかった」と説明。これまで対象者は複数いたが、署名を拒んだケースも、宿泊を断ったケースもないという。

 一方、イスラエル大使館などによると、4月に利用した男性客は署名を求められた際、ショックを受けたものの、「部屋を確保するためには署名するしかない」と考え、「重い気持ちで署名した」という。大使館は取材に「彼(男性客)は異議を唱えて公正で率直な対話を試みたが、その機会は与えられなかった。国籍で区別しており、明確な差別だ」とする。ギラッド・コーヘン駐日大使は4〜5月、京都府の西脇隆俊知事と京都市の松井孝治市長に調査と再発防止策を求める文書を送った。

 市は4月24日、ゲストハウスを訪問し、オーナーに聞き取りを行った。市医療衛生センターは取材に「誓約書への署名は任意で、旅館業法違反と言えない」としつつ、人道上、不適切と指摘したという。


世人研理事・坂元名誉教授特定の国籍限定は差別
  戦争犯罪を行った国はイスラエルやロシアなどに限らない。他の国や地域出身の人でも関与した可能性はあるのに、その人たちには署名を要求せず、特定の国籍に限定して戦争犯罪に関わった可能性があるとして署名を求める行為は、国際人権規約(自由権規約)が禁じる国籍差別と言える。

 むやみに宿泊拒否してはならないとする旅館業法の趣旨にも反していると言わざるを得ない。旅館やホテルは公共性が高く、旅館業法で宿泊拒否できるのは特定感染症の患者、違法行為や風紀を乱す行為をする恐れがある場合などに限られている。戦争犯罪者も拒否できない。

 仮に誓約書に「関わった」と記入した場合にどうするのか。宿泊拒否しないのであれば、誓約書に実質的な効果はない。戦争犯罪を問題視する思いは分かるが誓約書に署名を求める行為には論理の飛躍がある。京都市は法の趣旨に沿って対応をする必要がある。


昨年7月11日、イスラエル人の宿泊を拒否したとして「ホテル・マテリアル」の支配人が解雇され、地位保全を求めて裁判に訴えたという事件があった。旅館業法では「違法行為や風紀を乱す行為をする恐れがある場合など」に限り宿泊拒否ができるとされている。イスラエルの行為を「国際法違反だ」とする論理展開だったと記憶する。国家犯罪とやくざの犯罪を同一視することはできないのだが、「戦争」に対する市民の抵抗はどのように確保すればよいのかは悩ましい問題ではある。


5月9日 国会 教員残業減 目標明記

 教員の処遇改善や長時間労働是正に向けた教員給与特別措置法(給特法)改正案など関連法案が、一部修正される見通しとなったことが8日、関係者への取材で分かった。残業時間を月平均約30時間まで減らす目標や、公立中での「35人学級」実現に向けた措置を取ることなど、政府方針を明記する。衆院文部科学委員会で審議中で、立憲民主党や日本維新の会が提案し、自民党なども賛同する。`

 関連法案は、教員の負担軽減と給与増を両面で進めることで、なり手確保を図るのが狙い。公立学校教員に残業代の代わりに基本給の4%相当を支給している「教職調整額」を2026年1月から毎年1%ずつ引き上げ、31年1月に10%とすることが柱。

 また負担が重い学級担任への手当を加算するほか、新たな職位として若手のサポートや学校内外の関係者との調整役を担う「主務教諭」を設ける。26年度からは教育委員会に対し、教員の業務量管理や健康確保をするための計画策定と実施状況の公表を義務付ける。


予想通りといえばそれまでなのだが、「目標明記」で議論は終結ということになるのだろうか。「主務教諭」の設置は学校現場での縦割り管理であり、教頭法制化にはじまった自民党の既定方針。そして、必ず賃金(手当)の改定を伴った。今回も4%から10%へという「アメ」で、長時間労働の維持(給特法廃止なし)の「ムチ」の決着。立憲民主党に所属する日教組出身の議員はどのような判断をしたのだろうか。責任ある回答が求められる。


5月9日 市立小学校 家庭訪問半減

 担任の教員が児童生徒の自宅を訪ね、家庭での様子や学校生活での困り事を保護者に尋ねる家庭訪問。5月の大型連休前後の恒例行事として、京都市立小では全家庭を対象に実施されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で一斉休校した2020年を機に減少している。背景には教員の残業抑制のほか、共働き家庭の負担軽減という事情があるようだ。(岡本早苗)

 京都市教育委員会によると、家庭訪問の実態を調査したことはないが、市立小の実施校は半数程度に減少しているという。コロナ拡大で初の緊急事態宣言が出た20年は4〜5月が休校となり、家庭訪問を実施できないまま1年を終えた。ある小学校教員によると当時、「家庭訪問がなくても何とかなるんじやないか」と校内で話題になったという。

 市立小では、翌21年は児童の玄関先で立ち話程度の家庭訪問をすることもあったが、感染防止のため見送るケースが多かった。22年以降、家庭訪問を希望する家庭だけにしたり、家庭訪問を取りやめ校内での個人面談に切ぴ替えたりする流れが広がったという。市教委は、保護者側に共働き家庭が増え、日中に在宅する保護者が減ったことも影響しているとみている。

 家庭訪問は市立中でもコロナ禍を境に減少しており、実施校は現在は3分の1以下になっているという。

 近年、家庭訪問が取りやめられた市立小に勤務する男性教諭は「5日間で30人ほどの子どもの家を回るのに負担感があったのは確か」と打ち明ける。ただ、子どもの生活環境に触れることで虐待の影を感じたり、小さいきょうだいの世話をするヤングケアラーだと気付いたりした経験があり、「児童が育つ家庭を知っているのと知らないのとでは、普段の接し方や指導の仕方が変わってくる。家庭訪問で得られる情報は多く、心配な児童の家には今も理由を付けて訪問するようにしている」と言う。

 京都教育大の片山紀子教授(生徒指導)によると、教員による家庭訪問は明治時代にさかのぽることができ、当時は小学校への就学や出席の督促を目的としていたという。昭和初期は父親が出征した家庭を支える福祉的な意味も加わり、教育と福祉が一体化した。「子どもの家庭の様子がよく分かり、保護者にとっても1対1で話しやすい利点はあるが、先生も負担、保護者も負担で全国的に減少する傾向にある。実施するかどうかは地域や学校の実態 によって判断することが大事。子どもを福祉面で支援する必要がある場合は、スクールソーシャルワーカーらとの多職種連携を積極的に進め、先生の負担を減らすことが大切だ」と話す。


教員も賛否割れる

 家庭訪問の必要性については教員の間でも意見が分かれている。学習指導と生活支援を教育活動の両輪と位置付けてきた教員からは「生活上の課題を抱えている子どもの支援に家庭訪問は欠かせない」との意見が聞かれる一方、家庭訪問に割く時間を授業の充実に充てるべきと考える教員課題を抱えている子どもの支援に家庭訪問は欠かせない」との意見が聞かれる一方、家庭訪問に割く時間を授業の充実に充てるべきと考える教員からは「現場は過労死レベルの働き方をしている。やめられることはやめないと教育が崩壊する」との声が漏れる。

 京都市立小の教諭岩本訓典さん(50)は家庭訪問を大切にしてきた教員の一人だ。訪問の際は家のたたずまいやマイカーの車種、玄関の靴がそろっているかどうかの確認に加え、室内では壁に貼られた子どもの作品や賞状、家族の写真にもさりげなく視線を走らせる。家庭の経済事情や保護者の忙しさ、子どもへの思いが垣間見えるからだ。

 勤務先では一斉の家庭訪問に替わり、保護者に学校に来てもらって個人懇談を行うようになった。懇談でも話はできるが、家庭訪問で得られる情報量には届かないという。

 「学校では『問題のない子』であっても、家庭などに何らかの問題を抱えているケースは多い。教師は、学校では見ることができない子どもの様 子を想像したり、見ようとしたりすることが大切で、家庭訪問の必要性を感じている」と話す。

 一方、家庭訪問を継続する学校に勤務する教員は、年度初めの一斉の家庭訪問はなくすべきと考えている。「支援が必要な子どもは学校の様子で分かるし、年度途中で何度も家庭訪問する機会がある。参観日や三者面談、進路説明会などでも保護者との連絡は可能」と言い切る。

 年度初めはそもそも残業が多い。1家庭10分程度の訪問時間は長引くことも多く、「家庭訪問をしたら絶対に勤務時間内に業務が終わらない」と 話す。先輩教員が主張する生徒指導上の必要性も理解するが、保護者対応に不慣れな若手教員ほど負担が大きい。「先生の一番の仕事は面白い授業をすることではないか。子どもの家庭の困難を丸ごと抱えたら先生の心と体がつぶれてしまう」と訴える。

 別のベテラン男性教諭は、家庭支援に学校と児童相談所など福祉機関がさらに連携する必要性に言及する。「教員が子どもの生活まで引き受けるのはしんどいという気持ちもよく分かるが、子どもを支える核になるのはやはり担任ではないか。貧困や虐待などの問題に学校だけで対応しようと思うとしんどいが、関係機関とつながって子どもを支えていくことはできる」。


おそらく「家庭訪問」というのは日本の学校教育の特徴だろう。近代学校が成立した明治初期の「小学校教員心得」(明治6 文部省)では、教員が家庭への介入を当然とし促す表現が多数みられる。家庭訪問もそうした流れの中に位置づけることができるだろう。個人主義的価値が大きくなった現在、公が私へ介入することへの拒否感や批判が出て当然なような気がする。「マイカーの車種、玄関の靴がそろっているかどうか」などのへ教員の目が注がれていることへの反発は大きい。一方で、子どもの虐待や貧困への目くばせは学校というプラットフォームでは不可欠のこと。それをスクールソーシャルワーカーの仕事としてしまうことにも違和感があるだろう。ただ、給特法が議論されているこの時期に「家庭訪問の是非」が記事になることは、市教委が「廃止」を教員の働き方改革に位置づけているのではと考えてしまう。仮にそれが勤務時間削減の材料として計画されているなら、表層的な議論のそしりは免れない。


5月8日 西田昌司氏発言 沖縄戦の惨禍 否定された

 自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)が、沖縄戦で「ひめゆり学徒隊」として動員された学生らを慰霊する「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)について、歴史を書き換えていると主張したことに対し、県内から批判の声が相次いだ。「沖縄戦の実相を知って」。終戦から間もなく80年となる中、戦争体験者は減少し続け、関係者は記憶の継承に危機感を抱いている。

 太平洋戦争中に疎開船が米軍に撃沈され、多数の学童らが死亡した対馬丸事件を後世に伝える対馬丸記念館(那覇市)の平良次子館長(62)は「平和を 構築するための取り組みを続けてきたが、全てを否定されたようだ」と憤った。

 県議会でも反発の声が上がった。県政与党の山内末子県議(てぃーだ平和ネット)は「沖縄戦で『地獄を見た』県民を愚弄する発言だ。断じて許せない」と言明。自民沖縄県連の島袋大会長も「県民にとって非常に厳しい発言だ。共催した自民として、おかしいものはおかしいと申し入れる」とした。


京の関係者ら「学徒隊を侮辱し、軽率」

 沖縄戦で犠牲となった女子学徒隊らを慰霊する「ひめゆりの塔」の説明を巡り、自民党の西田昌司参院議員が歴史を書き換えていると発言したことに対し、7日、京都の関係者から疑問や怒りの声が相次いだ。

 「ひめゆり学徒隊の経験者らの積み重ねを侮辱しかねない発言で軽率だ」。京都沖縄県人会の上原任会長(75)は語気を強めた。

 12万人超の県民が犠牲になった沖縄の戦後の平和教育は「もう二度とあんなことは起こしたくない」との思いが原点だとし、「日本国憲法に基づくまっとうな営み。西田氏はそれを『むちゃくちゃ』と評したが、それこそむちゃくちゃだ」と批判した。

 ひめゆり学徒隊に詳しい立命館大の小川真和子教授は「思い込みの発言だろう。(戦後教育批判の)イデオロギーのためにひめゆりを持ち出したのなら、西田氏自身が歴史をゆがめていると思う」と指摘する。

 自身の大叔母は、学徒動員された沖縄師範学校女子部の教員で、教え子を失った責任感からか戦後はひめゆり平和祈念資料館の建設を支援したという。「資料館の展示は敵も味方か関係なく、戦争が何をもたらすかを伝え、さまざよな角度から歴史を捉える意識が感じられる」とし、西田氏の主張に疑問を呈した。

 7日夕、弁護士団体「自由法曹団京都支部」は京都市中京区の自民府連を訪れ、発言の撤回と謝罪、厳正な処分を申し入れた。府連前には市民団体など約50人が集まり「沖縄戦の歴史を歪曲するな」と声を上げた。


ひめゆり平和祈念資料館普天間館長「学徒隊を侮辱し、軽率」

 西田昌司氏が述べたような説明は36年前の開館以来、資料館には一切存在しない。生徒が身を隠した自然壕「ガマ」の周辺にもない。私たちは単純で一方的な歴史観を主張している訳ではない。つらい体験を記録し、血のにじむような思いで作り上げた展示に対する西田氏の発言は、携わった人々の思いを踏みにじるものだ。激戦地だった嘉数の高台(宜野湾市)に建つ慰霊碑「京都の塔」には、地上戦で亡くなった沖縄住民への追悼の言葉が刻まれている。京都から沖縄へ思いを寄せてもらっていると考えてきただけに今回の発言はとても残念。


沖縄国際大・石原名誉教授客観的事実認識を

 ひめゆり平和祈念資料館は、膨大な証言を戦時の記録などによって裏付け、検証を重ねた上で展示しており「歴史を書き換えた」とする西田昌司氏の批判は当たらない。国会議員は先人たちが集積してきた記録を正しく学ぶ責務がある。西田氏は歴史をゆがめる発言は撤回するべきだ。戦没者の悲惨な体験を「殉国美談」として美化するような風潮もあるが、日本軍が国体護持のために徹底抗戦し、住民をも動員した戦場で学徒らの多くが死亡したことは客観的な事実だ。


自民党県連ら県民感情を逆なで

 自民県連の座波一幹事長は記者会見で県民感情を逆なですると反発。県議会へ抗議決議を提案する意向も明らかにした。林芳正宣房長官は会見で「沖縄は先の大戦で筆舌に尽くし難い苦難を経験された。歴史をしっかりと心に刻む」と述べた。

 自民幹部は、発言の中身を含めて党県連から早急に事情を聴取する考えを公明党の西田実仁幹事長らに伝えた。西田幹事長は会見で、発言の撤回と県民への謝罪が必要だとの認識を強調した。


西田氏「違う形で切り取られた」

 自民党の西田昌司参院議員は7日、那覇市で3日に行われた憲法シンポジウムで「ひめゆりの塔」の説明が歴史を書き換えているとした自身の発言意図について国会内で報道陣に説明した。

 西田氏は「大きな流れとして、沖縄で日本人を守るためにたくさんの犠牲が出て悼むと同時に、そういう戦争がなぜ起こったのかをもう一度考えないと沖縄の方々が救われないという趣旨の話をしたが、違う形で切り取られた」と主張。シンポジウム当日には発言を報じた地元紙から取材を受けていないとし「資料館関係者に感想を取材する前に、私に発言の真意を取材すべきだ」と抗議した。

 発言の根拠となる展示や説明物については国会議員になる前に塔の近くの洞窟のようなところで見たとし「一つ一つは覚えていないが、その時に明確に違和感のある印象を受けた」と説明。今後現地を再訪する意思があるかを問われると「いずれ行ってみたいと思う」と語った。

 シンポジウムで批判した戦後教育については、戦勝国が一方的に敗戦国を裁くという東京裁判の歴史観のもとで行われてきたと断定し「かつてアメリカが正しいと言ってきたことが間違っている。今こそ日本が自分の歴史を取り直すチャンス。その一環で憲法の話や(今回の)私の発言がある」と自らの歴史観と発言の意図を訴えた。


西田氏発言要旨
 

 シンポジウムの記念講演での西田氏発言要旨は以下の通り(琉球新報の取材録音データより作成)

 ひめゆりの塔ですかね、何十年か前に、また国会議員になる前にお参りに行ったことあるんですけれど、今どうか知りませんけど、ひどいですね。亡くなった女学生の方々がたくさんおられるんですけれども、説明のしぷりを見ていると、要するに日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの隊が死ぬことになっちゃった。そしてアメリカが入ってきて、沖縄は解放された。そういう文脈で書いてるじゃないですか。亡くなった方々、本当に救われませんよ。歴史を書き換えられるとこういうことになっちゃうわけですね。沖縄の中では、今の知事さんもおられますけれどもね、そういう人が結構それなりの市民権持っているわけですよ。京都も共産党が非常に強い地域ですけれども、ここまで間違った歴史教育はまだ京都ではしてません。沖縄の場合には地上戦の解釈を含めて、かなりむちゃくちゃな教育のされ方をしてますよね。我々自身が自分の頭で考え、流されてる情報が何が正しいのかどうかということを自分たちで取捨選択して、自分たちが納得できる歴史を作らないと、日本は独立できないんですよ。


参議院選を前に京都の町中に張られている西田氏のポスターには「経世済民こそ政治の使命」なるコピーが書かれている。氏の経世済民とは、自然の破壊と歴史の歪曲かと思ってしまう。西田氏のこれまでの強引な発言は安倍1強時代の後ろ盾があってこそのものだったのではないか。自民党が少数与党となったの現在、流れが変わりつつあることを認識していない政治感覚には驚かされてしまう。こうした人物が国会議員であり続けることを許してはいけないだろう。


5月8日 厚労省データ 自殺者 目立つ20代

 京都府内で2024年に自殺した人の数は352人となり、前年より58人減って2年ぶりに400人を割った。府は新型コロナウイルス禍を経て経済状況が好転していることを減少要因の一つとするが、年代別では20代の自殺者数が前年を大幅に上回った。府は「コロナ禍で人間関係が希薄化し、社会に出て悩みを抱えている若者が多いのではないか」と推察している。

 厚生労働省などのデータによると、京都府内の自殺者数は00年の696人が最多だったが、近年は減少傾向にあり、16年以降は300人台で推移。23年は410人と8年ぶりに400人を超えており、コロナ禍で倒産件数が増える中、50代の増加だ顕著だった。

 24年は全体数は減ったものの、20代は64人と前年比21人増となった。その他の年代は最多の50代が65人(前年比20人減)、40代が60人(同2人減)、70代が46人(同1人増)と続いた。

 職業別では、「学生・生徒等」が31人(同4人増)と唯一、前年より増えた。自殺の原因・動機では。「家庭問題」が96人から67人に減った半面、「交際問題」が7人増の22人、「学校問題」が6人増の18人となった。「経済問題」は103人と横ばいだった。男女別では、男性が同49人減の228人、女性は9人減の124人だった。

 府の担当者は「自殺の要因は複合的」としつつ、20代の自殺者数が増えた要因について、コロナ禍で人間関係が希薄化したとみて、「社会人になり、悩みを抱えていてもどこに相談すればいいか分からないのではないか」としている。

 府は24年度、若者らに相談を促す動画を初めて作成。悩みを抱える人に対応する「ゲートキーパー(命の番人)」の養成講座の受講者数は12年度から23年度までで約3万6千人に上る。担当者は「引き続き、悩みを相談できる環境づくりに取り組んでいきたい」としている。

 圭な相談窓口と連絡先は以下の通り。

 京都いのちの電話075(864)4343▽京都自死・自殺相談センターSotto075(365)1616▽チャイルドライン(18歳以下)0120(99)777 


自殺する人が減少しているのは喜ばしいのだが、20代での増加は気になる。そして、自殺の原因が「経済問題」よりも、「交際問題」や「学校問題」で増加の傾向にあることは注視しなければならないだろう。人間関係を含めて学校が若者にとって苦痛となっているとすれば、その問題点を洗いださなくてはいけない。


5月8日 エル・コープ 助け合い活動の拠点に

 生活協同組合の「生活クラブ京都エル・コープ」(京都市南区)は、同区久世上久世町の旧配送センターを改修し、「たすけあい活動スペース りんく・ る」をオープンした。子育て支援施設やカフエなどが入り、赤ちゃんからお年寄りまで名世代が助け合い、支え合う場所を目指す。

 旧配送センターは3階建て延べ約700平方メートル。2003年に開所し、昨年6月に南区上鳥羽西浦町の本部・上鳥羽センターが新設され、移転した。旧センターはJR桂川駅東口を出てすぐの位置に立地する利便性をいかし、住民が集える場として昨年9月末に大規模改修を始めた。建物全体を暖色に塗り替え て一新した。

 周辺地域は同駅の開発に伴い、子育て世代が増えたが、自治体加入率の低下や転入者と地元住民との関わりの薄さが課題となっている。施設の一部は、働 く人自らが出資して地域課題の解決に向けた事業を行う「ワーカーズ(労働者協同組合)」が担う。

 オープンに合わせて三つのワーカーズが立ち上がった。子どもたちが遊んだり、相談したりできる広場「もこもこ」は、6歳までの子どもとその家族が無 料で利用できる。コーヒーを楽しみながらマルシェなどのイベントを交え、交流の場を提供する「Cafe十Meets(カフェプラスミーツ)は10日にオ ープンする。

 地元農家から仕入れた野菜を使った弁当販売「台所ぐるり」は6月の開店に向けて準備を進めている。それぞれ起業未経験の30〜70代の女性を中心に取り 組む。他にも、訪問介護事業所や市久世西児童館分室が入る。地域に開かれた居場所を目指し、今後、子ども食堂や「みんなの図書館(仮称)」を設けるな ど施設を充実させる予定という。

 京都エルーコープの山路容子理事長は「顔が見える関係が育まれ、誰かが自分のことを気にかけてくれていることを感じられる場所になれば」と話す。

 問い合わせは京都工ル・コープ福祉たすけあい事業部075(874)2905。


エル・コープは生活クラブ生協の流れを受けて京都で作られた中堅の生活協同組合。スペインのモンドラゴンの視察をするなどSSE(社会連帯経済)への関心もある生活協同組合でもある。こうしたなかで新たなスペースを確保したことの意義は大きい。地域の活性化やコミュニティの再創造などへと道を開く可能性に期待できる。工藤律子・著『働くことの小さな革命 ルポ 日本の「社会的連帯経済」』は、そうした動きのルポとして興味深い。


5月8日 ガザ 相次ぐ学校空爆

【エルサレム、カイロ共同】イスラエル軍は6日、パレスチナ自治区ガザ中部ブレイジ難民キャンプの学校を空爆し、パレスチナ通信によると、少なくとも33人が死亡した。学校には多数の避難民が身を寄せている。イスラエル軍は「(イスラム組織)ハマスが司令部として使っていた」と主張、攻撃を正当化した。イスラエル軍は7日も北部ガザ市の学校を空爆し、パレスチナ通信によると、16人が死亡。

 イスラエルはガザヘの人道物資搬入を2ヵ月以上も止めており、人道危機は悪化の一途をたどる。


イスラエルのガザ攻撃は「非人道」という言葉がむなしく響くほどのものだ。少しでも記録(記憶)することがイスラエルへの非難となると思うほかはない。


5月8日 厚労省 引きこもり支援で新指針

 ひきこもりの人や家族の支援を強化するため厚生労働省が自治体向けの指針を新たに策定した。従来は就労や社会参加など「自立」を支援のゴールと捉え る傾向にあったのに対し、当事者本人が自身を肯定して主体的に意思決定できることを「自律」と位置付け、「目指す姿」とした。支援の対象者を従来より広 く捉えたのも特徴だ。ポイントや事例を紹介し、多様化する悩みに寄り添う伴走型の支援につなげる。

 従来の指針は厚労省研究班が2010年に策定。ひきこもりの期間を「6ヵ月以上」とし、精神疾患や障害が背景にあるとして医療的な支援に結び付ける 内容だった。

 新指針は「何らかの生きづらさを抱え、困難を感じている状態」や「他者との交流が限定的な状態」にある人と、その家族を支援の対象とした。ひきこも りの期間は問わない。従来の指針との併用を想定している。

 やりとりの30事例を掲載。中学生の頃に不登校になった20代女性を相談員が訪問し、趣味などの世間話を重ねるうちに自室から出られるようになった例な どを示した。

 支援のポイントも整理。「電話やメール、交流サイト(SNS)など相談しやすい環境を整える」「家族間の意向が異なる場合は本人を最優先に全体の支 援を組み立てる」など50項目を挙げた。

 近年は@生活困窮やいじめ、リストラといった社会問題A人間関係の希薄化B世帯構成の変化―などが複合的に絡んだケースが多いという。高齢化が進み、 50代の当事者と80代の親が困窮する「8050問題」も深刻化。実態に即した支援が必要として当事者団体や家族会が参加した検討会が指針の内容を議論し た。

 検討会の委員長を務めた白梅学園大の長谷川俊雄名誉教授は「本人が目指すゴールに寄り添うために理解を深め合うことが大切だ」と話す。


参考資料ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン


5月8日 インド・パキスタン 核の「火薬庫」再び危機

 インドが1947年の分離独立以来対立するパキスタンへの攻撃に踏み切った。発端は係争地で起きたデロで、インドは背後にパキスタンがいると断定。パキスタンも反撃し、「南アジアの火薬庫」と呼ばれる核保有国間に危機が再来した。過去に両国関係が緊張した際に仲介役を担った米国は、対外関与に消極的なトランプ大統領の下でその役割は不透明に。中国を含めた地域情勢が流動化する恐れもある。

 テロは4月22日、双方の係争地カシミール地方のうちインドが実効支配するジヤム・カシミールの景勝地で起きた。武装した男5人前後が森から現れ、観光客らのうちイスラム教徒ではない男性を銃撃したとされ、26人が犠牲になった。

 地元メディアによると、夫を殺害された女性が「私も殺して」と訴えると、男の一人は「そのつもりはない。モディ(インド首相)に(テロのことを)伝えろ」と応じた。バンス米副大統領がインドを訪れた時期と重なり、注目を集める狙いがあったとも指摘される。パキスタンを拠点とするイスラム過激派の分派が一時犯行を主張したが後に否定。パキスタン政府も関与していないと主張したものの、インドはパキスタンを「黒」と決めつけ、空爆に出た。

 5月7日未明。寝静まったパキスタン側カシミール地方に爆音が響いた。「最初の攻撃は家から少し離れたモスクだった。一晩中、爆発音が聞こえた。みんなは電気を消し、攻撃の恐怖におびえながら夜を過ごした」。住民が話した。テロ組織の拠点が攻撃対象だとするインドに対し、パキスタンは民間施設が標的になったと非難。主張は食い違う。

 インドによる攻撃は初めてではない。2016年にインド軍基地が襲撃された際、パキスタンを拠点にする過激派の関与を指摘、国境地帯で砲撃し合った。19年には自爆攻撃への報復としてパキスタン側のイスラム過激派拠点を空爆した。

 「彼らは何十年、何百年と戦ってきた。早く終わることを望むだけだ」。記者団にトランプ氏は6日、パキスタン分離独立以前から紛争があったかのように誇張し、静観する姿勢を見せた。

 02年にカシミール問題を巡り双方の緊張が高まった際、自制を求めて奔走したのが米国のブッシュ(子)政権だった。19年も第1次トランプ政権が仲介した。当時の米国務長官ポンペオ氏は回顧録で核戦争の「寸前だった」と振り返った。今回の危機でトランプ政権は双方に早期の平和的解決を訴えているものの介入に前向きな姿勢は見えない。

 関係悪化は地域情勢にも影響を与える。インドと領有権問題で対立する中国は、パキスタン接近を進める可能性がある。バングラデシュは政権を追われて逃亡した前首相をかくまうインドとの関係が悪化の一途をたどっている。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、推計保有核弾頭はインドが172発、パキスタンが170発。南アジア情勢に詳しいアナリスト、クーゲルマン氏はAP通信に「核の抑止力があっても、両国は通常兵力の大規模展開を辞さない。対立が急に激化するリスクがある」と分析した。(ニューデリー、イスラマバード共同)


防衛大・伊藤教授双方が戦闘拡大望まず

 テロ事件を受け、インド政府には国内世論や野党からの批判があり、何もしないという選択肢はなかった。2016年や19年のテロ事件後にも、パキスタン側のイスラム過激派拠点を狙ったとする空爆を実施しており、今回の攻撃は時間の問題だった。

 インドが攻撃で過激派の拠点を根絶やしにし、根本的にテロを防止することは不可能だが、インドとパキスタン双方は戦闘拡大を望まず、矛を収めたいのが本音だろう。核保有国である両国による全面的な戦争へのエスカレーションを、国際社会が許さないということも両国は自覚している。

 パキスタン国内で軍幹部や過激なイスラム勢力がインドへの対処に不満を表明し、より強硬な策に出る懸念もあるが、パキスタン側も攻撃直後にインド軍機を複数撃墜したとの成果を自国民に示し、体面を保てたと考えたいのではないか。(共同)



5月6日 日本聴力障害新聞 難聴者差別覆した 京の記事に共感

 難聴の井出安優香さん=大阪府、当時(11)=が交通事故で亡くなり、遺族が運転手側に損害賠償を求めた裁判は、将来働いて得られたはずの「逸失利益」について、障害を理由とする減額を認めず、健常者と同額とする初の判決が確定した。「減額は差別だ」と訴えてきた遺族に各地の聴覚障害者が共感し、支援の輪が広がったきっかけは、京都市に編集拠点を置く当事者団体の記事だった。

 2018年2月、大阪生野区の聴覚支援学校前の歩道に重機が突っ込み、信号待ちをしていた児童と教員をはね、安優香さんが死亡、4人がけがをした。

 「民事裁判で遺族が差別的な主張を受けている」。21年2月、全日本ろうあ連盟の月刊紙「日本聴力障害新聞」の編集部(上京区)に情報が寄せられた。

 川本悟記者(58)が父の努さん(52)と母のさつ美さんを訪ねると、2人は運転手側の保険会社に憤っていた。保険会社は「聴覚障害者は高校卒業時点での言語力や学力が9歳にとどまる」として、逸失利益を「一般女性の40%」と主張しているという。2人は「何の落ち度もない娘への侮辱。心がずたずたに引き裂かれた」と涙ながらに訴えた。

 ろうの川本記者は、聞こえないという理由だけで物事を決めつける保険会社を「おかしい」と感じた。同年4月号で事故の概要や裁判状況、両親の心情を詳報したところ、読者である全国のろう者や難聴者の大きな反響を呼んだ。

 連盟に加盟する大阪聴力障害者協会も記事に驚いた。「逸失利益の減額は障害者を締め出してきた日本社会そのもの」と判断し、支援を決定。裁判傍聴や学習会開催に加え、裁判所に公正な判決を求める署名活動に取り組むと、わずか1ヵ月間で10万筆が集まった。

 日本聴力障害新聞は「安優香さん事故死訴訟」の見出しをつけ、まじめで明るかった人柄がにじむ逸話や法廷でのやりとりなど、続報を毎号欠かさなかった。

 大阪高裁が今年1月、逸失利益を「全労働者の平均賃金の85%」とした一審判決を変更して健常者と同額とする判決を出し、確定した。

 3月号では見開き2ページで特集し、減額は原則許されないとの枠組みを示した判決や、一連の取材経緯を振り返った。

 川本記者と大阪聴力障害者協会の役員は4月1日、安優香さんの墓前で手を合わせた。「記事と運動のおかげ。差別のない社会になってほしい」と話す努さんとさつ美さんを見て、川本記者はうなずいた。「一人一人が意識をささやかに変えるだけで社会は変わるはずだ」(森敏之)



5月5日 ガザ 9千人栄養失調

【エルサレム共同】国運児童基金(ユニセフ)は、パレスチナ自治区ガザで、今年に入ってから子ども9千人以上が急性栄養失調で入院したと発表した。ガザヘの食料など支援物資搬入をイスラエルが停止してから2ヵ月。世界食糧計画(WFP)はガザの備蓄食料が底を突いたと表明しており、人道危機の悪化に歯止めがかからない。

 ユニセフのラッセル事務局長は「人道支援は子どもたちにとって命綱だったが、今やそれも尽きようとしている」とイスラエルを非難した。ユニセフによると、栄養失調の治療を受けられない子どもも数百人に上る。75%以上の世帯が飲料水の不足に直面しているほか、5歳未満を中心に下痢もまん延している。


イスラエル予備役数万人 招集を承認へ

【エルサレム共同】イスラエルメディアは3日、パレスチナ自治区ガザでの攻撃拡大のため、イスラエル軍が新たに数万人の予備役を招集すると報じた。近く治安閣議で承認される見通し。4日にはイスラエル中部テルアビブ近郊のベングリオン国際空港周辺にイエメンの親イラン武装組織フーシ派によるミサイル攻撃があり、複数人が負傷。イスラエル側は報復を示唆しており、地域の緊張が激化している。

 ガザ保健当局は、2023年10月の戦闘開始以降のガザ側死者が5万2535人になったと発表した。攻撃が激しくなれば、民間人の犠牲がさらに増えるのは必至だ。

 報道によると、イスラエル軍は2日、ネタニヤフ首相に攻撃計画を提示した。政府が4日に治安閣議を開き、正式に承認する方向。ガザには既に3師団が展開している。米紙によると、イスラエルの1個師団は通常1万〜1万5千人。イスラエルは23年の戦闘開始直後、過去最多となる36万人の予備役を招集した。今回の招集対象にはいったん任務を解かれた後、再招集される人も含まれる見込み。

 ガザのイスラム組織ハマスは3日、人質男性の動画を公開し、イスラエルに揺さぶりをかけた。男性は頭部や腕に血がにじんだ包帯を巻き「イスラエル軍の攻撃で負傷した」と訴えた。

 ベングリオン空港周辺への4日のミサイル攻撃を巡っては、イスラエル軍が迎撃に失敗した可能性がある。空港は一時離着陸を停止。フーシ派はハマスに連帯を示しており、イスラエルのガッツ国防相は「われわれに危害を加える者はその7倍の被害を受ける」との声明を出した。

 イスラエル軍はガザ攻撃を続けており、パレスチナ通信によると、最南部ラフアでは3日、無人機攻撃で子どもを含む多数の死傷者が出た。


ガザでの悲劇には言葉もない。とりわけ子どもの被害には目を覆う。イスラエルの攻撃は憎悪の連鎖しか生まない。


5月5日 総務省 子どもの数 44年連続減

 「こどもの日」を前に、総務省は4日、外国人を含む15歳未満の子どもの数(4月1日時点)が昨年より35万人少ない1366万人で、44年続けて減少したと発表した。比較可能な1950年以降で初めて1400万人を割り込み、最低となった。総人口に占める割合も最低を更新し、0・2ポイント減の1・1%。出生数の落ち込みに歯止めがかからず、少子化の進行が改めて浮き彫りになった。

 内訳は、男子699万人、女子666万人。3歳ごとの年齢層別では、年齢が下がるほど少なくなり、12〜14歳が314万人に対し、O〜2歳は222万人だった。

 4月時点の都道府県別データは算出していないが、昨年10月1日時点の集計によると、子どもの数は全47都道府県で前年より減少。100万人超は東京、神奈川の2都県だけだった。京都は8千人減の26万6千人、滋賀は4千人減の17万9千人。人口に占める子どもの割合は沖縄の15・8%が最も高く、滋賀と佐賀がいずれも12・7%、熊本が12・6%と続いた。京都は10・6%。最低は秋田の8・8%で、青森9・8%、北海道9・9%の順だった。


注目集める日本語教師

 日本に暮らす外国人が340万人を超え、今後も増加するとみられています。これに伴ってクローズアップされているのが、日本語を教える仕事。京都をはじめ各地の日本語学校も教員の確保に熱心で、アクティブ世代やシニアの転身例も少なくありません。国も2024年度から日本語教師の国家資格化に踏み切りました。日本語を教える仕事の実際や魅力、課題などを取材しました。(日比野敏陽)

 「おはようございます。元気ですか」「元気です」「土曜日は何をしましたか」「アルバイトしました」。月曜日の朝、教壇と生徒の間の活気あるやりと りで授業が始まった。

 京都市下京区の日本語学校「京進ランゲージアカデミー京都中央校(KLA)」。専任講師の山内雅人さん(55)がこの授業で担当するのはアジア出身の12人。全員が日本の大学進学を目指す。日本語能力の向上だけでなく、面接対策など幅広く受験対策に取り組む。

 スライドの文字にはルビを振っていない。山内さんの問いかけにも的確に、素早く答える。

 やりとりを聞く限り、生徒たちの日本語のレベルはかなり高そうだが、「彼らはまだ中の下です」と山内さん。漢語をなるべく使わないなど、教師には生 徒のレベルに合わせた「ティーチャーズトーク」「語彙コントロール」が求められるという。

 日本語教師歴15年の山内さんは元は学習塾の国語教師。「中学受験の指導で疲れ」、ニュージーランドでワーキングホリデーを経験した後、専門学校の日本語教師養成課程を受講して転身した。

 「出身国や文化など生徒のバックグラウンドは大きく違う。日本にいながら世界と触れあえるのが魅力」と語る。「一生懸命に、かつ楽しく学んでもらう のが私たちの役割。そのためにさまざまな創意工夫ができる人が向いている」と話す。

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 「これからの日本社会には外国人の力が不可欠。彼らを支える仕事をしたい」。そんな思いを抱いて転身する人もいる。

 菱田奈々さん(47)。コンサルタント会社で中小企業支援に従事していたが、22年から1年間、働きながら日本語教師養成課程で学び、今年からKLAに転職した。

 日本語学校で教えるための養成課程は420時間をこなす必要がある。菱田さんは水曜夜と日曜日の終日を受講に充てた。

 養成課程では言語学や音声学、心理学など幅広く学ぶ。「外国人が学ぶのは日本人が学校で学んだ『国語』ではなく『日本語』。日本人なら誰でも日本 語を教えられる、というわけではないことを改めて痛感したという。「楽ではなかったが、学習支援もあり、自分の幅が広がった」と振り返る。

 現在は外国人の就労などの支援に取り組むが、いずれは日本語教育にも関わるつもりだ。「多様性のある学生たちと関わることで視野が広がる。それが楽しいと思える人はぜひ挑戦してほしい」と語る。 


国家資格化で待遇改善期待

 国は2024年から日本語教師の国家資格化に踏み切った。これまでは民間で実施される日本教育能力検定試験が活用されてきたが、日本語学校で教える ための資格は今後、国家資格である「登録日本語教員」に集約される方向だ。

 日本語を学ぶ人は国内だけでなく海外でも増加している。日本への旅行経験者の増加やアニメなどサブカルチャーを通じて関心が高まっているという。

 日本語教育の担い手はボランティアが半分以上を占め、専門的な知識と経験を積んだ教員の養成が急務となっている。知識や経験が必要なのにこれまで賃 金が平均より低い」とされてきた日本語教員の待遇は、国家資格化に伴って改善が期待されている。

 複数の日本語学校で教えている経験30年超の男性は「外国人の流入が増えて実質的には『移民国家』化が進んでいるとも言える中、国も日本語教育をボランティアや民間の努力に任せていてはだめだと気づいたのだろう」と指摘する。 


少子化の傾向は44年連続だという。すでに経済的発展のために「産めよ増やせよ」という時代ではなく、高齢者を含めた社会をどのように維持していくかという段階であることは、幾多の指摘がある。しかし、国は「出生率」や「子育て環境」だけに関心がありあさっての対策に思える。外国人労働者を「正しく」受け入れることが喫緊の課題である。トランプ大統領の「移民排斥」は、国内のエスタブリッシュメント衰退が背景にある。アメリカ同様の移民国家であるオーストラリアでは、移民政策を推進している労働党が総選挙に勝利したようだ。日本はどちらの方向にに進むのか。


5月4日 憲法記念日 防衛強化 揺らぐ平和主義

 戦後80年の憲法記念日を迎えた。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で政府は防衛力を強化。国是の「専守防衛」逸脱が懸念され、憲法が定める平和主義は揺らぐ。9条改正の賛否は割れる状態が続き、今後も大きな論点となる。節目の年に戦争体験者は「歴史と向き合い、憲法の在ぴ方を考えて」と訴えている。

 「過去を知る努力をして想像力を広げ、戦争のない時代を続けてほしい」。4月、東京大空襲・戦災資料センター(東京都江東区)。大空襲体験者の二瓶治代さん(88)は、修学旅行で訪れた北海道雨竜町の中学生に語りかけた。8歳当時に住んでいた下町は炎に包まれ、家族と走って逃げた。一晩で10万人が亡くなったとされ「明日また遊ぼう」と話していた幼なじみも命を落とした。

 憲法記念日になると思い出す記憶がある。施行の1947年、父は新聞を広げ「これでやっと戦争しない国になった」とつぷやいた。50年に朝鮮戦争が始まった時も大空襲を思い出しておびえたが、日本には不戦を誓う憲法があると父から聞いてほっとした。「戦争を生き抜いた人たちは憲法を宝物のように受け止めていた」と振り返る。

 3日、改憲派が集会で掲げたスローガンは「危機に立つ日本」。声明文では、台湾有事などを念頭に「世界は歴史的転換点に直面している」と強調した。石破茂首相は「緊急事態対応、自衛隊の明記に取り組む」とのメッセージを寄せた。

 日本大の杉山幸一教授(憲法学)は取材に「政治に左右されないよう自衛隊を憲法に明記し、命や人権を守るため防衛に隙をつくらないことが重要だ」と話す。同時に、戦前の反省を踏まえシビリアンコントロール(文民統制)も明確かつ厳格に盛り込むべきだとする。

 共同通信が1日にまとめた世論調査では、9条改正の賛否は各48%と桔抗した情勢にある。

 首相が改憲へのポーズを示す一方、少数与党で具体的な議論の主導権は握れていない。ただ「安保環境の変化」を理由に、専守防衛の理念を変質させるような動きが続いている。

 2014年には閣議決定で9条の解釈が変更され、集団的自衛権行使が一部容認された。近年も、防衛費と関連経費を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針を決定。陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が発足し、日米の軍事一体化も進む。

 憲法との整合性が問われ続けている防衛力強化。ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中煕巳代表委員(93)は3日の護憲派集会後「政府は9条を無視してきた。軍隊ではなく対話で平和は保てる」と話した。

 東京大空襲を生き延びた二瓶さんは「憲法は傷だらけだ」と表現する。訴えたいのは、改憲への賛否にかかわらず「戦争は日常や生きる権利を奪う」という歴史に向き合い、非戦を貫くことの重要性だ。その上で憲法はどうあるべきなのか―。政府主導ではなく、国民主導の議論を続けてほしいと願う。


獨協大名誉教授・古関彰一軍事力でなく対話大事

 政府は自衛隊を「必要最小限度の実力」と説明するが、9条と自衛隊の関係は十分に議論せず「棚上げ」の状態が続いている。ロシアによるウクライナ侵攻など、国際情勢における緊張の高まりを背景に、国民の意識はずるずると「軍事力が必要」へと動いていないか。他国の脅威をなくすために大事なのは軍事力ではなく対話だ。9条を生かし、有事の際、国民の代表が相手国と話し合える手続きを法律で定めるなど、実効性ある法規範を積み重ねることが重要だ。惨禍を 繰り返さないため、戦争の記憶を継承する平和学習をより具体的に法制化して充実させることも必要だ。


武蔵野美大教授・志田陽子「当たり前」意義考えて

 戦後、日本が戦場にならずにすんだのは日米安全保障条約で米国の対日防衛義務を定めているからだけではない。憲法9条の戦争放棄の理念が国民に根ざ し、世界からも「9条を擁する平和国家」と見られてきたからだ。だが、2015年の集団的自衛権行使容認を含む安全保障関連法改正・成立で、日本は戦争当事者になり得る国となった。さらに、再登板したトランプ米大統領は、安全保障を盾に日本へ軍事的な要求を高めてくる可能性もある。「憲法を守ろう」という 言葉は一見凡庸だが、それは憲法がうたう平和や権利が当たり前に共有されてきたからだ。平和の足場が揺らぐ今、改めてその大切さを見つめ直し、憲法の存在意義と在り方を国民全体で議論したい。


京女教授・北村貴必要なら議論し改正を

 憲法改正に賛成か反対かという二者択一で議論するのは意味がない。改正は目的ではなく、現行条文で対応できない事態に備え、曖昧な部分を明確化する手段だ。どう改正し、何を達成するのか具体的に示す必要がある。一方で、かたくなに改正を否定するのも憲法の価値を損なう。例えば戦力不保持を定める9条2項の条文と、自衛隊の矛盾は明らかだが、現在は解釈で正当化している。憲法で国家権力を縛り人権を保障するのが「立憲主義」。価値を取り戻すため、必要なら議論して改正すべきだ。解釈の幅を広げすぎると条文が名目化し、規範性が失われてしまう。


憲法論議の際に最も需要なのは「立憲主義」ではないだろうか。端的に言えば憲法は国民を縛るものではなく国家権力の独断を許さないためのものであるということだろう。9条問題が議論されるときにこのことが考慮されているのかどうかが重要である。立命館平和ミュージアム館長の君島東彦さんは憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」との関係で9条を解釈すべきだと強調する。だとすれば、防衛力の増強ではなく対話外交の重視が日本国憲法の立憲主義ということになる。


5月4日 ヤングケアラ―問題 家族ケア、「愛」にすり替えない

フリーライター・早川さくら

 2024年11月、京都市ケアラー条例が施行された。この条例は埼玉県が20年に初めて制定・施行して以降、24年11月末現在で31自治体まで広がりを見せている。ケアラーにも社会的支援が必要という条例だ。

 「今回、京都市の条例に『ケアは社会にとって必要不可欠なものであり、社会の基礎となる尊重すべき価値をもつもの』という意味の文言が入ったことは注目すべきこと」。立命館大学産業社会学部教授斎藤真緒さん(51)はそう話す。斎藤さんは、「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト 」(2021)の発起人。

 「ヤングケアラー」。昨今よく耳にする言葉だ。家族の介護などを過度に担っている子どもや若者のことをいう。両親が働いているために祖父母の介護をしている、家事全般をひきうけている。小さな兄弟姉妹、若年性認知症の親、精神疾患や身体障害をもつ家族、酒やギャンブルなどの依存症の親がいる。子どものアルバイト収入が必要不可欠になっている家庭、親の代わりに通訳を担っている外国にルーツをもつ子どもなど、ヤングケアラーはいろんなところに存在しているという。

 「お手伝いとどうちやうねん」と言うかもしれん。「最初はお手伝いから始まります」と斎藤さん。介護や手伝いからの学びはあるが、小さい時から始まったケアは終わらないことが多く、ケアありきの生活がずっと続くという。友達と遊んだり勉強したりする時間がない、遠方の大学や働く場所、結婚をためらうなど自分が人生設計の主人公になれないことが多いという。

 斎藤さんがヤングケアラーを「子ども・若者ケアラー」と表現するゆえんがここにある。子どもで区切ると支援が18歳で止まり、この地続きのケアに対応できないからだ。さらに、子どもや若者のケアラー支援がケアをなくすことだけに集中するのではなく。「子どもの権利を守る」という視点にシフトする必要があるという。

 ヤングケアラーの実態を可視化するため、斎藤さんは子どもや若者ケアラーの聞き取りを続けている。しかしその正確な人数を把握するのは難しいという。小さな子どもは、自分がケアラーとは気づかない。高校生になると自分の家を相対的に見られるようになり、逆に隠そうとする傾向が あるという。

 ヤングケアラー支援の先進国イギリスでは、学校は「ケアから解放されるだけでなく、ヤングケアラーの発見のために重要な場所」とし、各学校に専門の教職員が常駐している。日本でも、ヤングケアラーのための専門職が必要とされるが、全世代のケアラーが支援を受けられるようになるためには、地域包括支援センターや訪問医療・介護、ソーシャルワーカーや精神保健福祉士などの目も要になるという。

 一方、子どもや若者が自分をケアラーと認識しにくくしている要因の一つとして、彼らへの評価が深くかかわっていると斎藤さんは話す。専門職を含む周囲の大人から「家族思いの子」と扱われ、「いい子やね、がんばってね」と激励され、子どもは逃げ場を失う。斎藤さんはその背景に、「家族だから介護は当たり前」というケアの家族責任規範を指摘する。歳をとったり、障害をもったり、病気になったりでケアが必要になるのはごく自然なこと。だが家族のケアを当然とし、それを「家族愛」にすり替えてはいけない。「私がいなくなったら、どうなるんや」と追い込まれた毎日を送っているケアラーの二ーズに応える支援を広げることが今後の課題と話す。


様々な問題解決を学校に押し付けることは慎まなければならないが、「ケア」の問題は個別の問題ではなく教育のベースにすべきものだ。個別最適の教育が喧しいが、個別を自己責任として解釈してしまう傾向が横溢しているのが教育の現状。それを「ケアリングのための教育」としてオルタナティブを議論している拙著『続・4時間の労働と教育』をぜひ一読してほしい。


5月4日 【教育】 「学級開き」信頼醸成の黄金期に

 新しいクラスで担任と児童生徒が初めて顔を合わせる「学級開き」。なぜ、1年間の学級運営の成否が左右されるほど重要な場面とされるのか。京都市立小に勤務するベテラン教員2人に、これまでの経験を振り返ってもらいながら、それぞれの考え方やこだわりを尋ねた。(生田和史)

 「積み木でいうと土台になる部分です」。50代の秦和範教諭=仮名=は、学級開きをこう例える。

 学級開きを行う日は給食がなく、午前中で帰宅する。教員によって、学級開きにかける時間は人それぞれだが、秦さんは、4時間まるまる費やす。担任の自己紹介から始まり、手品の披露やさまざまなゲームを織り交ぜながら、年間予定やクラス内のルールなどを丁寧に伝える。

 秦さんが考える学級開きには三つの意義がある。

 一つ目は、子どもに安心感を与えること。児童は教員の想像以上に、どんな担任か、友達はできるのか、勉強が難しくないか、さまざまな不安を抱えている。

 かつて、学級開きの日にトイレの中でうろうろし、教室に入れない児童がいた。秦さんは手品で手元のハンカチを消し、その児童のポケットから見つけるという技を披露した。クラス全員から大きな拍手がわき起こり、その子が二コッと笑った。

 二つ目は、やる気を持たせること。子どもの大きなエネルギーを正しい方向に導くのが担任の役目だと考える。エネルギーがマイナスの方向に向かえば、相手や自分自身を傷つける。プラスの方向に向けることで、担任の指示で動くのではなく、級友と交わりながら主体的に自らの世界を作れるようになるという。

 三つ目が教員を信頼してもらうことだ。「学級開きが『黄金の3日間』と言われるのには理由がある。新学級に期待する児童は、最初は教員の指導に従うが、良くも悪くも3日間で見切りをつけるからだ。悪ければ、『この先生あかんな』となってしまう。最初の出会いが良ければ、一時期教員との距離が離れても、また関係を築きやすい」

 教員になり立ての頃、「力」による指導に頼ってきた、と自省する。子どもが指導に素直に従っているように見えても、叱られるからやるようでは主体性が育たない。「力」に頼っていては、指導が厳しさを増す悪循環に陥り、やがて教員と子どもの関係が行き詰まる。

 信頼関係の大切さや児童に寄り添った指導に目覚めるきっかけがあった。

 図工の授業中、男子児童が「うっとうしい」と叫びながら彫刻刀を板に突き立てていた。「何してんの!」と怒鳴りそうになったが、「困った子は困っている子」と教育書の一節を思い起こし、「どうしたの?」に声かけを変えた。

 児童が暴れた理由は、彫刻刀で板を削っていた際に、別の児童と体が接触して、掘ってはいけない部分まで削り、パニックになったからだった。新しい板を渡し、やり直すかと問うと、突然泣き出した。「彼は困り事を言語化できないから暴れただけ。これからは彼の困り事を自分が見つけて、支えたい」と誓っ た。

 「学級開きで子どもが胸をときめかせる出会いができたら、教員との関係も順調に行く」


準備に力 情報集め指導構想

 「子どもたちと出会うまでに、既に勝負が始まっている」。別の市立小に勤務する60代の志賀直樹教諭=仮名=は、学級開きの準備に力点を置く。

 志賀さんはまず、仲間づくりの視点で最も課題を背負っている子は誰かと考える。暴力的な子を放置すればクラスの雰囲気が乱れかねないし、おとなしい子は手がかからない分対応が後回しになり、不登校になる恐れもある。

 課題を抱える子は家庭環境に原因がある場合があり、児童の情報を可能な範囲で集めることに力を注ぐ。通常行われる前担任との引き継ぎに加え、詳細な情報を得るために幼稚園や保育所、病院、児童相談所に出向くこともある。

 収集した情報を踏まえて、仲間づくりに特化した指導構想を練る。最も課題のある児童を想定し、その子への支援法を考える。学級開きではゲームや遊びの実施にこだわる。ゲームに参加できない子、盛り上げようとする子、ずるいことをする子、負けるとかんしやくを起こす子―。「子ども一人一人の赤裸々な様子がうかがえ、特徴をつかむのに役立つ」

 荒れた学級を受け持つ場合は、より心を砕く。前年度の学級で言葉が荒い児童と担任教員が対立し険悪な雰囲気だったとしたら、新しいクラスではどうなるのか。他の児童は固唾をのんで見守っている。初対面の場で、児童とやり合いにならなければ成功だという。今年は昨年とは違うとクラスメートに示せる。「どんな声かけをするかは、よく思案する」

 新型コロナウイルス禍の影響により、「保育園や幼稚園時代の基礎的な他者との関わりがすっぽり抜けた子が増えた」。注意の必要な児童は倍増しており、学級迎営は難しくなっているという。

 学級開きの大切さに気づいたのは30代半ばだった。「学級づくりの構想などなくても1年間回せると思っていた。学級崩壊といった運営上の失敗はないが、子どもたちの生きづらさや悩みに気づかないまま、1年間担任を終えていたのではないか」と自省を込めて振り返る。

 児童の情報をしっかり頭にたたき込んだ上で、学級開きに臨むのとそうでない場合の違いははっきりと現れる。「学級開きを大切にする教員は高い熱量のまま子どもに接する。クラスがまとまり、トラブルがあっても、みんなで乗り越えられる」という。

 教員多忙化で 簡略の風潮も

 多くの教員が大切にしてきた学級間きだが、近年、簡略化の風潮もみられるという。

 2人が挙げる大きな理由の一つが救員の多忙化だ。4月は毎日のように多くの会議や業務が入る。秦さんは「気がつけば開口が学級開き本番で、『どうしよう』と焦る教員は多いのではないか」と想像する。児童の学力の向上さえできればいいクラスになるという考え方もあるが、秦さんは「それは間違い。学級開きには特別な意義がある。若い教員は、そのノウハウを学んでほしい」と話す。


「学級開き」ということばが学校で定着しているかどうか定かではないが、確かに「初めての出会い」はそれなりに重要ではある。しかし、それへの対処の仕方は教員個々のパーソナリティに負うところが大きいだろう。記事のような接し方もその一つであると考えるべきであり、マニュアル化されることには違和感を感じる。また、1年間の学級経営の中で「再構築」する機会も多くあるだろうし、職員の協同をどのように作り出すのかという客観的な環境もあることを見逃してはいけない。


5月3日 学法・タイケン学園 長浜に通信制高校開設

 長浜市は、旧杉野小中学校跡地(同市木之本町杉野)の利用優先交渉権者に、学校法人タイケン学園(東京都板橋区)を選んだ。同学園は早ければ2026年4月に、通信制の日本ウェルネス高校長浜キャンパスを開設する。

 跡地は広さ約1万8100平方メートルあり、鉄筋コンクリート2階建ての校舎や体育館などが立つ。20年3月の閉校後、市は事業提案公募型プロポーザル方式で利用者を公募した。2事業者が応募し、有識者や地域代表者らでつくる選考委員会が今年3月に同学園を選んだ。

 市教委によると、タイケン学園は全国55力所で高校、大学、専門学校などを運営する。滋賀県内では系列のタイケン福祉会「ウェルネス保育園彦根」(彦 根市)を開設している。

 長浜キャンパスでは広域通信課程の普通科を設ける。生徒の登校時には午前中に授業、午後に部活動を行う計画で、3学年で240人規模を目指している。生徒が増えた場合には、全日制に切り替えることも検討しているという。

 市は土地と建物を無償譲渡する方針で、今後、同学園と基本協定や財産譲渡契約を結ぶ。地域住民対象の説明会も予定している。


公立学校の跡地を学校法人が使用するケースが増えているように思える。また、広域通信制高校も増加の傾向にある。生徒側のニーズに合わせるかのうように、これまでの公立学校主体の後期中等教育の体制が崩れている。日本の教育がその転換期に来ているともいえる。


5月1日 規制委員会 泊原発3号「合格」

 原子力規制委員会は30日、北海道電力泊原発3号機(北海道)の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書」の案を了承した。事実上の審査合格で、11原発18基目。2013年7月の申請から審査は長期化し、過去最長の11年以上かかった。北海道電は27年3月ごろまでに防潮堤建設などの安全対策工事を終えた後、再稼働を目指すとしている。

 今後、一般からの意見公募や経済産業相への意見照会などを経て、夏ごろにも正式合格する見通し。再稼働には地元同意や、規制委による設備の詳細設計や運用ルールの認可が必要になる。

 山中伸介委員長は記者会見で審査長期化への批判について「さまざまな工夫はするが、国内で自然災害が多発する状況では、これまで通り慎重に厳正に審査を続けていく」と明言した。

 泊3号機は09年12月に営業運転を始めた国内最新の原発。北海道電は新規制基準施行当日に審査を申請したが、敷地内の断層が活断層かどうかなどの議論で長期化した。

 審査の結果、耐震設計の目安となる基準地震動は、申請当初の最大550ガル(ガルは加速度の単位)から最大693ガルとなった。津波想定は海抜7・3メートルから17・8メートルに引き上げた。14年に16・5メートルの防潮堤を設置したが、規制萎が液状化で沈下する恐れを指摘し、19メートルに造り直している。厚さ40センチの火山灰が降り積もる事態を想定する。

 電源車や注水ポンプ、緊急時対策所などを含めた3号機の安全対策工事の費用は約5150億円となった。


半導体量産 追い風

 北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が原子力規制委員会の審査に事実上合格した。再稼働は、次世代半導体の国産化を目指し北海道に進出した国策メーカー、ラピダスヘの電力供給につながりそうだ。半導体量産に必要な膨大な電力の確保が課題となっているためだ。

 ラピダスの使用電力量がどの程度になるかは明らかになっていないが、岩手県北上市や三重県四日市市に工場を持つ半導体大手キオクシアホールディング スの場合、2022年度の電力使用量は約50億キロワット時に達した。平均家庭100万世帯分に相当し、日本の消費電力の約O・5%に当たる。電力業界関係者は「原発なしで半導体業界の膨大な需要に応えるのは困難」と指摘する。

 北海道電力はラピダスなどの需要に対応するため、変電所新設や送電線整備による送電能力の増強を進める。道内での大規模データセンター建設計画を念 頭に発電能力の強化も図る。

 ラピダスは米IBMと連携し、世界でも商用化の例がない回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の半導体の製品化に取り組んでいる。27年の量産開始を目指し、北海道千歳市の工場の試作ラインが4月1日に始動した。7月中下旬には最先端の試作品が完成する見込みだ。

 半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に進出するなど、日本では国内外の半導体メーカーの工場建設が相次いでいる。


原発ゼロの路線は完全に破綻しているのだが、政府の再生可能エネルギーの使用についての及び腰がそれに輪をかけているといえる。一方で、消費電力の増加が再稼働を求めているという事情もある。デジタルを基盤とする社会は膨大なエネルギーを必要とする社会でもあることを改めて思い起こさせる。経済成長(GDP)を至上目標とする社会の在り方への批判は大きな声にはなっていないが、「サステナビリティの経済哲学」は宇沢弘文の経済学を継ぐ松島斉の手によるもので一読するに値する。