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  • 【更新】高校のゆくえ
  • 【随時更新】ロシアのウクライナ侵攻
  • 平和を歌う 願いは一つ.21
  • 自民また「国難」強調.22
  • 教育勅語は「日本人の価値観」.24
  • 子どもの貧困と権利を学ぶ.25
  • 立民、危機便乗の改憲「乱暴だ」.25
  • 高校教科書「探求」を重視.30
  • 3月30日 教科書検定 高校教科書「探求」を重視

     文部科学省は29日、2023年度から主に高校2年生が使う教科書の検定結果を公表した。高校の新学習指導要領に基づく2回目の検定で、前回に続き、議論を促す記述や考察のための資料が増え、探究的な学習を重視する構成となった。国語の「現代文」は、実用的文章を学ぶ「論理国語」と小説などを扱う「文学国語」に分かれたが、「論理国語」で小説を掲載した教科書が合格。新型コロナウィルスに関する記述も多数登場した。

     地理歴史と公民では、政府見解に基づく記述を求めた検定意見が最多の計14件に上るなど、領土や近現代の歴史的事象で国の立場を明記する流れが固定化した。

     今回の検定は必修科目で学んだ内容を深める選択科目が中心で、工業など専門教科を除く共通教科は全189点が合格。1点当たりの平均検定意見数は37・0件で、科目構成は異なるが、現行指導要領の16年度検定の26・9件を上回った。

     新たな選択科目では、「世界史探究」で宗教対立など複雑な問題を資料に基づき多面的に考えさせる内容が盛り込まれた。「日本史探究」は女性解放運動など現在の日本社会の課題にも通じる歴史テーマを特集。「地理探究」も、生徒に身近な新型コロナの世界的流行を扱う工夫が見られた。

     「論理国語」は申請された全13点が合格し、うち小説を取り上げた2点は「論理的文章や評論の参考教材として関連付けられている」と認められた。「文学国語」では「山月記」などの定番教材や近年のヒットソングの歌詞が登場した。

     政府は昨年4月、第2次大戦中の朝鮮半島からの徴用を巡り、「強制連行」とひとくくりにするのは不適切と閣議決定した。これを取り上げた部分に政府見解に基づく記述を求める検定意見がつき、「動員して働かせた」などと変更された。


    【塩瀬隆之京大準教授】生徒自身の「問い」大切に

     探究的な学びは、生徒が教科書を読んで「なぜ」と疑問や違和感を持ち、生徒自身の「問い」が生まれることから始まる。合格した教科書は、従来より写真や図表などの資料は増えた印象だが、本文そのものに大きな変化は見えず、ただ単に見出しの文章を疑問形にしただけの問いや、学習目標からずれた問いも多い。こうした「『はてな』を付け足して装っただけの問い」では、新しい高校学習指導要領が掲げた「主体的・対話的で深い学び」や、探究的な学びを実現するのは難しいだろう。教員は教科書に用意された流れだけに頼るのでなく、生徒の問いを生かした授業を進めてほしい。


    【インサイド】政府答弁根拠に修正

     29日に結果が公表された高校教科書検定では、政府見解の記述を求める検定意見が過去最多となった。新たな政府答弁書を根拠に日本の植民地支配を巡る書きぷりに修正を求めたもので、学問的見地は二の次に。編集現場からは事実上の政治介入が強まっていると嘆く声が漏れる。

     「政府の統一見解に基づいていない記述に意見を付した」。29日午後、文部科学省で開かれた教科書検定審議会総会。オンライン参加した担当委員が淡々と報告し、異論は出ずに歴史教科書などが合格した。

     この政府見解は、昨年4月に閣議決定された「朝鮮半島から内地に移入した人の経緯はさまざまで『強制連行された』とひとくくりにすることは適切ではない」との答弁書などを指す。地理歴史・公民の検定基準は「政府見解に基づいた記述」が必要と規定し、教科書会社は「日本本土に送られた」や「動員してはたらかせた」に置き換えた。過去の検定なら修正せずに済んだとみられる。「従軍慰安婦という用語は誤解を招く」との答弁書も閣議決定され、政府見解関連の修正は「強制連行」と「慰安婦」で計14力所に上る。

     専門家からは疑問の声が上がる。「朝鮮人強制連行」の著書がある東大の外村大教授(日本近代史)は「全体として強制性があったのは明らかだ。強制連行という用語が教科書で使いにくくなれば、事実自体がなかったと思われてしまう」と話す。

     2014年の検定基準改正で、政府見解に基づいた記述を求める規定を加えたのは、安倍政権の下村博文文科相(当時)だ。自民党では長く「教科書が自虐的」との批判があり、編集現場に意見できる手段を増やした形となった。

     安倍政権は「領土教育強化」を目的に、学習指導要領で「固有の領土」と明記していた対象を北方領土だけでなく、尖閣諸島と竹島にも広げた。

     ところが、ロシアとの領土交渉が進む期待が高まると、政権として北方領土を「固有の領土」と呼ぶのを封印。今年2月のロシアのウクライナ侵攻後、岸田文雄首相が国会答弁で「固有」を“復活”させた。政治家は都合で使い分ける。

     ある編集者は「教科書は学問の蓄積を反映させるもの。政治力でゆがめてはならない」と批判した。執筆者からも「戦前の国定教科書に戻りかねない」との声が上がる。

     一方で「多数の朝鮮人を強制連行した」との記述を残し、政府見解を書き加える修正で合核にこぎ着けた教科書もある。

     文科省は「異なる見解を一律に排除するつもりはない」と説明。両論併記による工夫の余地は認めている。新指導要領は、多面的な見方や多様な資料に基づいて考察を深める「探究型」の姿勢を重視しており、検定にも反映されたと言えそうだ。

     「植民地支配に関する当時の資料を読み解くと、表向きの宣伝と実態が大きく異なっていたと分かる。自分の頭で判断する力を養えるテーマだ」。外村教授は、政治家の狙いも逆手に取って多面的に分析する学習の重要性を指摘した。


    検定についての意見は上記【インサイド】が適切に表現している。教育が政治に従属している傾向が強くなったのはとりわけ安倍政権における教育基本法改正が契機だったように思える。ロシアのウクライナ侵攻を見ていると双方ともに「プロパガンダ」に大きく依存している。教科書が政権のプロパガンダに成り下がってしまえば教育とは言えない。結果の詳報はここをクリック


    3月25日 【インサイド】立民、危機便乗の改憲「乱暴だ」

     衆院憲法審査会は新たに緊急事態を巡る憲法規定の討議に入った。選挙を実施できない場合の議員任期延長が主な論点だ。立憲民主党が条件付きで議論開始を受け入れた。自民党がウクライナ有事を背景に憲法改正を主張したのに対し、立民は「乱暴だ」と反論。権力の在り方の検証を求め、改憲ベースに抵抗する。

     「ウクライナの憲法では緊急事態が布告されている」。24日、自民党の新藤義孝氏はロシアの侵攻を取り上げ、有事体制に移行したウクライナ議会の動きを説明。日本も緊急事態に関する憲法規定が必須だと訴えた。自民党は2018年に改憲案を策定済みだ。

     立民は強く反応した。奥野総一郎氏は「ウクライナ侵略が起きたからといって直ちに改憲とはならない。冷静な議論が必要だ」として、危機に便乗するような議論の進め方をけん制した。

     憲法審の中で立民は苦しい立場に置かれている。オンライン国会に関する討議が一息ついたところで自民、日本維新の会、公明、国民民主の4党は緊急事態を巡る憲法規定の議論を要求。国民投票時のCM規制が優先だとする立民は、包囲網を敷かれた状況だ。

     ただ、泉健太代表は夏の参院選を見据えて「政策提案路線」を掲げる。反対一辺倒や審議拒否といった戦術を採らないのは憲法審も例外でない。2月10日から毎週木曜の定例日開催にほぼ応じており、24日の憲法審開催も断り切れなかったのが実情だ。

     改憲に慎重な立場を変えたわけではない。24日、議員任期延長の議論容認を表明した立民の中川正春氏は「統治機能全般の検証が望ましい」と論点拡大を求めた。

     自民党や維新は議員任期延長の先に、緊急事態に際して法律に代わる緊急政令の権限を内閣に認める規定を位置付ける。これに対し立民は、立法府を介さない内閣への権限集中に疑問を呈す。首相の解散権制約や、憲法54条の参院の緊急集会規定を含めた統治機構論議の展開を狙う。議論の土俵に引きずり込まれたとはいえ、思惑通りに改憲を進めさせないための抵抗手段というわけだ。

     奥野氏は憲法審終了後も記者団に、現行法制で緊急事態に対応できるとの認識を示した上で「危機を利用して無理やり改憲に持ち込もうというのは乱暴。政治札用だ」と自民、維新などの姿勢を批判した。ベテランは「ずるずると改憲ペースを許せば参院選を戦えない。全力で改憲を阻止する」と表情を引き締めた。


    憲法が不磨の大典でないことは明らかだが、危機に乗じての議論は慎まなくてはならない。先日のウクライナ大統領の国会演説ももろ手を挙げて称賛できるものではない。まして、山東参議院議長が語った「貴国の人々が命をもかえりみず祖国のために戦っている姿を拝見し、その勇気に感動している」のコメントは極めて政治的意図を持ったものだった。


    3月25日 NGOと工学院大 子どもの貧困と権利を学ぶ

     日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあるとされる。その実、スマホは持っていても、給食でしか栄養バランスのとれた食事を取れないなど、実態が見えにくくなっている。中学・高校生らに貧困や子供の権利を学んでもらおうと、国際NGO「セーブーザーチルドレンージャパン」(東京都千代田区)はこのほど、工学院大(同新宿区)の藤川真樹研究室と共同で、デジタル教材「あなたのミカタ!権利がワカルと世界がカワル」を開発した。

     教材は、経済的に困難な状況にある高校生が主人公。「進路選択編」「アルバイト編」の二つの物語があり、登場人物のせりふ(字幕)を読みながら進む「ノベルゲーム」形式になっている。

     例えば、進学が難しいと思っている主人公に対し、自分はどのような声を掛けるのか。選択肢の中からどれを選んでも何らかの学びがあるように設定されている。

     セーブーザーチルドレンージャパンによると、学ぶ、遊ぶなど子どもの権利、困窮家庭への就学援助制度や給付型奨学金についても説明し、アルバイト中のけがは労災保険が適用されることなど、労働基準法の解説も盛り込んだ。ゲームの所要時間は15〜25分程度。中学の技術、高校の総合的な探求の時間など、授業での活用も可能という。

     開発に携わった工学院大4年の鈴木彩音さんは「子どもの貧困を深く理解している人は少ないと思います。実情を知ってもらえるように、分かりやすいコンテンツを追求しました」と語る。

     藤川教授は「教材を通し、中高生の皆さんが子どもの権利と貧困を理解し、やがて社会全体に理解が深まっていくことを願っています」と話している。

     コンテンツは、ウィンドウズ搭載のパソコンにダウンロードして無料でプレーできる。申し込みアドレスは、https://forms.office.com/r/EhtNLjYAHL


    子ども権利や労働条件を学校教育の中で教えることは重要な課題であることはだれもが認識しているはず。しかし、教える側の温度差によって扱われ方が相当異なるのも事実。こうしたソフトが開発されていくのは効果は大きいはず。できればソースを公開するなどして、AndroidとiOS(iPhone)のアプリとして共同開発できると利用範囲は大きく広がる。


    3月24日 西田参院議員 教育勅語は「日本人の価値観」

     自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)は23日の参院憲法審査会で、明治天皇名で国民道徳の根源や教育の基本理念を示した「教育勅語」を「日本人の伝統的な価値観だ」と評価した。憲法が作られた歴史的経緯を考えるべきだと訴える中で、教育勅語にも触れて持論を述べた。

     「日本文化で一番大事なのは家族と伝統を大事にすることだ。教育勅語に書いてある」と強調。憲法に関し「連合国軍総司令部(GHQ)に作られたもので、日本人の伝統精神とかなりかけ離れている」とも語った。

     教育勅語では親孝行、義勇奉公などの項目を記述。昭和期の軍国主義教育と結び付き、1948年、国会が排除や失効を決議した経緯がある。


    日本の伝統とは何なのだろうか。「一旦緩??急??アレハ義勇??公??ニ奉シ以テ天壤無窮??ノ皇運??ヲ扶翼??スヘシ」というのもそのうちの一つに入るのだろうか。教育勅語を道徳的な徳目の羅列ととらえることもできない。天皇中心の国家建設のイデオロギーとして井上毅によって作られたものだという歴史を見ておく必要がある。


    3月22日 自民また「国難」強調

     夏の参院選をにらむ自民党が、ウクライナ危機の影響で「国難」に直面した日本を救えるのは自民、公明の連立与党だけだと訴え始めた。「国難」を強調すれば、安定を求めて与党支持が増えるとの読みが透ける。念頭には2017年の衆院選があるとみられる。当時の安倍晋三元首相は北朝鮮の核・ミサイルの脅威に立ち向かうとして「国難突破」を叫び、与党を勝利に導いた。自民総裁の岸田文雄首相は「二匹目のどじょう一を狙う構えだが成果は見通せない。

     「ロシアのウクライナ侵略、それに伴う原油価格の高騰など国難とも言える危機的状況に直面している」。15日の政府与党連絡会議で、首相は厳しい情勢認識を明らかにした。同時に「国難」を乗り切る方策に関し「自民、公明両党閥の従来にも増した緊密な連携を、あらゆるレベルで強める必要がある」と説明。「危機に強い与党」(自民幹部)をアピールした。

     ロシアによるウクライナ侵攻と資源価格の急騰を「国難」と呼び始めたのは、公明党との党首会談に臨んだ10日からだ。公明の山口那津男代表も会談後、記者団に「国難ともいうべき状況は、自公がしつかり結束して乗り越える必要がある」と述べ、歩調を合わせた。「国難」ムードを醸成し、追い風を得たいとの思惑がにじむ。

     自民の茂木敏充幹事長も12日の党会合で「国難に直面する日本には政治の安定が不可欠だ」と主張。「国難」を掲げる背景には、17年秋の衆院選で安倍氏が「国難突破」と訴えて大勝した「成功体験がある」(閣僚経験者)との見方が強い。

     安倍氏は当時、武力行使に踏み切る可能性も取り沙汰されたトランプ米大統領と協調し、北朝鮮への強硬姿勢を誇示。これが奏功し、北朝鮮への懸念を強める有権者の支持を取り付けたと見る向きは与野党内に多い。

     その後、トランプ氏は対話路線に転じて米朝首脳会談を実現。安倍氏も日朝首脳会談を北朝鮮に呼び掛けるなど軌道修正を図ったのは翌18年だ。

     昨秋の衆院選でも首相は新型コロナウイルス禍を理由に「国難」に触れたが、前面に打ち出したわけではない。参院選に向けた「国難」の訴えからは、先行き不透明なコロナや物価高を不可抗力と位置付け、政権批判をかわしたい意図がうかがえる。

     「国難」PRは、野党との対決を演じる上でも有効だとみる。首相は「自公の連立与党以外に、この国を任せることができるだろうか」と主張。安倍氏は「国難と言うと一つにまとまりやすい。反論が難しくなる」と周囲に語る。

     危機感をあおるような手法を巡って17年衆院選当時、自民内から「北朝鮮問題をフル活用した」とする声が漏れた。疑問の声は、今回もくすぶる。三役経験者は「安倍氏が『国難突破』と叫んで選挙に勝ったから、今度は自分もやろうと考えているとすれば、まともな政治判断だとは思わない」と冷ややかだ。


    「国難」とはいったいなになのだろうか。誰にとって「難」なのだろうか。こうした政治家の発言を聞くたびに政治の劣化を感じざるを得ない。「小さな声を聞く」という公明党のキャッチフレーズは、沖縄の声も市民の声も範疇にはないのではないかと疑いたくなる。


    3月21日 平和を歌う 願いは一つ

     ロシアの侵攻を受けるウクライナ国民を励まそうと、京都市下京区の京都駅ビルで20日、音楽家や愛好家らが集い、ウクライナ国歌を合唱した。両国の出身者も会場を訪れ、平和の回復に向けた願いを歌声に込めた。

     駅ビルに駅ピアノを寄贈した奈良県の芸術振興団体「まほろば芸術ラボ」理事長で声楽家の山本昌代さん=奈良県平群町=が、「京都国際交流合唱団」(津田隆会長)などに呼び掛けて企画。プロアマを問わず、関西の約40人が集まった。

     ウクライナ国歌の意味が説明された後、ピアノに合わせて全員で合唱した。すべての人が兄弟になることを祈るベートーベンの「交響曲第9番」も歌い、思いを一つにした。

     山本さんは「音楽はパンや水にはならないが、何か音楽家としてできないかと思った。心はそばにあるとウクライナの人たちに思いを届けたい」と語った。

     参加した首都キエフ出身のシガルーオレーナさん(45)=左京区=は「応援が励ましになる。国歌には『心も身も国にささげる』という言葉があり、ウクライナ人は今はまさに戦っている。一緒に歌い、平和を願う思いは共通なのだと思いました」と語った。

     開催を知って駆けつけたロシア極東のハバロフスク出身の40代女性=東京都=は「ロシアがしているのは犯罪で毎日泣いている。私の祖父もルーツはウクライナ。プーチン=ロシアではないことを日本の人に知ってほしい」と気持ちを寄せていた。


    連日のロシア軍の民間施設(住宅、劇場、学校など)への攻撃は許しがたい蛮行。一刻も早く停戦の合意を図るべきだ。この戦争で日本人の持っている戦争観や国家観も改めて問われる事態になっている。国歌「君が代」の歌詞は「千代に八千代に」と天皇の統治を寿ぐ言葉がならぶ。ウクライナの国歌には「心も身も国にささげる」という言葉があるという。いわゆる「左派」の人たちはこの落差を埋めることができるのだろうか。


    3月18日 京都市 園の8割 補助金削減

     京都市が民間保育園の保育士給与を底上げするために設けている補助制度で、新年度は約8割の保育園が減額になる見通しとなった。行財政改革の一環として仕組みを見直すためで、最大で4千万円以上減る園もあるが、市は「ただちに運営が立ちゆかなくなる園はない」としている。

     現在の制度は「プール制」と呼ばれ、市が市保育園連盟を通じて保育士の人件費を補助している。金額が計36億円(2021年度予算)と多額なため、市は財政難に伴って制度の変更を決定。今月初旬には各園に対し、新制度に移行後の個別の試算額を示した。

     試算では対象の265園中215園で補助額が昨年度と比べて減額になり、全体では約20億8千万円の削減となる。1千万円以上削減される園が92園と3割強を占め、最大で約4200万円減るケースもある。

     なぜ減額の園が続出するのか。市によると、これまでは制度の独自基準で各園の園児数から保育士数を想定し、その人数に合わせて金額を算出してきた。新制度では実数に応じて金額が決まるが、全体的に想定数より少ないため減額につながるケースが多いという。

     市は各園の決算を基に、新制度に移行しても9割の園が保育士以外も含めた職員の給与水準を維持でき、残り1割にも「積み立て金を取り崩せば可能」と分析する。現状では急激な変化を防ぐための経過措置を設ける予定はないという。


    【インサイド】「あまりに拙速」園悲鳴

     京都市が打ち出した保育士給与の補助制度見直しを巡り、補助金が削減される民間保育園から悲鳴が上がっている。試算額が各園に提示されてから新制度の移行まで1ヵ月足らず。「あまりに拙速すぎる」「保育士の待遇向上を進める国の流れと逆行している」と先送りを求める声が強い。

     「なんでこんな額になるの」。新年度の試算額を市からメールで伝えられた今月初旬、中京区の保育園長は絶句した。昨年度比の減額幅は3500万円余り。積み立ての切り崩しやボーナスの減額で急きよ対応せざるを得ないという。「ただでさえコロナへの対応で疲弊しているのに待遇の悪化で辞める職員が出ないだろうか」と頭を抱える。

     各園の懸念は補助の減額だけではない。「プール制」と称される現制度は保育士の給与底上げが名目だが、事実上、他職種の人件費などにも充てることができ「園の裁量で柔軟に人材を配置できた」(保育関係者)。一方、、新制度は厳密に使い道が固定されるなど制限が多く、園によってはこれまでの職員体制を維持できない可能性がある。

     西京区のある保育園長は従来の数の調理師を雇うことが困難になるとし、「給食のおかずを1品減らすなど子どもに影響が出るかもしれない」と肩を落とす。園児の受け入れ枠の縮小を検討するというある保育園長は「現場を見ずに机上でつくった制度だと感じる。血の通った行政とは思えない」と憤慨する。

     市には1月以降、各園から市保育園連盟を通じて400件以上の質問が寄せられ、予算編成に苦慮する園などから問い合わせの電話が相次いでいる。

     15日には保育園の運営法人の理事長ら9人が、制度移行の一時中止を求める連名の意見書を市に提出した。その一員で京都保育団体連絡会長の藤井伸生・京都華頂大教授は中京区の市役所で記者会見し「このままの制度では京都の保育が大きく後退するかもしれない。4月からの実施は乱暴すぎる」と批判した。



    3月18日 子どもの貧困 「中低位層」でも困難直面

     食料を買えないことがある、授業が分からない、相談相手がいない―。貧困家庭の子どもがさまざまな困難を抱えており、子ども自身が将来貧困に陥る「貧困の連鎖」リスクも存在することが、政府が実施した初の全国調査で確認された。

     こうした困難は、世帯収入が中央値を下回る家庭にも及んでいると判明。政府の報告書は、貧困層と共にこうした家庭にも、経済状況に応じた支援が必要だとしている。

     内閣府は昨年2〜3月、全国の中学2年生と保護者5000組を対象に調査を実施。54・3%から回答を得て、12月に報告書「子供の生活状況調査の分析」を公表した。

     回答者の2019年の世帯収入は1000万円以上が15・3%と最多。500万〜600万円未満(12・2%)、700万〜800万円未満(11・2%)、600万〜700万円未満(10・5%)が続いた。300万円未満の家庭も1割を超えた。

     報告書では、世帯の人数を考慮した「等価世帯収入」が、中央値の半分未満の家庭を「貧困層」、中央値の半分以上で中央値未満の家庭を「中低位層」、中央値以上を「その他層」。とした。

     保護者への調査で、過去1年間で食料を買えなかった経験があったと回答した割合は、その他層では1・9%にとどまったが、中低位層は15・0%、貧困層では37・7%に達した。

     子どもへの調査では、学習習慣や授業の理解度で、貧困の連鎖リスクが浮かび上がった。学校の授業以外の勉強方法を尋ねたところ、「塾」はその他層で56・4%、中低位層は42・8%だったのに対し、貧困層は28・7%。「家の人に教えてもらう」にも差がつき、「授業以外で全く勉強しない」割合は、貧困層ほど高かった。

     授業が「ほとんど分からない」か「分からないことが多い」と回答した割合は、それぞれ7・3%、12・4%、24・0%だった。

     悩み事の相談が「誰にもできない」としたのは、それぞれ7・O%、10・6%、12・8%だった。

     コロナ禍では、非正規雇用の母子家庭を中心に収入が減り、食事に事欠くなどの実態を支援団体が報告している。今回の調査でも、食料や衣服を買えない経験や家庭内の言い争いが増えるなどの悪影響が、貧困層ほど大きいことが判明した。

     報告書作成に委員として関わった可知悠子・北里大医学部講師は「日ごろのセーフティーネットが足りないため、コロナでここまでの打撃を受けていると考えられます」と、行政による支援の充実が不可欠だと指摘している。


    コロナ感染拡大に加えてロシアのウクライナ侵攻、そして円安など要因でスタグフレーションが懸念される。政治がどこまで本気で「再分配」を考え実行するかにかかっている。


    3月16日 厚労省 女性の自殺者2年連続増

     2021年の女性の自殺者数が7068人(前年比42人増)に上り、2年連続で増加したことが15日、警察庁の自殺統計(確定値)に基づく厚生労働省のまとめで分かった。男性は1万3939人(同116人減)で12年連続減。全体は2万1007人で前年より74人減ったものの、新型コロナウイルス流鍾別の19年より838人多く、高止まりとなっている。京都府は全体で376人で前年比21人増、滋賀県は238人で9人減だった。

     厚労省自殺対策推進室は「さまざまな場面でコロナの影響が続いているとみられる」と分析。20年に過去最多の499人だった小中高生が26人減り473人となったことは「依然として高水準。注視する必要がある」としている。

     女性の自殺の動機・原因は「健康問題」が最多で、前年比144人減の4375人。次いで「家庭問題」が65人増の1357人で、内訳は「夫婦関係の不和」223人、「家族の将来の悲観」215人などだった。「経済・生活問題」も29人増えて454人に上り、うち「生活苦」が185人と最も多かった。  男性を含めた全体でも経済・生活問題が160人増の3376人、家庭問題が72人増の3200人だった。

     年代別では50代3618人、40代3575人、70代3009人の順に多く、50代が193人増、20代も90人増の2611人と増加が目立った。

     小中高生の内訳は、小学生11人、中学生148人、高校生314人。うつ病などの精神疾患や学業不振、親子関係の不和が多かった。

     人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)が多かった都道府県は、青森(23・7人)、山梨(同)、新潟(21・3人)など。京都府は14・6人、滋賀県は16・8人だった。

     東日本大震災に関連した自殺者は6人で、前年より1人増。地域別では宮城が4人、岩手と福島が各1人だった。


    心の不調増 受け皿も逼迫

     2021年の自殺者数が国の統計の確定値で2万1007人となり、新型コロナウイルス禍の中で高止まりしている。流行に終わりが見えず、生活環境が変わるなどして心に不調を抱える人は多いが、医療機関や相談窓口などの受け皿には逼迫もみられる。SOSをすくい上げ、悩みの背景にある孤独・孤立を解消する対策が急務だ。

     東京都千代田区の「秋葉原内科saveクリニック」の心療内科では、新型コロナ拡大後に患者数が増加し、1年ほど前からは新規患者の受け入れを中断している。鈴木裕介医師(40)は「知り合いのクリニックも同じような状態だ」と話す。

     患者からの相談内容はさまざまだ。経済状況の悪化で精神的にも追い詰められた人。不安からインターネットの情報を集め疑心暗鬼に陥ってしまった人。在宅勤務などで対面コミュニケーションの機会が減り心身のバランスを崩すケースも多く「何げない会話や雑談を意識的にすることも癒やしにつながる」と鈴木医師はアドバイスする。

     「今すぐに命を絶ちたい」「話を聞いてほしい」。チャットによる相談を24時間受け付けるNPO法人「あなたのいばしょ」(東京)に寄せられる悩みは、切羽詰まった内容も多いという。相談員の対応が追いつかず、返信に時間がかかってしまう場合もある。

     月ごとの相談件数は、2020年3月の開設当初は千件に満たなかったが、現在は2万件を超える。所属するスタッフやボランティアは日本の夜間に対応できる海外在住者を含め約500人。今年4月以降は人数を増やす計画だが、相談員は一つの言葉で相手に大きな影響を与えることもあり、十分な研修が必要だ。養成は簡単ではない。

     理事長の大空幸星さん(23)は「最後のとりでである相談窓口の体制整備とともに、悩みの源流にある“望まない孤独”の対策に取り組む必要がある」と訴える。

     自殺問題に詳しい早稲田大の上田路子准教授と同NPO法人は2月、インターネットで20歳以上の計約3千人に調査を実施。設問の回答を数値化した分析で、37・3%が孤独感を抱えていた。コロナ流行前より生活が悪化したという人の中では、孤独を感じていたのが47・8%に上った。

     政府は昨年12月、コロナ禍で深刻化した孤独・孤立対策について初の重点計画をまとめた。官民で連携し、24時間の相談体制をさらに整えるほか、支援に当たる人材を育成。地域での交流の場や居場所づくりも進める。



    3月16日 文科省 特別支援「全教員経験を」

     障害がある児童生徒の特別支援教育を担う教員をどう増やすかについて検討する文部科学省の有識者会議は15日、全ての新規採用教員が10年目までに2年以上、特別支援学校などでの指導を経験するべきだとの提言案を大筋で取りまとめた。特別支援教育を受ける児童生徒の増加で担い手の育成が急務となる中、「特定の教員にのみ負わせられる課題ではない」と強調した。

     文科省は今後、提言案に沿った教員配置が進むよう、全国の教育委員会に人事制度の整備を促す方針。ただ、保護者らからは専門的な知識がない教員による指導への懸念が出ており、教員の質の担保が課題となる。

     提言案では、教員が比較的若い時期に特別支援学校や小中学校の特別支援学級を経験することで、障害の特性に応じた指導の重要性を理解できると指摘。若手教員の支援として、特別支援教育に詳しいベテラン教員による研修の実施といった対応を教委に求めた。

     また、専門的な教員を増やすため、教員養成課程で特別支援教育について学んだり、現場体験に取り組んだりした学生は採用試験で加点することを推奨。各受校の管理職は学校経営計画に特別支援教育に関する日標を設定すべきだとした。


    議論が全く逆に思える。インクルーシブ教育が世界的な流れの中で、なぜ特別支援教育を望む親が多くなっているのかがまず問われるべきであろう。もちろん障害を持つ子どもの教育においてある種の「専門性」は必要ではあるが、むしろ障害への「哲学」が最も必要だと思える。支援学校・学級での教員による性暴力も依然として存在していることからみれば、必要なのは「採用試験で加点」などという姑息な対応ではないはずだ。


    【随時更新】 ロシアのウクライナ侵攻

     ロシアのウクライナ侵攻は許しがたい行為です。京都新聞に掲載された記事から私たちが考えなければならない問題を「 ロシアのウクライナ侵攻」のページに掲載しています。随時更新の予定です。



    3月12日 警察庁 子の虐待最多2千人超

     2021年に全国の警察が摘発した18歳未満の子どもの虐待事件は、前年に比べ41件増の2174件で、被害児童数は前年比47人増の2219人だったことがこのほど、警察庁の統計(確定値)で分かった。ともに過去最多。無理心中などで死亡した児童は7人減の54人だった。

     虐待疑いで児童相談所に通告した子どもは1068人増の10万8059人。警察庁の担当者は「新型コロナウイルス禍で外部の目が届かず、潜在化している恐れがある」と話している。

     21年に会員制交流サイト(SNS)を介して犯罪被害に遭った児童は1812人。性被害が多く、サイト別ではツイッターが36・9%と最多。72・6%に当たる1316人は自身の投稿をきっかけに加害者と知り合った。

     1316人の主な投稿内容は「プロフィル」(22・0%)、「援助交際募集」(19・4%)、「出会い目的」(10・1%)、「趣味・嗜好」(10・0%)。同庁は「趣味や日常生活などの一般的な投稿でも被害に遭う危険がある」と注意を呼び掛けている。

     虐待被害の児童2219人の内容別は身体的虐待(81・3%)、性的虐待(15・3%)が多く、年齢別は12〜14歳が目立った。摘発人数は2199人で、被害者との関係は実父が1039人と最も多く、実母、養父・継父が続いた。

     全国の警察では21年12月以降、虐待が疑われる現場で警祭官が得た情報をコンピューターに入力し、危険度を判定するシステムを順次導入した。過去の現場データや専門家の意見などを基に、加害行為や家庭環境といったチェック項目を作成。同庁は「警察官に虐待事案の知識や経験に差があっても、統一した仕組みにより兆候を確実に把握したい」としている。


    子どもの虐待をどの官庁が把握するのかによってその対応も変わってくる。警察の対応と福祉の対応とでは限界と温度差も生まれるだろうけれどもその間隙を埋める目的で創設されたのが「子ども家庭庁」だろう。より子どもに寄り添った統一的な対応がとれるかどうかが課題になる。


    3月12日 京都市 独自軽減策 7月見直し

     京都市は行財政改革の一環で、障害がある子ども向けの通所施設の利用負担について、市独自の軽減を見直す。未就学児は多くが料金引き下げにつながる一方、利用者の大半を占める小中高生らは引き上げになる可能性が高くなる。7月から新たな料金体系に移行する。

     負担を見直す通所施設は未就学児向けの「児童発達支援」と小中高生ら向けの「放課後等デイサービス」の事業所で、児童福祉法に基づき、国が利用世帯の月額負担に上限を設けている。市は低所得者への配慮などから独自に予算を投じ、所得や利用日数に応じて上限を低く抑えてきた。

     一方、2022年度からは「限られた財源を再配分する」(市担当者)ため、児童発達支援と放課後等デイサービスで料金体系を分ける。さらに上限月額の算定基準は所得のみにし、月内に何日利用しても同額にする。

     児童発達支援では、早期療育を促すため、O〜2歳は高所得世帯を除き上限月額を引き下げる。具体的には世帯年収約890万円以下の場合、最大2300円だった上限が700円以下になる。一方、年収890万円以上は引き上げとなる可能性もあり、2400〜7700円が6200円に統一される。3〜5歳は国の制度で無償化されている。

     放課後等デイサービスは生活保護受給世帯などを除き、上限月額を引き上げる。年収約890万円以下の場合は300〜2300円が一律で2300円、年収890万円以上の場合は2400〜7700円か1万8600円となる。

     利用者は昨年度末で未就学児(O〜2歳児)が360人、小中高生らが3056人のため、全体では引き上げとなる世帯が多くなる見込み。市の負担は8400万円(昨年度決算)から4600万円に減る見通し。

     市子ども家庭支援課は「見直し後も国基準やほかの政令指定都市と比べ、負担は大幅に抑えている。持続可能な制度にするためご理解いただきたい」としている。


    「子育て環境日本一」をあげるポスターが地下鉄などに多数掲示されているのだが、この利用料金に直しについても市の理念が見えない。未就学児360人VS小中高生3056人だけが検討されたように見える。


    3月12日 市教委 中学校部活動 16日から再開

     京都市教育委員会は11日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1月18日から原則中止していた市立中学校での部活動について、今月16日から条件付きで再開すると発表した。

     活動場所は校内で、参加者は自校生徒と教職員のみとし、活動時間は2時間以内とする。ただし、感染リスクが高い活動は控え、なるべく個人や少人数で行うよう工夫する。

     2月中旬以降、市立学校での感染者が減少傾向で、春季大会を控えて活動再開を求める声が多かったため決定した。小学校の部活動は3月上旬で活動が終わるため中止のままとする。高校はすでに校内限定、2時間以内の条件付きで実施している。


    まん延防止等重点措置解除基準の設定が分かりにくい。印象としては「場当たり的」な気がする。子どもたちの活動をいつまでも保留しておくわけにはいかないのも事実なのだが。ただ、単に「再開」でもって旧来の部活動に戻るということであってはいけない。部活動が子どもや教員にどれだけの負担を強いてきたのかということも改めて考えることが必要。新たな部活動の在り方と併せて議論することが必要。


    3月5日 市教委 学級閉鎖の基準緩和

     京都市教育委員会は4日、新型コロナウイルスに伴う小中学校の学級閉鎖基準を変更した。現在は他人に感染させる可能性がある期間(発症日の2日前から)に登校した陽性の児童生徒が1人でもいた場合としているが、今後は2人以上の場合などに緩和する。

     新基準では、学級で2人以上の感染が同一日に確認された場合とするが、共に家庭内感染が疑われる場合は学級内感染の可能性が低いため対象外とする。感染が1人でも、風邪の症状で3人以上欠席したり、別の児童生徒に風邪の症状が出て感染を確認したりした場合は実施する。閉鎖期間は従来通り5日間とする。

     これまで学級閉鎖となった児童生徒の兄弟や姉妹に対して登校・登園を控えるよう依頼してきたが、行わないようにする。市立幼稚園では、―人でも園児の感染が確認された場合という基準は維持したまま、対応は「7日間の休園」を「5日間の学級閉鎖か休園」に変更する。

     市教委によると、1月6日〜3月2日の学級閉鎖数は1969学級と全体の49・2%に上る。ただし1週間当たりの児童生徒・教職員の感染は2月3〜9日の1706人がピークで、同24日〜3月2日は1117人と減少傾向のため、学級閉鎖基準の変更を決めた。年度末で学習保障を徹底したり、学級閉鎖によって保護者が仕事を休まなければならない負担を軽減したりする狙いもある。

     一方、京都府教育委員会は4日、府立学校で部活動は2時間以内などとする教育活動の制限を21日まで継続すると発表した。市教委も小中学校の部活動は原則中止などとする方針を当面続ける。



    3月4日 元内閣官房副長官補 柳沢協二 「核先制不使用」先導すべき

     ロシアのウクライナ侵略は、外交破綻の延長線上にある。識者の多くが、ロシアはドネツク、ルガンスク両州をクリミア半島のように支配下に置くのが目標だと読み、私もそう予測していた。だが、ロシアが政府転覆をにらんだ戦争に踏み切った事実に鑑みれば、プーチン大統領の北大西洋条約機構(NATO)東方拡大に対する警戒感は理性的な計算を超えた。

     NATOの拡大は、冷戦後の欧州国際秩序の焦点だった。米欧は、長期的な視点から戦略を描くと同時に、ロシアとの協議による接点を見いだすべきだった。フランスやドイツによる仲介外交の失敗も、NATO問題での妥協をカードにできなかったことに起因する。戦争は国家目的達成の手段で、それ自体が目的ではない。戦争回避には、意見の対立を外交的に管理する必要があるのだ。

     今回のロシアによる侵略行為は断じて許されない。主権国家に対する一方的な武力行使は、第2次世界大戦後の国際法や国連憲章による秩序を破壊する蛮行だ。  米欧は、ロシアの一部銀行を国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意した。戦争を断念させる意味では遅きに失したが、代償を払わせ、今後の戦いを抑制する効果はあるかもしれない。米国は国際世論でロシアを包囲しようと躍起で、日本もこれらに加わっている。

     今回の侵略は国際秩序の問題であり、「一国の外交上の思惑」を優先すべきではない。ロシアとの北方領土返還・平和条約締結交渉が頓挫するのは必定だ。

     ハイテン米大統領は当初から、ロシアが武力侵攻に踏み切った場合の軍事オプションを否定していた。それが戦争を抑止できなかった一因だろう。だが、米国が参戦すれば、欧州を巻き込んだ戦争に発展しかねなかった。勝者なき戦争である。

     日本では「中国が台湾で同じ動きに出かねない」という見方がある。安倍晋三元首相は、米国の核兵器を自国の領土内に配備する「核共有」政策を日本も議論すべきだとの考えを示した。しかし、われわれに問われているのは「力によらない解決」という戦後世界の根幹を維持するか、勝者なき戦争の論理の中に身を置くかという選択だ。

     外交だけでは戦争を防げないかもしれない。だが、ウクライナ問題の焦点はNATO加入の是非であり、それを巡る外交の欠如が戦争を招いた。台湾問題の焦点は、中国が譲らない「一つの中国・台湾独立の否定」の維持である。ここでも、外交努力を怠れば、戦争を回避できないことは自明だ。

     「相手が譲れない利益を侵害しない、相手も戦争に訴えない」という相互の保証が必要だ。私はここに、今回の戦争の教訓があると思う。

     プーチン氏が核の使用を示唆していることも許し難い。「核は相互に使わないために存在する」という核抑止論を超え、自国の主張をのませる手段としている。これを許せば「力の論理」がまかり通り、世界は暗黒化しかねないと憂慮する。日本は「核保有国と非核国の懸け橋」として「核の先制不使用」を先導すべきだ。

     「ウクライナが明日のわが身にならないように」との思いは、普通の国に共通する思いだ。大国の横暴を許さない国際世論の力が試されている。


    喧嘩両成敗的な見方に与するわけにはいかない。ロシアのウクライナ侵攻は侵略と呼ばんければならない段階に達している。ここでアメリカのイラク戦争時のことを思い出してみる必要があるだろう。大量破壊兵器の「存在」を理由に世界の秩序を破壊するという理由で攻撃に踏み切った。そして日本も同調した。ところが事実は違った。戦後も兵器の存在は確認されなかった。このように現在の報道だけからは分からないことが多々ある。冷静な判断が必要で、すべての正義がウクライナ・西側にあるということではないだろう。一般兵士や市民の死こそすぐさま回避しなければならないことだ。


    3月4日 こっぽりおん 朝鮮学校の保健室 支えて

     京都朝鮮初級学校(京都市伏見区)に「全国の朝鮮学校で唯一」の常勤養護教諭が着任したのを機に、京都市の市民団体がオンラインで「朝鮮学校・保健室基金」を立ち上げた。公的補助に乏しい朝鮮学校は、養護教諭の配置が資金面で厳しい。民族に関係なく児童の成長を支えるため、広く支援を呼び掛けている。

     同校には昨年4月、常勤の養護教諭として、゙元実(チョウォンシル)さん(28)が着任した。同校の歴史で初めての「常勤」で、全国の朝鮮学校でも15年ぶりのことだった。

     着任後、教室に入るのがしんどい児童のための保健室登校や、性教育などを扱う「保健」の授業が実現。担任教諭に見せにくい「しんどさ」を打ち明けられる場所として機能している。゙さんは「子どもたちの成長がすごく早くて楽しいい視力の悪い子が多いので、春からは視力回復の取り組みなどを児童と一緒にできれば」と見据える。

     文峯秀(ムンポンス)校長は「朝鮮学校は保健室が無いのが当たり前で、当初は『いた方がいい』くらいの認識だった。しかし、子どもだけでなく、他の先生の良き相談相手にもなってくれ、学校に必要不可欠な存在と分かった」と意義を話す。

     しかし、朝鮮学校は学校教育法に定められた施設でないため、公的補助は少なく、人件費や設備費など運営費の約8割を寄付金でまかなっている。保健室のベッドや消毒液など多くの備品も、保護者から寄贈されたり、企業の無料サンプル提供に応募して入手したものだという。

     このため、保健室運営に対して広く支援を募ろうと、京都市の市民団体「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋(こっぽんおり)」が、オンライン基金を立ち上げた。保健室に特化した基金と、朝鮮学校全体を支える基金の2種類がある。

     同校のほか、京都朝鮮第二初級学校(右京区)と京都朝鮮中高級学校(左京区)、滋賀朝鮮初級学校(大津市)も対象にしており、衛生用品や備品の購入などに充てる。

     基金への寄付は「こっぽんおり」のホームページから可能。


    安倍政権下での朝鮮学校への差別は、国籍を問わずどの子にも教育を受ける権利があることを踏みにじったものだった。国際的な人権感覚からも早期に「一条校」なみの扱いをすべきだ。聞く耳を持つ?岸田政権での課題でもあるし、この情勢下でこそ「差別」への鋭い視線が私たちにも必要だろう。


    3月4日 府・市教委 中期選抜全日制1.00倍

     京都府と京都市の両教育委員会は3日、公立高入試中期選抜の志願者数を発表した。中期選抜を実施する全日制53校の志願者数は6414人と前年度より99人増え、志願倍率は1・00倍(前年度比0・03ポイント増)と、3年ぶりに1倍台に回復した。  全日制の学科別の志願者数と倍率は、普通科が6050人で1・05倍(同0・03ポイント増)、専門学科が347人で0・64倍(同0・03ポイント増)、総合学科が17人で0・17倍(同0・11ポイント増)だった。定時制は8校の普通科、専門学科、総合学科で計66人が志望し、倍率は前年度より0・03ポイント減の0・15倍だった。  最も志願倍率が高かったのは鴨沂普通科の1・81倍で、次に桂植物クリエイト科が1・67倍、塔南普通科が1・66倍、城南菱創普通 科が1・65倍、堀川普通科が1・57倍と続いた。倍率が1・Oを下回った学校数は32校(分校・学舎を含む)46学科だった。  中期選抜は第2志望など3校まで志望先を書くことができ、現時点で募集人員に達していなくても定員割れになるとは限らない。府教委は、全日制の倍率が1倍台に戻った理由について「今年は公立中の卒業予定者が前年度より262人多いことが一因。受験生は新型コロナウイルス禍の中でも行きたい学校を主体的に選んでいる」としている。  試験は8日、合格発表は17日に行われる。



    3月4日 部落解放同盟 水平社100年 差別ない社会へ

     人間の尊厳と平等を求めて部落差別と闘った「全国水平社」の創立から100年の節目となる3日、創立の地である京都市左京区岡崎で記念集会が開かれた。約千人が参加し、差別のない社会に向けた「新たなる決意」を表明したほか、戦争は最大の人権侵害であるとしてロシアのウクライナ侵攻を批判した。

     水平社の後継団体である部落解放同盟がロームシアター京都で開いた。式典では「人の世に熱あれ、人間に光あれ」で知られる水平社宣言を朗読。解放同盟中央本部の組坂繁之執行委員長が「水平社宣言が運動の原点であることを、100周年を機にもう一度胸に刻まなければならない」と強調。松本治一郎初代委員長が「戦争が最大の差別である」と述べたことに触れ、ロシアのウクライナ侵攻に対して「反対の声を上げなければならない」と訴えた。

     続いて「新たなる決意」として、障害者やアイヌ民族などを含めたマイノリティー全体の人権を確立するために包括的な法整備を目指すことや、ネット社会がもたらす差別と闘うことなど4点を示し、参加者らがその達成を誓った。

     式典の前後には、部落差別によって神社への奉納を禁じられた歴史を持つ吉祥院六斎念仏踊り(南区)の披露や、記念事業として制作された映画「破戒」の上映もあった。

     全国水平社は1922年3月3日、被差別部落出身の若者らの呼び掛けで、全国から約3千人が京都市の岡崎公会堂(当時)に集い、創立大会が開かれた。そこで採択された宣言は、「日本最初の人権宣言」とも評される。



    3月3日 門川京都市長 歴史都市に支援を

     世界の125都市が加盟する世界歴史都市連盟(事務局・京都市)は2日、口シアによる軍事侵攻を受けているウクライナの歴史都市に支援の手を差し伸べるよう求めるメッセージを、加盟都市宛てに出した。

     同連盟は歴史都市の交流を目的として1994年に発足。以来、歴代の京都市長が会長を務めている。

     現会長の門川大作京都市長名のメッセージでは、軍事侵攻を「遺憾」とし、戦闘の即時停止と軍の即時撤退を要求。「被害に見舞われた歴史都市に支援の手を差し伸べることを求めたい」と呼び掛けている。

     ウクライナでは首都キエフと西部リビウ、南部オデッサなど5都市が連盟に加盟。ロシアでもカザンなど4都市が加盟している。メッセージは3日以降、連盟のホームページに掲載するほか、メールで各加盟都市に送るという。


    ロシアのウクライナへの軍事行動は理由の如何を問わず容認できるものではない。即時の停戦を求めるものである。そうした点では市長のメッセージは意味があるのかもしれない。ただ、2月24日には「災害などと事情が違う。市民に支援の呼び掛けができるのかも含め、今は情勢を見守るしかない」(市国際交流・共生推進室)との認識から一転本庁舎や区役所などに寄付金箱を設置するなどキエフ支援色を強めたのはなぜなのだろうか?うがちすぎだとは思うが、危機に際してのショックドクトリンに一役を担うことになる恐れはないのだろか。自民党や維新の会では「核共有」などの議論をタブー視することはないとして、積極的な軍事戦略を構想する向きもある。今最も必要なのはウクライナからの難民支援と停戦合意への取り組みであってEU諸国が行っている「武器の供与」ではないだろう。 。


    3月2日 文科省調査 公立特別支援学校全国で3740教室不足

     全国に1096校ある公立特別支援学校で、在籍する児童生徒が増えたことなどを理由に2021年10月時点で不足する教室の数は3740に上ることが1日、文部科学省の調査で分かった。前回調査(19年5月時点)より578増えた。京都は115、滋賀は67不足。文科省は、校舎整備への予算補助を拡充して解消を促すとしている。

     調査によると、理科室や図書室、倉庫などを普通教室に転用したり、間仕切りで二つに分けたりする一時的な工夫をしている教室は全国に7125ある。うち2860について、授業に支障が出ているとして教室不足数にカウントした。さらに「今後必要が見込まれるために新たな整備を希望する教室」が880あり、文科省はこの合計を不足数と定義した。

     不足数のうち、24年度までに解消の計画が立っているのは969(26%)にとどまった。また、`全都道府県のうち、解消に向けた「集中取組計画」を策定していないのは京都など10府県だった。

     文科省によると、国公私立の特別支援学校(幼稚部―高等部)在籍者数は21年度に約14万6千人となり、11年度より16%増えた。大半は知的障害のある子どもで、早期発見が容易になったことが背景にあるとされる。本人や保護者が特別支援学校に通いたいという希望が尊重されやすくなったことも影響している。


    かつて1979年に養護学校が義務化されることに対して反対運動が全国的な盛り上がりを見せたことを考えると、現在の障害を持つ子どもの教育環境は大きく様変わりしたといえる。しかし、当時も言われた「みんな一緒」は今でも大切な考え方だし、「合理的配慮」にたつインクルーシブ教育は依然として世界の流れ。どうして「特別支援学校に通いたいという希望」を子どもや親が持つのだろうか。普通学級や普通学校の在り方が問われているのではないか。


    3月2日 文科省調査 日教組加入率45年連続低下

     2021年10月。1日時点の日教組の加入率は前年比0.5ポイント減の20.8%で、過去最低を更新したことが1日、文部科学省の調査で分かった。1977年以降45年連続の低下。日教組を含めた教職員団体全体の加入率も1.0ポイント減の30.4%で46年連続の低下だった。

     調査は大学と高等専門学校を除く公立学校の常勤教職員101万8112人を対象に行った。教職員団体の加入者は30万9433人で、このうち日教組は6256人減の21万1418人。全日本教職員組合(全教)は2115人減の3万921人で加入率3.0%、全日本教職員連盟(全日教連)は756人減の1万8256人で1.8%となった。

     新規採用者の教職員団体への加入率は0.9ポイント減の23.4%。

     団体別では、日教組が0.5ポイント減の18.2%、全教は0.3ポイント減の1.0%、全日教連は0.1ポイント減の1.6%だった。


    働く人たちの組合加入率は、連合、全労連を問わず減少傾向にあることを考えると教員組合だけが一人蚊帳の外というわけではないだろう。働き方改革が言われるなかで「改革を待つ」という受け身の姿勢では、改善は望めないだろう。組合加入は改革のための必須条件だろう。ただ、旧来の既存組合への魅力と必要性が感じられないという声は大きい。反面、〇〇ユニオンとよばれる独立系の組合は多忙?