堀場製作所は30日、砂の中に混ざった微小なマイクロプラスチックを確認できる観察キットを発売した。独自の光学技術で肉眼で見えない破片を可視化する。環境を学ぶイベントや学校の出前講座で活用してきた実験用具を子どもの学習向けに商品化した。 名称は「ぷらウォッチ」。染色液にさらした砂を乾燥させてLED(発光ダイオード)を照射すると、プラスチックの微細な破片が光る仕組み。 マイクロプラスチックの分析方法は、成分の分布を特定する赤外分光法が一般的だが、前処理を含むと数日間を要する場合もあるという。堀場製は、得意の蛍光分析技術で約1時間に短縮し、スマートフォンのカメラで撮影して観察する仕組みを考案。2021年に教育用に試作品を開発したが好評だったため、商品化を決めた。 観察キットは1台4万9500円。プラスチックはほぼ使わず、再生紙の段ボールで組み立てた。分析子会社の堀場テクノサービス(京都市南区)が扱い、5年間で1千台の販売を計画する。堀場製は「子どもたちが環境問題をより身近に感じ、興味や理解を深めてほしい」としている。 ![]() |
文部科学省は29日、「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)のオンライン化を巡り、2025年度調査で先行実施する中学3年理科のサンプル問題を公表した。27年度からは紙の問題冊子を全廃し、パソコン端末を活用して出題・解答する新方式(CBT)に完全移行する方針を示して いる。 サンプルでは、自転車で坂を下りブレーキをかけて止まる動画を見て、働いた力を選択式で解答した上で何が起きたかを記述するものや、四つの動画からルーぺの正しい使い方を選択する設問などを紹介した。 25年度調査は、従来通り紙で解答する国語と算数・数学を来年4月17日に実施。CBTによる中学理科は4月14〜17日の4日間に学校を振り分けて行う。 これらの日程で受けられなかった児童生徒や学校は18〜30日の実施も可能。その場合、中学理科は自宅など学外でも受けられる。 学力テストは全国の小中学生約200万人が対象。国語と算数・数学は毎年度、理科と中学英語は3年に1回程度実施される。 ![]() |
公立学校教員給与に残業代の代わりとして上乗せ支給している「教職調整額」を、現在の月給4%相当から13%に増額した場合、年間の財政負担が国と地方の合計でで約5580億円増えると政府が試算していることが26日分かった。内訳は国が約1080億円、地方が約4500億円となる。 教職調整額を巡っては、文部科学省が2025年度予算の概算要求で13%へと引き上げるよう求めた。深刻化する教員不足に歯止めをかけるための処遇改善策だ。国の財政状態が悪化を続ける中、実際にどの程度の増額に踏み切るかが焦点で、年末にかけての予算編成過程で調整する。 総務省などの試算によると、教職調整額を4%から10%に6ポイント増やした場合、国と地方の年間負担は計約3720億円増額。文科省の要求通り、現状から9ポイント上乗せした13%では計約5580億円増える。 公立小中学校教員の給与は国が3分の1を負担し、残りを都道府県や政令指定都市が賄う。公立高校や幼稚園の教職員は地方が全額負担する。増加すると試算された地方負担4500億円のうち、多くは公立小中学校の教員の給与が占めるとみられる。 教職調整額の引き上げが決まれば、教員給与特別措置法の改正案を25年通常国会に提出する。実際に増額されるのは26年1月からになる見通し。大幅な引き上げに踏み切る場合は安定財源の確保が課題となる。 文科省は質の高い教員の確保に向け待遇を改善し、なり手不足の解消や教職の魅力向上につなげたい考えだ。教員数の不足に加え、子どもの課題が複雑化して業務が積み上がる傾向にあり、労働環境が厳しくなっていることが背景にある。中教審特別部会は5月、教職調整額を「10%以上」に増額するとの目標を提言していた。 文部科字省と財務省が教員の処遇改善策を巡り綱引きを激化させている。教員の給与増以外に人員増も求める文科省に対して、財務省は業務の効率化を強く求める。問題視される教員の長時間労働の是正に向けてより良い政策を構築できるかどうか注目が集まる。 文科省は2022年度の調査に基づき、残業が1ヵ月の上限である45時間を超えた教諭は小学校で64・5%、中学校で77・0%と堆計した。「依然として長時間勤務の教師が多い状況だ」と指摘している。 文科省は十分な数の教員を確保するには、労働時間に見合った給与水準の引き上げが欠かせないとの姿勢だ。公立校教員に対し、残業代の代わりとして支給する月額給与4%相当の「教職調整額」を増額したい考えで、25年度当初予算の概算要求では13%に増やすことを求めた。 学校の指導や運営の体制を充実し、教員の負担を軽くすることも目指す。概算要求には、全中学校に生徒指導の担当教師を配置することなどを盛り込んだ。 財務省は教職調整額を一律で大幅に引き上げることに慎重な立場だ。財務相の諮問機関である財政制度等審議会は「まずは働き方改革の取組を進めるべきだ」と指摘。春の建議(意見書)で外部人材の有効活用や、負担が大きい主任教員の手当を引き上げるなど負担の重さに応じた給与体系にするよう提案した。 ![]() |
不登校の子を持つ保護者の5人に1人が、仕事を辞めざるを得なかった―。オンラインフリースクールを運営するSOZOW (東京都品川区)はこのほど、不登校の小中学生の保護者に実施したアンケート結果を公表した。学校から必要な情報提供がなかったとの回答も、約半数に上った。 同社の小助川将代表(44)は「子どもだけでなく、保護者も深刻な困難を抱えている」と指摘。支援に向け、不登校の子どもがいる家庭の実態調査を文部科学省に要請する考えを示した。 調査は同社のオンラインフリースタールに通う小4〜中3の保護者187人が回答。不登校によって起きた変化を複数回答で尋ねたところ、18・7%が「仕事を辞めざるを得なかった」と答えた。他に「気分の落ち込み」が57・2%、「精神科を受診した」が15・0%、「死にたいと感じた」が9・1%などだった。 子どもが不登校になった際、学校からどんな情報提供を受けたかについては「情報提供はなかった」との回答が49・7%に上った。 必要だと思った情報(複数回答)は「相談窓口」が63・6%、「フリースクールなどの民間支援の内容」が53・5%、「学校以外で支援を受けた場合の出席扱い」が49・7%などとなった。 ![]() |
国連環境計画(UNEP)は24日、2023年の世界の温室効果ガス排出量は前年から1・3%増加して571億トンとなり、過去最多だったとする報告書を公表した。国際枠組み「パリ協定」は気温上昇を産業革命(18〜19世紀)前から1・5度以内に抑えることを目指すが、各国が対策を強化 しなければ世界の平均気温の上昇幅は今世紀中に最大3・1度になると指摘した。 報告書によると、世界の総排出量は1990年以降、増加傾向に歯止めがかかっていない。世界の平均気温は既に1・1度上昇しており、今夏(6〜8月)の日本の平均気温は統計開始以降で最高だった昨年に並び、2年連続で最も暑い夏となった。 UNEPは「今すぐ対策を強化し、1・5度目標の実現に全力を尽くすべきだ」と強調した。国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が11月にアゼルバイジャンで予定されており、各国が危機感を共有して対策強化を打ち出せるかどうかが焦点となる。 報告書は、各国が現在掲げる2030年までの削減目標は達成されていないとし、仮に実現できた場合でも2・6〜2・8度の気温上昇が見込まれると指摘した。1・5度目標の実現には30年までに排出量を19年比で42%、35年までに57%削減する必要があるとした。 20力国・地域(G20)の各国が掲げる現状の削減目標も評価。30年度に13年度比46%の削減を目指す日本の目標の実現性について「可能性は低い」とした。 排出量は二酸化炭素換算で算出しており、160億トンで世界の排出量の30%近くを占める中国が最多。59億トンの米国が続いた。アフリカの国々を除いたG20加盟国で世界全体の77%を占めた。環境省によると、日本の22年度の排出量は11億トン。 1・5度目標の実現について「技術的に可能だが多大な努力が必要」と強調。太陽光、風力発電のさらなる拡大のほか、輸送、産業分野における電化や化石燃料からの脱却を挙げた。 UNEPの報告書は、世界の温室効果ガスの総排出量が増加を続け、地球温暖化に歯止めがかからない現状を浮き彫りにした。世界の平均気温は産業革命以隆、既に1・1度上昇し、対策強化は待つたなしの状況だ。各国は実現性を伴う高い目標を策定し、早急に取り組む必要がある。 報告書は迅速な対応が急務であることを強調。現状のままでは、今世紀末の気温上昇を1・5度以内に抑えるパリ協定の目標 は「数年以内に達成できなくなる」と警鐘を鳴らした。 パリ協定の下では、加盟国がそれぞれ削減目標を掲げ、進捗状況を踏まえてより高い目標に改定する。国連は2035年以降の新たな目標を来年2月までに提出するよう各国に求めるが、報告書は20力国・地域(G20)の多くが現目標の達成すら難しいと指摘した。 1・5度を超えると異常気象の発生頻度が高まり、生態系の喪失など回復できない被害が想定されている。対策の先延ばしは許されない。 ![]() では、どいう生活のスタイルにするのか?斎藤は「SDG'sは現代の麻薬」だというが、少なくとも銭儲けをしないでできる豊かさを各人が求めることが必要だろう。地産地消もその一つだし、膨大な電力を必要とするITに頼らないことも、そしてCO2を排出し破壊を続けその後再びCO2を排出する復興に商機を求める「戦争」を終わりにすることも。 |
不登校の児童生徒が増加する中、フリースクールなど民間施設を利用する家庭向けに経済的支援を行う自治体が増えている。京都府内は2市とまだ少ないが、滋賀県内は11市町と全体の過半数に達した。東近江市長のフリースクールや不登校に関する不適切発言から今月で1年たったのを機に、各市町の補助制度の状況をまとめた。(堤冬樹、岡本早苗、生田和史) 不登校支援を巡っては、学校以外での多様な学びの重要性を記した教育機会確保法が2017年に施行された。文部科学省は、教育委員会や学校と民間団体との密接な連携も求める。 ただ、公立小中なら授業料や教科書代は無料だが、フリースクールの授業料は平均で月3万3千円(文部 科学省調べ)かかるという。そのためフリースクール利用の補助は、不登校の小中学生の居場所や学習機会の確保、家庭の経済的負担の緩和などを目的に、府内では23年度に亀岡市が、滋賀県内では21年度に草津市がそれぞれ初めて導入した。 一方、不登校支援をテーマにした昨年10月の滋賀県の首長会議で、東近江市の小椋正清市長が「文科省がフリースクールの存在を認めたことにがくぜんとした。国家の根幹を崩しかねない」などと発言。全国的な問題となり、市長は後に謝罪した。 その東近江市を含め、フリースクール利用補助は24年度から新たに舞鶴市、長浜市、守山市、湖南市、多賀町の6市町が開始。東近江市教委は導入の理由について「不登校の児童生徒の状況を見て対応を考えた」とし小椋市長の発言は関係ないという。ただ導入自治体の中には「(市長発言が) 議論が進むきっかけの一つになった」という声もある。 京都と滋賀13市町の補助額の上限は月額5千〜4万円と差があり、対象者や対象経費など条件もさまざま。亀岡市はオンラインのフリースクールを含む市内外の6施設を利用する小中学生に月1万円を上限に補助している。滋賀県は7月から、市町と連携してフリースクールを利用する家庭向けに実態調査を行い、アンケートの回答者には協力費として月5千円を支給している(大津市は不参加)。 運営基盤の脆弱なフリースクールが多い中、近江八幡市は24年度から県内で初めて施設への運営補助も開始。市長の認定を受け、スタッフが複数いるなどの条件を満たした市内の施設に年200万円を上限に交付する制度で、フリースクールのSince(シンス)はその一つ。麻生知宏代表理事(26)は「家賃や教材費、人件費などに活用し、運営の持続可能性という点でとても大きい。子どもがどこに住んでいても安心して質の高い施設を利用できるためにも運営補助は必要」と訴える。 運営補助を求める施設関係者の動きは他の自治体でもあるが、未導入の理由として「公の支配に属さない教育事業に公金を支出してはならない」とする憲法89条を挙げる自治体が複数あった。「国や県が議論を深めて方向性を示してほしい」との声も出た。 京都府は08年度から、一定の教育活動を展開したり、学校と連携したりする民間施設を「認定フリースクール」として指定し、現在6施設に対し1施設当たり年間50万円を補助している。府教育委員会は「学校と連携して授業や体験活動を実施している施設に限定して支出している。府認定のフリースクールは公教育を補完する施設ととらえており、憲法89条には反しない」と説明。舞鶴市は、府の認定がある市内のフリースクール「聖母の小さな学校」に、20年度から年間50万円の補助を続けている。 ![]() |
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は22日、分科会を開き、地方自治体に対し歳出改革の徹底を改めて求めた。教員の給与増加など地方の財政負担につながる国の政策の実施を見据え、自治体が歳出抑制や業務の合理化を通じ財源を捻出する必要があると訴えた。地方財政が悪化し、行政サービスを維持するのに十分な予算が確保できなくなるのを避ける狙い。 衆院選では各政党が教育サービスの向上を主張。残業代の代わりに教員の給与に上乗せ支給する「教職調整額」の引き上げが2025年度当初予算で検討されており、地方の財政負担が増すとの懸念が出ている。 会合では、退職手当を除く地方公務員の給与関係経費が上昇していると指摘。総務省などの試算によると、25年度は前年度比3・1%増の19兆7千億円に上る見込みだ。 分科会後に記者会見した増田寛也会長代理(日本郵政社長)は、地方の人口減少に伴い「行政サービスをこれまでのやり方で維持していくのは難しい」との見通しを示し、行政業務の効率化が必要だと指摘した。 業務の合理化では、ITの活用や公共施設の統廃合といった取り組みを挙げた。限られた人員や予算の中でインフラを管理するために、既存の行政区域にこだわらない「広域的な視点が重要だ」とした。 公立小中学校教員の給与は国が3分の1を負担し、残りを都道府県や政令指定都市が賄う仕組み。公立高校などの教職員は地方が全額負担する。文部科学省は、現在月給の4%相当となっている教職調整額を3倍超の13%に増額する案をまとめ、関連費用を25年度予算の概算要求に計上した。 ![]() |
京都府人事委員会は22日、府職員の月給と期末・勤勉手当(ボーナス)を引き上げるよう、西脇隆俊知事と石田宗久府議会議長に勧告した。民間との均衡を図る狙いで、月給の引き上げ率は3・25%と33年ぶりの高水準となった。勧告通りになれば、府職員の平均年間給与は23万7千円増の630万4千円となる。 府によると、府内224事業所(50人以上規模)の今年4月の平均月給が37万9182円なのに対し、府職員は36万7240円と民間を1万1942円下回った。勧告では月給を4月にさかのぼって民間並みに引き上げるよう求めた。ボーナスの支給月数は府職員が4・50月分で、民間の4・ 58月分を下回ったため、4・60月分に引き上げるよう求めた。’ 月給、ボーナスとも引き上げ勧告は3年連続。月給の引き上げ率は3・25%で、1991年(3・70%)以来33年ぶりに3%を上回つた。月給、ボーナスともに勧告通りに引き上げられれば、平均年間給与(平均年齢40・0歳)は606万7千円から630万4千円となる。警察官や教職員などを含めて69億5千万円の追加予算が必要になる。 22日、府庁で辻幸子委員長から勧告書を受け取った西脇知事は「現在の社会経済情勢に加え、京都府を取り巻く厳しい行財政環境を踏まえ、適切に対処したい」と話した。 ![]() |
経済産業省は22日、経営が安定する太陽光発電事業者による同業他社の買収を後押しする制度を導入する方針を固めた。固定価格買い取り制度(FIT) の優遇措置が終了する2032年度以降に事業者の撤退や設備の放置が相次ぐ恐れがあるため、集約化で事業の維持を促すのが狙い。 この日開いた有識者会議で制度案を示した。国が一定の要件を満たした事業者を「長期安定適格太陽光発電事業者」と認定。5万キロワット以上の発電実績を持つ企業を想定し、売却を希望する事業者がいれば先行して適格事業者に伝え、交渉の参考にしてもらう。手続きも簡略化し、25年度か ら導入する。 12年に始まったFITは事業者が発電した電気を電力会社に有利な価格で買い取ってもらう制度。12〜16年度の導入分だけで国内の総発電量の3〜4%に相当するという。20年経過後に優遇がなくなり、採算を確保できない事業者が増えるとみられている。 国内の太陽光事業は、個人を含む小規模の太陽光事業者が地方に分散しているのが特徴だ。事業の集約は難航が予想されることから、経産省が対策を検討していた。 ![]() |
京都府教育委員会は、児童生徒の学力の伸びに着目した本年度の府独自学力テスト結果を公表した。英検やTOEICなどでも使われる統計的理論を活用することで、これまで困難だったテスト結果の経年比較が可能になり、子ども一人一人の学力の伸びを把握できるようになった。本年度が2年目となる ため、前年度からの学力の推移を初めて確認できた。(生田和史) 新テストは京都市を除く府内公立小中学校、特別支援学校の小4〜中3生までを対象とする。今回は約5万4千人が受験した。6年間を通した学力の変化の把握を目的として、従来の府独自学力テストをリニューアルし、対象を小4、中1、中2から拡大した。従来テストは、平均点など集団の傾向の把握に主眼を置いていたのに対して、21年度に全面実施となった新学習指導要領が「個別最適な学び」の充実を掲げていることから、新テストでは、個人の学力の伸びに注目し、きめ細やかな指導を目指すことにした。 三要素から判定 統計的理論「IRT」(項目反応理論)を活用し、過去の学力との比較が可能になるという。視力検査に例えると、従来のテストでは、判別(=解答)できたランドルト環「C」の数で学力を測っていたが、新テストではどのレベルの「C」まで判別できるかが重要になる。 府教委は、先進県の事例を参考に、「学力の伸び」を@調査の前年度に学んだ内容が解けるかどうかA前々年度までに学んだ内容が解けるかどうかB前年度の調査に比べて難易度の高い問題が解けるかどうか―の三要素から判定する。学年が上がることに、新たな知識や能力を身に付けるため、通常であれば「学力の伸び」は一定程度みられる。学力に変化がなかった、下がったという状態は、学んだことを忘れたりして定着していないことを示している。 新テストの結果 新テストでは学力をステップー1C〜12Aまでの36段階を設定するが、各学年では21段階で判定した。前年度から学力が1段階でも伸びた児童生徒の割合は、小5が国語75・0%、算数63・9%、小6が国語68・5%、算数60・0%、中1が国語71・9%、算数67・5%、中2が国語58・1%、数学46・3%、中3が国語63・1%、数学47・0%、英語68・7%だった。学力が「伸びた」以外は、「伸びなかった」、「落ち込んだ」に該当する。府教委は内訳を公表していないが、「伸びなかった」が大半で、「落ち込んだ」は少数だったという。 国語、算数、英語についてはおおむね6〜7割の児童生徒に学力の伸びが確認できたが、数学は4割台にとどまった。データを詳細に分析すると、学力上位層と下位層が伸びて、中位層は変化がないことが分かった。 ただ、中位層でも伸びている中学があった。府教委担当者が授業を視察すると、教員が生徒に分かりやすい問いを出し、生徒の答えを引き出すのがうまかった。クラスの雰囲気もよく、教員と生徒の心理的な距離が近く、生徒同士の連帯感が強いように感じたという。この中学では探究学習の要素が強いキャリア教育に力を入れており、「普段から生徒同士が協力して課題に取り組む土壌が培われていた。こうした実践は、他校での授業改善にも有効ではないか」という。 やる気が大切? 新テストでは、学力と「非認知能力」の関係についても質問調査で探った。「学びに対する積極性」や深い学びを求めようとする「精緻化」があると学力が高い相関関係が確認できた一方で、正解さえ合っていればいい「表層理解」が強い人は、学力が低いとの相関関係が前年度と同様に明らかになった。学力を支える「学びに対する積極性」や「精緻化」は、自己をコントロ−ルしながら目標達成に向かう姿勢である「自己調整」のほか、「好奇心」「思考の柔軟性」「計画性」との相関関係が認められた。 ![]() |
【ニューヨーク共同】米IT大手アマゾン・コムは16日、米国内で次世代原子炉「小型モジュール炉」(SMR)の商用化を支援する契約を米企業2社と結んだと発表した。SMRなどの開発を手がける企業への出資も明らかにした。生成人工知能(AI)普及を支えるデータセンターの消費電力増加に備え、安定的な電源を確保する狙い。 アマゾンは2040年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げている。声明で二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は「われわれに 電力を供給し、顧客の需要を満たすのに役立つ」と優位性を強調した。 小型モジュール炉は、必要面積が比較的小さく、送電網の近くに建設できる。従来の原発よりも建設期間が短い利点もある。米国などで商業運転をにらんだ開発が進む。データセンターの電力需要増が課題となる中、米IT大手マイクロソフトやグーグルも原発からの電力調達に動いている。 アマゾンは西部ワシントン州で、エナジー・ノースウエストが建設するSMRの開発を支援。当初の発電量は祀320メガワットで、計960メガワットまで拡張できる見込み。南部バージニア州では、ドミニオン・エナジーが運営する原発近くで、少なくとも300メガワットのSMR開発を検討する契約を締結した。 このほか、次世代原発の開発を手がける新興企業Xエナジーに対し、米国の資産家ケン・グリワイン氏らと共同で約5億ドル(約750億円)を出資することも表明。Xエナジーは声明で「アマゾンと協力し、39年までに米国全土で5ギガワット以上の新規発電プロジェクトを稼働させる。過去最大のSMRの商用化目標になる」と明らかにした。 日米欧などで商業運転の開始に向けた研究開発が進められている小型の次世代原子炉。従来の大型の原発と比べ、発電能力は1基当たり最大300メガワット程度と小さいものの、柔軟な立地選定が可能。建設期間が短く、建設や運用後のコストを抑えられるとされる。エネルギーの分散化や、脱炭素の実現に向けた次世代技術として注目されている。(ニューヨーク共同) ![]() |
児童生徒にデジタル端末を配備する政府の「GTGAスクール構想」の一環として、各自治体が奨学給付金受給世帯の公立高校生向けに用意した貸与用の端末の利用状況を会計検査院が調べた結果、調査対象とした38自治体のうち京都など14自治体で、今年4月までの貸与率が最大でも50%を下回り、計約2万6千台が貸し出されていなかったことが15日、分かった。貸与希望者が想定よりも少なかったことなどが原因。 全国の小中学校では児童生徒―人に1台の端末が配られているが、義務教育ではない高校では、公費での負担や家庭で購入した端束の持参といった対応が取られている。 検査院によると、貸し出されなかった端末に支出された国の補助金は9億9800万円相当。検査院は文科省に対し、貸与対象や活用法の情報提供を求めた。文科省は「生活困窮世帯以外の生徒や指導者への貸し出しなどで活用してもらうよう周知を図る」としている。 検査院は、各自治体が新型コロナウイルス感染拡大の影響で奨学給付金受給世帯などが増加すると見込み、対象生徒の端末の所有状況を調査しなかっ たことが影響したとみている。 文科省は事務連絡で、奨学給付金受給世帯以外の生徒にも端束を貸与する場合もあるとして、実態に応じた運用を自治体に求めていたが、検査院は具体的な対象を示しておらず情報提供は不十分だったとしている。 |
子どもの体力は60年前より低下した―。スポーツ庁が13日公表した2023年度の体力・運動能力調査で、そんな傾向が浮かび上がった。1964年度と2023年度の10歳を比べると、身長と体重は男女とも23年度の方が大きかったものの、ボール投げや男子の50メートル走の成績は64年度が良かった。順天堂大の内藤久士教授(運動生理学)は「60年前の方が体は小さいが体力はあったのではないか」と分析した。 調査は今回が60回目。祖父母、親、孫の3世代の体力を比較するため、1964年度、1993年度、2023年度の10歳のデータを分析した。握力と50メートル走の成績は親世代が最も良く、ボール投げは祖父母世代、反復横跳びは孫世代が高いとの傾向が出た。 孫世代の身長は祖父母世代より男女とも5センチ程度高く、体重は5キロ以上重かった。握力は男子が60年前と今が同じで、女子は孫世代が高かったが、体重が数値に影響するため、内藤教授は「体のサイズを考えると低下のトレントと言える」とした。 男子のボール投げは64年度の30・4メートルから、23年度は21・9メートルに低下。順天堂大の鈴木宏哉先任准教授(発育発達学)は、ポール遊び禁止の公園が増えるといった環境変化とともに「全身を巧みに動かす経験が不足している子どもが一定程度いる」と要因を指摘した。 ![]() 遊びを中動態という考え方で見ることを『子どもの遊びを考える』は提起している。「自分で行為を起こした結果、他者が変容するものが能動、自分で行なった行為がそのまま自分の状況に還元されるものが中動。」だと國分功一朗は言う。つまり、遊ばされるのでもなく遊んでもらうのでもないところに子どもの遊びを見るということか。 |
【ニューヨーク共同】日本原水爆被害者団体協議会(被団協)へのノーベル平和賞授与決定について、カナダ在住の被爆者サーロ・節子さん(92)=写真=が12日、コメントを発表した。数多くの原爆犠牲者の「無念の死」を無駄にせず、受賞を真に意義のあるものにするには「核廃絶を一刻も早く実現させるしか道はない」と訴えた。 核保有国や米国の「核の傘」に頼る母国の日本とカナダに対し、核兵器禁止条約参加を求めた。 被団協が被爆体験を語り継ぎ、反核運動の象徴的存在だった故森滝市郎さんらの尽力で被爆者援護を後押ししてきたと振り返り、平和賞の授与決定に「被爆者として心から大きな喜びを感じている」と祝意を述べた。 だが「受賞決定を生きて聞くことができなかった原爆犠牲者が数多くいる」と指摘。「体が溶けるようにして一瞬のうちに命を奪われた無念の死者たちに改めて思いを巡らせている」として核廃絶の必要性を強調した。 サーローさんは13歳の時、広島の爆心地から約1・8キロの学徒動員先で被爆した。姉や4歳のおい、多くの級友らが犠牲になった。非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が2017年12月に平和賞を受賞した際、創設時から関わるサーローさんが授賞式で演説した。 ![]() |
【ニューヨーク共同】国運軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は11日、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞に決まったことを受け、国連本部で記者会見した。核の悲惨さを「世界の人々と分かち合うことを決意した」と述べ、長年の被爆者の証言活動に敬意を表した。「被爆者が制定に協力した核兵器禁止条約の推進にも追い風となる」と歓迎した。 授賞理由にもなった核兵器使用は道徳的に許されないという「核のタブー」は「国連の最優先事項の一つだ」と強調。ウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ の戦闘を意識し「核兵器が使用される危険性は、現時点では容認できないほど高い。リスクをなくすためには、核兵器そのものをなくすしかない」と訴えた。 禁止条約に参加していない日本政府に対し、来年3月にニューヨークで開かれる第3回締約国会議にオブザーバーとして参加することを期待した。今回の平和賞は「未来の世代に目を向けるべきだというメッセージだ」とも語った。 日本との戦争を終わらせるためだったとして、米国による原爆投下を正当化する一部意見には「被団協の活動は平和と和解に焦点を当て、被爆者を、もう二度と生み出さないようにするためだ」と述べた。 ![]() |
「再び被爆者をつくるな」と訴え続けた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞に決まった。広島と長崎で被爆した人たちは自らの傷痕をさらして悲惨さを伝え、世界の反核運動を先導してきた。来年は被爆80年。だが、「核の脅威」はなくならず国際情勢は混迷を深める。日本政府は核兵器禁止条約に背を向けたまま。「受賞で終わりではない」。被爆者は非核への決意を新たにしている。 「うそみたい」。発表の瞬間、言葉を詰まらせながら何度も繰り返し、頬をつねった。広島市役所で11日に記者会見した広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長(82)。「私たちが生きている間に核兵器をなくしてほしい。被爆者11万人の願いだ」とかみしめるように世界ヘメッセージを送った。多くの人に核兵器に関心を持ってほしいとも語った。 1945年の終戦後、被爆者は体調不良や差別に苦しみ、声を上げられなかった。「日本政府による『棄民』ともいうべき放置政策」。原爆投下以降の約10年間を当事者らはこう受け止めた。 54年3月、米国の核実験で静岡県焼津市のマクロ漁船が被ばくした事件を機に反核運動が高まり、56年8月に被団協が結成された。被爆者援護と、国内外で核廃絶を訴える活動が始まった。 時に心身の傷痕をさらし、核の非人道性を伝えてきた被爆者たち。78年の第1回国連軍縮特別総会に、被団協は代表団を派遣。82年の第2回総会で故山口仙 二氏が「ノーモアーヒロシマ ノーモアーナガサキ ノーモアーヒバクシャ」との歴史的な演説をした。 5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議にも参加。故谷口稜嘩氏は、被爆間もない自らの焼けただれた背中の写真を掲げ「目をそらさないで」と語りかけた。2016年に現職の米大統領として初めて広島を訪問したオバマ氏と、被団協代表委員の故坪井直氏が握手を交わした。 こうした地道な運動が、17年7月に国連で採択された核禁止条約につながる。22年6月にはオーストリアの首都ウィーンで第1回締約国会議が開かれ、被爆者らも高齢を押して渡航した。ただ、米国の核の傘の下にある日本政府は条約参加を拒み続けている。被団協は「唯一の戦争被爆国である日本は、核廃絶のリー ダーになるべきだ」と批判を続けてきた。 ロシアのウクライナ侵攻で核の脅威は高まり、22年8月のNPT再検討会議はロシアの反対で決裂。プーチン大統領が核威嚇を繰り返す中、23年5月の先進7 力国首脳会議(G7広島サミット)で岸田文雄首相(当時)は核抑止を肯定する核軍縮文書「広島ビジョン」を公表した。 パレスチナ自治区ガザでは悲惨な戦闘も始まった。その後の23年11月、核禁止条約第2回締約国会議。被団協の木戸季市事務局長(84)は国連本部で「ウク ライナとガザから伝えられる光景は、被爆者にとって『あの日』の再来だ」と静かに語りかけた。 この声を、世界が受け入れる状況には至っておらず、石破茂首相が自民党総裁選中に米国の核を日本で運用する「核共有」に言及するなど日本国内での非核 すら揺らぐ。 「平和賞をもらって終わりではない」。被団協の浜住治郎事務局次長(78)は気を引き締める。「まだまだ世界に核の怖さは届いていない。『再び被爆者をつくるな』の訴えを、今後も広げる」 【ジュネーブ共同】被団協へのノーベル平和賞の授与決定について、2017年に平和賞を受賞した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のダニエルーホグスタ副事務局長は11日「極めて正当な評価で、受賞に値する。日本被団協や被爆者と共に、核兵器の禁止と廃絶に向けて行動できることを光栄に思う」と述べた。 ホグスタ氏は共同通信の取材に対し、「広島と長崎の被爆者は核兵器がもたらす壊滅的な影響への認識を休むことなく高めてきた」とたたえた。 ICANで昨年1月まで事務局長を務めたベアトリスーフィン氏も「とてもうれしい。涙が出てきた」とX(旧ツイッター)に投稿。「核の脅威が増しているからこそ、被爆者らの声に耳を傾け核兵器禁止条約に加わるべきだ」と主張した。 ![]() |
政府は11日、過労死・過労自殺の現状を分析した2024年版「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。過重労働が懸念される業種のうち「芸術・芸能」分野のスタッフへのアンケートを分析した結果、休日が1週間当たり1日以下に相当する人が約半数に上り、うつ傾向・不安は一般就業者全体よりも総じて高かったことが分かった。 白書によると、アンケートは「映像監督」「脚本家」「技術スタッフ」などフリーランスや雇用契約で働く488人が昨年10〜12月に回答。俳優などは含まれな い。「スケジュール上の1ヵ月当たりの休日数」との質問には、週1日未満に相当する「0〜3日」が27・0%、週1日程度の「4〜6日」が25・6%だった。1週間当たりの拘束時間は「60時間以上」が35・2%に上った。 「主観的幸福感」は他の業種よりも高い結果が出たが、重度を含む「うつ・不安障害の疑い」があるとの回答が30・5%で、一般就業者全体の26・5%を上回った。 ハラスメントの経験では「仕事の関係者から殴られた、蹴られた、たたかれた、または怒鳴られた」が22・3%、「心が傷つくことを言われた」が42・0%だった。取引上のトラブルとして「仕事を受ける前に報酬額を提示されない」は51・0%が経験したと答えた。 回答者の約6割が自営業やフリーランスで、厚生労働省の担当者は「11月から施行される新法の周知など、フリーランスの労働環境整備に取り組む」としている。芸術・芸能分野は、今年8月の「過労死防止大綱」の改定で特に対策が必要な「重点業種」に加わった。 また白書では、業種別の長時間労働の状況も明らかになった。労働時間が週60時間以上の雇用者のうち、「過労死ライン」に相当する週60時間以上となった割 合は、23年のデータで「運輸業、郵便業」。が18・5%で、全体の8・4%を大きく上回った。「宿泊業、飲食サービス業」16・0%。「教育、学習支援業」15・9%と続いた。 ![]() |
太平洋戦争中、日本の占領下にあった朝鮮半島で生まれ、今は南丹市で暮らす男性が、京都市伏見区の向島東中で講演した。「天皇のために死ぬ兵隊を育てる」軍国教育や日本への引き揚げを振り返り、生徒たちに平和への願いを託した。 今西儀夫さん(87)は現在の北朝鮮で出生し、1943年に国民学校に入学。教員から「君たちの体は天皇陛下のもの。役に立つよう鍛えろ」と言われても、何の疑問も抱かず、手りゅう弾に見立てた棒を投げる授業に懸命になった。運動会の演目「戦争劇」では「天皇陛下ばんざい」と上級生が叫ぶ姿に「うらやましく思った」。 終戦の8月15日、「人生が一変した」。日本人収容所では目の前で銃剣を振り回すソ連兵におびえ、大人たちと脱出。引き揚げを目指す途中で歩けなくなった高齢者らの姿が今も忘れられないといい、引き揚げ船から日本の陸地が見えた時「夢に見た日本だと涙を抑えられなかった」と話した。 戦争によって何が起きるかを伝えたかったという今西さんは「武力で自らの意見を強制するのではなく、人と人が話し合って解決することが大切だ」と呼びかけた。 講演は平和学習の一環で行われ、3年生約60人が参加した。 ![]() |
各地の在日米軍基地周辺で、高濃度の有機フツ素化合物(PFAS)が相次いで検出されている。専門家は基地から漏れ出た疑いを指摘するが、日米地位協定の壁が立ちはだかり、自治体による基地内の調査はままならない。発がん性など人体への影響が懸念され、独自に実態解明に乗り出す市民団体もある。沖縄では対策費が膨張し、水道料金に転嫁される見通しだ。 「基地のある限り、粘り強く立ち入り調査を求め続ける」。沖縄県の玉城デニー知事は7月、県議会で訴えた。県内では、米軍基地周辺の水源や水道水からPFASが相次いで確認されている。2020年4月には、普天間飛行場(宜野湾市)の外へPFASを含む泡消火剤が14万リットル以上流れ出て、白い泡の塊が住宅地 を舞った。 21年6月にも、うるま市の米陸軍貯油施設で流出。この2件では県の立ち入り調査が認められたが、16年以降に申請した計6件の立ち入りのうち、残り4件は日米地位協定により基地の管理権を持つと定められている米軍が応じていない。 防衛省は「日米の調整に支障が生じる恐れがある」として、具体的なやりとりを明かしていない。保守系県議は「もっと強い姿勢で交渉するべきだ」とこぼす。 本州の米軍基地周辺でも検出が相次ぐ。東京都の市民団体は今年3月、青森県の三沢基地周辺の池から、国の暫定目標値を超す濃度を確認したと発表。青森県、 三沢市も調査に乗り出し、6月、高濃度の検出結果を公表した。 東京都の横田基地では10〜12年、PFASを含む泡消火剤の漏出が3件あったことが昨年7月判明した。米側は「基地外への流出があったとは認識していない」としているが、市民団体の調査で、周辺住民の血液から高濃度のPFASが検出されている。 神奈川県では22年、横須賀基地の排水から高濃度の値を検出し、厚木基地の米軍格納庫から泡消火薬剤が流出した。神奈川県の担当者は、事故状況などについて米側の情報提供は不十分だとして「原因が分からなければ適切な対策を取れない」と指摘した。 PFASの問題に取り組む沖縄県の市民団体「宜野湾ちゅら水会」の町田直美代表(68)は約5年前から米軍基地への立ち入り調査を要請し続けている。2020年の普天間飛行場(宜野湾市)からの流出を受け、隣接する小学校の土壌を調べ、高濃度のPFASを検出した。「住民の命に関わる問題だ」と訴える。 飛行場の近くでカフェを営んでおり、小さい子どもを持つ親から健康面への不安も多く聞くという。PFASについて「県民が、基地問題を自分事として考えるきっかけにしてほしい」と語る。 PFASの問題に取り組む市民団体の動きは広かっている。東京都の「多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会」(当時)は昨年12月、東京・多摩地域の一部の地下水から、国の暫定目標値を超えるPFASを検出したと公表。情報発信にも努めている。 沖縄の「インフォームド・パブリック・プロジェクト」は、県内のPFAS検出状況をまとめた地図をネット上に公開している。代表の河村雅美さんは「基地が多い本島中部で汚染が深刻だと分かる」と話す。 河村さんは市民の安全のため、公費による住民の血液検査など積極的な姿勢を県が示すことも必要だと指摘。「地元自治体が実態解明への本気度を示して状況証拠を積み重ね、国や米軍側に発信していくべきだ」と訴えた。 水道料金に 対策費転嫁 沖縄県は、水道料金を10月以降段階的に値上げする方針だ。2026年4月には1立方メートル当たり135・70円と、現在と比べ3割超の値上げとなる。設備改修や電気料金の高騰が主な要因だが、うち約1割はPFASの汚染対策の費用で、住民に負担が転嫁される格好だ。 県によると、16年ごろから米軍基地周辺のPFAS汚染が明らかになってきた。水質浄化設備の導入など16〜23年度に投じられた対策費は約34億円。県が約14億円を負担し、残りは沖縄振興一括交付金や防衛省の補助金でやりくりした。今後数年も、設備の維持費などで年に10億円程度の経費が見込まれる。 米軍基地周辺での高濃度の検出は、基地内で使われてきた泡消火剤が外に染み出したと推測できる。発生源の特定や除去ができなければ改善は難しく、大量流出の危険も隣り合わせだ。米側は基地の土壌調査に協力し、どの程度の量をいつごろから使用したかといった情報を公表すべきだ。内閣府の食品安全委員会は、子どもの出生時の体重低下について関連を「否定できない」としている。リスク予防に向け、汚染源の特定や漏出への対策が不可欠だ。 ![]() |
学校の定期健康診断(学校健診)を上半身裸で行うことに疑問の声が上がっていたことを受け、本年度から「原則着衣」に改められた学校健診が始まっている。 多くの学校は体操服やタオルを活用して実施するようになったが、意思に反して脱衣で受診させられた子どももいるなど現場の対応にはばらつきがあり、倫理学者は「実施方法が一貫していなければ、学校健診の科学的根拠が乏しくなる」と懸念を示している。 学校健診を巡っては、児童生徒や保護者から脱衣での実施に不安や苦痛を感じるとの声が上がり、文部科学省は今年1月、「正確な検査・診察に支障のない範囲で、原則、体操服や下着などの着衣、夕オルなどで体を覆い、児童生徒のプライバシーや心情に配慮する」とする通知を出した。一方、必要に応じて衣服や夕オルをめくる場合があるとし、教委や学校に「児童生徒や保護者に事前に説明する」ことを求めている。 昨年度まで上半身裸での受診を基本とした京都市では、文科省通知を受けて体を隠す工夫をする方向に変更された。市教委が本年度の実施状況を小中高に調査(複数回答)したところ、76・7%が体操服、37・1%が下着類着用の上で健診を行ったと答え、夕オルは12・1%、制服も10・4%で「着衣なし」と回答した学校はなかった。 上半身裸で状況に応じて夕オルで胸部を隠すようにしていた向日市も、本年度降服着用で健診を行うよ学校に指示した。長岡京市は病気の見落としリスクを防ごうと、タオルで体を覆い、心音の聴診や皮膚疾患の視診の際は胸部を見せる方法を取り、健診方法や、女子の受診時に女性教職員が立ち会うなど配慮を記した文書を事前配布。申し出を受け、体操服の着用など個別対応したケースが6件あったという。 一方、本年度も上半身裸で健診を受け、苦痛を感じたとの声も聞かれる。滋賀県内の公立中に通う女子生徒(14)は今春の健診でも体操服や下着を脱ぐよう指示され、聴診や脊柱の検査など診察時は上半身裸だったという。生徒は「悲しかった。去年と同じだった」と打ち明ける。 学校健診の実施方法のばらつきは大きい。京都市教委が胸部聴診時の対応を尋ねたアンケート(複数回答可)では「教職員が着衣等をめくって診察」が52・1%、「学校医が着衣等をめくって診察」が47・5%と多かった一方、「着衣の上から診察」も25・4%と、学校により差がみられた。 京都府南部の自治体のある教委担当者は「文科省通知は『必要に応じて』など定義が曖昧で、診察の仕方はほぼ現場任せ。結果的に学校や学校医の衣服の着脱に対する考えの違いが、ばらつきとして表れているのではないか」と指摘する。 今春の学校健診で、児童生徒の体操服を胸までめくる形で診察した男性学校医は「疾患の兆候を見つけ、子どもに健康な学校生活を送ってもらうのが学校健診の意義。異常所見なしの判断はいい加減にはできず、少しでも正確に診察できる方法をとった」と語った。 医療分野における人権の尊重を訴える声もある。京都大文学研究科の児玉聡教授(生命倫理学)は「公衆衛生の観点では健康が最重要とされがちだが、そのためにプライバシーを犠牲にしてよいという発想は通用しない」と強調した上で、「学校の方針に納得できない場合は、保護者や子どもが信頼するかかりつけ医でも健診を受けられるようにするなど、選択肢を示す必要があるのではないか」と提案する。 |
京都府教育委員会は10日、京都市を除く府内全ての小中学校、特別支援学校を対象に、児童生徒の学力の伸びに着目した府独自の学力テストの実施結果を公表した。2023年度に従来のテストに変えて実施しており、前年度からの学力の変化を経年比較ができるようになった。今回は、前年度と比べて、おおむね6〜7割超の子どもに学力の伸びがあったという。 テストは、小学4年〜中学3年までの計約5万4千人が対象。今年5月下旬から6月上旬にかけて実施した。小4〜中1生は国語と算数、中2、3生は国語、数学、英語を受けた。 学力を21段階の評価で測足し、1段階でも上がった児童生徒の割合は、小5が国語75・0%、算数63・9%、小6が国語68・5%、算数60・0%、中―が国語71・9%、算数67・5%、中2が国語58・1%、数学46・3%、中3が国語63・1%、数学47・0%、英語68・7%だった。 数学だけ40%台と低かった。その要因について、府教委学校教育課は「学力の平均値付近の生徒の伸びがみられなかった。数式を丸暗記するだけなど表層的な 理解では対応できず、深い理解ができるように授業改善に取り組みたい」としている。 |
京都市伏見区の横大路小と納所小、洛水中を統合し、現洛水中敷地に新たな小中一貫教育校を開校するよう地元の住民らが9日、市教育委員会に要望した。市教 委は「しつかり実現していく」と応じ、2031年開校に向けて準備を進めていく。 要望書では、施設一体型の小中一貫教育校を創設する▽小学1年から中学3年の子どもたちが共に学ぶことができる校舎を現洛水中敷地に整備する▽子どもたちの通学安全や通学上の負担軽減のため万全を期す―などと求めた。中学区内には現洛水中まで2・6キロ離れた場所もあることから、市バス利用の環境を整えることも盛り込まれた。 洛水中学区では、市の土地区画整理事業を機に横大路小の移転を考えていたが、児童数の減少が進んだことから小中一貫校についても検討を開始。納所小や洛水中を含む3校のPTAや地域で議論を進め、施設一体型の小中一貫校創設を目指すことで合意した。 この日は地域の自治連合会長ら住民やPTAの代表が下京区の市総合教育センターを訪れ、稲田新吾教育長に要望書を提出した。 ピーク時の児童生徒数は横大路小477人、納所小816人、洛水中590人だったが、今年は横大路小158人、納所小232人、洛水中224人と減少が進 んでいる。 ![]() |
京都府、京都市両教育委員会は2025年度教員採用試験の合格者数を発表した。府は採用予定より56人多い456人に、市も18人多い323人にそれぞれ内定を通知した。学校現場で教員不足が深刻化する中で積極採用を継続する一方で受験者数が伸びず、合格倍率は府は前年度からO・3ポイント低い3・4倍、市はO・ 3ポイント下がり4・O倍となった。 府の合格倍率は過去最低で、市も過去10年間で最低だった。府と市の両教委は志願者の減少について、採用枠拡大によって合格しやすくなり「浪人組」が減ったことや、労働条件の良い民間への流出が要因とみている。 府教委の採用試験は1542人(前年度1648人)が受験。校種別の合格者数の内訳は小学校が169人(158人)で、中学校は107人(99人)、高校は115人(114人)、特別支援学校は51人(55人)だった。合格倍率は小学校は2・5倍(3・0倍)、中学校が3・7倍(4・3倍)、高校が4・1倍(4・3倍)、特別支援学校は2・1倍(2・3倍)と各校種で倍率が下がった。府北部7市町での一定期間の勤務が条件となる「北部採用枠」は58人だった。 市教委の採用試験には37人増の1282人が挑んだ。校種別の合格者数の内訳は小学校(幼稚園を含む)が153人(133人)で、中学校は78人(75人)、高 校生は22人(18人)、総合支援学校は55人(49人)。倍率は小学校は3・O倍(3・6倍)、中学は5・7倍(5・5倍)、高校は6・O倍(7・5倍)、総合支援学校は2・5倍(2・7倍)だった。 近年は、採用試験前に府と市の両教委が実施している教員養成講座の修了者の合格実績が目立っている。府教委の「教師力養成講座」の修了者の111人のうち72人、京都市教委の「京都教師塾」の97人のうち36人がそれぞれ内定した。 府教委教職員人事課は「志願者が減少傾向の中、優秀な人材を確保できた」、市教委教職員人事課は「特に教員不足が他校種より深刻な小学校でしっかり人をとった」としている。 文部科学省は8日、2024年度の公立小中高校の教員採用試験で日程を早期化した効果について、調査結果を明らかにした。受験者数が23年度より増加した自治体と減少した自治体に分かれ、前倒しの効果は限定的だった。文科省は、近隣自治体と試験日程が重なったことが影響した可能性があると分析。今後、自治体間で日程調整の必要があるとしている。 文科省は、早期化する民間採用に対抗し教員のなり手を確保するため、24年度実施の試験は従来より1ヵ月ほど前倒しして6月16日を目安に実施するよう要請していた。5〜7月に試験を実施した自治体をそれぞれ4自治体ずつ抽出。その結果、受験者数が23年度より増えた自治体は5月実施が2、6月実施1、7月実施1だった。増加幅は27〜67人だった。一方、8自治体は14〜647人減少した。 文科省は、25年度はさらに試験日程を早め、5月11日を目安にできるだけ前倒しするよう各教育委員会に求めている。担当者は早期化自体は必要だとした上で 「日程調整などに留意する必要がある」とした。 ![]() 選挙に行こう(Go to VOTE)! |
パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍と戦闘を続けるイスラム組織ハマスの政治部門幹部2人が7日までに、拠点を置くカタールの首都ドーハで共同通信の取材にそれぞれ応じた。いずれも停戦交渉での譲歩を拒否し、戦闘はゲリラ戦を中心とした「長期消耗戦に入った」と表明、徹底抗戦を続ける構えを示した。 昨年10月に始まったガザ戦闘は7日で1年。「ハマス壊滅」を主張するイスラエル側にも歩み寄る動きはなく、停戦実現が見通せない現状が浮き彫りになった。 イスラエル軍はガザ戦闘と並行し、ハマスと共闘する親イラン民兵組織ヒズボラ掃討を掲げレバノンへの地上侵攻を開始。中東は緊迫状態にある。2人は共に「問題の根源はガザにある」とし「ガザ戦闘の終結なしに他の戦闘は解決しない」と強調。イスラエルに対する圧力を強めるよう国際社会に求めた。 取材に応じたのはホサム・バドラン氏とバセム・ナイム氏。ガザ戦闘の発端となった対イスラエル奇襲攻撃について、両氏は「長年の占領への抵抗だ」と正当化。その後の軍の攻撃でガザは甚大な被害を受け、死者は4万1千人を超えたが「後悔はない」と述べた。 イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスの戦闘部隊の大部分を破壊した」と主張しているが、バドラン氏は「占領軍の士気低下を狙ったゲリラ戦がハマスの現在の戦術だ」とネタニヤフ氏の主張を否定。ナイム氏も「数千人の戦闘員が新たに加わり、長期戦の準備は万全だ」とした。 両氏は、イスラエル軍のガザ完全撤退を求める点で譲らないと強調。ガザ・エジプト境界へのイスラエル軍駐留を強硬に要求するネタニヤフ氏が交渉の障害だと改めて批判した。バドラン氏は「中東地域の不安定化要因はイスラエルだと世界が理解し始めた。われわれの戦闘は成功している」と誇示した。(ドーハ共同) 【エルサレム共同】「爆撃を受けて死んだ方がましだ」「恐怖におびえる日々は10年の長さに感じる」―。イスラエル軍の激しい攻撃の開始から1年となった7日、パレスチナ自治区ガザからは、住民の悲痛な声が上がった。なおも攻撃が続く中、近づく冬を懸念する住民も出始めている。 「もし1年前に戻れるなら、避難生活を送るよりも爆撃を受けて死にたい」。ムアーウィヤ・ワヒーディさん(46)は共同通信の電話取材で言い切った。ガザ南部ハンユニスのテントで生活し、食事は支援団体か近所の住民の援助に頼る毎日だ。「もうたくさんだ。国際社会はこの虐殺を止めて」と訴えた。ガザ北部で暮らすマルワン・ムハンマドさん(38)は、食料がないときは木の葉を食ぺてしのぐ。「イスラエル軍の爆撃で死ぬ人もいれば、病気や飢餓で死ぬ人もいる」とうなだれた。 アイサームハンマドさん(23)はこの1年、軍兵士に足を撃たれたほか、避難先も砲撃された。今回の戦闘の引き金となったイスラム組織ハマスのイスラエル奇襲は過ちだったとの思いを抱える。「過ちのせいでガザが破壊され、住民が死んでいる。代償を払い続けているのは一般のガザ住民だ」とハマスを非難した。 ![]() |
日本を近代国家に生まれ変わらせた明治維新が、若者主導で達成されたことはよく知られている。大変革を主導し明治政府の中核を担ったのは、当時20代後半から30代の若者であった。 それから約150年後の今日、日本の若者の多くが将来に希望を抱くことができず、彼らの声はさまざまな政策決定の場に十分に届いていない。自らの行動で国や社会が変えられると思う若者が他国に比べて少ない状況が、各種調査から明らかになっている。 国の将来を悲観 日本財団の日米英など6力国を対象にした18歳意識調査(今年4月発表)によれば、自国の将来が良くなると考える若者は日本では15・3%と突出して少なく、最下位である。「自分は大人だと思う」「自分の行動で国や社会を変えられると思う」が50%を切っているのも特徴的だ。 こども家庭庁による子どもと若者の意識調査(2023年度)でも、日本では自分の参加により社会現象が少し変えられるかもしれないと思う若者(36・0%)が、そう思わない若者(47・1%)より少ない。これに対し、調査対象の他国(米独仏とスウェーデン)では、変えられると考える若者が、そう思わない者よりいずれも多い。 こども家庭庁の調査で興味深いのは、子どもには自分に関係することについて自由に意見を言える意見表明権があるのを知っているか、という問いに対し「聞いたことがない」と答えた割合が50%を超え、よく知っていると答えたのはわずか8%だったことだ。他国では、内容をよく知っていると答えた子どもが20〜30%を超えていた。 意見表明権は子どもの権利条約(1989年に国連で採択、日本は94年に批准)で確立された4原則の一つだ。18歳未満を子どもと規定し、彼らの基本的人権を保障する条約の締約国・地域は196に上る。 日本は批准から約30年、国内法が整備されなかったが、昨年ようやくこども家庭庁の創設とセットでこども基本法が施行され、子どもの意見反映に取り組むことが国や自治体の義務となった。 明治維新の頃と同じように、現在も国内外で大きなパラダイムシフト(価値観の転換)が進む。古い慣習や既得権益とは無関係の創造的な視点を主流化していけば、民主主義制度や公的機関への信頼低下、繰り返される的外れな政策立案を防ぎ、より効果的な政策につながるだろう。 軍縮、安保も対象 国連にとってもリップサービスでない、若者の政策論議と決定過程への参加は重要課題である。気候変動への国際的議論が、世界中の若者の行動によって動かされてきたことからも明白だろう。 国連は各国政府や若者団体との長年の協議を経て、若者の政策関与が効果的であるための11の原則を打ち出している。彼らの関与が権利として理解され制度化 されて、議論の場に席を確保することなどである。若者参加の「先進国」では首相直轄のユース評議会が重要課題を巡って提言したり、若者の全国組織に国が助成し たりという例も見られるようになった。 9月22〜23日には国連の「未来サミット」に加盟国指導者と共に世界中から多くの若者が集まり、彼らの政策決定関与の質をいかに向上させていくかについて具体的に議論する。 私の主管分野、軍縮と安全保障においても、数多くのユースプログラムがある。分断の様相が深化し、軍拡の傾向さえ見られるからこそ、若者の創造的視点は重要だ。軍縮分野は専門知識も必要とされるため、プログラムではオンラインで軍縮の知識を包括的に学べるようにし、政策論議に効果的に参加できるようリーダーシップや人脈づくりといったスキル訓練を組み合わせている。 岸田文雄首相が提唱し、日本政府の拠出で可能となった「ユース非核リーダー基金」プログラムの第1期生は、世界で2千人以上の応募者から選ばれた100人がオンライン研修を重ね、さらに選抜された37力国49人が8月に広島・長崎への研修ツアーに参加した。 知識とスキルを身につけ、世界各地の人々とつながり、さらに被爆地で強い動機とパッションを得た若者が、未来をより安全なものにするだろうと私は確信している。日本からも「自分の行動で世界が変えられると思う」と答える若者が大多数になるよう、努力したい。(中満 泉 国連事務次長) ![]() ちなみに政府は「子ども権利条約」を未だに「児童の権利に関する条約」としている。 |
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘は1年に及び、イスラエルにとって異例の長期紛争となった。「ハマス壊滅」「人質全員を奪還」。ネタニヤフ政権の当初の目標は高く、ハマス弱体化には成功したが、ガザの民間人犠牲は膨れ上がる。国際世論を意に介さないネタニヤフ首相は国内政局を重視し、レバノン侵攻にも乗りだして終結を遠ざけている。 「ユダヤ人は昨年10月7日、最悪の残虐行為に遭った」。ネタニヤフ氏は9月、会見で約1年前の奇襲を振り返った。約1200人が死亡し、200人以上の民間人らが拘束されたことを、第2次大戦のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)以来の惨事として訴える。 ただ、ハマスは占領地ガザの抵抗運動に深く根差し、人質の多数はガザの地下トンネルに隠されている。軍事力によるガザ侵攻だけで、戦闘目標を達成するのは困難との見方が当初からあったが、国民は「大惨事」に動揺し支持した。 軍は、北部ガザ市から最南端ラフアまで戦線を拡大。多くの街が焦土となりガザ側の4万人以上が死亡した。病院や学校、避難場所も攻撃し、イスラエルの国際的なイメージは大幅に低下した。最大の支援国、米国はバイテン大統領が任期わずかとなりレームダック(死に体)状態。抑止力になりきれていない。 ハマス掃討状況について軍は「軍事部門トップのデイフ指導者をはじめ、幹部の半数を排除した」と主張する。最高指導者ハニヤ氏もイランで暗殺された。ただ対外特務機関モサドのヤトム元長官はハマスの弱体化を認めた上で「『テロリスト』の思想は消せない」と話した。人質もこれまで軍が実力で救出したのは8人だけだ。約100人が残り、家族は解放父渉に望みをかける。 ネタニヤフ氏は、米国などが仲介する停戦交渉で新条件を出して交渉を遅らせてきた。「完全勝利まで戦う」とのあいまいな表現を繰り返すのは、連立を組む対パレスチナ強硬派の極右政党が「停戦すれば連立を離脱する」と猛反発しているためだ。連立崩壊ならネタニヤフ氏は失職する可能性が高い。民間人被害について、ネタニヤフ氏はラフアの作戦に触れ「亡くなった非戦闘員の割合は市街戦の歴史上、最も低い」とうそぶいた。地元紙コラムニストは言う。「イスラエルの将来も考えていない。関心は首相の座にしがみつくことだけだ」 「北部住民の帰還に努力する」。ネタニヤフ氏はレバノン南部侵攻後の5日の声明で、ガザの目標達成に触れず、親イラン民兵組織ヒズボラと交戦する北部に戦線の軸足を移す意向を示した。オスロ国際平和研究所(PRIO)のイェルゲン・イェンセハウゲン上級研究員は、ネタニヤフ氏について「戦い続けることが、政治的に生き残るすべとなっている」と指摘。「これほど世論を完全に無視して軍事作戦を推し進めると予想できた者は少なかっただろう」と述べた。 ガザ南部ハンユニス周辺では、住民が避難長期化を視野に、テントの冬支度を始めている。マナール・バシティさん(18)はネタニヤフ氏について「国の威信を回復した指導者だということを証明したいのだろう」と批判。「もう戦闘にはうんざりだ」と重苦しい様子で語った。(エルサレム共同) イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は7日で1年。軍はガザ全域をほぼ掌握した。9月下旬時点での衛星画像のデータ分析では、建物の59%が損壊され、農地も68%が被害に遭った。食料不足で餓死者も出ており、国連のグテレス事務総長は「住民が生き地獄にいる」と警鐘を鳴らす。 米オレゴン州立大のジャモン・バンデンホーク氏らが地球観測衛星の画像データで建物被害を分析した。軍は昨年10月下旬に地上侵攻を始め、北部から徐々に南下。ガザ地区の約28万7千棟のうち59%が破壊され、北部ガザ市に限ると損壊された建物は74%に上る。最南部ラフアも47%。国連衛星センター(UNOSAT)の画像分析では、農地約150平万キロの68%が被害に遭った。収穫最の減少が食料不安に拍車を掛けた。(共同) パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で1年となるのを前に、世界各地で5日、戦闘反対と停戦実現を訴えるデモが開かれた。参加者はイスラエルの攻撃や米国の支援を批判し「ガザから、レバノンから、中東から手を引け!」「パレスチナに自由を」などと叫んだ。 ニューヨークの繁華街タイムズスクエアのデモには数千人が集結。冒頭、主催者の呼びかけで犠牲者に黙とうをささげた。涙を浮かべる女性の姿もあった。マイクを持った男性が「ガザと共に最後まで戦う」と話すと、参加者は歓声で応じた。 その後、デモ隊は「ガザを解放せよ」「イスラエルの占領は犯罪だ」とシュプレヒコールを上げながら行進。周囲では多数の警官隊か警戒した。 ファッション業界で働く女性チャリティー・ビダルさん(43)は「イスラエルの目標はパレスチナ人の根絶やしで、米国が後押ししている」と憤った。米国は11月に大統領選を控えるが「どの候補もイスラエルを支援する姿勢は変わらず、期待していない」と語った。 イスラエル中部テルアビブでもハマスに拘束されている人質約100人の救出を求めるデモが開かれた。「1年たったが彼らはまだここにいない」。「人質の命を権力の道具にしている」。参加者ら約2千人が、ネタニヤフ首相に人質解放交渉の早期妥結を迫った。 ロンドンやパリ、ベルリン、ローマなど欧州各地でも大規模な抗議デモがあり、参加者はパレスチナの旗や「レバノンに手を出すな」などと書かれたプラカードを掲げ、市中心部を行進するなどした。(ニューヨーク、エルサレム、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ共同) ![]() |
大手小売りや外食各社が、来店客による店員への理不尽な要求「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に関する対応指針を相次いで公表している。社内向けだったマニュアルなどを外部にも示し、社員を守る姿勢を明確にする狙いがある。人手不足の中で、カスハラが離職の深刻な原因となっているためだ。 東京都では今月4日、全国初のカスハラ防止条例が成立した。厚生労働省は企業に従業員の保護を義務付けるよう明記した有識者検討会の報告書を受け、関連法案提出を検討するなど、官民ともに対策に乗り出している。 東京商エリサーチが8月に実施した多業種対象の調査では、全国約5千社のうち7割以上がカスハラ対策を未実施だった。身近な小売店などでの目に見える取り組みが、被害抑止の社会的動きを広げる可能性がある。 大手コンビニではセブン・イレブン・ジャパンが9月、2022年に策定した社内向け指針の公表に踏み切った。該当する行為を例示し「毅然と対応する」とした。ファミリーマートは10月から各店舗でカスハラ防止ポスターの掲示を始めた。 百貨店の高島屋は7月、カスハラの基本方針をホームページで公開。牛丼チェーン「松屋」を手がける松屋フーズも9月に公表し、店員にも周知している。いずれも理不尽な要求や暴力、謝罪動画の拡散などをカスハラと定義し、組織的に対応する姿勢を強調した。 背景にあるのは離職リスクだ。東商リサーチの調査では、過去にカスハラを受けた企業の約13%で休職や退職が発生していた。 一方で「店員の対応に問題がある例もゼロではなく、客からの声が集まりにくくなる」(外食業界)との懸念から、対応に二の足を踏む企業があるほか、法整備の動きを様子見するケースも目立つ。 企業がカスタマーハラスメント(カスハラ)への対応を急いでいる。対応指針を公表した大手百貨店では「安心して接客できる」と、売り場スタッフから安堵の声が。自身の行為が適切だったかどうかを問い合わせる客が現れるなど変化は双方に見られ、職場環境の改善が一歩前進しそうだ。 土下座の要求や人格否定、交流サイト(SNS)での従業員の個人情報拡散―。カスハラの該当項目を具体的に挙げ、高島屋は7月、百貨店で初めて対処の基本方針をホームページ上で公表した。来店を断る場合があることも明記した。 「正義感からの指摘もありカスハラの線引きは難しいが、指針は一つの目安になる」と公表を歓迎するのは、高島屋日本橋店の山内暁マネジャー。売り場を巡回し、社員らが来店客ともめた際の対応を担う。 山内さんによると、経験の浅い店員ほど自分で線引きができずに疲弊してしまう。山内さん自身、かつて在籍した店舗で顧客対応のため長時間拘束されたことがある。 従業員や企業が傷つくだけではなく、目撃した他の来店客が負の感情を抱くというマイナス効果もある。高島屋では接客を担当するスタッフだけでなく、法務部門と連携。山内さんは「しつかりと組織で対応していきたい」と話す。 カスハラは社会問題化し、2023年9月には精神障害による労災認定の原因項目にも追加された。厚生労働省による23年度労災補償の初集計で認定は52件に及び、うち女性は45件。より弱い相手を見定めて攻撃するといった差別傅造が浮かび上がり、容認してはいけないという風潮は着実に広がり始めている。 今年6月に、ライバル企業である日本航空とタッグを組んで対処方針を策定し、注目を浴びた全日本空輸。同社の担当者は「カスハラ対策の取り組みが従業員に少しずつ浸透し、認知度が高まってきている」と手ごたえを口にした。 カスハラを受けた際の社内報告の内容は、これまでは暴力や器物損壊といった度を越した行為が主だったが、長時間拘束なども申告されるようになった。対処方針策定後の7、8月の報告数は、4〜6月の平均と比べ3割増加。原因を分析し、被害の防止につなげる。 全日空を含むANAグループは11月から、カスハラに対処するための手法や組織づくりを学べる企業向け研修を始めることにした。ホテルや銀行など顧客対応に悩む企業から既に問い合わせを受けている。規模の小さい企業ほど対策は遅れており、一企業を越えた協力が広がるかどうかが鍵を握る。 ![]() |
開校4年目を迎えた京都市立京都奏和高(伏見区)が、不登校経験や発達に偏りのある生徒の社会的自立をサポートする独自の教育活動を進めている。ものづくりやマーケティングなどの実習を取り入れた探究学習「ビジテック」、全生徒による中学の学び直しなどが、生徒に学習面や人との関わりに自信をもたらしている。(岡本早苗) 不登校生徒の居場所カフェ、ものづくり企業、子育て支援グループ…。5月下旬、同高ホールには、約20の市民グループや企業が、活動紹介のためのブースをずらりと並べた。「まちのだれかを笑顔にする」と名付けられた「ビジテック」のプロジェクトに取り組む3、4年生が、先駆者たちの思いや行動を知ろうと回り、大人たちと言葉を交わした。4月にはビジテックの趣旨に賛同する企業でキックオフミーティングが中京区で開かれた。 ビジテックは、ビジネス(商業)とテクノロジー(工業)を掛け合わせた造語だ。京都信用金庫や龍谷大、京都市など産官学のサポートを得て、卒業年次となる3、4年生が、子どもや高齢者、観光客らが抱える課題や困り事を乗り越えるアイデアを考える。 同高の生徒は約6割に不登校経験、約3割に発達特性があり、2021年度から3年間、文科省の委託を受けて「多様性に応じた学び充実支援事業」を研究した。23年度に実施されたアンケートで、生徒がビジテックを通して成長できたと感じたのは、「コミュニケーションカ」が69・2%で最も高く、「自己肯定感・自己有用感」「自己判断力・行動力」「課題発見力・解決力」についても半数以上の生徒が成長を実感できていた。 「ランアップ」と呼ばれる学び直しは、高校の学びに入る前の「助走期間」と位置付け、1年生の4、5月の2ヵ月間、国語と数学、英語で取り組む。アンケートでは3教科とも「『できた』『わかった』を実感できた」「得意・不得意を認識できた」「高校の学びに意欲を持つことができた」とする回答が8割を超え、学びやすさを感じている生徒が多いことが分かった。喜多村利昭教頭は「生徒10人当たりを2人の教員が教えるので、生徒がどこに困りを感じているのか知るきっかけになっている」と話す。 1〜4部の生徒が交流できる「奏和タイム」の企画は、外部の京都市ユースサービス協会(中京区)に依頼。ボードゲームカフェや、夏祭りなど季節のイベントに毎回40人前後の生徒が参加し、お互いを知ることができたという。 24年3月には3年制の1期生53人が卒業し、36人が大学や専門学校などに進学、12人が就職したという。他校に転学したり、コミュニケーションに苦手意識を持ち続けたりする生徒もいないわけではない。高校卒業に必要な単位を4年かけて収得していく4年制を選ぶ生徒が全校生徒の約1割と少ないのも課題だ。 定時制での教員経験がある喜多村教頭は「安心して学ぶことができる学校生活を取り戻すのが奏和の目標の一つ。同級生や先生とじっくり関係性をつくれる4年制は不登校経験のある生徒に向いていると思う。授業は1日4時間で、テスト科目も少なく勉強の計画が立てやすい。ぜひ4年制を選択肢に入れてほしい」と話している。 ![]() |
滋賀県が来年に予定している、大阪・関西万博への子どもの無料招待について、教育旅行(学校行事)での活用を希望する学校は全体の1割余りで、特に小学校は6%にとどまっていることが2日分かった。当初の回答期限は過ぎたが、未回答も多いことから、県は11月末までをめどに再度希望を確認するという。 県は、県内の4歳から高校3年か同世代までの子どもを万博に招待する方針。教育旅行での活用希望調査を5月末から行い、この日の県議会9月定例会議の一般質問で結果を示した。 県内の小中高など407校のうち、参加希望は55校(小学校15、中学13、高校20、特別支援学校7)だった。一方で希望しないのは202校(小131、中53、高11、特6など)、未回答も150校(小75、中39、高27、特4など)あった。このため、当初は9月6日が締め切りだったが、引き続き受け付けている。 多額の税金投入や安全面の懸念、希望校が少ない現状について問われた三日月大造知事は「パビリオンや受け入れ環境の情報が少ない中、6割が回答し、1割の学校が行きたいと答えたことは、世界の技術や英知を体験する貴重な機会だと期待している表れ。子どもたちが安全、有意義に行けるよう整えていきたい」と答弁した。 ![]() |
【エルサレム共同】世界がレバノンに注目し、自分たちが忘れられてしまう。イスラエルのレバノン南部への地上侵攻が始まる中、パレスチナ自治区ガザの住民からは不安の声が上がる。昨年10月のガザ戦闘開始後のガザ側死者は4万1600人を超える。レバノン攻撃強化には、各国にガザの窮状に目を向けないようにさせたい、イスラエル側の思惑もあるとの見方が出る。 「ガザでの戦闘は止まっていない。毎日、死傷者が出ているが、国際社会の関心はレバノンに移ってしまった」。ガザ北部ガザ市から避難しているハメドさん(37)がこぼした。「世界がレバノンに気を取られていることをイスラエルが利用して」ガザを激しく攻撃し、さらに多くの死傷者が出るのではないかと危惧する。 北部ジャバリヤから逃れて避難生活を送るムハンマドさん(40)は、「食べ物も薬も飲み水も不足している」と変わらぬ困窮を訴えた。レバノンに注目が集まり「ガザで起きていることから目がそらされる」と嘆いた。 シンクタンク「欧州外交評議会」のケリー・ペティーロ氏は、イスラエルの対レバノン攻撃強化について「地域紛争の拡大をどう防ぐのかということに国際社会の関心を集め、ガザの悲惨な人道状況から注意をそらす」狙いもあるだろうと指摘した。 イスラエルがレバノンへの地上侵攻に踏み切った。レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラ掃討を断行する勢いで、緊張緩和を求める米国を押し切った。一方、ヒズボラを支えるイランは弾道ミサイル発射の兆候があるとの報道があるものの、紛争拡大を恐れ直接参戦には消極的との見方も根強い。各国の思惑が交錯し、中東情勢は混迷の度を増している。 「テロリストが町をゴーストタウンに変えたら、耐えられるかどうか想像してみてほしい。イスラエルは1年近くも耐えてきたが、もうたくさんだ」。9月下旬、各国の首脳らが集った国連総会。イスラエルのネタニヤフ首相は、ヒズボラからの攻撃で避難を余儀なくされた同国北部の住民を引き合いに被害者としての立場を強調し、戦闘継続への決意を表明した。 昨年10月、イスラム組織ハマスからの攻撃を受けてパレスチナ自治区ガザに軍部隊が入った際、イスラエルは「限定的な地上作戦」だと主張した。だが作戦範囲は拡大し、駐留は現在まで続く。今回の作戦も「限定的」だとしているが、ゲリラ戦法を得意とするヒズボラ戦闘員の接近戦に苦しみ、長期戦になるとの観測も出ている。 ネタニヤフ氏は政権内に極右政党を抱え、対ハマスやヒズボラで弱腰の姿勢を見せれば政権が瓦解しかねない。戦闘は拡大の一途をたどる「チキンレース」と化しているとみる専門家もいる。 「イランから義勇軍を派遣する必要はない。誰からも要請を受けていない」。イラン外務省報道官は9月30日の記者会見で、イスラエルの攻撃に対し親イラン勢力は必要な防衛力を持っているとして、戦力の派遣は行わない方針を示した。一方、直接戦闘に参加しない軍事顧問として要員派遣は続けるとみられ、軍事筋によると、弾道ミサイルを取り扱う指導員らを既に増派した。 イスラエル軍との戦闘となれば、イスラエルの後ろ盾である米国の参戦を招く可能性があり、敗北は必至。展開次第では聖職者を頂点とするイスラム革命体制が崩壊する恐れもあり、イラン指導部が最も避けたい事態に陥る。 軍事筋は「イランの優先事項はイスラエルによるイランへの攻撃を防ぐことだ。防衛戦略を攻撃的な方法に変えるつもりはない」と明かす。イラン政府関係者は、イスラエルがイランを地域紛争に引きずり込もうとしていると指摘した上で「わなにはかからない」と強調した。 米国はイスラエルの自衛権を支持する一方、中東地域での紛争拡大を懸念する。イスラエルにヒズボラとの交戦停止を求め続けてきたが、イスラエルは警告を無視する形で地上侵攻を開始。米国の反対を振り切りガザに地上侵攻した際と既視感があり、ワシントン・ポスト紙は「バイテン政権の影響力の限界を浮き彫りにした」と評した。 11月に大統領選を控える中、バイテン政権は親イスラエルの有権者の動向に敏感になっており、イスラエルに厳しい態度を取り切れないのが実情だ。イスラエルの軍事行動を事後に正当化するのが「バイテン政権のパターン」(同紙)だという指摘もある。 「軍事的圧力は時に外交を可能にすることがある」。米国務省のミラー報道官は9月30日の記者会見で、イスラエル擁護で苦しい説明に終始した。(共同) ![]() |
経団連は1日、選択的夫婦別姓制度の実現を求め、企業向けのシンポジウムを東京都内で初めて聞催した。経団連ダイバーシティ推進委員長々務める資生堂の魚谷町彦会長最高経営責任者(CEO)は「激変する世界のビジネス環境で日本企業が生き残るため、成長に不可欠な経営戦略だ」と強調し、法整備を求めた。 会合では多様な夫婦の在り方を認めるよう求める意見が相次いだ。 現在は女性が結婚後に夫の姓を選ぶケースが大半だ。経団連は6月、早期実現を求める提言を公表。業務での旧姓の通称使用は契約などでトラブルになる恐れがあり「ビジネス上のリスク」(十倉雅和会長)とする見解を示した。 9月の自民党総裁選でも争点となり、1日の会合に参加した自民党衆院議員も夫婦同姓に限ることが「社会での女性活躍の妨げにつながっている」と指摘した。 討論では、サニーサイドアップグループの次原悦子社長が海外渡航時や会社経営面での不都合のほか、結婚や離婚などプライバシーの露呈につながると説明。夫婦同姓も選べるとして「選択肢の多い社会づくりは大人の責任だ」と述べた。 ![]() |
10月から児童手当が拡充された。0歳〜中学生としている支給対象を高校生年代に延長。所得制限を撤廃するほか、第3子以降は月3万円に増額する。10月分から適用し、拡充後の初支給は12月となる。政府は「次元の異なる」とうたう少子化対策で、児童手当拡充を子育て世帯への経済支援の柱に位置付けている。 第1子と第2子への支給は、O〜3歳未満が1人当たり月1万5千円で変更はない。3歳以上は、高校生年代まで対象を広げて月1万円支給する。第3子以降は加算し、これまでの1人当たり月1万5千円から3万円に引き上げる。 支給の基準となる子どもの数え方を見直す。これまでは、第1子が高校生年代を超えると、第3子が第2子の扱いとなっていた。一定条件を満たす場合「22歳になる年度末」までを子どもの数に入れる。 児童手当の支給回数も変わる。従来は原則として4ヵ月分を年3回(毎年6月、10月、2月)に分けていた。今後は「子育て世帯の使い勝手が良いよう」(政府関係者)に2ヵ月分を年6回、偶数月に支給する。 こども家庭庁によると、所得制限の撤廃で新たに支給対象になったり、対象の子どもが高校生年代だけだったりといった場合は、市区町村で申請手続きが必要になる。 児童手当拡充など少子化対策の財源を捻出するため26年度に「子ども・子育て支援金」を創設し、公的医療保険料に上乗せして徴収する。26年度は6千億円、27年度は8千億円、28年度は1兆円を見込む。この間、財源が不足する分は、借金となる「子ども・子育て支援特例公債」で賄う。24年度は2219億円を発行する。 ![]() |