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  • 【随時更新】ロシアのウクライナ侵攻3
  • 【最新】PTAのゆくえ
  • マスク不要の場面 保護者へ文書通知.26
  • 杉田議員への賠償請求棄却.26
  • 子のネット学習で 情報収集停止訴え.26
  • 0円ソーラー導入支援.27
  • 京都の大学で「レイハラ」.29
  • 「起業家精神」教育、小中高で強化.29
  • 5月29日 文科省 「起業家精神」教育、小中高で強化

     政府が年内にも策定するスタートアップ(新興企業)を育成するための「5か年計画」に、小中学校や高校への働きかけを強化する方針を明記することがわかった。先行する大学でのアントレプレナーシップ(起業家精神)教育の裾野を広げ、人材育成を後押しする。

     具体的には、起業した学生などによる小中高生向けのセミナーや出前講座の実施を支援することなどを想定している。理数分野で高い能力を持つ小中高生には、大学で行われる起業家精神教育を含む高度なプログラムへの参加を視野に入れる。早い段階で起業家精神に触れる機会を設け、起業を将来の選択肢に加えてもらう狙いがある。

     文部科学省は、小中高生向けの起業家精神教育の推進に向けた関連予算を、2023年度予算案の概算要求に盛り込みたい考えだ。産業界や自治体と連携した事業も行い、社会課題の発見や問題解決を考える機会を増やすことを目指す。

     文科省によると、同省が支援し、2014〜20年度に行われた起業家育成プログラムの参加者数は、大学生ら延べ約4万5000人に上り、135件の起業につながった。ただ、起業の活発さを示す指標である「起業活動率」(18〜64歳に占める起業3年半未満と準備中の人の割合)は、19年の調査で米国の17・4%に対し、日本は5・4%にとどまり、海外と比べると低調だ。

     政府は今年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、5か年計画を策定する。岸田首相は4月上旬、新興企業経営者らと車座で意見交換を行った際、「イノベーション(技術革新)こそ成長のエンジンだと確信している。その担い手こそスタートアップだ」と語り、育成支援を強化する方針を表明している。(読売新聞オンライン)


    安倍元首相下での教育政策は、沈没しそうな船にさらに荷物を積むようなものだった。新しい資本主義を標榜する岸田首相の下で、教育政策はどう変化するが期待されていた。しかし、給特法の見直しや研修制度、学級定数改善などの根本的な解決策は見えてこない。その上の「5か年計画」。何をや言わんである。


    5月29日 京都の大学で「レイハラ」

     京都の大学で、留学生や在日コリアンら外国籍学生が人種や国籍の違いを理由とした嫌がらせ「レイシャルハラスメント(レイハラ)」を受けるケースが起きている。1万人以上(2020年時点)の外国人が学ぶ「大学の街」だが、被害当事者は「よそ者を受け入れない空気が一部にある」と感じるという。専門家は問題が潜在化しているとして、大学による実態把握と対策が必要だと訴える。

     「本当に怖かった」。大阪府内在住の在日朝鮮人の会社員女性(26)は、京都市内の大学に在学していた16年に起きた嫌がらせを鮮明に記憶している。

     自身も参加する、朝鮮半島にルーツを持つ学生らで作るサークルのポスターが何者かに破られたり、部室前に「嫌韓」が題材の漫画が置かれたりした。犯人や目的は不明だったが、活動を控える部員が出るなど、萎縮を生んだ。「在日コリアン全てに敵意を向けられた気がした」と声を落とす。

     他にもゼミの授業では、教員から従軍慰安婦問題について、韓国の世論を代弁するよう求められた。センシティブな歴史認識の問題で返答に窮し、女性は「なぜわざわざ私に意見を求めるのか。本当に嫌だった」と声を震わせる。

     同志社大の大学院で学ぶ中国人留学生の男性(23)は、授業のグループ討論で「仲間外れ」にされたことがある。空き枠がありそうなグループに声を掛けても「満員だから無理」「友人がもうすぐ来る」と断られ続け、留学生同士で組むしかなかった。

     同じ経験をした留学生は少なくないといい、「僕らは日本人の学生と仲良くしたいのに、さりげなく『壁』を作られて距離を縮めにくい。外国人を遠ざける意識があるのかな」と苦笑いする。日本人の友達ができないまま、帰国する留学生もいるという。

     外国人差別問題に詳しい同志社大の板垣竜太教授(文化人類学)が大学内でのレイハラを多く耳にするようになったのは、10年ほど前からだ。教員が授業のテーマとは無関係に韓国や中国を批判したり、在日コリアンに対する差別的な意見を授業で紹介したりする例があったという。

     板垣教授は「中国人や在日コリアンだけでなく、現在はウクライナ侵攻でロシア人学生への嫌がらせも起こり得る状況だ。レイハラの被害者は声を上げにくいため、こうした被害は氷山の一角だろう」と指摘する。


    【インサイド】「レイハラ」進まぬ対策

     京都の大学でのレイシャルハラスメント対策は、あまり進んでいないのが実情だ。同志社大の板垣竜太教授らが昨年実施した調査で、防ぐぺき対象として「レイハラ」を明確に定義付けているのは、1大学にとどまった。具体的な被害例を回答した大学はなかった。

     板垣教授が共同代表を務める市民団体「京都府・京都市に有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める会」は昨年7月、京都市や宇治市に本部を置く30大学にアンケートを送り、19大学から回答を得た。京都大や府立大、府立医大などは無回答だった。

     回答した19大学はハラスメントの防止規定を設けていたが「レイハラ」を明文化していたのは立命館大だけ。2017年に改訂したガイドラインに「特定の国民や人種をからかうジヨークを話す」などを例示している。大谷大や京都産業大などの8大学はハラスメントの定義で「人種や国籍、民族」に触れ、龍谷大や花園大などの10大学は既存の枠組みでレイハラに対応できるとした。

     ただ、学内で起きた具体的な被害例は全ての大学が「把握していない」「開示できない」と答え、レイハラ防止に特化した研修を行う大学もなかった。板垣教授は「多くの大学がレイハラ対策に積極的でないことが分かった」と指摘する。

     板垣教授によると、米国では1980年代に大学内の黒人差別が問題となり、90年代には4割ほどの大学が何らかのレイハラ規制を導入したという。

     板垣教授は「外国人学生にとって、大学が平穏に学ぶことができない場となっている恐れがある。各大学は実態の把握と対策に力を入れてほしい」とする。

     調査の報告書は同会ホームページで公開している。。



    5月27日 滋賀県 0円ソーラー導入支援

     滋賀県は、中小企業の太陽光発電導入を支援するため、近年注目を集める「ゼロ円ソーラー」の普及支援に乗り出す。工場の屋根などに初期費用なしで太陽光パネルが設置できる仕組みの利用を後押しして、二酸化炭素(CO2)の排出削減や災害時の電源確保につなげる。

     ゼロ円ソーラーには、パネルを無償で設置した発電事業者に使った分の電気料金を支払う「PPA(電力購入契約)モデ ル」と、月々のパネル使用料が発生するリース契約がある。いずれの方式もパネル設置の初期投資が不要で、導入企業は脱炭素に取り組む姿勢をPRできるか、災害時に外部電源が断たれた場合も自家発電分を継続して利用できる利点がある。

     県の支援制度は、中小企業とPPAモデルかリースの契約を交わしてパネルを設置する発電事業者に対し、設置費用の3分の1(上限100万円)から半分(同150万円)を補助する。パネルを導入した企業には発電量の半分以上を自家消費することを求めるが、補助金分を電気料金単価やリース料金の値下げに充ててもらうことでランニングコストについても引き下げ、導入を希望する中小企業を増やすことを目指す。

     県は地球温暖化の防止に向け、2030年度に県内から排出される温室効果ガスを13年度比で50%減にする目標を掲げて いる。CO2ネットゼロ推進課は「エネルギーの地産地消になる自家消費型太陽光発電を普及させたい」としている。

     補助金の予算として600万円を確保した。11月30日まで発電事業者からの申請を受け付けるが、予算上限額に達すれば締め切る。


    京都府京都市でも住宅向けの0円ソーラーを展開している。学校の屋上はそれなりにパネル設置に適している。子どもたちが考え実現できる可能性が最も高いプロジェクトとしてもっと注目されてよいだろう。


    5月26日 HRW 子のネット学習で 情報収集停止訴え

     国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は25日、企業などが開発したインターネット上の学習支援サービス「エドテック」を通じて子どもに関する情報が第三者に渡り、広告などに活用される恐れがあるとして、広告企業などに対し、子どもに関する情報の収集や活用をやめるよう呼びかけた。人権保護と尊重に関する国や企業の責任を定めた国連の指導原則に基づいた対応を要求している。

     エドテックは新型コロナウイルス禍による休校措置の対策として、世界で普及が進んだ。HRWは「ブラックライト」と呼ばれる情報追跡ツールを活用し、日本を含む世界の49力国・地域の164サービスを分析した。

     25日公表した報告書によると、約9割に当たる146のサービスで、利用する子どもの氏名や居場所、学習内容などの情報が第三者に渡る可能性がある状態だった。196の広告関連企業などが子どもに関する情報にアクセスできることを確認したという。情報の中身や、実際に情報が渡っていたかどうかは不明だ。

     日本では8サービスを調べ、そのうち7サービスでネット閲覧情報を集める「サードパーティー・トラッカー」などが組み込まれていたと指摘した。欧米は厳しい規制を有するが、日本の個人情報保護法制上、直ちに違法とはならず、ドラッカーはネット広告などで活用されている。


    コロナ禍、「学びを止めるな」との大合唱の中で一気に展開されたGIGAスクール構想。その中で教育現場に大きな混乱が生れた。しかし、デジタル化が十分でない自治体は教育に不熱心だとの誹りを受けている。確かにこれからの教育にはICTやAIの技術がいやがうえにも利用されていくだろうが、その中で失われていく個人の権利があることを知る必要がある。加えて「エドテック」は文科省よりも通産省にイニシアティブがあることを記憶にとどめておこう。


    5月26日 京都地裁 杉田議員への賠償請求棄却

     自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国ブロック)から、ツイッターなどで研究内容を「日本の国益を損なう反日研究」などと繰ぴ返し誹諧中傷され名誉を傷つけられたとして、ジェンダー論を研究する京都や大阪の大学の女性教授らが杉田議員に対し1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。長谷部幸弥裁判長は、杉田議員の投稿や発言は意見や論評に過ぎず、名誉毀損に当たらないとして、教授らの請求を棄却した。

     原告は牟田和恵大阪大名誉教授や岡野八代同志社大教授4人の訴えこよると、原告らは2014〜17年度に科学研究費助成事業(科研費)を受け、ジェンダー平等の実現に向けた共同研究で論文47本などを発表。これに対し、杉田議員がツイッターなどで「ねつ造」「研究費を流用している」など繰り返し発言し、社会的評価を低下させたと主張していた。

     判決理由で長谷部裁判長は、原告らが問題視した杉田議員の投稿や発言について、「一般読者の読み方などを基準とすると、批判的な意見や論評を述べたに過ぎない」と認定。「原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものではない」と判断した。

     杉田議員の事務所は「妥当な判決であると受け止めている」とのコメントを出した。


    「学問偏らせる」原告ジェンダー研究社者

     フェミニズムの意味に踏み込んで闘ってきたが、判決はとてもそれに応えてくれるものではなかった」。判決後の記者会見で、原告の牟田和恵大阪大名誉教授らは憤りをあらわにし、今後の研究の行方に危機感をにじませた。

     フェミニズム研究を切り開いてきた牟田氏らの科学研究費助成事業(科研費)に対し、杉田水脈議員が「ねつ造」などと指摘し始めたのは2018年。杉田議員のツイッターのフォロワー数は当時10万人以上で、牟田氏へ誹諧中傷が殺到した。所属していた大阪大にも「牟田のようなものを雇っているとは何事か」などとクレームが押し寄せた。

     判決で杉田議員の発言は名誉毀損と認められなかった。牟田氏は判決内容について「杉田さんをサポートするために書かれた印象を強く受ける」と語気を強めた。

     「日本から出て行け」。30年近く慰安婦問題を研究する原告の岡野八代同志社大教授は、杉田議員の発言以降、ツイッター上でこうつぷやかれたり、スパイ呼ばわりされたりするようになった。慰安婦問題のシンポジウム会場では、いたずらに写真を撮られたこともあった。「身がこわばるほどの恐怖」を感じるようになったという。

     会見で岡野氏は「『ねつ造』や『研究費不正流用』という言葉を影響力のある議員に投げられ、社会的評価が落ちないわけがない。判決は今後の研究や学門の水準を偏らせる。政府見解に反する研究をするのは非常にハードルが高くなる」と危惧した。


    科研費では「意味があるのか」と思われるような様々な研究も行われているのだが、それを一方的に批判することは学問の自由に反するということを理解しておかなければならない。仮に反論があるとすれば、同じく研究でもって立証する必要があるだろう。民主主義の不自由さと指摘されることがあるが、民主主義の対価はお金と時間でもある。。


    5月26日 市教委 マスク不要の場面 保護者へ文書通知

     文部科学省が学校生活で新型コロナウイルス対策のマスク着用が不要な場面を全国の教育委員会などに通知したことを受け、京都市教育委員会は25日、市立学校や幼稚園の保護者向けに同様の内容を文書で知らせ、共通理解を図ると発表した。

     市教委の文書の内容は、熱中症リスクが高い夏場の登下校時はマスク着用の必要はない▽体育の授業では体育館やプールを含め着用の必要はない▽運動の部活動も体育の授業に準じつつ、各競技団体のガイドラインを踏まえて対応する▽幼稚園では着用を一律に求めない―など。

     文科省はこれまでから、学校生活でマスク着用が不要な場面について学校衛生管理マニュアルで示してきたが、学校現場では登下校時などでその方針が浸透していないケースがあり、24日に着用を不要とする場面を改めて例示した。

     また市教委の文書は、マスク着用の有無による偏見や差別は許されない、とした。

     京都府教育委員会も25日、マスク着用が不要な場面を明記した文科省通知を府立学校(高校、高校付属中、特別支援学校)に知らせた。



    5月24日 文科省会議 特設校設けて 不登校支援を

     不登校の児童生徒の支援策を検討する文部科学省の有識者会議は23日、新型コロナウイルス感染拡大などを背景に不登校が増えていることへの対応として、授業時間削減や少人数指導などが可能な「不登校特例校」の設置促進を柱とした提言を大筋で了承した。

     不登校特例校は、勉強の遅れや学習意欲に合わせた教育課程を編成でき、豊富な体験活動に取り組む例などがある。4月時点で京都など10都道府県の公私立小中高21校が指定されている。有識者会議は、特例校活用で多様な学びが提供できるとした。

     通常より多数の教員を確保するための財源確保が必須で、文科省は自治体に設置を促す新たな補助金を検討する。

     また、提言では、自治体が設ける不登校支援センターが、自宅から出られない子どもにオンライン指導を行うよう要請。学校で悩みを見つけるため、カウンセラーが学年全員と面談して数年かけて全児童生徒と対話する案も盛り込んだが、23日の会合では委員から「人員を確保する予算が足りない」との指摘があった。

     文科省によると、2020年度に小中学校を30日以上欠席した不登校の児童生徒は約19万6千人で過去最多。新型コロナの影響で生活リズムが乱れやすくなり、友達との交流が減ったことも要因として指摘されている。


    京都では、「京都市立洛風中学校・洛友中学校」が不登校特例校として設置されている。「不登校支援機関・学習施設」をネット検索すると、民間の塾や通信制高校が多数ヒットする。進路の大半がそうした施設だと推測できる。公立校の設置や取り組みは進んでいるとは言い難い。


  • 学校の体育 マスク不要.24
  • 5月24日 政府 学校の体育 マスク不要

     政府は23日、新型コロナウイルス対策の指針「基本的対処方針」を改定し、屋内外でマスクを外せる状況を初めて明記した。20日に厚生労働省がまとめたマスク着用に関する考え方を反映した。学校では十分な身体的距離が確保できる場合や体育の授業で着用の必要はないとした。特に、気温が高い夏は熱中症対策を優先し。、マスクを外すよう指導する。

     体育の授業に関しては、文部科学省が作った学校の衛生管理マニュアルで既に書かれている内容だが、政府の新型コロナ対策をまとめた基本的対処方針にも載せることで改めて周知を徹底する。

     運動部の部活動は、競技によってはマスク着用を求めている場合もあるため、各競技団体のガイドラインを基に判断してもらう。ただ、練習場所や更衣室、食事、集団での移動では、マスク着用を含めた感染対策を徹底する。

     屋外では周囲と2メートル以上離れていなくても会話をほとんどしない場合はマスクを着ける必要がない。屋内では、周囲との距離が十分で会話をほとんどしないのであればマスクは不要だが、距離が近かったり会話をしたりする場合は着用を推奨する。着けるのは不織布マスクを勧めている。

     2歳以上の子どもには保育園や幼稚園での着用を一時的に推奨していたが、方針を変え、一律には着用を求めない。


    政府のコロナ対策に対する信頼はそれほどしっかりしたものではないとの印象が定着している。マスク着用についても、欧米の「非着用」に合わせたかのような印象を受ける。人的交流を拡大したいとの思いからだろうが、学校現場でも個人の意思を尊重した対策が必要だろう。


    5月20日 【論考2022】 「正常」が狭められている

     米国留学中の2000年に、私は摂食障害の研究を始めた。摂食障害は当時、大きく二つに分けられており、一つは太ることを恐れ、命を脅かすほどの低体重になることもある「拒食症」。もう一つは標準体重でばあるが、過食と嘔吐などの代償行動を繰り返す「過食症」である。

     程なくして私はあることに気付く。それは、摂食障害の種類がどんどん増えてゆくことだ。まず知ったのは、かつて男性版摂食障害と呼ばれ、今は身体醜形障害の一つに分類される「muscle dysmorphia」。自分の体が十分にたくましくないと感じ、過剰なトレーニングに走る症状である。

     これだけではない。過食はあるが代償行動の伴わない「過食性障害」、夜だけ過食をしてしまう「夜食症候群」など、新しい症状が次々と発見され、名が与えられていく。

     この傾向は今も続く。最新の摂食障害は「オルトレキシア」。これは健康的な食べ物の摂取に執着してしまう症状のことだ。

     大学院生だった私はこれを不思議に感じ、その理由を心理学の教授に聞いてみた。すると、次のような答えが返ってきた。

     「新しい疾患を確立すると、それが学者の業績となるから」

     これには虚をつかれたが、その後の研究者人生で目にするあれこれが、教授の言葉の的確さを裏付けてゆく。

     例えば新疾患の第一人者になると、論文の引用回数が増える。学会の基調講演などに招かれやすくなり、学問の世界での存在感は増す。それらは大学でのより良いポジションに彼らを導く。

     ではこのとき、学問の外では何が起こるのか。新しい疾患は「自分の状態に病名が与えられ、ようやく肩の荷が下りた」といった具合に市井の人々におおむね歓迎される。理解を深めるためのキャンペーンが行われることもある。

    不気味

     さて、ここまで読んだ皆さんはどう思われただろう。新疾患の確立は、不幸になる人を誰もつくらない、八方良しの学問的営みであると感じただろうか。

     実は私はこの状況に、むしろ不気味さを覚えている。「あるべき状態」から外れている大たちを発見し、その大たちに病名を与え、治療の枠組みを確立することは、「正常」の範囲を狭めてゆく作業に他ならないからだ。

     そのいい例が近年日本でも急速にその数を増やす注意欠陥多動性障害(ADHD)である。これは人の話を最後まで聞いたり、一つのことに集中できなかったりといった、過度に落ち着きのない状態を指す障害だ。

     米国のジャーナリストであるアラン・シユワルツの「ADHD大国アメリカ つくられた流行病」(黒田章史・市毛裕子訳、誠信書房)によると、米国の子どもたちの15%がADHDと診断され、その大半が投薬 を受けている。男児に限ると診断率は20%にまで上昇する。

     シュワルツはこの統計の背後に、製薬会社の多額の投資、子どもを薬物で鎮め、願わくば学力向上を図りたい大人の思惑、不明瞭な診断基準があると指摘する。

     落ち着きがないのが子ども、という考えはもう古い。最新の知見に従えば、それは治療できるのだ。

     また摂食障害と同様に、ここでも新しい障害が誕生しかけている。その名は「SCT=緩慢な認知」。これはADHDとは「ちょっと違う」障害だ。SCTの子どもたちは、大人が期待するよりゆっくり動く。物思いにふけって目の前の課題に集中できない。米国内で潜在的なSCTの子どもは300万人ほどいると述べる者もいる。

    細分化

     分類と名付けは、世界に秩序を与える人間の知性である。その知性は、世界はこうあるべきだという価値とともにある。

     「見えない障害」に気付くことが、多様性に配慮した、優しい社会であるという、反対し難い声の裏でうごめく価値は何か。

     それは、新しい市場を発掘し、消費を喚起することが善であるという資本主義のそれである。資本主義と医学は、無縁どころか、互いにしっかり手を結ぶ。

     しかしこのような批判は、「それで助かる人がいる」という反論の前に力を失う。こうして人はどこまでも細分化されてゆくのだ。

     人類学者 磯野 真穂


    人類学者としてクロード・レヴィ=ストロースは極めて有名だが、彼の業績は他の学問のパラダイムを変換したということだろう。同じく早世した人類学者のデヴィッド・グレーバーも、「負債論」や「ブルシット・ジョブ」の著作で注目されている。「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像する方がたやすい」と言われるほどの資本主義に挑む姿勢は貴重だ。


    5月19日 内田教授ら 教諭の半数 「休憩ゼロ」

     教諭の長時間労働が問題となる中、名古屋大の内田良教授(教育社会学)らのグループが、公立小中学校の教諭約900人へのアンケート結果を発表した。勤務中に休憩が全く取れないとの回答が約半数に上った他、管理職などから残業時間の過少申告を求められた人が17%いた。調査は昨年11月にオンラインで実施。20〜50代の教諭らが回答した。

     発表によると、小学校教諭の「休憩ゼロ」は51%。労働基準法で規定された1日45分以上の休憩が取得できているのは6%にとどまり、平均は9・4分だった。中学教諭の休憩ゼロは47%。45分以上は12%で、平均は14・6分となった。

     自主的な判断も含めて、小学校で勤務時間を「正確に申告しない」と回答した人は、平日が12%、土日の場合は43%に上った。中学では平日14%、土日28%だった。持ち帰り仕事を含めた、小中での時間外業務の月平均は100時間を超えた。

     2019年に文部科学省が示したガイドラインでは、残業の上限を原則「月45時間、年360時間」以内と規定。タイムカードなどによる客観的な計測を求め、虚偽申告を禁止している。長時間労働によるいじめの見落としや授業の準備不足に不安を抱く教諭が多かった。記者会見した内田教授は「休憩が取れないなど『見えない残業』が増えた。正確な労働時間把握と、業務削減が必要」と訴えた。


    当日の記者会見の模様は【学校カエルちゃんねる】のYouTubeで見ることができる。


    5月19日 文科省 中3「英検3級以上」47%

     文部科学省は18日、公立小中高校を対象にした2021年度英語教育実施状況調査の結果を公表した。「英検3級」以上の力がある中学3年は47・0%、「英検準2級」以上の力がある高校3年は46・1%で、前回19年度よりそれぞれ3・Oポイントと2・5ポイント増えた。同調査が始まった13年度以降で最高だが、政府目標の50%には届かなかった。

     調査は21年12月時点で実施。中3で英検3級程度以上を取得していた生徒は27・2%。学校の成績などを基に教員の裁量で「相当する力がある」と判断した生徒は19・8%だった。

     高3で英検準2級程度以上を取得していた生徒は31・2%。教員の判断で認めたケースが14・9%あった。学科別では、普通科は59・4%、英語や国際関係は92・8%に上る一方、工業や商業などその他の専門学科は17・6%にとどまった。

     中3の状況を都道府県・政令市別に見ると、目標を達成した割合が最も高いのはさいたま市の86・3%で、福井県85・8%、福岡市66・0%が続いた。京都市50・4%、’京都府43・2%、滋賀県は42・3%だった。高3は都道府県別に調べ、福井県59・6%、富山県59・3%、静岡県54・4%の順。京都府は49・4%、滋賀県は40・3%。

     20年度から教科となった小学5、6年について、英語の授業を行った教員のうち学級担任は4万1610人で51・2%を占めた。一方で、英語を専門に教える「専科教員」らは2万2384人で27・5%だった。

     常勤の小学校教員のうち中高の英語免許を保有している割合は7・5%(19年度比1・2ポイント増)。文科省の担当者は「専科教員や免許取得者が増えることで、より専門的な指導につながる」と話している。


    「英語で授業」の教員減少

     文部科学省の2021年度英語教育実施状況調査では、学習指導要領で中高校ともに「英語で行うことを基本とする」と明記されている授業について、「発話の半分以上を英語で行っている」と答えた中学教員が73・4%、高校教員が46・0%だった。

     前回19年度調査より中学で3・5ポイント、高校では6・4ポイント減っており、文科省の担当者は「新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校で授業日数が減り、教科書を終わらせることを優先して日本語で授業を進めたケースもあった」と分析。同省は引き続き、英語使用の充実を求めていく。

     文科省によると、中学に比べて高校では大学受験を想定した複雑な文法や和訳があり、日本語での説明多くなる傾向があるという。

     都道府県・政令市別に見ると、中学で「発話の半分以上を英語で行っている」は大阪府の98・7%が最高で、次いで山口県の98・3%。高校では堺市と岡山市が100%を達成した。

     英語を担当する教員について、一定の目安とされる英検準1級程度以上を取得しているのは中学で40・8%(前回比2・7ポイント増)、高校で74・9%(同2・9ポイント増)だった。


    さいたま市のITC教育が注目されている。だが、この取り組みを公教育の市場化と批判する声と民間活力を教育に利用するものだという賛意とが交錯している。こうした中での「目標達成」1位をどう評価するかだろう。


    5月18日 衆議院 子ども政策「縦割り」懸念

     「こども家庭庁」設置関連法案は17日、衆院を通過し、今国会で成立する公算となった。論戦の舞台は参院に移る。子ども政策の司令塔づくりを掲げる政府に対し、野党は教育分野が引き続き文部科学省に残るため「縦割り行政」が温存されると懸念。岸田文雄首相が唱える少子化対策に向けた「予算倍増」は、財源も達成時期もあいまいなままだ。

     「子どもの視点に立ち、各省庁より一段高い立場から、政府内の総合調整を行う」。野田聖子こども政策担当相は17日の記者会見で、こども家庭庁が担う役割を強調した。

     法案では、こども家庭庁は首相直属機関に位置付ける。内閣府と厚生労働省の子ども関連部署を移管する一方、文科省の教育分野には手を付けない。子どもに関する政策は法務省など多数の省庁が扱っており、全ての統合は「現実的ではない」(野田氏)と説明する。

     野党は「教育と福祉の間の壁は残る。省庁の縦割り弊害を取り除けない」(日本維新の会・掘井健智氏)と問題視。維新や立憲民主党は、教育分野も一元化する対案をそれぞれ提出したが、否決された。

     政府は司令塔機能の一環として、内閣府特命担当相が持っている他省庁への「勧告権」を、こども家庭庁の担当閣僚にも与える。権限の強化をうたうが「過去に発動した例は承知していない」(野田氏)のが実態で、有効性には疑問がつきまとう。

     子ども政策の充実には、政府の組織見直しにとどまらず、予算拡充と裏付けとなる財源確保が不可欠となる。

     日本の子育て関連支出は国内総生産(GDP)比3%に満たない。3%を超々るスウェーデンや英国など欧州主要国より低水準との指摘がある。

     首相は関連予算の倍増方針を重ねて表明しつつ「いつまでに倍増すると期限を区切ってはいない」と述べる。立民の泉健太代表は衆院内閣委員会で首相に対し倍増させることを、国民は期待し信じるのではないか」と追及したが、最後まで具体的な計画は明らかにしなかった。

     政策に子どもの意見をどう反映させ、権利擁護を図るかも課題となる。立民は否決された対案で「子どもコミッショナー」などと呼ばれる第三者機関を設置し、虐待やいじめなどの重大事案を調査する権限の付与を主張。共産党の塩川鉄也氏も「独立した立場で政府を監視し、個別事案を救済するコミッショナーは欠かせない」とする。

     首相は、法案によって有識者や子ども、親らでつくる首相の諮問機関「こども家庭審議会」を置き「当事者の意見をしっかり承り、権利擁護を図る」と理解を求めた。


    虐待・少子化に対応

     子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」設置関連法案は17日の衆院本会議で与党や国民民主党などの賛成多数で可決された。内閣府外局の首相直属機関として2023年4月に同庁を創設する内容。岸田文雄首相は重要法案と位置付けており、同日、公明党の山口那津男代表との会談で早期成立を図る方針を確認。参院に送付され、今国会で成立する公算が大きい。

     本会議では政府法案とは別に、自民、公明両党が提出した「こども基本法案」も与党、立憲民主党、日本維新の会、国民などの賛成多数で可決された。「こどもの養育は家庭を基本とし、父母ら保護者が第一義的責任を有する」といった理念を明記している。

     こども家庭庁は少子化、虐待、子どもの貧困といった課題の解決に向け、幅広く対応。小学校入学前の子育ての指針策定を担う。性犯罪加害者が保育や教育の職に就けないようにする「無犯罪証明書」制度も検討する。

     厚生労働省と内閣府の関連部署を移管するが、幼稚園を含む教育や学校でのいじめ問題、不登校対策は引き続き文部科学省が所管する。他省庁の政策が不十分な場合に是正を求めることができる「勧告権」を同庁の担当閣僚に与え、縦割り行政解消を狙う。

     民間や自治体からも人材を登用し、300人超の体制とする。首相の諮問機関「こども家庭審議会」を置き、子どもや親、有識者らが参加して子どもの権利擁護を図る。


    「子ども家庭庁」が有することになる「勧告権」の意義は大きい。とりわけ文科省に対して、いじめ・不登校などの対策に対して「注文」を付けられることの意義だろう。ただ、縦割り行政は残ることになり行政の無謬性をどこまで指摘できるかは不透明。


    5月16日 【核心評論】本土への怒り根底に

     沖縄開発庁長官を務めた故上原康助氏が1997〜98年に執筆した沖縄独立論の草稿が、約四半世紀を経て見つかった。「沖縄独立の志」と題し、日本から独立するにはどのような課題があるのか論じながら、沖縄の現状や可能性を解説している。沖縄独立論は日本の在り方に直結する問題であり、沖縄県民にとっても本土の人間にとっても琴線に触れるテーマだ。

     草稿のメモ書きには「日本政府に反旗を翻していると受け取らないでほしい」と慎重な表現が出てくる。沖縄の立場を悪化させないように配慮しつつ、独立の可能性を探ろうとしたのだろう。

     日本本土から地理的に離れ、固有の文化を持つ沖縄にとって「経済的に自立できるのなら、日本から独立してもよい」という意識は本土復帰以前から根強くあった。だが、本土の側は「机上の空論だ」と高をくくり、なぜ沖縄が独立を語らねばならないのか、真意は何か、真剣に向き合ってこなかった。

     復帰50年となる今も、全国の在日米軍専用施設の約7割が沖縄県に集中し、在日米軍の特権的地位を定めた日米地位協定の改定も進んでいない。沖縄県民の意思を軽視する日本政府の姿勢こそが、自立への強い思いを醸成してきたのではないか。

     上原氏の執筆時に比べ現在は独立の機運が高まっているわけではない。若者の間には「もし日本から独立したら、甲子園に出られなくなるのか」といった笑い話があるという。しかし、これには笑えない落ちが付く。「沖縄代表として全国優勝した方が、独立するよりうっぷんを晴らせる」。複雑な感情の根底には、本土への怒りがあることを忘れてはならない。

     共同通信が今春実施した沖縄県民調査によると、「独立論に共感できますか」という質問に肯定的な回答をしたのは約3割、否定的回答は約7割に上った。結果についてはさまざまな解釈ができるだろう。だが、復帰から50年たってもなお、独立論が一定の支持を得ている現実を本土の人間は重く受け止めるべきだ。

     出版に至らなかった理由は今となっては分からないが、上原氏を知る関係者は草稿の発見を知り「まさかあの上原が独立論を真剣に考えていたとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。かつて上原氏の秘書を務めた沖縄県金武町の吉田勝広元町長(77)も「沖縄が独立できないことを誰よりも理解していたのが上原だった。それでも独立論を持ち出さざるを得なかった心の内を思う」と語った。

     今から10年前の復帰40周年記念式典。上原氏は日本政府に向け「なぜ県民の切実な声を尊重しないのか」と言葉を振り絞った。この時は既に独立論を封印していたが、県民を二分しかねない命題を胸に、人知れず苦悩を重ねていたに違いない。「政治家を辞めてからも、(沖縄を)ちやーすが(どうしたらいいだろうか)が口癖だった」。知人たちが異口同音に語るのを聞いた。(共同通信記者 名古谷隆彦)


    ロシアのウクライナ侵攻が始まってから「いったん戦争が起こればそれを止めるのは至難の業」という感想を幾度も耳にした。加えて、これまでの「平和教育」は戦争を止めることができるのだろうかという課題が突き付けられているとも感じている。「平和」と「沖縄地上戦」は無視できないつながりを持っている。政府・与党や一部野党の国防論はそのことをどれだけ重く見ているのだろうか。


    5月15日 特別寄稿 沖縄地元2紙寄稿

    沖縄県は15日、日本復帰から50年となった。沖縄を巡る山積する課題について、地元の沖縄夕イムスと琉球新報の編集局長に寄稿してもらった。

    【沖縄タイムス】台湾有事 県民不安大きく

    編集局長 与那嶺一枝

     沖縄県は15日、日本復帰から50年となった。沖縄を巡る山積する課題について、地元の沖縄夕イムスと琉球新報の編集局長に寄稿してもらった。

     憂鬱。

     復帰50年を迎える沖縄にいて、一言で表すならこの言葉がしっくり来る。

     復帰して「良かったと思う」と答えた沖縄県民が94%に達している(共同通信社調査)にもかかわらず、祝意でも失望でもなく憂鬱である。

     米軍施政権下に比べると、インフラ整備が進んで観光業が発展して暮らし向きは向上し、日本国憲法の施行で人権状況も改善した。「良かったと思う」が復帰直後の55%から右肩上がりに増加したのは当然だろう。

     しかし、だからといって、復帰時に積み残された米軍基地問題を県民が不問にしているわけではない。基地の整理縮小は遅々としているし、人権意識の高まりに比して日米地位協定の改正や基地から派生する事故の防止策はまったく追いついていない。一部地域では飲み水にさえ影響が取り沙汰されるなど新たな環境問題も起きている。

     だが、憂鬱の理由はほかにある。一つは女性への深刻な人権侵害である暴行事件が依然として起き続けていることだ。

     今月下旬には米海兵隊員が強制性交等致傷罪に問われた裁判員裁判が開かれる。事件が起きたのは商業施設や住宅が立ち並ぶ場所。米軍属による6年前の女性暴行殺害事件をきっかけに、政府が再発防止策として始めた安全パトロール事業の通称・青パトが頻繁に行き交う地域でもある。

     青パトに使うための予算は2021年度までの5年間で46億円余。毎日100台ほどが巡回しているが、米軍関連の通報は10件にとどまる。われわれは費用対効果について度々検証してきたが、今回の事件で小手先だけの対策はまったくの無駄であることが露呈した。

     もう一つは、激変する安全保障環境だ。復帰を機に自衛隊は沖縄島へ配備されたが、近年、急速に「南西シフト」を進めている。

     晴れた日には台湾が見える与那国島に16年、陸自の沿岸監視隊を配備。宮古島には20年にミサイル部隊、石垣島には来年3月に駐屯地を完成させる。

     配備が着々と進むころ、中国の習近平指導部は香港の民主化運動に強硬姿勢で臨んだ。そのさまは、台湾統一を目指す習指導部の手法を見せつけているようで、近い将来、沖縄に火の粉が飛んで来る前触れのように思えた。

     そして、習氏が固唾をのんで行方を注視しているというロシアによるウクライナ侵攻である。

     ウクライナ侵攻を発端に、政治家からは「台湾有事は日本有事」「核共有」「防衛予算倍増」「敵基地攻撃能力」といった勇ましい発言ばかりが聞こえてくる。

     安全保障が語られるときは常に机上の大きな政策や議論がつきまとうが、沖縄の実感からするとリアルではない。

     台湾有事の備えというならば、外交力の強化策や、武力衝突に巻き込まれる可能性が高いといわれる146万沖縄県民を守る議論が政治家から出てこないのはなぜだろう。日本の中で最も切実に生活者が安全保障について考え、民主主義を問うてきた沖縄からの率直な疑問である。沖縄タイムスなどの世論調査では85%が武力衝突に巻き込まれる不安を感じていると回答しているのだ。

     復帰50年の節目に、米軍基地の負担に加えて、先祖返りしたような地政学的な台湾有事への懸念までも押し付けられる事態になるとは、あまりにも皮肉だ。


    【琉球新報】見て見ぬふり構造的差別

    編集局長 松元剛

     沖縄の施政権が返還された1972年5月15日付の琉球新報―面は「変わらぬ基地続く苦悩」のぷち抜き横見出しに、縦8段の「いま祖国に帰る」を丁字形に据えた。今も、当時の県民感情を端的に表した歴史的紙面と評価されている。

     那覇市で催された新沖縄県発足式典で屋良朝苗知事は「常に手段として利用されてきた沖縄を排除し、平和で豊かで希望の持てる県づくりに全力を挙げたい」と語った。

     この日、小学1年だった私は父親に「米軍基地付き返還」に抗議する県民総決起大会に連れ出された。「沖縄の涙雨」と称された土砂降りの中、数千人の大人がみな怒っていた記憶がある。

     あれから半世紀、県民生活をかき乱す基地の重い負担はほとんど変わっていない。女性が性被害に遭う米兵事件は後を絶たず、政府は沖縄の民意を無視し、普天間飛行場の名護市辺野古移設を伴う新基地建設を強引に進めている。

     本土との格差是正を進めるはずの振興予算は、基地の沖縄集中の温存を図る「アメとムチ」の性質を色濃くしている。

     ロシアのウクライナ侵攻後、中台両国の有事をも想定した敵基地攻撃論や核兵器の共有論が独り歩きしている。有事に至るなら、基地の島・OKINAWAが標的になりかねない。きなくささが増す中、むしろ沖縄の基地負担は増している。

     宜野湾市の南方から北向けに撮った航空写真には、海兵隊の普天間飛行場と空軍の嘉手納飛行場が映り込む。両基地の滑走路は10キロも離れていない。住民生活は置き去りにされ、軍事優先の訓練が続く。車の前1〜2メートルで聞く警笛音に匹敵する爆音が数十回も響く日もあるが、止める手だてはほぼない。海兵隊と空軍の航空基地がこれほど近い市街地に置かれている例はない。人権をむしばむ在沖米軍基地の過密さは異常である。

     「静かな空を返せ」と国を訴える嘉手納基地爆音訴訟の原告は第1次(1982年提訴)の900人余から、今年1月提訴の4次では3万5566人に増え、全国最大級になった。日米安保体制を容認する人も含め、忍耐の限度を超えたと訴える県民が増え続ける土台に、基地負担の改善に手をこまねくこの国の為政者への強い不信がある。

     沖縄県は日本復帰50年に合わせ「新たな建議書」を打ち出した。負担が沖縄に偏在する基地問題を「構造的、差別的」と言い切ったのが特徴だ。

     これと合致するデータがある。琉球新報の記事データペースで、復帰40〜30年と、復帰50〜40年の10年ごとに区切り「基地差別」を検索すると、1170件から約3千件へと増えている。

     多くの県民が「日米関係(日米同盟)を安定させる仕組みとして、対米従属的日米関係の矛盾を沖縄に集中させる構造的差別」(元沖縄大学長の故新崎盛暉氏)が深まっているのに、大多数の国民が見て見ぬふりを決め込んでいることに不満を募らせている。「不平等」よりも険しい響きを宿す「差別」を用いざるを得ない民意の地殻変動が起きているのだ。

     沖縄に横たわる不条理が改善されるには、国民全体の理解が深まることが欠かせない。今後も「手段」として用いられかねない沖縄に、この国の民主主義が成熟しているかを問うリトマス試験紙のような役割をいつまで課すのか。日本政府を下支えしている本土の国民にも間わねばならない。


    「ウクライナの問題は沖縄と地続き」とある報道キャスターが言っていた。まさにその通りで、2紙の編集局長の寄稿は、県民の本土への異議申し立てに他ならない。


    5月14日 子ども庁法案、衆院委通過

     衆院内閣委員会は13日、子ども政策に総合的に対応する政府提出の「こども家庭庁」設置関連法案を与党や国民民主党の賛成多数で可決した。17日に衆院本会議で可決され、衆院を通過する見通し。岸田政権は重要法案と位置付け、今国会で成立させ、夏の参院選を前にアピールを狙う。

     岸田文雄首相は採決に先立つ質疑で、政府法案が首相の諮問機関「こども家庭審議会」を置くとした点を挙げ「当事者の意見をしっかり承り、権利擁護を図る」と強調。審議会は有識者や子ども、親らでつくる。子どもの権利擁護に権限を持つ第三者機関を求める声に配慮した形だ。首相は子育て世代の所得、子ども関連予算引き上げに意欲を示した。立憲民主党の泉健太氏、共産党の塩川鉄也氏への答弁。

     泉氏はこども家庭庁の業務が教育分野などを担わないことを批判。首相は「全て一元化することは現実的なのかという議論がある」と反論した。泉氏は、自民党の憲法改正方針が教育充実を含むことを踏まえ、教育無償化に改憲が必要かと迫った。首相は「教育の充実を憲法に書き込むことは大変重要」とかわした。



    5月14日 ウトロ放火初公判 民族差別 動機認定焦点

     在日コリアンが多く暮らす宇治市伊勢田町ウトロ地区に放火し、建物7棟などを燃やしたとして、非現住建造物等放火などの罪で起訴された無職有本匠五被告(22)=奈良県桜井市=の初公刊が16日、京都地裁で開かれる。特定の民族を標的としたヘイトクライム(憎悪犯罪)との関連や、動機として民族差別が認定されるかが焦点となる。

     起訴状では、有本被告は昨年8月30日、ウトロ地区の民家に火をつけ、民家など計7棟を全半焼させたとしている。また、昨年7月に在日本大韓民国民団愛知県本部などに放火したとして建造物損壊と器物損壊罪でも起訴されている。

     有本被告は、起訴後に拘置所で京都新聞社の取材に応じ、放火したことを認めた上で「韓国人に恐怖感を与えることを意識していた」と証言している。

     国内で特定の人種や民族が標的となった犯罪の刑事裁判の判決では、朝鮮学校へのヘイトスピーチを「日本人拉致の事実を明らかにする『公益目的』」と判断したり、韓国文化交流施設への放火事件で動機の認定が「韓国に対する悪感情」にとどまってきた経緯がある。

     ウトロ地区の被害者弁護団によると、民族差別そのものを動機として認定し、量刑が考慮された判例はないとみられるという。同弁護団は、ヘイトクライムを許さない社会をつくるため、検察側が動機を民族差別目的だと立証し、裁判所が量刑に反映することを求めている。

     龍谷大の金尚均(キムサンギュン)教授(刑法)は、民族差別が絡んだ事件の場合、問題の本質や重大性を見極める上で、動機や背景の解明が重要と指摘する。一方で、「刑事裁判では客観的な事実が重視される。差別動機を立証しなくても訴追でき、量刑に反映する法規定もない」として、公判の行方を注視する。


    具良ト(クリャンオク)弁護士「自分の体燃やされたよう」

     今回の事件を受けて、宇治市ウトロ地区出身で在日コリアンの具良ト弁護士(39)が、放火の被害に遭った地元住民をサポートしている。「事件に対する社会の無反応が怖い」といい、ヘイトクライムに厳しく立ち向かう社会の実現を願っている。

     具さんは、ウトロに生まれ、高校卒業まで京都市内の朝鮮学校に通った。ウトロは、ご近所から焼き肉に誘われたり、洪水の時に助け合ったりして、とても温かい故郷だった。

     事件当時、韓国で暮らしていた具さんが、放火を知ったのは3ヵ月ほどしてから。「ウトロまで狙われたのか」。排外的なデモなどとは次元が異なる過激な犯行に背筋が凍った。

     放火された場所は、幼い頃からよく知る場所だった。燃やされた倉庫には、土地所有を巡って地権者と地元側が裁判で争っていた時に住民が作った立て看板が保管されていた。ウトロの人々が存在し、生きてきた証しだった。「自分の体が燃やされたようだと思いました」「生きていてはいけない存在なのかな」という思いがよぎり、夜中に突然目が覚めて涙が頬を伝うこともあった。

     裁判では、事件の動機がどれだけ明らかになるのか注目している。「在日コリアンにとって象徴的な街への放火は、日本社会のヘイトが強まった危険な節目」とし、「被告だけの問題に終わらせず、社会的背景も含めて解明してほしい」と話す。


    有本被告“政治的主張”と持論

     有本匠五被告は13日までに、京都拘置所での面会や手紙で京都新聞社の取材に応じた。事件の動機として、近く開館予定だった「ウトロ平和祈念館」の展示に抗議を示す「政治的主張」と説明し、「ヘイトクライムとは異なる」と持論を展開。しかし、専門家は「はっきりとした差別感情を基にしている」と指摘する。

     有本被告によると、事件の10日ほど前、地区の歴史を伝えて多文化共生を目指すウトロ平和祈念館が開館予定という記事を、ヤフーニュースで読んだ。コメント欄の「日本から出て行け」などの書き込みに、賛同を示す「いいね」の反応が数千件付き、「事件を起こす上で指標となった」と話す。

     ネットでウトロ地区の歴史背景を調べ、「ウトロは不法占拠」という考えに至った。そして、土地所有を巡る訴訟中に地区に設置された「立ち退き反対」などの看板が祈念館に展示されることに抗議を示すことにしたという。「犯罪という認識はあったが、何が問題 かということを人々に瞬時に判断してもらうため放火した」と説明。「在日コリアンに恐怖感を与えることを意識した」とも話した。

     有本被告は「ウトロは住民の態度も問題」と語るが、在日コリアンと関わったり、直接話したりした経験はないという。

     当時、被告は奈良県内の病院で正職員の試用期間中に退職し、無職だったという。「コロナで私を含め若者の就職が困難となった。自分の立場を見たときに、失うものがない状態だった」とも話した。

     想像力欠如している

    【朝鮮近現代史や外国人差別問題に詳しい同志社大の板垣竜太教授の話】 動機や在日コリアンヘの認識は根拠が乏しく、住まいを燃やされた側への想像力が欠如している。「不法占拠」という主張も都合のいい事実のつまみ食いで、解決に向かっている現状や、差別のためウトロにしか住む場所がなかった歴史的な経緯を踏まえていない。在日コリアンに恐怖感を与える目的を明言しており、はっきりした背意識が見て取れる。



    5月12日 文科省 教員免許更新7月廃止

     教員免許に10年の有効期限を設ける教員免許更新制を廃止するための改正教育職員免許法など関連法が11日、参院本会議で可決、成立した。7月1日以降に期限を迎える教員は講習受講などが不要になる。一方、指導力向上を目的として2023年4月から新たな研修制度が始まる。

     更新講習は、期限前の2年間のうちに30時間以上の受講が必要だったため多忙化の一因となり、教員不足につながったと指摘されていた。文科省は制度廃止で負担軽減を図り、免許を失効した人に再取得を促してなり手不足の解消を目指す。

     新制度について文科省は、情報通信技術(ICT)の活用や障害のある児童生徒への対応など、教員に必要な知識や指導方法を定めた指針を今夏に示す。都道府県と政令市の教育委員会は指針に従い、学ぶテーマや受講頻度を決める。

     また、都道府県教委などに教員の研修受講を個別に記録することを義務付ける。体制が整っていない一部自治体は新たなデータベースの整備が必要。校長は記録を参照し、各教員の能力や経験を踏まえて受講すべき研修を助言する。

     国会審議では野党側から「校長による押し付けになる」との懸念が示されており、衆参の委員会で「教員の意向をくみ取るよう配慮する」との付帯決議が採択された。

     文科省は、教員にとって新たな負担にならないように注意を払うとも強調する。学校から参加できるオンライン研修を増やして手間を省く他、校長には研修後の報告書を簡略化するといった配慮を求める。

     一方、更新制の効力が残る6月末までに期限を迎える教員に対し、必要な手続きを取れば講習受講を免除する。

     更新制は第1次安倍政権だった07年の法改正により、09年から導入された。


    【インサイド】校長が助言「自主性失う」

     10年ごとに更新講習の受講が必要な教員免許更新制を廃止する改正関連法が11日に成立し、2023年春の開始が決まった新たな研修制度は、各教員が何を学ぶかを校長が助言する仕組みを導入する。助言は強制ではないが、人事評価と結び付く可能性が指摘されており、現職教員は「自主性がそがれるのではないか」と不安を抱く。

     文部科学省は、長時間の講習受講義務があった免許更新制を廃止して教員の負担軽減を目指している。ただ、与党の文教族議員から「廃止するだけでは指導力不足の教員が出る」と異論が出たこともあり、校長の関与を強めることで、一定時間の講習受講を担保させる方針を打ち出した。

     文科省は、校長の助言は人事評価の面談の際に行うと想定している。新制度を巡る国会審議では、野党議員が「どんな研修を受けたかで人事評価が左右されるのではないか」と指摘。文科省担当者は「受講の有無が直接評価に反映されることはないが、受講後に教員が発揮した能力は評価対象だ」と答弁し、完全には否定しなかった。

     再三の助言に従わない教員には職務命令で研修を受けさせることが可能で、応じなければ転任などの処分もあり得る。助言が事実上の強制になるとの懸念はぬぐえない。愛知県の公立小に勤務する40代男性教諭は「校長の顔色を見て研修を受けるようになり、自ら学ぶ気持ちがしぼんでしまう」と嘆く。

     筑波大の浜田博文教授(学校経営学)は「新制度は『助言なしでは教員は十分学ばない』という前提に立つもので、意欲低下につながる恐れがある。熱心な教員が自主的に参加する研修費用を公的補助するなど、指導力向上を後押しする政策を実現すべきだ」と語った。


    更新制を廃止することについては異論はないが、何のために廃止するのかということが全く見えない。「定額働かせ放題」の法律として批判されていた「給特法」が改正されたときも実質的にはなんの利益も現場にもたらさなかった。今回の「廃止」もそれと同様で、現場の負担が増えるだけで何等の改善になっていない。予定されているオンライン「研修」などのコンテンツを作成するのは誰なのか?教育界に民間業者が参入しているのは「塾」だけではない。スクールGIGA構想や大学共通テストなどでも大きな利益を見込んでいる。安倍政権の教育基本法改正が、新自由主義と国家主義の合成であることが今でも大きな影響を持っていることが分かる。


    5月12日 京都市PTA連 全国協退会せず

     京都市PTA連絡協議会(市P連)は11日、大森勢津会長が提案していた全国組織「日本PTA全国協議会(日P)」からの退会ついて理事による投票を行い、賛成少数で否決した。日Pによると都道府県や政令市のPTA協議会の退会例はこれまでなく、投票結果が注目されていた。

     投票は学校単位のPTA会長24人、校長・園長16人の計40人の理事で行い、賛成6人(市P連会長に一任1人含む)、反対30人、棄権4人だった。

     大森会長は3月の理事会で退会を提案。日Pの課題として、一部役員だけで国への要望内容を決めるなど意見を吸い上げていない▽市の補助金が削られる中、年84万円の日Pへの負担金は会員に説明できない▽持ち回りで開催する日Pの全国大会は地元PTAの金銭や人員の負担が大き過ぎる―などを挙げていた。

     大森会長は「非常に残念。変わることに不安を覚えた人が多かった」としながら、「課題を全国で共有する役割は果たせた」と述べた。日Pは「しっかりと本質か考えていただいた結果だと考えている。今回の議論を受け止め、全協議会の活動の一助になるべく議論を進めたい」とコメントにた。

     市P連は市立の幼稚園、小中高校、総合支援学校の各PTA連絡協議会5団体で構成する。日Pは全国64の都道府県や政令指定都市のPTA連絡協議会などでっくり、国への要望や調査研究、研修などを活動内容に掲げている。


    【インサイド】拙速議論に警戒感

     京都市PTA連絡協議会(市P連)の理事投票で、全国組織からの脱退が見送られた背景には、退会を提案した大森勢津会長と、拙速な議論を懸念する理事との間の温度差があった。

     「理解を求めたが、力不足だった」。大森会長は投票結果を受けた会見で、無念さをにじませた。

     賛成した理事の一人は、京都新聞の取材に対し「PTA推薦の文房具など誰が決めているか疑問に感じていた。一度抜けてみて必要があれば入り直せばいいと思った」と語った。一方、反対した理事は「2、3年話し合っていれば別だが、急に提案されて時期尚早と感じた」、別の理事も「(退会した場合に)どんな影響があるか分からない」と明かした。

     大森会長は昨年7月に就任し、日本PTA全国協議会(日P)の会合に出席する中で全国組織の在り方に疑問を感じたという。昨年11月ごろから退会の検討を理事らに伝え、今年3月に正式に退会を提案した。

     4月の理事会で会長経験者4人から意見を聞くと、「学ぶことはあまりなかった」「メリットがあるか疑問を感じていた」などと日Pへの否定的な見解が出た。

     その一方で、市教育委員会や校長らから「十分な議論を」「会長の考えは分かるが、小学校PTA連絡協議会や学校単位PTAで話し合う場を設けるべき」と声が上がるなど慎重論は根強かった。

     大森会長は会見で、1年という短い任期中に退会という重大事を決める難しさも口にした。今後、議論を継続するかにつにては「次年度の執行部が考えること」と述べるにとどめ、次期会長には「日Pが本来の役割を果たすか見てほしい」と注文を付けた。

     日Pからの退会は他都市でも検討されている。川崎市PTA連絡協議会は2021年度に理事会で退会のメリットとデメ少ットを議論したが、24年度の全国大会開催を引き受けているため結論は先送りしている。

     19、20年度に京都市P連の会長を務めた植松明彦さんも日Pの在り方に疑問を感じている一人だ。会長時代、日Pが「9月入学」に「慎重に」とする要望書を国に送ったことを事後に知ったといい、「何がどこで決まっているのか分からず、問題のある組織だと思っていた」。退会を巡る今回の議論を受け、「日Pも透明性を確保し、説明責任を果たすよう変わらざるを得ないのではないか」と語った。


    【連載記事PTAのゆくえ】で、議論の大筋は理解できる。果たしてPTAが本来の役割(?)を果たしているのかはについては多くの疑問がある。しかし、子どもが学校と関係がなくなると「意識」も薄れてしまうという教育課題特有の側面もある。その結果、継続的に関与しているのは教育行政(文科省、地方行政など)になってしまう。今回の【連載記事】ではその点への照射が十分でなかった恨みはあるが、おそらく水面下では相当な介入があったと推測されれる。真のステークホルダーは、教育委員会かもしれない。


    5月10日 京都市 待機児童「ゼロ」9年連続

     京都市は保育所などの保育施設に入所を希望しても入れない「待機児童」の4月1日時点の人数が、国基準で9年連続ゼロだったと発表した。小学校入学前の子どもに占める保育所などの利用割合も53・9%と過去最高で、政令指定都市としては高水準が続いている。

     保育所や認定こども園などの利用申込者数は3万372人と前年同期比で777人減った。実際に利用が決まったのは計2万9949人で、内訳は保育所が2万1266人、認定こども園が7170人、小規模保育事業所などが1513人だった。

     市は今春に向け、保育ニーズが多い伏見区や右京区などで118人分の定員の拡大につなげた。ほぼ全ての行政区で定員が利用園児数を上回る状況になっており、唯一下回る伏見区深草支所管内についても一部の園が定員を超えて受け入れることでカバーした。

     それでも特定の希望施設に入れずに利用を諦めるなどした「潜在的待機児童」は全行政区で確認され、計384人に上った。また例年、秋の転勤などに伴う需要の変動で年度途中に待機児童が発生しており、昨年10月1日時点では20人に上った。


    【インサイド】施設の定員割れ深刻化

     9年連続の「待機児童ゼロ」が続く京都市で、保育施設の定員割れが深刻化している。収入減に直結するため各園は柔軟な定員の設定を求める一方、利用者側にとってはゆとりある受け入れ体制が望ましく、市は難しい調整を迫られることになりそうだ。

     市は長年、保育施設の運営法人に対し施設の新設や増築などを求め、受け皿の拡大を主導してきた。いまだに待機児童の解消に苦慮する政令指定都市もある中「ゼロ」を積み重ね、市が掲げる「子育て環境日本一」の根拠としてきた。

     一方、少子化などにより2019年以降は市内全体で定員割れが拡大している。今年4月時点では全体の6割に当たる257施設で計2857人分の定員割れが生じ、前年同期比では508人分増えた。

     園側にとって定員割れは経営への打撃となる。スケールメリットの観点で、市から園に支給される園児1人当たりの給付費は定員の設定が大きいほど低くなるからだ。例えば3歳児100人を受け入れる場合、定員100人では1人当たりの給付費(月額)が4万4020円になるが、定員120人では4万710円に下がる。必要な保育士数はそれぞれ変わらない。

     定員を引き下げるためには市との協議が必要で、個々の施設だけではなく近隣の地域全体で定員割れが続いていることなどが条件として定められている。市保育園連盟は2020年に改善を求める要望を市に出しており、連盟の担当者は「園側にとって運営の維持のためには切実な問題で、速やかに対策を図ってほしい」と訴える。

     市も対応の必要性を認め、門川大作市長は昨年の11月議会で、定員と利用園児数のかい離を埋める制度を検討する意向を明らかにした。市幼保総合支援室は「子どもの増加が見込まれる地域もあり、保育ニーズを考慮する必要は引き続きある。なるべく早く方向性を示したい」としている。



    5月7日 京都私大教組 学生仕送り752円/日

     京都の私立大5校に入学した下宿生は1日当たり752円の仕送りでやりくりしているとの調査結果を、京都私立大学教職員組合がまとめた。千円を下回ったのは6年連続で、1990年代のピーク時に比べ3分の1に落ち込んだ。頼みの綱のアルバイト収入も新型コロナウイルス禍で減っており、学生の厳しい懐事情が改めて浮かび上がった。

     調査は昨年5〜8月に実施。立命館大と同志社大、龍谷大、京都先端科学大、京都橘大に在籍ずる学生の保護者7276人から回答を得た。

     2021年度入学の下宿生への仕送りは月額7万7496円。。コロナ禍で過去最低だった20年度より3379円増えたものの、ピークだった1998年度(11万6223円)以降は減少傾向にあり、組合は「依然として低水準」とみる。

     家賃(月平均約5万5千円)を差し引いた1日当たりの生活費は752円。700円を下回った20年度に比べると59円の微増だが、過去最高は95年度の2337円で、社会情勢が異なるとはいえ、厳しい家計状況が続いているという。

     さらに学生のアルバイト収入も減っている。1〜4年生のいずれも20年度に比べて少なくなった。特に1年生の落ち込みが大きく、月平均3万6255円と、5279円減。組合は「1年生では飲食店を中心にそもそもバイト先を見つけられないケースもあるのではないか」と分析している。

     調査は1988年度から実施し、34回目。今後、国に奨学金の拡充などを求めていくという。

     京都イートルダム女子大は今年1〜2月、コロナ禍の学生生活に関する独白のアンケートを行った。

     全学生の約2割に当たる276入が回答し、うち半数以上が「経済的に困っている」とした。学費や通学費が負担になっているという声が目立った。

     休学や退学を考えている学生も33人いた。授業や友人関係、進路への悩みが多く寄せられたことから、同大学は学生課に「何でも相談窓口」を新設。田中麻也子課長は「学費の延納や奨学金の申請が増えている。一人で悩まずに気軽に相談してほしい」と話している。


    学生の生活費がひっ迫していることはコロナの影響もあって以前から指摘されていた。国際比較の上でも、日本の教育費に対する公的支出は少なく多くが家庭の負担となっている。「教育はお金で買うもの」との意識が醸成される素地を作っている。公的な支出が望まれるが、私大当局にもその責任はないのだろうか。昨年4月に発覚した田中日大前理事長の事件を見ると、肥大化する私学経営が本当に学生の側に立って行われているのかは疑問。大学教職員側からの告発があってもよさそうなものだが。


    5月7日 故上原康助氏 沖縄独立論の草稿発見

     沖縄選出の国会議員として初の閣僚を務めた故上原康助氏が、「沖縄独立の志」(仮題)と題する草稿を書き残していたことが6日、分かった。日本からの独立が法的に可能か検証し、米軍基地問題や経済政策なども幅広く考察した沖縄独立論で、「日本政府が納得する独立には一国二制度を選択するのが最も現実的だ」と見解を表明している。政権にも関わった政治家の独立論は、沖縄の在り方を考える上で貴重な資料となりそうだ。

     草稿は1997〜98年に書かれ、9割程度が完成にている。保管していた出版プロデューサーの岡村啓嗣さん(69)は「単行本として出版予定だったが、上原氏側から出版できなくなったと連絡があり、私の書斎に眠っていた」と話す。

     執筆したのは、95年に沖縄県で起きた米兵による少女暴行事件を契機に県民の反基地感情が高まっていた時期で、独立論が活気づいていた。

     草稿は5章で構成。@独立を論じる理由A独立の可能性B世界で独立を果たした小国家C上原氏の「沖縄国創り」試案D基地問題と経済的自立−がテーマとなっている。

     日本との関係を全面否定する独立論ではないと強調した上で、独立を宣言すれば内乱罪に問われる可能性が高く、現行法制下での実現は困難と分析。現実的な選択肢として「一国二制度のもとでの経済的自立と大幅な自治権を持った部分的独立が第一歩となるだろう」と提言している。

     上原氏は97年2月の衆院予算委員会で「沖縄が独立する場合、どういう法的措置が必要なのか」と質問し、日本と沖縄の関係に一石を投じた。質問への反響が大きかったため、独自に資料を集めて研究を重ね、自身の考え方を書籍で表明するつもりだったとみられる。

     上原氏の長男康司さん(60)は「独立論という理論武装を試みたが、県民の分断につながりかねないと危惧し、出版に至らなかったのではないか」と推察している。

     上原氏は日本復帰前の70年、沖縄で戦後初めて行われた国政選挙に社会党公認で立候補し、衆院議員に初当選。93年の細川連立政権で国土庁、沖縄開発庁、北海道開発庁の長官に就任した。2000年に政界引退。17年8月、84歳で死去した。


    前泊沖縄国際大教授現実味のある提言だ

     独立のステップを慎重に検討した現実味のある提言になっている。日本政府の政治手法や、政権との距離感をよく知る上原氏だからこそ書けた内容だ。若い世代にとって沖縄は初めから日本の一部で、次第に独立論は薄れてきているが、25年前に出版されていたら大きな反響があっただろう。経済政策や地方自治の在り方にも検討を加えており、琉球独立学会などで現在議論されている独立論を先取りしている。ただ、一国二制度では対象が沖縄だけに限定される。日本の他地域を巻き込んだ運動に結びつけるには、一国多制度を唱えた方がよかったと感じる。


    【解説】本土の問題意識風化懸念

     故上原康助氏が沖縄独立論を執筆したのは今から四半世紀前、沖縄が日本に復帰して満25年を迎えたころだ。当時は米兵少女暴行事件や米軍用地特措法の改正など、沖縄を取り巻く厳しい現実に多くの日本国民が関心を寄せていた。だが、上原氏は本土の意識はいずれ薄れることを懸念し「沖縄問題への関心を持続させる求心力のある目標が必要だ」と草稿に記している。それが「独立論」だった。

     文面から伝わってくるのは、独立を果たそうという気概よりも「沖縄の諸問題に真剣に取り組もうとしない日本政府」にいらだち、独立論という“切り札”に活路を見いだそうとする姿勢だ。

     沖縄の独立について、衆院予算委員会で質問した1997年2月13日。東大近代日本法政史料センターに保管されている上原氏の手帳には「やはり不十分だった。問題点をしぼらんと」との書き込みが残されている。

     沖縄が72年に復帰する際、上原氏は賛成の立場を取った経緯があり、県民から「いまさらおまえが独立を語るのか」と厳しい批判も受けていたという。質問の意図がうまく伝わらなかったもどかしさが、執筆の動機になったとみられる。


    かつて『琉球弧独立と万類共存』(太田竜) という本が出版されたことがよみがえる。その本の評価は別にして未だに本土の姿勢は当時から進展していない。辺野古基地が完成しても「使い物にならない」との話もあるように本土政治の人身御供に沖縄が利用されている姿は当時と同じだ。


    5月12日 府教委 子ども学力伸長 把握へ新テスト

     児童生徒一人一人の学力が毎年どれだけ伸びたかが分かる新たな学力テストの導入を、京都府教育委員会が府内の小中学校(京都市を除く)で計画しているタブレツト端末などコンピューターで解答する仕組みも採り入れ、来年度からの導入を目指す。府教委は「個々に合った指導に生かしたい」としている。

     新テストは、毎年問題が異なっても結果を比較でき、英検などにも使われる「IRT」という統計的理論を活用する。問題ごとに難易度を設定し、総合的な学力を測る。例えば「小学4年では算数のレベルが7−Aだったが、5年では8−Bに上がった」などと評価できる。

     学びに向かう姿勢や粘り強く問題を解く力といった「非認知能力」を見る問題も出し、毎年の伸びを把握できるようにする。

     テストは、端末で主に選択式で解答する「CBT」方式にする。採点が早くでき、紙の学力テストでは数力月掛かっていた返却が1力月程度に縮まるという。対象は小学4年〜中学3年で、本年度中に計30校で実証研究を行う。結果を踏まえて、来年度からの全校導入を目指す。

     府教委は長年、小学4年と中学1、2年を対象に独自の学力テストを行ってきた。全国の学力テストでは府は点数としては上位だが、より児童生徒が自らの伸びを実感し、学ぶ意義を感じられるようにするため、新テストに切り替えることにした。

     同様の統計理論を用いたテストは、埼玉県が先行しているが、端末も活用するのは珍しいという。

     府教委は「これからの時代は社会に出ても学び続けることが求められる。自分の強い部分や弱い部分を把握し、主体的に勉強を頑張れるようにしたい」としている。


    タブレット端末、授業に変化

     アップルやグーグルといった米巨大ITが日本の学校現場で授業内容や教員の働き方を大きく変えている。児童生徒に1人1台端末を配備する政府の「GIGAスクール構想」で、先進国の中で遅れていた教育現場の端末整備は今や「世界トップ級」(グーグル幹部)に改善しているという。

     「『金稼ぎ』は言葉遣いが悪いと思う」「『もうけを得る』はどうかな」。今年3月、東京スカイツリーが近くにある東京都墨田区立錦糸中学校1年の地理の授業。生徒はグループに分かれ南米の地域経済などの特色を紹介するニュース番組を楽しそうに作っていた。

     使用していたのはアップルのタブレット端末「IPad(アイパッド)」だ。キャスター役の生徒は原稿を文書作成ソフトで表示しながら朗読し、ほかの生徒が別の端末のカメラで録画する。教員が一方的に話をする授業ではなく、生徒が共同作業で課題に取り組む。

     社会科の古賀隆一郎教員は「端末を使う授業は生徒の意欲が高まる。自分で調べたり、班員と対話したりして学びも深まる」と効果を語った。

     グーグルのアンケート作成や分析サービスを定期試験に活用している千葉県の船橋市立飯山満中学校。理科の試験では端末入力か、従来通りの用紙記入かを選べるようにした。生徒の大半は端末入力を選び、アンケートで9割超が「やりやすかった」と答えた。

     教員側の負担も軽くなった。これまで5クラスの試験の採点に5時間かけていたが「5分の1程度に短縮し、早く帰宅できる」 (理科教員)。生徒に間違えた問題だけ個別に解説などを示すことができ、試験後の授業で全問を解説しなくて済むようになった。

     グーグルの端末が配備された高知市立浦戸小学校の藤田由紀子校長は「こんなに劇的に変わるのは(これまでのキャリアで)なかった」と驚く。教員側の情報通信技術(ICT)の習熟度は個人差が大きく、当初は苦労したという。

     浦戸小では20代の若手教員が講師役となって研修会を毎週開き、授業での活用方法を共有している。「これからは端末を使えない と、学校教育をやっていけない」(藤田校長)と、現場の危機意識は強い。

     IT企業側は大きなビジネスチャンスになった。教育市場は、若い世代に自社製品に慣れ親しんでもらうことで「未来の顧客」(米メディア)の開拓も期待できる。グーグルのピチャイ最高経営責任者(CEO)は昨年5月の開発者会議の基調講演で、初等中等教育市場でグーグル端末が世界首位だと説明し、日本での成功事例に言及した。

     文部科学省は端末1台当たり最大4万5千円を補助。昨年7月末時点で96%の自治体で整備が完了した。端末の基本ソフト(OS)別のシェアは台数ペースでみると、グーグルが4割と最大で、マイクロソフト、アップルが各3割だった。日本を参考にしたとみられる端末の整備政策はシンガポールや韓国などにも波及した。


    学習に変革「創造性高めて」

     米グーグルの教育事業でアジア太平洋地域のマーケティング責任者を務めるスチュアート・ミラー氏に、日本市場の見方を聞いた。

     ―教育事業に力を入れる理由は。

     「誰もが素晴らしい学習体験を享受すべきであると考え、教育と学習の変革を支援するツールを開発した。一人一人に最適化された環境を提供できるし、共同作業を通じて創造性も高められる」

     ―政府の「GIGAスクール構想」で、自治体が調達した端末の基本ソフト(OS)別のシェアは、グーグルの「クロームOS」が首位だった。

     「(教育機関は)ITの分析・表現力が高い人ばかりではない。教員の不安に応えるため、無償研修を手厚く提供した。海外での成功事例を伝えたことも好評だった」

     ―グーグルの収益源は広告だが、教育事業は。

     「教育向けツールでは広告を表示しない。無償版のほか、有償版がある。端末の「クロームブック」はメーカーから一定のライセンス収入を得ている」

     ―日本の課題は。

     「教育現場での端末普及は、日本が世界首位になったと言ってもいい。ただ、経験は浅い。端まがあるからと言って何かが変わるわけではなく、活用して初めて変化が起きる。学校の先生による端末やツールの活用アイデアを公開し、共有できるようにした」


    OSのシェアーでグーグルが4割をしめる。とりわけ「クロームブック」はほかの端末に比して安価だ。高校での導入に伴う保護者への負担も少ない。端末を利用した教育はかなりの利用価値があり、新たな教育の展開が期待できるものである。しかし、それを使って何をするのかというメタレベルでの教育論が必要。しかし、現場でそうした議論に費やしている時間がないのも「経験は浅い」との指摘になるだろう。また、グーグルにおいて顕著なのだが、クラウド上でのソフト(アプリ)起動を前提にしていて学習過程などすべてがOS提供者の手中に入るという点は注意が必要。「ハイブリッド戦争」と呼ばれるロシアのウクライナ侵攻で、両国のプロパガンダを目の前にしているとICTの危うさが一層際立つ。


    5月12日 コロナ禍 調査 うつ症状の子 1〜2割

     新型コロナウイルスの流行が子どもの生活や健康に与える影響について、国立成育医療研究センター(東京)が調査したところ、小学校高学年から中学生の子どもの1〜2割にうつ症状が見られたことが5日分かった。家庭内で抱え込む傾向も浮き彫りになり、担当者は「正しく理解し、SOSを出してほしい」と呼びかけている。

     調査は2021年12月、無作為抽出の郵送と任意のインターネットで実施。小学5年生から中学3年生の子どもとその保護者計約5400人から回答を得た。

     その結果、郵送では小学5〜6年生の9%、中学生の13%に中等度以上のうつ症状が見られた。インターネットでは小学生13%、中学生22%と高くなった。

     また、自分にうつ症状が出ても「誰にも相談せず自分で様子を見る」と答えた(郵送調査)のは、小学5〜6年生で25%、中学生で35%と、学年が上がると抱え込む傾向があった。保護者への郵送調査では、自分の子どもにうつ症状が出た場合「病院は受診させず様子を見る」が29%だった。

     同センターの森崎菜穂社会医学研究部長は「コロナ禍の長期化でストレスが高い状態が続き、保護者も余裕がない可能性がある」と指摘。いらいらしている、朝起きられないなどサインに気付いたら「まずは子どもの話を聞くことが大切だ。必要と感じたら、保護者はためらわず相談や受診をさせてほしい」と話している。


    「変化感じたら対応を」

     新型コロナウイルス禍の長期化は、子どもたちの心にも影響を与えている。制限のある生活を強いられ、家で過ごす時間が長くなる中で「家族に悩みを理解してもらえず行き場がない」など家庭に関する悩みが増えているという。支援団体は「自分の子どもは大丈夫だと思っても、変化を感じたら手を差し伸べてあげてほしい」と訴える。

     「マスクをしているので表情が分からず、新しい友達と仲良くなれているのか分からない」「行き場がない」―。18歳までの子どもの相談を受け付ける全国68団体の運営をサポートするNPO法人「チャイルドライン支援センター」(東京)によると、新型コロナ関連の相談は現在も一定数を占める。2年前は「自分や家族が感染しないかどうか心配だ」と感染症そのものの相談も多かったが、最近は人間関係を巡る相談が目立つという。

     小林純子代表理事は「いじめなど、学校に関する相談は減った印象だが、精神的なつらさを訴える子が多くなった」と分析する。チャイルドラインは電話、インターネット上のチャットで相談を受け付けている。コロナ禍どなり相談員が返信をしない「つぷやき」の投稿欄をつくったところ、24時間つぶやけるためか書き込みが相当多いという。

     コロナ禍では雇用が不安定になるなど、大人も余裕をなくしているケースが想定される。小林さんは「精神的な不調の影響は、何年もたってから表れることもある。親も大変な時期だが、子どもの一生に関わることなので、変化を感じたら対応してほしい」と話す。

     国立成育医療研究センターによると、子どもの不調は@眠れない、朝起きられないA学校に行きたがらないBいらいらしているC体の調子が優れないD集中できない―といったことに表れるという。森崎菜穂社会医学研究部長は「どう対応したらいいか分からない保護者も多く、保護者や子どもがアクセスしやすい相談先を増やすことが急務だ」と指摘。「行政や医療側は、スクールカウンセラーや、心の問題を相談できる身近な小児科医などを増やす必要がある」と話している。


    COVID-19の感染拡大は社会に大きな変化をもたらしているとの指摘は随所でなされている。おそらくこれまでの世界観を、ウクライナ戦争と併せて考えれば、大きく変えることになるはず。とりわけ経済の「成長」を至上目標とする資本主義のパラダイムの変換が求められているのだろう。しかし、旧態然とした家族観、国家観に囚われている現在の政治に展望はあるのだろうか。


    5月5日 総務省 子ども41年連続減少

     総務省は4日、外国人を含む14歳以下の子どもの数は前年より25万人少ない1465万人で、41年連続で減少したと発表した。「こどもの日」にちなみ4月1日時点の人口推計から算出した。総人口に占める割合もO・1ポイント下がって11・7%となり48年連続で低下。いずれも比較可能な1950年以降の最低を更新した。少子化は一段と進み、新型コロナウイルスの感染拡大による出産への不安が拍車をかけた可能性もある。

     内訳は男子751万人、女子715万人だった。3歳ごとの年齢層別は12〜14歳が323万人で、年齢層が低くなるにつれ人数も少なくなり、0〜2歳は251万人。出生数が年々少なくなっている実情を反映している。

     子どもの数は54年の2989万人をピークに減少へ転じ、第2次ベビーブーム(71〜74年)前後に増えたものの、82年から再び減り続けている。

     国連人口統計年鑑を基に人口4千万人以上の35力国を比べたところ、調査時点は異なるものの、日本の子どもの割合はイタリアの12・9%、韓国の11・9%を下回り最も低かった。

     昨年10月1日時点の詳しい集計によると、子どもの数は全ての都道府県で前年より減った。都道府県ごとの人口に占める割合は沖縄県の16・5%が最も高かった。最も低いのは秋田県の9・5%。次いで青森県10・4%、北海道10・5%だった。京都府は11・3%、滋賀県は13・4%。

     子どもの数が全ての都道府県で前年を下回ったのは99年10月以来。東京都は2010年10月以来の減少となった。



    5月2日 世論調査 「不戦」9条理由76%

     日本が戦後、海外で武力行使をしなかったのは「憲法9条があったからこそだ」と回答した人は76%に上った。「他の要因があったからだ」は21%。9条改正の賛否については男性が「必要」59%、「必要はない」40%だったのに対し、女性は必要42%、不要56%で温度差が見られた。

     武力行使をしなかった理由を巡り、昨年行った郵送調査の同趣旨の質問と比べて「9条があったから」は9ポイント増。憲法が掲げる平和主義の実現に9条が大きく関わっているとの国民の意識がうかがえる。

     「9条があったから」との回答は、年代が上がるほど割合が高かった。若年層(30代以下)は73%、中年層(40〜50代)は75%、高年層(60代以上)は80%だった。

     主な政党の支持層別では「9条があったから」と答えた割合が最も高かったのは共産党支持層で96%。立憲民主党85%、公明党82%などだった。「他の要因があったから」は自民党支持層の26%が最多だった。「支持する政党はない」とする無党派層は、9条があつたから77%、他の要因があったから21%となった。

     9条の改正賛否について、支持政党別に見ると、改正の必要があるとの回答は自民支持層の64%が最も高く、日本維新の会の62%が続いた。改正不要は共産83%、立民72%、公明60%など。無党派層は必要43%、不要56%だった。

     改正が必要と回答した人に理由を問うと、「日本を取り巻く安全保障環境の変化」が74%で最多。改正不要の理由については「憲法の平和主義が崩れる恐れがある」が53%で最も多かった。


    【解説】「危機」論議世論冷静

     憲法施行75年の世論調査で、岸田文雄首相が目指す憲法改正の機運は「高まっていない」との回答が多数を占めた。自民党などは新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻といった「危機」を挙げて改憲論議の進展を狙う。こうした危機を奇貨とするかのような議論について、世論は冷静に見ている実態が浮かんだ。

     首相は昨年「国会の議論と国民の理解は車の両論だ」として、衆参両院憲法審査会での議論促進を要請した。9条改正など自民党改憲案4項目は「極めて現実的な課題だ」とし、党総裁任期中の改憲に意欲を示す。

     調査で、緊急事態条項新設は7割前後が賛成した。一定の理解が進んでいるとみられるが、国会で改憲論議を急ぐ要否はほぼ同数。9条改正も賛否が拮抗した。安倍晋三元首相は在任中、年限を区切って改憲論議をけん引しようとしたが、国民に慎重論が広がった。岸田首相も議論を急げば、国民は離反するだろう。

     調査では臨時国会召集要求に対する召集期限の設定や、同性婚容認などが多数に上った。自民党が俎上に載せていない憲法上の論点だ。「憲法は国民のもの」(首相)であるのならば、押し付けるような改憲論議だけでなく、国民の声に沿った憲法議論も求められる。


    この世論調査が国民の意識を反映しているとすれば、「改憲派」が声高に言うほど改憲の必要性があるわけでもない。国防の議論よりも国防予算をGDPの2%にするということが改憲の狙いであるなら、戦争によって儲かる層が存在するということであり、その代弁者が「改憲派」ということになる。


    5月1日 ウトロ 平和祈念館が開館

     太平洋戦争中に京都飛行場建設に携わった朝鮮人労働者の子孫らが暮らす宇治市伊勢田町ウトロ地区で30日、地区がたどった歴史を通して多文化共生を訴える「ウトロ平和祈念館」が開館した。多くの人が訪れ、長年待ち望んだ施設に住民らは喜びをかみしめた。

     同地区は終戦後も多くの朝鮮人が定住したが、インフラ未整備で生活は厳しく、民族差別もあった。土地所有企業による明け渡し訴訟が長年続き、2000年に住民側の敗訴が確定。一方で、10〜11年に支援者や韓国政府が出資した財団が地区東側の土地を購入し、住民が暮らせる市営住宅が新設された。祈念館も土地の一角に財団が建設した。

     祈念館は、地区の歩みを伝える写真や日用品など約100点を並べる。訪れた京都市南区の男性(45)は「苦しい生活だっただろうが、住民の笑顔の写真が多いのが印象的」と話した。6歳から地区に暮らす在日2世の韓金鳳(ハングンボン)さん(83)は「立派な施設ができ、うれしい。住民と来館者の交流がずっと続く場所になってほしい」と願った。

     開館式には関係者ら約100人が出席し、田川明子館長(77)が「館のコンセプトは『ウトロに生きるウトロで出会う』。若い人にも来てほしい」とあいさつ。駐大阪韓国総領事館の趙成烈(チョウソンリョル)総領事は「韓国と日本の市民が力を合わせることで新しい未来をつくれる可能性を示してくれた」とし、松村淳子宇治市長も「多くの人が人権について考え、平和を願う場になれば」と述べた。


    昨年の放火事件を経て開館に至ったことは日韓の友好に面からも喜ばしい。すでにクラウドファンディングは終了しているが、民間の支援の様子が分かる。ロシアのウクライナ侵攻を奇貨として、防衛費の積み上げを図る自民党の歴史修正主義を乗り越える外交の在り方を考えるものとしても評価できるだろう。