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ウクライナ30日間停戦同意(2025/3/13)

ロシア、米停戦案難色(2025/3/15)

ロシアペース鮮明に(2025/3/20)

米が原発所有要求検討(2025/3/22)

平和維持部隊中国が参加か(2025/3/24)

名ばかり合意、和平遠のく(2025/3/27)

米反応に不満(2025/4/7)

中国人2兵士拘束(2025/4/10)

欧州部隊展開構想(2025/4/15)

非協力なら仲介「やめる」(2025/4/20)

「復活祭停戦」不発(2025/4/22)

成果急ぎ「最終提案」(2025/4/24)

領土交渉より停戦先決(2025/4/26)

「前提条件なしで会談用意」(2025/4/27)

北朝鮮、戦闘参加を公表(2025/4/29)

米ウクライナ 鉱物協定署名(2025/5/1)

欧州、12日停戦開始要求(2025/5/11)

3年ぶり交渉 最終調整(2025/5/16)

米仲介「新たな挫折」(2025/5/21)

侵攻後最大規模 捕虜交換始まる(2025/5/25)

停戦巡り立場の相違鮮明(2025/6/3)

新たな州侵攻 ロシア軍主張(2025/6/10)

ロ軍基地 中国兵訓練へ(2025/6/26)


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ウクライナ30日間停戦同意(2025/3/12 京都新聞)

【ワシントン、キーウ共同】米ウクライナ両政府は11日、サウジアラビア西部ジッダでの高官協議後に共同声明を発表し、米国が提案したロシアとの30日間の一時停戦をウクライナが受け入れたと表明した。ロシアとの同時実施が条件としており、停戦実現はロシアの対応が焦点となる。米国は一時停止していたウクライナへの軍事支援と機密情報提供を再開した。(以下略)


【表層深層】停戦実現へ なお曲折

 トランプ米政権がウクライナからロシアとの一時停戦案に同意を取り付けた。首脳会談決裂を受け、軍事支援停止という切り札を行使し、ウクライナを窮地に追い込んだ「豪腕」極まる交渉姿勢は危うさも。隙を突いて圧倒的な軍事的優勢を固めたロシアの出方は不透明で、3年以上に及ぶ戦闘で初めてとなる停戦の実現には、なお曲折が予想される。

 「和平に向けた軌道に再び乗ることができた」。サウジアラビア西部ジッダでの約8時間に及んだ高官協議終了後、ルビオ米国務長官は記者団に対し、トランプ大統領が主導する外交努力の成果だと強調した。

 侵攻するロシアよりも先に、攻め込まれるウクライナが停戦案の受け入れを迫られた。イエルマーク大統領府長官らの表情には硬さが目立ち、苦しい立場を印象付けた。

 2月末の米ウクライナ首脳会議決裂から10日余り。トランプ氏はウクライナへの軍事支援や機密情報提供の一時停止といった前例のない措置に次々と踏み切った。頼みの綱だった米国の支援を失ったウクライナはロシア軍の猛攻を止められず、敗走を重ねた。米支援の重要性を強引に再認識させるような対応には非難の声が上がる。

 米国の一時停戦案は「全ての前線における完全な停戦」(ウクライナのゼレンスキー大統領)だとみられる。これまでゼレンスキー氏は、ロシアに再軍備や武器生産の時間を与えるとして一時停戦に否定的だった。だが今は兵員不足が深刻で戦況も劣勢。拒否する余裕はなかった。

 首脳会談でトランプ氏の怒りを買ったウクライナにとって、米国の支援再開につなげることが「最大の狙い」(ウクライナ高官)だったという事情もある。

 ただロシアが応じる余地は乏しい。「紛争解決は短期間の停戦や再軍備のための小休止が目的であってはならない」。プーチン大統領は1月、安全保障会議で強調した。

 昨年8月から越境攻撃を受けるロシア西部クルスク州では今月、ロシア軍がウクライナ軍の背後を突く奇襲作戦に成功。劇的に領土を奪還し、ウクライナ軍をロシア領外に追いやる好機が到来している。

 一方的に併合したウクライナ東部・南部4州からのウクライナ軍撤収や、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟放棄など、ロシアが掲げる和平交渉入 りの条件は揺らがない。口シアに融和的なトランプ氏の姿勢を利用し、侵攻目的の完遂を目指す。

 トランプ氏は週内にプーチン氏と対話する意向を示し「同意が得られれば(和平への)道程の75%は達成できる」との楽観論を示した。残りは合意文書作成と、 ロシア占領地域の帰属を巡る交渉だけだと大見えを切る。

 ロシアとの交渉では経済制裁や関税発動をちらつかせつつ、一時停戦実現に向け譲歩を迫る構えだ。ただ就任以降、ロシアにほぼ圧力をかけておらず、成功す るかどうかは未知数だ。

 米紙ワシントン・ポストは社説で、トランプ氏の対口外交は「戦略なき戦術」であり、長期的な展望に欠けていると批判。正当な理由なくウクライナを売るの は「最も恥ずべきことだ」とも指弾した。(ワシントン、キーウ、モスクワ共同)


欧州首脳が歓迎表明

 ウクライナが米提案の口シアとの一時停戦を受け入れたことに対し、欧州連合(EU)や欧州各国の首脳らは歓迎の意を表明した。「ボールはロシア側にある」 とも強調、ロシアに停戦実現に協力するよう求めた。

 スターマー英首相はトランプ米大統領とウクライナのセレンスキー大統領が「画期的な進展を成し遂げた」と評価した。イタリアのメローニ首相も「米国の努力を全面的に支持する」とした。

 EUのフォンデアライエン欧州委員長は「ウクライナにとって公正で永続的な平和に向けた一歩となる」と表明。ウクライナの隣国ポーランドのトゥスク首相 は「欧州は公正で永続的な和平の実現を支援する用意がある」と強調した。

 ロシア側に対応を求める意見も目立った。フランスのマクロン大統領は「ボールは今や明らかにロシア側にある」と指摘し、ドイツのベーアボック外相は「侵略 戦争を終わらせるのはロシア次第だ」とロシアに停戦に応じるよう呼びかけた。


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ロシア、米停戦案難色(2025/3/15 京都新聞)

【モスクリ、ワシントン共同】ロシアのプーチン大統領は13日、卜ランプ米政権が提示したロシアとウクライナの一時停戦案について「戦闘停止には賛成だが、 長期的な平和や紛争の根本的な原因の除去につながるものでなければならない」と述べた。停戦実現には議論が必要な多くの問題が残っていると指摘し、即時に受け入れることはできないとの立場を示した。停戦には条件が伴うと主張した形で、早期の実現は困難とみられる。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は13日「反応は予想通りだ。けっきりノーとは言わず決断を先送りしている。ロシアには戦争が必要でり、停戦を拒否する準備をしている」と批判した。

 プーチン氏は、ウクライナが停戦期間を武器入手や兵士動員に利用よる可能性があると懸念も表明した。「根本的な原因の除去」について具体的な説明はなかったが、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題などとみられる。

 トランプ大統領は13日、一時停戦に関し「ロシアが正しいことをすると望む」と述べ、停戦に応じるよう改めて求めた。プーチン氏の発言は「とても期待が持 てるが、完全ではない」と指摘した。

 プーチン氏は、ベラルーシのルカシェンコ大統領とクレムリンで会談後の記者会見で語った。トランプ氏らの停戦に向けた尽力に謝意を示し「平和的な手段で 紛争を終結させる考えを支持する」と強調した。一方、約2千キロに及ぶ戦線での停戦違反の認定方法など綿密な検討が必要になると述べ、今後、トランプ氏らと話し合う必要があると説明した。


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【表層深層】>ロシアペース鮮明に(2025/3/20 京都新聞)

 米口両首脳は18日の電話会談で、ロシアとウクライナ双方の30日間のエネルギー施設攻撃停止で一致するにとどまった。早期和平を公約に掲げるトランプ米大統領が望んだ結果には、ほど遠い。ロシアのプーチン大統領は前進感を演出したいトランプ氏につけ込み、メンツを立てながら実利を獲得。戦場で優位に立つロシアが交 渉でもペースを握る状況が鮮明になった。ウクライナは蚊帳の外に置かれまいと米口主導の展開に割って入るのに必死だ。

 「素晴らしい電話会談だった。2時間近く続き、和平に向けて多くのことを話し合った」。トランプ氏は18日、FOXニュースのインタビューで、言葉とは裏腹に神妙な面持ちを見せた。多くを語らず、乏しい成果への落胆もにじませた。

 トランプ氏は今回、軍事支援を停止して戦場で窮地に追い込んでまで強引にウクライナに受け入れさせた30日間の停戦案を引っさげ、プーチン氏との協議に臨んだ。前日には全面停戦を「実現できる」と豪語していたが、ふたを開けてみれば、あっさり一蹴された。

 ロシアにのませたのがエネルギー施設への攻撃停止だけならトランプ氏の「譲歩と言える」(米メディア)。プーチン氏は米国の停戦案を巡っても、ウクライナへ の外国の軍事支援や偵察情報の完全停止といった新たな受け入れ条件を提示し、ハードルを上げた。

 電話会談は大国ロシア復活を目指すプーチン氏が米大統領と対等に渡り合う姿を示す場にもなり、米紙ワシントン・ポストは「超大国の地位」回復に向けて一役買ったと皮肉った。

 エネルギー施設への攻撃停止はロシアにも実益がある。ウクライナ軍の無人機攻撃で多数の製油所炎上などに見舞われており、今回の合意は渡りに船だ。ロシア国内の重要インフラを狙った無人機攻撃は、ウクライナの数少ない有効打だった。

 ロシア紙コメルサントによると、プーチン氏は電話会談直前の会合で、ウクライナ東部・南部4州とクリミア半島の返還意思はなく、ロシア領と認められればさらなる領土要求はしないと参加者に述べた。占領地を巡り譲歩の気配は一切ない。

 米クレアモント・マッケナ大のヒラリー・アペル教授(ロシア政治)は今回の電話会談では「ロシアが戦争終結を全く望んでいないことが示されただけ」と指摘する。

 プーチン氏は自身に融和的なトランプ氏をいなしながら攻撃を続け、占領地拡大やロシア西部クルスク州からのウクライナ兵排除などを狙う。

 ウクライナ政府内では早期停戦への道が事実上閉ざされたとの失望が広がった。最も重視した戦争終結後の「安全の保証」や領土問題を棚上げしてまで、米国の停戦案を受け入れる賭けに出たのに、ロシアは妥協を拒み、実質ゼロ回答だった。

 トランプ氏はプーチン氏の巧みな外交戦術に引き込まれつつある。23日にはルビオ米国務長官らが参加する米口高官協議がサウジアラビアで開かれる。ウクライナのゼレンスキー大統領は「ウクライナ抜きの交渉は間違いだ」とくぎを刺した。(ワシントン、モスクワ、キーウ共同)


法政大溝口修平教授米ロ主導の図式確立

 今回の米口電話会談で、対面会談を実施するとの話は出ず、プーチン大統領は大きな決断をしなかった。全面的な停戦にはロシアが望む条件が出そろっていないということだろう。だが米口主導で停戦に向けた議論を進めるという図式を確認できたという点で、ロシアは今後より有利な条件での交渉が可能になる。

 一方、ウクライナは土俵の外からしか主張できなくなる恐れがある。停戦を目指すトランプ米大統領は、2月末に米ウクライナ首脳会談が決裂した後、強気に出ればウクライナを妥協させられるという確証を得た。

 最大の争点になっている「安全の保証」について、ウクライナが求める条件をロシアが容認する姿勢は見られない。戦場で優勢なロシアが和平交渉を焦る必要はない。交渉に前向きな姿勢を示しながら、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念を求め、平和維持部隊の派遣でも有利な条件を引き出そうとするだろう。 (共同)


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米が原発所有要求検討(2025/3/22 京都新聞)

【キーウ共同】英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は21日、米政府がウクライナと合意を目指す同国の鉱物資源開発協定に関し要求拡大を検討し、原発の米国所有の要求が含まれる可能性があると報じた。複数のウクライナ当局者の話としている。ウクライナ政府は原発の米国所有に反対しており、交渉は曲折が予想される。

 トランプ米大統領は20日、鉱物資源の共同開発に関する協定をウクライナと近く締結すると表明。詳細は明らかにしなかった。ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、全ての原発は「ウクライナ国家の所有物だ」と述べ、米国をけん制した。ロイター通信によると、ウクライナ外務省報道官は21日、交渉は継続中だとの認識を示した。

 ゼレンスキー氏は、19日のトランプ氏との電話会談でロシアが占領するウクライナ南部ザポロジエ原発が議題になったが「所有権は話し合っていない」と主張。

 「トランプ氏から『ザポロジエ原発の復旧に米国は関われるか』と聞かれ、投資は可能だと答えた」と説明した。同原発をロシアの支配から取り戻し、インフラ 整備を進めて復旧する構想を伝えたという。トランプ政権は「米国が原発を所有すれば、最善のインフラ保護策になる」としていた。

 また、報道によると、米代表団は24日にサウジアラビアでロシアとウクライナそれぞれの代表団と会合を開く。米国のウクライナ担当特使ケロッグ氏は米メデ ィアに、会合は別々に開かれ、ロシアとウクライナの代表団が同席することはないとの見方を示した。


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平和維持部隊中国が参加か(2025/3/24 京都新聞)

【キーウ共同】ドイツ紙ウユルト電子版は22日。口シアとの戦闘終結後のウクライナに英仏主導の有志国連合が平和維持部隊を派遣する計画について、中国が参加を検討する姿勢を示していると報じた。欧州連合(EU)外交筋の話としている。

 ウェルトによると、ブリュッセルに駐在する中国の外交官が欧州側に対し、中国の平和維持部隊参加は考えられるか、または望ましいかなどを打診したという。EU外交筋は中国の参加により、ロシアが平和維持部隊を受け入れる可能性が高まるとの見方を示した。

 米ブルームバーク通信によると、ロシアは中国など中立国による部隊派遣には反対しない方針。


ウクライナ、防空兵器枯渇

【キーウ共同】ロシアの侵攻を受けるウクライナの防空兵器が枯渇しつつある。トランプ米政権がウクライナへの軍事支援を一時停止し、ロシアは空爆を激化。迎撃弾の不足に拍車がかかった。米国の支援は再開したものの、今後も鈍化は避けられない。ウクライナは欧州の供与に期待するが、防衛に十分な量を確保するのは難しい情勢だ。

 トランプ政権は2月末の米ウクライナ首脳会談決裂後、防空兵器を含む全ての武器供与止めた。直後の今月6〜7日、ロシアは約70発のミサイルと約190機の無人機で全土を攻撃。米シンクタンク、戦争研究所は「ロシアはウクライナの防空システムの弾切れを狙った」と分析した。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は「防空ミサイルの在庫はかなり厳しい。今後も不足が続くだろう」と危機感を隠さない。

 ウクライナ空軍などによると、同国はロシア軍の極超音速ミサイルを撃墜できる防空システム「パトリオット」を6基程度所有。詳細な配備状況は機密扱いだが、首都キーウ(キエフ)周辺の重要インフラの防衛には欠かせない。

 米メディアによると、パトリオットから発射する迎撃弾は1発約400万ドル(約6億円)と極めて高額だ。バイテン前米政権が約90発をイスラエルからウクライナに移送することを決めたと1月に報じられたが、それ以降、追加供与の情報はない。空軍は「数力月後には在庫が尽きる」と説明する。

 ウクライナは、パトリオットに近い性能を持つフランスとイタリアが共同開発した「SAMP/T」も所有する。だがイタリアメディアによると、迎撃弾の備蓄は既にほぼ尽きた。ウクライナ政府はイタリアとフランスに追加供与を求めたが、めどは立つていないとみられる。


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名ばかり合意、和平遠のく(2025/3/27 京都新聞)

 米国が仲介したロシアとウクライナの黒海停戦「合意」で、米口の発表に大きなずれが露呈した。成果を急ぐ米国の足元を見たロシアは受け入れ条件に制裁緩和を突き付け、要求をつり上げた。無条件の合意履行を望むウクライナは反発。「名ばかりの合意だ」(西側外交筋)との声も上がり、和平実現は遠い。

 「多くの進展があった」。トランプ米大統領は25日、ロシアとウクライナの協議は着実に進んでいると記者団にアピールした。前のめりな姿勢が目立つが、公約に掲げてきた終戦のめどを付けられないのが実情だ。

 米ホワイトハウスはロシアとウクライナと個別にサウジアラビアで協議した内容を別々に発表した。黒海での武力行使排除に合意したとするが、詳細は示されなかった。

 ロシアとの協議に関する発表には「口シアの農産物と肥料の輸出再開に向け決済システムへのアクセス強化を支える」と表明し、ロシアが求める制裁緩和に理解を示すような姿勢をにじませた。

 米紙ニューヨーク・タイムズは米国がロシアから大きな譲歩を引き出せなかったばかりか「見返りをほとんど得られないのに、少なくとも(制裁緩和の) 一部に同意したようだ」と指摘した。

 ロシア大統領府は、米政府の発表から約1時間後、米側にはない合意履行のための「5項目の条件」を盛り込んだ文書を出した。ロシアは「最大限の要求」 (米メディア)で駆け引きし、トランプ氏から譲歩を引き出したい思惑とみられる。

 トランプ氏は記者団に検討する態度を見せつつも、米テレビではロシアが戦争を「長引かせようとしているかもしれない」とこぼした。ワシントンの外交筋は「戦場で優勢なロシアに対し、米国が停戦させるだけの影響力を行使できるかどうか分からない」と語った。

 黒海で停戦すれば、ロシアにとっても黒海経由の穀物や肥料の輸出が回復し、利点となる。停戦を急ぐ必要のないロシアが切りやすいカードで、ロシアのしたたかな外交戦術がうかがえる。交渉は口シアペースで進む。

 米口代表団が専門家らで構成される中、ウクライナはサウジに「格上」の国防相を派遣し、協議の主導権確保を狙った。攻撃停止対象をエネルギー施設だけ でなく、他の民間インフラにも拡大するよう求めたが、米国に一蹴された。

 ゼレンスキー大統領は今回の合意を停戦に向けた「第一歩」と評価しつつも、ロシアの制裁緩和要求などを念頭に履行に向けて「疑問が山ほど出るだろう」と語った。ある西側外交筋は「ここまで見解が食い違うと合意とは呼べない。和平進展を期待したが、肩すかしだった」と唇をかんだ。(キーウ、モスクワ、ワシントン共同)


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米反応に不満(2025/4/7 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、幼い子どもを含む多数が死傷した南部クリブイリフヘのロシア軍の攻撃を巡り、米国のブリンク駐ウクライナ大使がロシアを名指しで非難しなかったとして「あまりにも弱い反応だ」「不快なほどに驚いた」と不満を表明した。

 ロシア軍は4日、クリブイリフの住宅街にミサイルを撃ち、子どもら19人が死亡、70人以上が負傷した。ブリンク氏はX(旧ツイッター)に「恐怖を覚える。だから戦争を終わらせなければならない」と投稿したが、ロシアには触れなかった。


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中国人2兵士拘束(2025/4/10 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、東部ドネツク州で口シア軍の一員として戦闘に参加していた中国人兵±6人のうち2人を拘束し、捕虜にしたと発表した。中国政府に経緯の説明を求めたが、報酬目的の雇い兵との情報がある。ゼレンスキー氏は「他にも多くの中国人がロシア軍に加わっていることを示す情報がある」と主張した。

 中国外務省の林剣副報道局長は9日の記者会見で「中国政府は軍事行動への参加を避けなければならないと国民に一貫して求めている」と説明し、中国当局は関与していないとの立場を示した。

 ウクライナ政府高官は8日、2人について「雇い兵だ」と交流サイト(SNS)に投稿した。米ブルームバーク通信は8日、ウクライナ関係筋の情報として、2人は33歳と31歳の男性で中国政府の関与はなく、尋問対しロシア軍に兵士として雇われたと話していると伝えた。31歳の男性は200万ルーブル(約340万円)の報酬を約束するロシア軍のオンライン広告を見つけ、応募したという。

 ゼレンスキー氏は、中国人兵士を参戦させることで、ロシアのプーチン大統領が「戦い続ける方法を模索している」と非難。プーチン氏について、トランプ米政権が目指す停戦に応じる考えはないと訴えた。

 両手を縛られ、身ぷりを交えて尋問に答える中国人兵士とみられる人物の動画も公開。2人のパスポートなどを押収したという。


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ドニプロ川西岸に欧州部隊展開構想(2025/4/15 京都新聞)

【キーウ共同】ロシアとウクライナの間で和平が実現した後、欧州諸国がウクライナの安全を保証するため軍部隊を派遣する案を巡り、米国のウクライナ担当特使のケロッグ氏が14日までに、ドニプロ川の西側に英仏主導の有志国による部隊を展開させる構想を示した。英紙タイムズのインタビューに答えた。ロシアは外国軍のウクライナ駐留に反対しており、実現の見通しは不透明だ。

 ケロッグ氏は、ウクライナを南北に流れるドニプロ川の東側にはウクライナ軍部隊が展開し、ウクライナ東部や南部クリミア半島などのロシア占領地域には口シア軍がとどまる案を提示。現在の前線から両国軍が15キロずつ後退し、「非武装地帯」を設置して衝突を回避するという。

 有志国による部隊派遣を巡っては英仏が主導してウクライナと協議を重ねている。ケロッグ氏は米国が地上部隊を派遣する考えはないと重ねて強調した。ドニプロ川西側に有志国部隊が駐留する案について「ロシアにとって全く挑発的なものではない」と主張した。


北東部攻撃 死者34人に

【キーウ、ワシントン共同】ウクライナ北東部スムイ州の州都スムイ中心部に13日、ロシア軍による2発の弾道ミサイル攻撃があり、ウクライナ側によると、14日までに子ども2人を含む少なくとも34人が死亡し、約120人の負傷者が確認された。トランプ米大統領は攻撃を「ひどい」と非難し、自身が戦争終結に向けた和平交渉に注力していると改めて強調した。

 トランプ氏は「ロシア軍がミスを犯したと聞いている」と説明したが、詳細は明かさなかった。

 スムイ当局者は犠牲者を追悼するため14日から3日間の服喪を宣言した。13日の攻撃についてゼレンスキー大統領は、―発目が大学施設を直撃し、2発で計20の建物が被害を受けたと説明した。軍当局者によると、2発目は住宅や教育施設、商店が立ち並ぶ地域の上空で爆発。中に詰められた破片が散らばり、多数が死傷した。

 ロシア国防省は14日、スムイにあるウクライナ軍の会議場を13日に弾道ミサイル「イスカンデルM」2発で攻撃し、ウクライナ軍人60人以上を殺害したと主張した。


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非協力なら仲介「やめる」(2025/4/20 京都新聞)

【ワシントン共同】トランプ米大統領は18日、ロシアとウクライナの停戦交渉について、双方が協力せずに一方が困難な状況をつくり出せば、米国は仲介を「やめる」と述べた。仲介をやめる事態は「望んでいない」と表明し、早期の停戦と和平の実現へ両国に圧力を強めた。ホワイトハウスで記者団に語った。

 ブルームパーク通信は口シアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島について、米政府が口シア領として承認する譲歩案を和平合意の一環として検討していると報じた。

 ルビオ国務長官は17日、ロシアのラブロフ外相との電話で、早期に交渉が進展しなければ「数日以内」に仲介努力を断念するとのトランプ氏の意向を伝えた。トランプ氏は18日、数日以内の意味について「具体的な日数は考えていないが、早期に交渉をまとめたい」と記者団に述べた。

 トランプ政権は17日、ウクライナや欧州の同盟国に対し、恒久的な和平実現に向けた構想の概要を説明した。ブルームバークによると、実現した場合に計画する対口経済制裁緩和の条件を提示。ロシアが占領したウクライナ領はロシアの支配下に残す内容だという。

 米側は数週間以内に完全な停戦を実現したい考えで、近くロンドンで会合を開く。

 米政府は3月、ロシアとウクライナが互いのエネルギー施設への攻撃を停止することで双方と合意。しかし、双方とも相手が違反を繰り返していると非難し、合意は形骸化した。黒海での部分停戦も、ロシアが制裁緩和を求め、即時履行は難しい状況だ。


「復活祭停戦」不発(2025/4/22) ↑トップへ

「復活祭停戦」不発(2025/4/22 京都新聞)

 ロシアのプーチン大統領が突然表明したウクライナとの「復活祭停戦」は、双方の攻撃が相次いで失敗した。プーチン氏の一時停戦の「本気度」は疑問視され、仲介外交打ち切りをほのめかすトランプ米大統領をロシア寄りの立場につなぎ留めておきたいとの思惑がのぞく。米国頼みのウクライナは「ロシアが和平を妨げている」と不信感をあらわにした。

 「海外の『観衆』に働きかけたものだ」。ロシア国防省に近いロシアの軍事専門ブログ「ルイバリ」は停戦宣言の狙いはウクライナとの信頼醸成ではなく、和平への意欲を率先して示して外交的な立場を強めることだとの考えを示した。「観衆」の筆頭と目されているのがトランプ氏 だ。カーネギー国際平和財団シニアフェローのチャラメラ氏は米紙に、停戦宣言は「トランプ氏の好意を維持するための策略だ。プーチン氏が真剣ならば、ウクライナが既に同意したもっと長い停戦を受け入れたはずだ」と断じた。

 「戦争を長引かせている原因は口シアだ。それが証明された」。ウクライナのゼレンスキー大統領は復活祭停戦の期間中、停戦に応じる用意があると何度も表明した。米国が示した30日間の完全停戦を受け入れる立場を維持すると訴えた。ウクライナが対口批判を強めるのは、トランプ氏との関係改善が急務だからだ。和平交渉で少しでも有利な条件を得るには、米国の支援が不可欠。ロシア西部への越境攻撃は行き詰まり、ロシアの占領地域は拡大。戦況の厳しさによって米国依存が深まっている。

 トランプ氏は20日に就任3ヵ月を迎えた。戦闘終結目標は「就任6ヵ月以内」に下方修正したが、期限までの折り返し地点を過ぎても具体的な道筋は描けていない。西側外交筋は、米国が交渉停滞の原因についてウクライナとロシアのどちらにあるかを見極めていると指摘。「今後も一方的な停戦提案や攻撃停止命令など、米国へのアピール合戦が続く可能性がある」と推測した。(モスクワ、キーウ、ワシントン、東京共同)


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成果急ぎ「最終提案」(2025/4/24 京都新聞)

 ロシアとウクライナの和平実現に向け成果を急ぐトランプ米政権が今月、ウクライナに新たな和平案を示した。交渉停滞にいら立つトランプ政権は新案を「最終提案」と位置付けたとされる。合意に至らなければ、米国が仲介から離脱する選択肢をちらつかせて受け入れを迫っている。

 米ニュースサイト、アクシオスによると、和平案は1ページの文書。ロシアによるウクライナ4州の大部分の占領を事実上承認するなどの条項に加え、ロシアが占領する南部ザポリージヤ原発は米国が稼働させて、ウクライナとロシア側に電力を供給するなどの内容が含まれている。

 ロシアに極めて有利な内容と言え、ウクライナがそのまま受け入れるのは困難だ。ウクライナ関係筋はアクシオスに「ロシアが得るものは明確になっているが、ウクライナが得るものははっきりしない」と述べ、同案はロシアに肩入れしすぎていると不満を漏らした。

 ウクライナが求めている戦闘終結後の「安全の保証」については、欧州諸国を中心とした平和維持活動を想定しているものの、具体的な活動内容は曖昧で米国の参加は言及されていないという。

 ロシアは、クリミアを含むウクライナ国土の約2割を占領している。ゼレンスキー政権は、領土では妥協しない姿勢を維持している。(共同)


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領土交渉より停戦先決(2025/4/26 京都新聞)

【キーウ、モスクワ共同】ロシアとウクライナの和平交渉を巡り、欧州諸国とウクライナが米国に示した提案の詳細が25日、ロイター通信の報道で明らかになった。領土交渉よりも停戦実現が先決と主張し、米国による「強力な安全の保証」を要求する内容。ウクライナに領土譲歩を迫る米国の和平案への配慮がにじむ部分もあるが、依然として両案の開きは大きい。和平交渉の難航は必至。

 ウィツトコフ米中東担当特使は25日、モスクワでプーチン大統領と会談した。26日にはバチカンでのローマ教皇フランシスコの葬儀に合わせ、トランプ米大統領ら各国首脳が和平問題を協議する可能性がある。

 欧州とウクライナの提案は、ロンドンで23日に開かれた会合で米側に示された。

 ロシアがウクライナ東・南部4州の大部分を占領し、クリミア半島も併合した領土問題については「完全で無条件の停戦後に協議」すると明記。領土交渉は「現在の支配線に基づいて開始する」とし、ロシア占領地域を事実上承認するとの米和平案に配慮を示した。

 ウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)加盟について「同盟国間の合意が存在しない」とした上で、NATOの集団的自衛権に準じる「強力な安全の保証」の提供を米国に求めた。また、2014年以降の米国による対口制裁は、和平達成後に段階的に緩和される可能性があると指摘。ロシアが和平合意を破れば再び制裁を科すよう求めた。米国の支援を返済するための米ウクライナ鉱物資源協定の締結も盛り込んだ。

 トランプ氏は24日、ウクライナの首都キーウで12人が死亡したロシアの大規模攻撃を批判し、プーチン氏をファーストネームで呼び「ウラジーミル、(攻撃を)やめろ」とソーシャルメディアで訴えた。

 停戦交渉について「私は期限を設けている。それを過ぎれば全く異なる態度で臨む」と記者団に述べた。ロシアがこれまでに示した譲歩の内容を問われ「戦争をやめ、全ての領土獲得をやめること」とし「大きな譲歩だ」と強調した。


EU、ロ依存脱却へ工程表

【ロンドン共同】欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は24日、ロシア産の化石燃料の輸入を段階的にゼロにするための工程表を5月に示すと表明した。「われわれは敵対する勢力にはエネルギー資源をもう依存しない」と述べた。EUは、ロシア産の液化天然ガス(LNG)を米国産に切り替えることを検討しており、トランプ米政権との貿易摩擦緩和への効果も狙う。

 英政府と国際エネルギー機関(IEA)がロンドンで共催した国際会議で演説した。会議は25日まで開かれ、政府関係者らはエネルギーの安定供給や再生可能エネルギーの発展についても議論した。

 EUは、2027年までに化石燃料のロシアへの依存をやめる目標を掲げている。フォンデアライエン氏は、中東で石油タンカーが攻撃される事例などに触れ「エネルギー安全保障への脅威が世界的に深刻になっている」と指摘した。

 対策として「中期的には再エネの導入拡大が最良の手段だ」と説明。再エネを推進する上で欠かせない重要資源の安定調達に向けて、国際協調が必要だと訴えた。

 EUは、ロシアからの原油や石炭は輸入禁止を打ち出したが、依存度が高いガスの禁輸措置には踏み切っていない。


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「前提条件なしで会談用意」(2025/4/27 京都新聞)

【モスクワ共同】ロシアのペスコフ大統領報道官は26日、プーチン大統領が25日にトランプ米政権でウクライナ和平交渉を担当するウィツトコフ中東担当特使と会談した際に、ロシアはウクライナと前提条件なしで交渉を再開する用意があると述べたと明らかにした。タス通信が報じた。

 ロシアはこれまでウクライナのゼレンスキー大統領は任期の切れた非合法な大統領と主張。ウクライナにはロシアとの交渉を禁じた法律もあるとして問題視していたが、トランプ大統領の和平仲介を受けて態度を軟化させた可能性がある。

 ロシア大統領府によると、25日のプーチン氏とウイツトコフ氏の会談では、ロシアとウクライナの交渉再開の可能性について議論。直接交渉はロシアがウ クライナ侵攻を始めた直後に実施して以来、約3年にわたって途絶えている。


北朝鮮軍の参加をロが初めて認める

【モスクワ共同】ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は26日、ウクライナ軍が昨年8月から越境攻撃を続けてきたロシア西部クルスク州を完全奪還したとプーチン大統領に報告した。ゲラシモフ氏は、奪還作戦では北朝鮮軍の相当の支援を受けたと述べ、北朝鮮の参戦を初めて公式に認めた。

 ウクライナはロシア領の一部を制圧することで将来的な領土交渉の材料とする狙いだった。事実とすれば、ゼレンスキー政権には大きな痛手となる。プーチン氏は、ウクライナを敗北に近づけるものだと主張した。


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北朝鮮、戦闘参加を公表(2025/4/29 京都新聞)

【北京、モスクワ共同】北朝鮮メディアは28日、ウクライナ軍が昨年8月から越境攻撃を続けてきたロシア西部クルスク州を巡り、ロシアの奪還作戦を支援するために金正恩朝鮮労働党総書記が軍部隊の派兵を決定していたと報じた。北朝鮮が戦闘への参加を認め、公表したのは初めて。

 ロシアのプーチン大統領は28日、金氏と北朝鮮国民に感謝する声明を発表。ロシアのペスコフ大統領報道官は昨年にロ朝が締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」に基づき、北朝鮮に必要が生じればロシアは軍事支援を行うと表明した。現時点でロ朝首脳の接触予定はないとも述べた。

 朝鮮労働党の中央軍事委員会が27日、北朝鮮メディアに書面で派兵を巡る立場を明らかにした。

 米国務省は27日「戦争を長引かせる北朝鮮のような第三国には責任がある」と批判。韓国国防省報道官も「北朝鮮のウクライナ戦争への加担は不法行為だ」と反発した。

 中央軍事委員会は、ロ朝が昨年結んだ条約に基づいた措置で両国は同盟関係にあると指摘。クルスク州の作戦で北朝鮮軍は「重大な貢献をした」と強調した。


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米ウクライナ 鉱物協定署名(2025/5/1 京都新聞)

【キーウ、ワシントン共同】米ウクライナ両政府は4月30日、ウクライナの鉱物資源開発を巡る協定に署名した。ウクライナのスビリデンコ経済相が発表した。ロシアの侵攻を受けるウクライナの経済再生へ復興投資基金を共同盤立する。米メディアによると、米側は軍事支援の費用回収を巡り当初案から譲歩。ウクライナが求めていた「安全の保証」の確約は見送った。

 協定は2月末に署名する予定だったが、ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ大統領が口論になり決裂。冷え込んでいた関係を修復してロシアに圧力をかけたい双方の思惑が合致した。和平を仲介する米国は停戦交渉を進めたい考え。

 協定により米国がウクライナの鉱物や天然ガスなどの開発で優先的な権利を得る見通し。

 ベセント米財務長官は声明で「ウクライナ和平にトランプ政権が取り組む決意をロシアに示すものだ」とし「米国は残酷で無意味な戦争を終わらせる」と強調した。

 トランプ氏は署名に先立ち記者団に、ウクライナの資源開発に米国が参画することで「悪意ある勢力を少なくとも採掘地域から排除できる」とし、ロシアへの抑止力になると語った。

 米国はロシアによる侵攻以降に提供した全ての軍事・経済支援に相当する額の支出をウクライナに求めていた。署名した協定は過去の支援を含まず、今 後の支援のみを対象にした。

 ウクライナ政府によると、基金は世界中からウクライナヘの投資を呼び込むことが目的。採掘の場所や内容はウクライナが決定し、資源の所有権はウクラ イナにあるとした。

【インサイド】トランプ氏心変わり突く
(2025/5/2 京都新聞)

 米国とウクライナが首脳同士の口論で破綻しかけた資源協定署名にこぎ着けた。攻撃をやめないロシアに対するトランプ米大統領が「心変わり」(ウクライナ政府高官)した隙をゼレンスキー大統領が直談判で突き、米国をつなぎ留めた。合意が「米国の軍事支援継続確保の鍵となる」(AP通信)と期待も出るが、戦後の「安全の保証」の確約は得られておらず、停戦に向けた機運は低調なままだ。

 「米国との信頼醸成に向けた大きな一歩だ」。ウクライナ高官は4月30日、共同通信の取材に署名の意義を強調。2月の首脳会談決裂で地に落ちた両国関係の回復に向け「細心の注意を払ってきた」と明かした。

 転機となったのが、4月26日のローマ教皇フランシスコの葬儀前に実施した首脳会談だ。米ニュースサイト、アクシオスによると、ゼレンスキー氏はトランプ氏に和平のためなら一定の譲歩をする考えを伝え、口シアへの圧力強化を迫った。

 トランプ氏は直前にゼレンスキー氏を非難しており、このタイミングの会談は控えるべきだとの意見もあった。ウクライナにとっては成否が見えない賭けだった。

 会談直後、トランプ氏は交流サイト(SNS)に口シアのプーチン大統領が「私をあしらっているだけかもしれない」と投稿し、制裁強化を示唆。ウクライナ高官は「トランプ氏の心境の変化が見て取れ、会談の手応えを感じた」と述懐する。

 ウクライナ側はロシア寄りのトランプ氏の態度が揺らぐ今こそ距離を縮めるチャンスと判断。合意が比較的容易とみていた資源協定に焦点を絞って対米外交を強めた。

 第2次政権発足から100日を前に、関税措置に伴う経済減速懸念で支持率が低迷するトランプ氏は成果を欲していた。目を付けたのがウクライナ問題だった。ウクライナに領土で譲歩を求め、ロシアに圧倒的に有利な和平案をプーチン氏に提示、停戦実現を急いだ。

 ところがロシアは24日、キーウに大規模攻撃。トランプ氏は「非常に悪いタイミングだ」と怒り心頭となり、プーチン氏への疑念を深めた。

 米ニュースサイト、ポリティコによると、セレンスキー氏との直接会談を経たトランプ氏は、資源協定を結べばプーチン氏に停戦を迫る「シグナル」(ベセント米財務長官)になると考え、署名に前のめりになった。

 今回の署名で米ウクライナ関係は修復されたが、和平の鍵を握るプーチン氏は双方の関係にくさびを打ち込もうと揺さぶりを強めている。

 5月9日のロシアの対ドイツ戦勝記念日に合わせた72時間の停戦を一方的に決め、ウクライナに同調を要求。仲介役の米国に向けたアピールに躍起となっている。

 西側外交筋は取材に、ウクライナとロシアが互いに停戦できない責任を押し付け合う状況が元凶だと指摘。「ウクライナが米国のポイントを稼いだだけで、停戦には直結しない」と分析した。(キーウ、ワシントン共同)


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欧州、12日停戦開始要求(2025/5/11 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、英仏独ポーランドの欧州4力国とキーウで首脳会合を開いた。5力国首脳はトランプ米大統領とも電話会談。米提案の「30日間の無条件停戦」を12日から開始することで合意、ロシアにも履行を求めた。ロシアが応じない場合は、大規模制裁とウクライナへの軍事支援を実施すると警告した。

 ただロシアは難色を示す恐れが強く、停戦実現の可能性は不透明だ。

 4力国首脳が同時にキーウを訪問するのは初めて。ドイツのメルツ首相は6日の就任後初訪問となる。中国やブラジルの首脳が9日の対ドイツ戦勝80年の記念日に合わせてロシアを訪問したことを念頭に、欧米が結束し、ロシアと友好国に対抗する姿勢を示す狙い。

 30日間の無条件停戦を巡っては、ウクライナが3月に受諾を表明したものの、ロシアが停戦には条件が付くとして受け入れを拒否。トランプ大統領は8日にゼレンスキー氏と電話会談し、受け入れる意思を再確認した。ロシアが順守しなければ欧州と共に追加制裁を科すと警告している。

 メルツ氏は欧州の安全保障強化を訴えており、ウクライナの武器支援にも積極的とされる。前政権が二の足を踏んでいた長射程ミサイルの供与に踏み切る可能性もある。

 4力国は9日、共同声明を発表し「ウクライナの安全が確保され、主権国家として繁栄することを明確にする」と強調。「ロシアが永続的な停戦に同意するまで、圧力を強める」と訴えた。


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3年ぶり交渉 最終調整(2025/5/16 京都新聞)

【イスタンブール、モスクワ、キーウ共同】ウクライナ和平に向けた直接交渉に臨むロシア側代表団が15日、トルコ・イスタンブールに到着した。ロシアのぺスコフ大統領報道官は交渉が15日に始まるとした。直接交渉が実現すれば3年ぶり。米政権を交えた最終調整が進んだ。ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアのプーチン大統領との首脳会談を要求したが、プーチン氏は拒否して参加しない。

 ゼレンスキー氏は15日、トルコの首都アンカラに到着し、エルドアン大統領と会談した。会談後に直接交渉への対応を決めるという。ロシア代表団が高官級となったことに関し「彼ら自身で決定が下せるのかを見極める」と述べた。立場の隔たりは大きく、交渉は難航が予想される。

 トランプ米大統領は15日、直接交渉について「私とプーチン氏が一緒に参加するまでは何も起きないだろう」と述べ、高官級の交渉では進展は困難との見方を示した。大統領専用機内で語った。

 ロシアは2022年春の前回交渉で、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)非加盟、軍備制限などを求め、物別れに終わった。ロシアの主張は今も大きく変わらず、一部のウクライナ領土を支配する現実に基づき交渉に臨む。ウクライナは、30日間の無条件停戦の受け入れを要求する考えだ。

 ペスコフ氏は、交渉は状況次第で数日続く可能性もあるとの認識を示した。

 ロシアは14日夜、22年の直接交渉に参加したメジンスキー大統領補佐官を筆頭とするロシア代表団のメンバーを発表。前駐日大使のガルージン外務次官らが含まれる。ゼレンスキー氏は15日、ウクライナ代表団は大統領府、軍などの高官で構成されると明らかにした。ウクライナメディアによるとイエルマーク大統領府長官、シビハ外相らがトルコを訪問している。

 ルビオ米国務長官は15日、トルコ南部アンタルヤで、直接交渉を念頭に「今後数日間で何が起きるかを注視する」と記者団に語った。


【表層深層】停戦へ始点から食い違い

 ロシアとウクライナの直接交渉が3年ぶりに開かれる見通しとなった。侵攻開始直後に物別れに終わった和平案に固執するロシアに対し、ウクライナは本格的な和平協議入りには停戦が先決だと訴える。出発地点から既に食い違いが露呈。ロシア寄りの姿勢が目立った仲介役米国は遅々として進まない状況にしびれを切らし、ロシアの強硬姿勢に懐疑論が強まる。

 ロシアが14日に発表した直接交渉の代表団には、2022年3月に開かれた対面交渉に参加した顔ぶれが並んだ。

 代表団を率いるメジンスキー大統領補佐官にフォミン国防次官−。「結局、前回と同じだ」。ウクライナ政府高官は、ロシアが当時合意できなかった和平案を蒸し返すメッセージを発したと受け止めた。

 ロシア側がこだわるのは、プーチン大統領が22年春に仮調印までしたと主張する和平案「ウクライナの永世中立と安全保障に関する条約」だ。

 米紙ニューヨークータイムズが報じた当時の条約草案などによると、@ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)を含む軍事同盟に加盟しないAウクライナに外国軍の駐留を認めないBウクライナの軍備に制限C米英仏中のほかロシアがウクライナの安全を保証する―との内容。最終的にウクライナは拒否し た。

 プーチン氏は昨年6月、「現実的」と称する新たな和平案を提唱した。22年9月にウクライナ東部・南部4州の併合を発表したことを踏まえ、4州からのウクライナ軍の撤収や、4州をロシア領と認めて国際条約で規定することまで主張した。

 ウクライナにこれを受け入れる選択肢はない。欧州各国と共に今月、トランプ政権が提案した30日間の無条件停戦をまず履行するよう要求した。

 停戦が実現したら、現在の支配線に基づいて領土交渉を開始し、占領地の暫定的な実効支配を容認する一方、国際社会の承認は拒否する方針だ。

 NATO加盟については、同盟国間で合意がないと認め、NATOに準ずる「強力な安全の保証」を求める。ウクライナ軍備には制限を設けず、撤収は確約しない。

 「ロシアの要求は過大だ」。ウクライナに厳しかったバンス米副大統領は今月に入り、ロシア非難を強めるようになった。2月にホワイトハウスでゼレンスキー大統領を責め立てた姿から一転「プーチン氏こそが和平への最大の障害という疑念を強め、いらだっている」(英紙フィナンシャルータイムズ)ようだ。

 早期の和平実現を公言してきたトランプ氏の不満も募っている。トランプ氏に近いグラム上院議員は「口シアは駆け引きをしており、(トランプ)大統領も気づき始めている」と指摘した。

 今回具体的進展は難しいとの見方が既に出ている。西側外交筋は「立場が違い過ぎて、歩み寄るのは難しい。互いにトルコに何も残さずに去るだろう」と言い切った。(キーウ、モスクワ、ワシントン共同)


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【インサイド】米仲介「新たな挫折」(2025/5/21 京都新聞)

 トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領との出繩会談で、ウクライナとの停戦合意取り付けに失敗した。「停戦を成し遂げられるのは自分だけだ」と豪語してきたが、譲歩を引き出せず「新たな挫折」(米紙)を味わった。嫌気が差した様子で、仲介役を放り出すそぷりも。プーチン氏はウクライナが頼るトランプ氏を丸め込み、主導権を手繰り寄せた。

 「ドナルド」

 「ウラジーミル」

 ロシア側によると、両大統領は互いをファーストネームで呼び合った。「相互尊重」の雰囲気で「電話を切りたくなかったようだった」といい、トランプ氏が停戦を強く迫る緊張した場面もなかったとみられる。

 トランプ氏は停戦に応じない場合の追加制裁をちらつかせてきたが、電話会談では「制裁の支持者ではない。合意を達成する」と発言したという。「ウラジーミル、いつこの戦争を終わらすのか」とも問いかけたが、プーチン氏はウクライナとの直接交渉継続を確認しただけで、停戦には「ゼロ回答」だった。

 「停戦条件は当事者間で交渉するしかない。ほかの誰も知らない詳細を把握しているからだ」。トランプ氏は電話会談の内容を発表したソーシャルメディアの投稿で「当事者責任」を強調した。責任を押しつけるかのようにローマ教皇庁が仲介に意欲的だとも書いた。

 「ディールメーカー(交渉の達人)」と自分を宣伝してきたトランプ氏。パレスチナ自治区ガザの停戦協議や関税を巡る中国との交渉で成果を見通せない中、今回のトップ同士の話し合いは勝負どころだった。ソーシャルメディアで「『血の海』が終わった後、ロシアは大規模な対米貿易を望んでいる。私も賛成する」と強調、米口関係改善をアメに停戦受け入れを持ちかけたことも示唆した。

 だがプーチン氏は折れず、ホワイトハウスでは普段の強気な姿勢が影を潜めた。記者団に「私の戦争ではない。巻き込まれるべきではなかったことに巻き込まれてしまった」と逃げを打った。

 「米国に擦り寄るような態度を見せながら、のらりくらりと要求をかわすプーチンの態度に嫌気が差したのではないか」。ウクライナ政府高官はトランプ氏の胸の内をこう推測した。

 ウクライナとロシアの直接交渉が続いたとしても平行線をたどることが濃厚。トランプ氏の仲介はロシアに即時停戦を認めさせるほぼ唯一の手段といっていい。「今投げ出されるのは非常にまずい。プーチンのやりたい放題になってしまう」(ウクライナ政府高官)と悲愴感が漂い始めた。

 ゼレンスキー大統領は通信アプリで訴えた。「米国が交渉や和平から距離を置かないことが非常に重要だ。利益を得るのはプーチンだけだ」(ワシントン、モスクワ、キーウ共同)


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【インサイド】侵攻後最大規模 捕虜交換始まる(2025/5/25 京都新聞)

【チェルニヒウ、モスクワ共同】ロシア、ウクライナ両政府は24日までに、トルコ・イスタンブールで今月行われた直接交渉での合意に基づき、697人ずつの捕虜交換を実施した。両国はそれぞれ千人を交換することにしており、2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻を開始して以降、最大規模となる。

 交換は25日まで行われる予定。23日には捕虜270人と民間人120人ずつ、24日は捕虜307人ずつが引き渡された。

 タス通信によると、ロシアのラブロワ外相は23日、捕虜交換が完了し次第、ウクライナ側に和平案を提示する用意があると表明した。ただ、ロシアは直接交渉の席上でウクライナ側に厳しい要求を突きつけておりロシア案が議論の進展につながるかは見通せない。

 ロシア軍は23日夜から24日未明にかけて、ウクライナの首都キーウを弾道ミサイルや無人機で攻撃。地元当局によると、子どもを含む少なくとも15人が負傷した。当局は、キーウに対する過去最大規模の攻撃だったとしている。

 ウクライナ側の捕虜ら390人は23日、北部チェルニヒウ州に数台のバスで到着し、家族や知人と再会を果たした。22年に南東部マリウポリで捕らえられてから約2年半、拘束されたセルヒーさん(35)は「今、ウクライナの地を踏んでいることが信じられない」と語った。東部ドニプロ出身のアントンさん(29)は「妻をこの手で抱き締め、母の手作りジャムを食べたい」と涙を流した。


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【インサイド】停戦巡り立場の相違鮮明(2025/6/3 京都新聞)

 ロシアとウクライナの直接交渉では、焦点の停戦を巡って双方の立場が大きく食い違う。ウクライナは本格的な和平協議に入る前に無条件停戦が必要との立場だが、ロシアは自ら示した和平案の受諾が停戦の前提になると主張している。

 ロシアが重視するのは、プーチン大統領が、侵攻開始直後の2022年春、ウクライナ側と合意目前だったと主張する和平案「ウクライナの永世中立と安全保障に関する条約」だ。米メディアによると@北大西洋条約機構(NATO)加盟放棄A外国軍の駐留を認めないB軍備を制限C米英仏中のほかロシアが安全を保証するIとの内容だ。

 さらにロシアは、22年に一方的に併合を宣言したウクライナ東部・南部4州からのウクライナ軍の撤収や、4州をロシア領と認めて国際条約で規定することを要求する。ウクライナがこうした条件を受諾すれば、停戦が可能との立場だ。

 ウクライナは、ロシアによる一方的な要求を拒否する構えだ。ロシアに対して、まずは米国が提案した少なくとも30日間の陸海空の包括的な停戦を受け入れるよう求めている。

 停戦が実現した後に、現在の前線に基づいて領土交渉を本格化させる考えだ。ロシアによる占領地の一時的な実効支配を事実上容認する形となるが、国際社会による支配の承認は拒否する。

 悲願とするNATO加盟は、加盟国の総意に基づくとして、断念はしない。ウクライナが中立を強制されることは認めず、「強力な安全の保証」を求める。軍備には制限を設けず、軍の撤収には応じない方針だ。

 信頼醸成措置として、ロシアに連れ去られたウクライナの子どもの無条件帰還、全ての戦争捕虜、民間人捕虜の解放を求めている。対ロシア制裁は必要に応じて再発動が可能との前提で、段階的に解除することもできるとしている。


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【インサイド】ロシア、防衛戦略見直し(2025/6/6 京都新聞)

 ウクライナがロシア各地の航空基地を狙い、無人機(ドローン)を使った大規模攻勢に出た。軍用機約40機を攻撃、うち十数機を完全に破壊したもようだ。100機余りを駆使した一斉奇襲。1年6ヵ月にわたる徹底した情報管理で裏をかいたウクライナは戦果を誇示し、プーチン大統領は報復を宣言した。戦闘激化の恐れがある。

 ウクライナ保安局(SBU)やロイター通信によると、ウクライナはロシアとの直接交渉を翌日に控えた1日、ウクライナ首都キーウから4500キロ以上も離れたロシア東シベリアのイルクーツク州で作戦を決行した。

 幹線道路に止められたトラックが運んでいたコンテナのスライド式の屋根が開くと、ドローンが約7キロ先のベーラヤ航空基地に向け一斉に飛び立った。機体からの映像を見ながら遠隔操縦する一人称視点(FPV)型。事前に飛行ルートが組み込まれ、制御を失っても自動飛行に切り替わる仕組みだった。

 「全ては明かせないが、歴史の1ページになる」。ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、今回の特別作戦「クモの巣」を自賛した。米国にも事前通告せず、関わった要員は当日までにロシアを離れていたという。

 報道によると、ベーラヤ基地のほか、北極圏に位置するムルマンスク州のオレニヤ基地など少なくとも四つの基地を同時に攻撃。ロシアの対応は後手に回り、防空態勢が整わなかったもようだ。

 「クモの巣」作戦はロシアの航空戦力に対する史上最大規模の攻撃とみられる。SBUは戦略巡航ミサイルを搭載した航空機の3割以上を損傷させたと主張。ドイツメディアによると、北大西洋条約機構(NATO)高官は、標的となった軍用機が3千発以上のミサイル発射に関わったとし「今後はウクライナ攻撃が難しくなる」とみる。

 米国防関係者は米紙ニューヨーク・タイムズに、今回の作戦で、広大なロシアのどこでも大規模な破壊工作を遂行できる能力や、1億ドル(約143億円)以上する軍用機を600ドル程度のドローンで破壊できることを示したと指摘。ロシアは国内の軍事施設の防衛戦略見直しを迫られそうだ。

 ロシア西部では鉄道橋が爆破される事件もあり、ロシア当局はウクライナのテロと断定した。プーチン氏は4日、ウクライナとの直接交渉に関して「誰がテロリストと交渉するというのか」と怒りを隠さなかった。西側外交筋も「作戦は大成功した。だが、停戦はもう無理だろう」と語った。(キーウ、モスクワ共同)


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【インサイド】新たな州侵攻 ロシア軍主張(2025/6/10 京都新聞)

【モスクワ、キーウ共同】ロシア国防省は8日、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の西端を越え、東部ドニプロペトロウスク州の領内に入ったと発表した。事実であれば、同州への侵入は2022年2月の全面侵攻以降で初とみられ、一方的に併合を宣言したウクライナ東部・南部4州以外の占領地拡大につながる。

 ウクライナ軍参謀本部は8日時点でロシア軍の侵入を否定したが、米国が仲介する停戦交渉が進まない中、ウクライナは守勢に立たされている。

 ロシアのペスコフ大統領報道官は9日、ドニプロペトロウスク州への新たな侵攻は、敵からの攻撃を防ぐ「緩衝地帯」づくりが目的の一つだとの認識を示した。

 ロシア国防省は戦車部隊が州境を越えたと発表した。どこの地域か明示していないが、ロシア軍が掌握を目指すドネツク州の要衝ポクロウシクに近いとみられる。ウクライナ政府高官は、ロシア軍が早期のポクロウシク掌握のため周辺で攻勢を強化しており、近接するドニプロペトロウスク州侵入の試みもその一環だと指摘。秋までのドネツク州完全制圧を目指しているとの見方を示した。

 一方、ウクライナ軍関係者は、ドネツク州のロシア軍はドニプロペトロウスク州の州境まで約650メートルに迫り、さらに進軍していると説明。ゼレンスキー大統領は8日「一部の前線の状況は非常に困難だ」と述べた。

 ウクライナは1日にロシア各地の航空基地を無人機で奇襲攻撃し、多数の戦略爆重機などを損傷させた。ロシアは、6日に首都キーウを含むウクライナ全土を攻撃。ロイター通信は7日、米当局者は、ロシアが数日以内に激しい攻撃を再び実施する可能性が高いと指摘したと報じた。ゼレンスキー氏も8日、今後数日間の空襲警報に注意するよう国民に呼びかけた。

 ロシアとウクライナは5月と6月の2回、和平に向けた直接交渉をトルコで実施した。6月の交渉で互いの停戦案を提示したが、立場の隔たりが大きく、早期停戦は遠のいている。

 両国は9日、今月2日の交渉での合意に基づき、捕虜交換を行った。


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ロ軍基地 中国兵訓練へ(2025/6/26 京都新聞)

【キーウ共同】ウクライナの英字紙キーウ・ポストは24日、ロシア軍が年内に同国の基地に中国軍兵士約600人を受け入れ、訓練する予定だと報じた。欧米の兵器にどう対抗するか口シア兵がウクライナ侵攻で得た実戦経験から中国兵が学ぶ。ウクライナ国防省情報総局の話としている。

 報道によると、対象となる中国軍兵士は、戦車兵や砲兵、防空専門家らが中心。ウクライナ国防省情報総局は「ロシアが中国と共に欧米に対抗する姿勢を如実に表している」と述べた。

 米政府は、中国が台湾有事の際に米国の介入を抑止できる戦力を2027年までに整備する目標を掲げていると分析している。報道が事実であれば、中国には台湾有事を念頭に置 き、ロシア軍からノウハウを学ぶ狙いがあるとみられる。

 ウクライナ東部ドニプロペトロウスク州当局は25日、ロシア軍による24日のミサイル攻撃の死者が21人、負傷者が300人超に増えたと発表した。被害が集中した州都ドニプロの市長は約50棟の集合住宅や約40の教育施設が損傷したと説明した。

 ゼレンスキー大統領は24日、ロシアが「人々の命を狙って攻撃している」とX(旧ツイッター)で非難。22年の侵攻開始以降、ロシアは計2万8千機超のイラン製無人機シャヘドで攻撃してきたと強調した。