エスカレートの連鎖断てく(2024/6/24) ロ攻撃、全土で30人死亡(2024/7/9) 中国・ハンガリー 対ウクライナ協調(2024/7/9) 対ロ越境攻撃 全面解禁要請(2024/7/13) ウクライナ軍千人越境攻撃(2024/8/9) ウクライナ奇襲 撃退難航(2024/8/13) 「逆侵攻」戦争終末左右も(2024/8/18) |
ロシア攻勢 長期化必至(2024/8/24) ウクライナに大規模攻撃(2024/8/27) ウクライナ侵攻ルポ 投降ロシア兵証言(2024/9/2) 越境継続、制圧地は保持(2024/9/6) 英、長射程兵器容認要請か(2024/9/15) 両軍死傷者100万人に(2024/9/18) 核使用基準引き下げへ(2024/9/27) |
米、長射程兵器攻撃認めず(2024/9/28) ウクライナへ 北朝鮮軍派遣も(2024/10/9) ウクライナ、停戦検討か(2024/10/13) ゼ氏「25年中に戦争終結可能」(2024/10/17) 北朝鮮兵と交戦「数日内」(2024/11/1) 「命運握る」新大統領注視(2024/11/4) 衝突する「二つの真実」(2024/11/7) |
ウクライナでの戦争拡大しないように(2024/11/11) 戦闘凍結案「非現実的」(2024/11/16) インフラ一斉攻撃(2024/11/18) 米、長射程兵器の使用容認(2024/11/18) 核使用条件をロシアが拡大(2024/11/20) 米、対人地雷の供与容認(2024/11/21) 全土インフラ攻撃 ウクライナ大停電(2024/11/29) |
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全領土の武力奪還困難(2024/12/3) 地雷除去費 環境債で調達(2024/12/7) ロシア、エネ施設攻撃(2024/12/14) ロシア軍中将、爆発で死亡(2024/12/18) 英、ウクライナに派兵示唆(2024/12/22) 無人部隊で「ロ陣地攻略」(2024/12/23) 北朝鮮兵は「訓練不足」(2024/12/24) |
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北朝鮮兵「塹壕防御任務」(2024/12/26) NATO加盟で終戦に支持(2025/1/5) 「戦争ではなく訓練に行くと」(2025/1/13) |
【核心評論】エスカレートの連鎖断て(2024/6/24 京都新聞)
「サピエンス全史」などのベストセラーで知られるイスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ氏が最近、米国際政治学者イアン・ブレマー氏に告げたという。「私たちは既に第3次世界大戦に突入しているかもしれないが、それに気付いていない可能性がある」
ロシアのウクライナ侵攻から2年余り。「第3次大戦を起こすわけにいかない」とのバイテン米大統領発言と裏腹に、戦闘は「ロシアVS西側」の代理戦争と化し、次第にエスカレートする。
米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は昨年来、米英独の主力戦車や米国製のF16戦闘機、長射程の米地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」などの兵器をウクライナに供与した。
当初はロシアを刺激しかねないとして、引き渡しを見送っていた兵器ばかりだ。ウクライナが西側の武器でロシア領内を越境攻撃することも認め、戦域面のエスカレーションにも踏み込んだ。それでも劇的な戦況好転は見込めない。ウクライナによる昨年の大規模反攻は頓挫した。供与兵器の高度化や越境攻撃の容認は広大な占領地の奪還より、失地の拡大を食い止める色彩が強い。
対ロ包囲網も広がらない。先進7力国首竪謳(G7サミット)は今回、制裁で凍結したロシア資産を活用し、500億ドル(約7兆8千億円)の支援をウクライナに行うことで合意した。
だが、あくまで日米欧の合意だ。G7の国内総生産(GDP)総計は世界のGDPの約4割に上るが、世界人口の85%を占めるグローバルサウス(新興・途上国)は制裁になびかない。G7合意に「報復」を警告するロシアは北朝鮮やイランと軍事協力を深め、後ろ盾と化す中国との関係も緊密化。日米欧の孤立化戦略は壁に直面し、外交空間でも苦しい戦いを強いられる。
プーチン大統領が侵攻の手を緩めないのは「ロシアは孤立していない」との自己認識もあろう。戦時経済への移行を進め、侵攻を長引かせるほど、西側が先に疲弊するとの自信がうかがえる。
バイテン氏はサミットと並行し、ウクライナとの安全保障協力協定に署名した。「プーチンの戦争」の一層の長期化を見据え、10年の長きにわたる軍事支援をゼレンスキー大統領に約束した。
1914年に「サラエボの銃声」が鳴り響いた時、それが最初の世界大戦に発展して4年にわたって継続、1千万人とされる犠牲者を出す惨害に至ると予測した人はほとんどいなかった。
プーチン氏はNATOへの直接的な軍事行動は控えている。「核のどう喝」を繰り返すが、中国の反対もあって使用のハードルは高い。だが、なし崩し的にエスカレートしていったとき、何が起こるか誰も分からない。
パレスチナ自治区ガザの停戦と併せ、戦火の拡大・継続に終止符を打つことが急務だ。ハラリ氏の警告に耳を傾け、サミットの合意を超えた一貫戦略を描き出し、負の連鎖を断つ時である。(共同通信編集委員川北省吾)
ロ攻撃、全土で30人死亡(2024/7/9 京都新聞)
【キーウ、モスクワ共同】ウクライナで8日、ロシアによる攻撃が各地で相次ぎ、当局によると少なくとも30人が死亡した。首都キーウ(キエフ)では小児病院の建物が一部崩落。別の産科病院も攻撃され、4人が死亡した。ゼレンスキー大統領は「5都市へ40発を超えるミサイル攻撃があった」とし、何千人もの命を救ってきた最も重要な小児病院の一つが攻撃を受けたと非難した。
キーウ市当局によるとキーウでは計15人が死亡し、38人がけがを負った。ロイター通信によると、クリチコ市長は「過去2年で最悪の被害の一つ」と指摘した。ゼレンスキー氏の出身地の南部クリブイリフもミサイル攻撃を受け、地元当局によると11人が死亡、40人が負傷した。東部ドネツク州ポクロウシクで3人、ドニプロで1人がそれぞれ死亡した。
ウクライナ情報筋は7日、ロシア南部ボロネジ州の弾薬庫を6日夜から7日にかけ、ウクライナ側が攻撃したと明かした。情報筋によると、ミサイルや大砲、小型武器の弾薬が保管されていた。州知事によると、火災が発生し、地元住民80人以上が避難した。一方、ロシア国防省は7日、ウクライナードネツク州の集落チガリを制圧したと発表した。
またウクライナ東部ハリコフ州知事は7日、州都八リコフでロシア軍が埋設した地雷の爆発に走行中の車が巻き込まれ、子どもを含む少なくとも4人が死亡したと発表した。
中国・ハンガリー 対ウクライナ協調(2024/7/9 京都新聞)
「北京共同」中国の習近平国家主席は8日、北京を訪問したハンガリーのオルバン首相とロシアによるウクライナ侵攻について会談した。ウクライナとロシアに続く訪問で「仲介外交」に意欲を見せるオルバン氏を称賛し、今後も協調する姿勢を示した。オルバン氏はウクライナ危機の政治解決に向けた中国の独自提案を高く評価した。中国外務省が発表した。
中国はロシアとの親密ぷりが米欧から批判されているが、ハンガリーやブラジルといったロシアとの関係を重視する国々を束ね、国際交渉の主導権を握りたい考え。今月から欧州連合(EU)議長国を務めるハンガリーと関係を強化しい対中口で結束する米欧を揺さぶる狙いもある。
会談で習氏は、ロシアとウクライナが直接対話できるよう国際社会は力添えをすべきだと強調。中国とハンガリーはウクライナ情勢に関し「基本的主張や取り組みの方向が一致している」として意思疎通を続けると表明した。
対ロ越境攻撃 全面解禁要請(2024/7/13 京都新聞)
【ワシントン共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、米欧が供与した兵器の使用制限を全て撤廃し、自国に侵攻するロシアに対する越境攻撃を全面解するよう求めた。ワシントンで北大西洋条約機構(NATO)首脳と開催したNATOウクライナ理事会後の記者会見で語った。
一連の行事を終え、NATO首脳会議は閉幕した。
米国などは自国が供与した兵器による越境攻撃を反撃に限って認めている。ゼレンスキー氏は「もし勝ちたいのなら、全ての制限を撤廃しなければならない」と訴え、自衛権としてロシア領内の軍事拠点への攻撃を広く認めるよう呼びかけた。
バイテン米大統領が9日の演説で表明した米国などによる防空システム5基の追加供与については「可能な限り早く提供されることを期待している」と語った。
バイテン氏は閉幕後の記者会見で「私はウクライナを見捨てない」と強調。一方、兵器の使用制限を巡り「モスクワやクレムリンを攻撃できたとして意味があるだろうか」と言及した。米政府は制限に関する判断を日々行っているとも述べた。
ロシアのプーチン大統領については「話し合う理由は特にない。行動を改める考えがあるとは思えない」と指摘した。中国に対してはロシアを支援し続けるのなら欧米から「経済的利益は受けられない」と警告した。
10日のNATO首脳宣言には、ウクライナへの武器供与や軍事訓練の調整役を担う司令部をNATOが設置することも盛り込まれた。ストルテンペルグ事務総長は「われわれはウクライナが(ロシアに)勝利するための基盤を整えつつある」と成果を強調した。
ウクライナ軍千人越境攻撃(2024/8/9 京都新聞)
【キーウ共同】ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は7日、ウクライナと国境を接するロシア西部クルスク州スジャ方面に、6日朝からウクライナ軍の兵士約千人の越境攻撃があったとプーチン大統領に報告した。ロシア国防省は8日、ウクライナ軍を国境外に追いやる掃討作戦が続いていると発表した。ウクライナの地上越境攻撃は過去にもあったが、2022年2月の侵攻開始以降、今回が最大規模とみられる。
クルスク州には7日から非常事態が宣言された。ウクライナ側は公式に発表していないが、両軍の激戦が続くウクライナ東部からロシアの兵力を引きはがす狙いがあるとの見方がある。
米シンクタンク、戦争研究所は7日、ウクライナ軍の装甲車が国境から約10キロの地点まで前進したと分析した。ロシア軍の少なくとも二つの防衛線を突破し、クルスク州内の45平方キロを制圧したとのロシア情報筋の話を伝えた。別の惜報筋の話として11の集落を掌握したとしたが、真偽は不明。
スジヤ周辺にはロシアがウクライナ経由で欧州に天然ガスを輸出するパイプラインの関連施設があり、ロシア政府系メディアはこの施設をウクライナ側が制圧したと報じた。
ロシア側によると、ウクライナ側の砲撃や無人機などの攻撃で、住民ら5人が死亡、30人以上が負傷した。ゲラシモフ氏はウクライナ兵100人以上を殺害し、戦車7両などを破壊したと主張した。
タス通信などによると、ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムは8日、スジヤを経由した欧州向けの天然ガス輸送は過去数日とほぼ同水準で続いていると明らかにした。
ウクライナ奇襲 撃退難航(2024/8/13 京都新聞)
ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始してから12日でI週間。ロシア軍がウクライナ東部で攻勢を強める中での奇襲は「第2次大戦以降、ロシアが外国正規軍から受けた初めての侵略」となる軍事的打撃。ロシア軍関係者からは、ウクライナ兵の領内からの撃退には時間がかかるとの指摘も上がっている。
「戦争がシナリオ通りに進まない時にのみ、ロシアは交渉の席に座る可能性がある」。越境攻撃から3日目の8日。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はロシアへの不意打ちは、今後を見据えたウクライナの交渉力を高めるのが目的だとの認識を示した。ウクライナ最高会議の議員からは「国際会議を100回開くよりも、今回の越境作戦は平和への近道だ。停戦が必要だとロシア人に示す唯一の方法だ」と支持する声が上がった。
ゼレンスキー大統領の顧問は、米紙ワシントン・ポストに対し、ロシアの兵力が手薄なことを知った上での越境攻撃だったことを認めた。
ロシア側は11日、国境に近いスジヤから20キロ程度離れた3地点でウクライナ軍の進撃を阻止したと発表。侵入規模は、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長が7日に プーチン大統領に報告した「最大千人」が最後の公式発表だが、実際には数千〜1万人との見方が有力だ。ロシアの軍事ブロガーらからはゲラシモフ氏が「過少に申告した」との批判も上がり、侵攻開始以降くすぶり続ける同氏の指導カヘの疑問が再燃し始めた。
ロシア国防省の高官で、南部チェチェン共和国の特殊部隊「アフマド」のアラウジノフ司令官はクルスク州でウクライナ兵の掃討作戦に参加。「敵は多く、かなり準備してきたことがうかがえる」とロシアメディアで強調した。さらに「問題は部隊間の連携がないことだ」と述べ、長らく指摘されてきたロシア軍内部の欠陥が敵の奇襲攻撃で露呈したことを認めた。
ロシア独立系メディアによると、クルスク州の情勢について大統領府は連邦議会議員に発言を控えるよう、かん口令を敷いている。(共同)
【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発の敷地内で、ロシア軍が火災を起こしたと通信アプリに投稿した。ロシア当局が既に消火し、国際原子力機関(IAEA)は「原発の安全性に影響はない」としている。原発の対岸に位置する二コポリの当局者によると、冷却塔で大量の夕イヤに放火したとの情報があるという。
一方、タス通信によると、同原発を事実上管理するロシア国営原子力企業ロスアトムは、ウクライナ軍による2度の無人機攻撃が11日夜にあったと主張し、非難 の応酬となった。冷却塔施設内で火災が起きたが、同深夜までに消火したとした。
IAEAは声明で、派遣されている専門家らが「複数の爆発音の後、原発の北西側から黒煙が上がるのを目撃した」とし「冷却塔の一つが無人機攻撃を受けたと伝えられた」と明らかにした。冷却塔の損傷は原発の安全性に影響しないとした上で、原因調査のため立ち入り調査を要請した。
【インサイド】「逆侵攻」戦争終末左右も(2024/8/18 京都新聞)
ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への電撃的な越境攻撃は17日、12日目に入った。戦況で劣勢下の「逆侵攻」は、投入した精鋭部隊が撃退されれば軍事的打撃は大きい。ロシア領の占拠を維持できれば交渉カードにつながる可能性があるが、欧米の専門家は「ゼレンスキー大統領が大胆な賭けに出た」と指摘。越境作戦の成 否は2年半に及ぶ戦争の結末を左右する可能性がある。
ロシア側発表によると、クルスク州内には「明白な戦線」が存在せず、ウクライナはロシア側防御の手薄な地点の突破を画策。ウクライナ国境から最深で30キロ前後の地点で攻防が続いているもようだ。ウクライナ軍によると同州内の制圧地域は東京都の半分程度の約1150平方キロ、計82集落に及ぶ。ロシアは長さ約40キロの対戦車 壕を掘削し、敵の進軍阻止を図る。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・、クラーク元所長は英紙に「ゼレンスキー氏は戦争に負けているというシナリオを覆すのに必死だ」と指摘。越境攻撃で軍事的勝利を達成する可能性は低いとしつつ、作戦の成功は「クルスク州にどれだけ長く駐留でき、ロシア軍を混乱させ、プーチン政権に心理的打撃を与えられるかで測られる」と主張した。
ロシアが掲げる和平交渉の条件はウクラメナに受け入れ難い内容だが、厭戦ムードが高まるウクライナでは、世論調査で対ロ交渉を容認する割合は前年より上がっていた。しかし、越境攻撃でロシアは態度を硬化。交渉入りの機運は遠のいた。
クルスク州は第2次大戦中の1943年7〜8月に史上最大の戦車戦「クルスクの戦い」が繰り広げられ、ソ連軍がナチス・ドイツ軍を撃破した地。ゼレンスキー政権を「ネオナチ」と断じ、侵攻を正当化してきたプーチン政権にとっては81年を経た夏に屈辱的な侵攻を許したことになる。ロシア側はウクライナ軍の越境規模を「1 万1干入程度」と推定。大戦以降、初めて外国軍に領土を侵され、クルスク州の住民の約16%が避難を強いられた。だが戒厳令は敷かず「対テロ作戦」として掃討に当た り、国民に衝撃を与えないよう腐心する姿勢がにじむ。プーチン大統領の最側近のパドルシェフ大統領補佐官は、越境攻撃は「ウクライナのネオナチ政権が崩壊が不可避であると悟って引き起こした犯罪行為だ」と非難した。(共同)
ロシア攻勢 長期化必至(2024/8/24 京都新聞)
【キーウ共同】ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で2年半。ウクライナ軍は東部ドネツク州などで戦力に勝るロシア軍の攻勢を受ける一方、ロシア西部クルスク州への越境作戦を仕掛けて対抗し、戦闘のさらなる長期化は必至だ。ウクライナは3万人超の戦死者を出して疲弊し、和平父渉開始を求める声も高まりつつあるが、ロシアの要求との隔たりは大きく、和平への道のりは遠い。
ウクライナ側の民間人死者は1万人を突破し、国外避難民も660万人を超える。今年5月の世論調査では和平交渉入りへの支持が57%に達し、政府高官は「ロシアの出方次第で交渉に入る用意がある」と発言した。
23日にはロシアと伝統的な友好関係にあるインドのモディ首相が侵攻後初めてウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談。モディ氏は7月にロシアを訪問し、プーチン大統領に平和と対話の重要性を説いた。
だが、プーチン氏は交渉入りに際し、ロシアが併合を宣言したウクライナ東部・南部4州からのウクライナ軍撤退や北大西洋条約機構(NATO)加盟断念などウクライナが受け入れられない条件を突き付ける。
ウクライナは昨年の反転攻勢に失敗した。今春まで米国の軍事支援が滞った間に、ロシア軍はドネツク州などで大規模攻勢に出た。今年2月に州内の要衝アブデーフカを制圧し、ウクライナ軍の物資輸送拠点ポクロウシクに向け進む。ただ、損害も甚大とされ、欧米は侵攻開始以来のロシア軍の戦死者が10万人を大きく超えたと分析する。
戦況挽回のためウクライナ軍は今月、ロシア領への越境攻撃に踏み切り、クルスク州で東京都の半分程度の約1200平万キロを制圧したと発表した。欧米供与の長射程兵器を使ってロシア領内の軍事拠点に打撃を与え、自国が主導権を握る形でロシアを和平父渉の席に着かせたい考えだ。
ただ、欧米の支援国は長射程兵器を使ったロシアの奥深くへの攻撃については慎重な立場を崩さない。米国製F16戦闘機も少数機の配備が始まったが、戦況に寄与するかどうかは不透明だ。
ウクライナに大規模攻撃(2024/8/27 京都新聞)
【キーウ、モスクワ共同】ロシア軍は26日、ウクライナ各地に大規模攻撃を実施した。ミサイル100発以上と無人機約100機が発射され、ゼレンスキー大統領は「エネルギー部門に大きな被害が出た」と述べた。各地で停電や断水が発生した。地元メディアによると、少なくとも5人が死亡した。
北部キーウ(キエフ)州、東部ハリコフ州、南部オデッサ州、西部リビウ州を含む全土で、エネルギー関連施設などの被害が報告された。シュミハリ首相などによると、被害は15州に及んだ。キーウ州では水力発電所が攻撃された。
ロシア国防省は26日、ウクライナの重要エネルギーインフラ施設や軍事産業施設への攻撃を行い、全ての標的を破壊したと発表した。一方、ウクライナ外務省は25日、ロシアの同盟国ベラルーシがウクライナ国境近くに軍部隊を集結させているとして、部隊を国境から引き離すよう求める声明を発表した。ロシア民間軍事会社ワグネルの元雇い兵も展開しているとした。
声明によると、ベラルーシ軍は、ウクライナ北部に接するベラルーシ南東部ゴメリ州に、多数の兵士、戦車、大砲、防空システムなどを集めているという。
声明は「ロシアの圧力を受けて悲劇的な過ちを犯さないよう警告する。非友好的な行動をやめるよう求める」と指摘した。
ウクライナ侵攻ルポ 投降ロシア兵証言(2024/9/2 京都新聞)
【スムイ州共同=小玉原一郎、森脇江介】ウクライナによるロシア西部クルスク州への越境攻撃で、投降した複数のロシア兵が1日までに「攻撃は全く予想外だった」「十分な訓練なしに前線に投入された」と共同通信に証言した。越境攻撃による捕虜が日本メディアの取材に応じたのは初めて。ロシアが拘置所で強引に新兵を確保し、わずかな期間の訓練で任務に就かせている実態が明らかになった。
クルスク州に接するウクライナ北東部スムイ州の収容施設で取材に応じた。取材は場所を特定しない条件で許可された。ウクライナ当局者が同席したが、介入はなかった。
兵士セルゲイ(23)は8月24日、クルスク州スジヤ郊外で捕虜となった。どことなくあどけなさが残る青年は、7月に入隊したばかりだった。
6月、第2の都市サンクトペテルブルグで麻薬取引に関わった疑いで逮捕された。「10年間刑務所暮らしをする覚悟があるか」「拘置所での初日、捜査官から月20万ルーブル(約30万円)の報酬で1年間軍務に就けば、罪に問われないと説明された。「人生を無駄にしたくない」と思い、軍と契約した。
約1ヵ月の訓練を経てクルスク州に配属された。直後、突然の攻撃が始まった。無人機から爆弾が投下され、戦車の砲撃が襲う。塹壕にこもり抗戦したが、通信が遮断され防戦一方に。野原に逃げ込んだものの、足と肩を負傷し8月24日に投降した。
「同胞のスラブ人がなぜ争うのか。権力者は領土を奪い合う遊びをすぐやめてほしい」。戦争に関心はなかったが、戦場で死が身近に迫り考えが変わったと語る。
ミーシヤ(30)も窃盗で逮捕された後、拘置所で入隊を迫られた。後方の衛生部門が希望だったが、数週間の訓練を経てクルスク州へ。握るつもりがなかった銃を手に、スジヤ近郊の拠点で国境警備に就いた。
24日の任務中「気がつくと包囲されていた」。警告を受けてあえなく降伏したが、気がかりなのはロシアに残る妊娠3ヵ月の妻だ。捕虜になってから連絡は取れておらず「心配でならない」。侵攻については「この戦争は最低だ」と吐き捨てるように言った。
「軍には何の備えもなかった」。国境警備に従事していた通信兵ミハイル(36)は増援もなく塹壕で孤立し、部下9人のうち1人が戦死したと振り返る。自らも8月8日、右太ももを撃たれて負傷。「戦っても無意味だ」と白旗を揚げた。
最後にこう言い切った。「広大なロシアにこれ以上の領土は必要ない。帰国できたら友人や家族に伝えたい。『戦争は終わりにすべきだ』と」(敬称略)
越境継続、制圧地は保持(2024/9/6 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナのポドリヤク大統領府長官顧問は5日までに、ロシア西部クルスク州に対する越境攻撃は「今後も継続する」と述べ、同州の制圧地域を当面保持する考えを表明した。ロシアが攻勢を仕掛ける東部ドネツク州の要衝ポクロウシク方面から兵力を引きはがす狙いがあったが、転戦の動きは限定的で、同方面で劣勢が続いていると認めた。。
ポドリヤク氏はゼレンスキー大統領の最側近の一人。越境攻撃開始から1ヵ月となる6日を前に共同通信と単独会見した。越境にはロシア領内に戦闘地域を拡大してプーチン政権への国民の不満を高める狙いもあり、これは効果が出ていると強調した。
ポドリヤク氏は、ロシアは南部ザポロジエ方面からクルスク州に兵士を転戦させたと指摘。一方、ポクロウシク方面からの大規模な部隊移動はないとし、ロシアは犠牲をかえりみず前進を続けて「圧倒的な優位」にあると分析した。ウクライナ軍は装甲車や弾薬、ミサイルの不足が続いていると明らかにした。
越境攻撃によって「戦争がロシア国内に持ち込まれた」として、戦争が身近に迫ったロシア社会で「恐怖が広がり、混乱が始まった」と主張した。プーチン大統領への信頼も低下したとした。
ウクライナが長射程兵器でロシアの深部を攻撃できれば、社会不安がさらに高まり、プーチン政権は戦争終結の圧力を受けると説明した。欧米は長射程兵器の使用制限を撤廃すべきだと訴えた。
越境攻撃はゼレンスキー大統領と周辺のごく少数が立案したと証言。支援国にも事前に詳細を伝えず「作戦は全面的にウクライナが実行している」と強調した。
英、長射程兵器容認要請か(2024/9/15 京都新聞)
【ワシントン共同】バイテン米大統領とスターマー英首相は13日、ホワイトハウスで会談した。スターマー氏は、ウクライナ軍がロシア領内への攻撃に欧米供与の長射程兵器を使えるようにすることを求めたとみられる。バイテン氏は戦火拡大を招くとして制限撤廃に慎重な姿勢を維持したもようだ。
オースティン国防長官は13日、南部アラバマ州で記者団の質問に答え、長射程兵器の使用がウクライナの勝利に必ずしも結び付かないとの認識を改めて示した。「われわれは戦争が拡大することを望んでいない」と述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は英国製巡航ミサイル「ストームシャドー」や米国製地対地ミサイル「ATACMS」を対ロ攻撃に使うことを求めている。
AP通信によると、ストームシャドーは米国製部品を使っているため、ウクライナ軍が長距離攻撃に用いるには米側の承認が必要。ニューヨーク・タイムズ紙によると、米側は今後、米国が提供した武器を使わないことを条件に制限撤廃に応じる可能性がある。
米英両首脳は会談で、ロシアが侵攻するウクライナへの揺るぎない支援を再確認した。バイテン氏はプーチン氏がウクライナとの戦争で勝つことはない」と強調。スターマー氏は「今後数週間から数力月の支援が極めて重要になる」と述べた。
【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、ウクライナと支援国がロシアの攻撃部隊の位置を「全て把握している」と述べ、米欧が供与した長距離射程の兵器を使ったロシア領攻撃を認めるよう改めて訴えた。「戦争の流れを変え、ロシアに和平を求めさせるために必要だ」と語った。欧米の政治家らが参加したキーウ(キエフ)での会合で演説した。
ゼレンスキー氏は同会合の別の発言で、ウクライナが進撃したロシア西部クルスク州にロシアが反撃のため約4万人の兵力を展開し、6万〜7万人規模へと増強を図っていると指摘した。
米シンクタンク、戦争研究所は13日、ロシアがクルスク州で反撃を継続するには、他の戦闘地域の部隊を再配置する必要があるとの分析を発表した。一方、ウクライナ東部ドネツク州の要衝ポクロウシクでロシアの攻撃が鈍化したとしている。
両軍死傷者100万人に(2024/9/18 京都新聞)
【キーウ共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は17日、ロシアによるウクライナ侵攻開始からの両軍の死傷者数が約100万人となったと報じた。両国とも死傷者数を公表せず推計は困難だと指摘。その上で、事情に詳しい複数の関係者の話として、今年初めの推計でウクライナ軍の死者が8万人、負傷者は40万人に達していると伝えた。
一方、ウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」は16日、国防省情報総局の特殊部隊が、シリア北部アレッポ近郊のロシア側の基地を15日朝に攻撃したと報じた。無人機の製造や試験の拠点だったとしている。事実とすれば異例。同紙によると、シリアには雇い兵の募集組織などを含むロシアの拠点が複数あり、今年6〜7月にもシリアで作戦が行われたという。
ウクライナ軍の戦死者について、ゼレンスキー大統領は今年2月の記者会見で、死者は約3万1千人だと明らかにしている。WSJはロシア側の死傷者について、西側の情報機関の推定にばらつきがあるとしつつ、死者は約20万人、負傷者は約40万人との推定を紹介。人口がロシアの4分の1に過ぎないウクライナにとって、はるかに厳しい状況だと指摘した。
ゼレンスキー氏は16日、ロシア軍が9月前半だけで、イラン製の攻撃型無人機シャヘドを640機以上使って攻撃したと発表した。ウクライナ空軍によると、ロシア軍は16日夜から17日朝にかけても51機の無人機で各地を攻撃。ウクライナ側は34機を撃ち落とした。
デンマークのポールセン国防相は、年内に米国製F16戦闘機をウクライナに追加提供すると明らかにした。ウクライナメディアが16日に報じた。今夏に続く供与となる。
核使用基準引き下げへ(2024/9/27 京都新聞)
【モスクワ共同】ロシアのプーチン大統領は25日、核兵器使用の基準を定めた「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)の改定案を公表した。敵による核攻撃をはじめとする従来の基準を引き下げ、無人機や巡航ミサイルがロシア領内に大規模に発射されるとの確度の高い情報を入手した場合でも、核攻撃に踏み切る可能性があると表明した。
ロシアの侵攻を受けるウクライナは、無人機による反撃を強化している。訪米中のゼレンスキー大統領は26日、バイテン米大統領に「勝利計画」を説明する予定。ウクライナが米欧供与の長射程兵器によるロシア領攻撃を求める中、プーチン氏が強くけん制した形だ。
ロシアのペスコフ大統領報道官は26日、指針改定の狙いは「核兵器でなくとも、ロシア領に攻撃が行われた場合の結果を警告するシグナルだ」と述べた。
プーチン氏は25日の安全保障会議で、激変する国際情勢に対応した核使用指針の改定が必要だと強調した。改定案では、核保有国の支援を受ける非核保有国から侵略を受けた場合には「共同攻撃と見なす」とし、核兵器で反撃する可能性を示唆した。
また核攻撃の対象となり得る国家や軍事同盟、脅威の種類が拡大されたと主張。同盟国としてベラルーシの国名を明記し、同国が通常兵器で侵略された場合も核兵器で反撃できると規定した。
米、長射程兵器攻撃認めず(2024/9/28 京都新聞)
【ワシントン、キーウ共同】バイデン米大統領は26日、ホワイトハウスで、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。ワシントン・ポスト紙によると、ゼレンスキー氏は最重視する米国製長射程兵器によるロシア領内への攻撃容認を求めたが、バイテン氏は認めなかった。戦火拡大を危惧したとみられる。バイテン氏は約80億ドル(約1兆1700億円)の軍事支援を行うと伝達。ゼレンスキー氏は対ロシア戦争の「勝利計画」を説明し、詳細を協議した。
AP通信によると、バイテン氏は22〜116キロ先の標的を狙える空対地の精密誘導爆弾の供与を決めたものの、ウクライナが求める長射程には及ばない。ゼレンスキー氏は会談冒頭「勝利にはバイテン氏の決意が極めて重要だ」と訴え、バイテン氏は「現在も未来もウクライナを支え続ける」と強調していた。
ウクライナはロシア国内への攻撃に、米国の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」(射程300キロ)のほか、英国製巡航ミサイル「ストームシャド ー」(射程250キロ)の使用を認めるよう求めている。
ゼレンスキー氏は27日に米大統領選の共和党候補トランプ前大統領と会談。同氏はウクライナ支援に消極的な立場で知られる。
ホワイトハウスによると、両首脳は勝利計画について、軍事や外交、経済の観点から意見交換し、実務者レベルで検討を重ねることで一致した。バイテン氏がウクライナの防衛支援を協議する50力国以上の首脳級会合を10月12日にドイツで主催するのに合わせ、議論の進捗状況を点検する。
軍事支援約80億ドルのうち、約24億ドルはウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)を活用した防空支援や防衛産業強化。約55億ドルは大統領権限で米軍備蓄から武器を供与する枠組みで、予算が米議会を通過した分を来年1月のバイデン氏退任までに使い切る。
民主党候補ハリス副大統領もゼレンスキー氏と会い、支援継続への決意を示した。
バイテン米大統領は26日、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談で、焦点だった欧米供与の長射程兵器によるロシア領内への攻撃を認めなかった。支援継続を重 視する姿勢を打ち出しつつも、ロシアを過度に刺激しかねない長射程兵器の使用については慎重な立場を維持し11月に迫る大統領選もにらみ、ロシアの脅威への対応で 難しいかじ取りを迫られている。
「勝利するのはウクライナだ」。ホワイトハウスでゼレンスキー氏を迎えたバイテン氏は、支援継続を強調した。約80億ドル(約1兆1700億円)の軍事支援を表明。。防空システムの追加供与や、F16戦闘機の操縦±18人に対する訓練提供も明らかにした。
一方、ウクライナが求める長射程兵器の使用容認に関しては米国内で慎重論が根強い。オースティン国防長官は「戦争を終わらせる特効薬はない」と繰り返し、使用 容認が戦況を好転させるとの見方を否定してきた。ゼレンスキー氏が説明した対ロシア戦争の「勝利計画」については、バイテン氏は10月の再会談までに両国の実務者で検討を進めるよう指示。可能な限り要請に応えながら、核攻撃の可能性もちらつかせるロシアの暴発を抑える構えだ。
ミサイルでロシア領の軍用飛行場や補給拠点をたたき、都市部への空爆を減らし、前線のロシア部隊を弱体化させる―。ウクライナは戦況改善に向け、長射程兵器の 使用容認を熱望する。同国政府高官は「(戦争の局面を変える)ゲームチェンジヤーになる」と訴える。
ただ、ゼレンスキー氏が「勝利計画の成否はバイテン氏にかかっている」と認めたように、計画は米国頼みの側面が大きい。自由に身動きが取れないウクライナの苦 境がにじむ。
バイテン氏が示した巨額支援は大統領選への不安の裏返しでもある。自らの外交路線を継ぐ民主党のハリス副大統領が当選すれば、北大西洋条約機構(NATO)加 盟国との協力や、ウクライナ支援継続は確約される。しかし多国間協調に否定的な共和党候補トランプ前大統領が返り咲けば、ロシアのプーチン大統領に接近し、ウクライナに不利な形で停戦受け入れを迫る可能性がある。
トランプ氏は26日、戦争終結のためウクライナがロシアに一部の土地を譲渡すべきかと記者団に問われたが、明確な回答を避けた。(ワシントン、キーウ共同)
ウクライナへ 北朝鮮軍派遣も(2024/10/9 京都新聞)
【ソウル共同】韓国の金龍顕国防相は8日、国会の国防萎員会で、北朝鮮がロシアと軍事同盟に匹敵する条約に署名しており、ウクライナに軍部隊を派遣する可能性が「非常に高い」と述べた。ロ朝が軍事的な結び付きを一層強めることへの懸念を示した。韓国はロシアが見返りとして北朝鮮の核・ミサイル開発を支援することを警戒している。
ロシアが占領するウクライナ東部ドネツク周辺で3日にウクライナのミサイル攻撃で北朝鮮の士官6人が死亡したと報じられたことについても「事実の可能性 が高いと評価している」とした。
ロ朝両首脳は6月、有事の軍事援助を定めた包括的戦略パートナーシップ条約に署名。金氏はロシアによるウクライナ侵攻と中東情勢の緊迫化で、世界の安全保障環境が急変しており「ロ朝関係は緊密になっている」と指摘した。
北朝鮮はウクライナ侵攻でロシアが使う多くの砲弾を供与していると指摘されている。
ウクライナ、停戦検討か(2024/10/13 京都新聞)
【キーウ共同】ロシアのウクライナ侵攻を巡り、複数の欧米メディアが今月に入り、ロシアに一部領土を占領されたままでも、北大西洋条約機構(NATO)加盟などの安全保障措置が講じられれば、ウクライナが停戦に応じる検討を始めたと報じた。事実であれば従来方針の転換だが、ゼレンスキー大統領は「停戦の話はしていない」と報道を否定した。
ゼレンスキー氏は11日、訪問先のドイツでの記者会見で、戦争終結に向けた「勝利計画」が「来年には実現することが望ましい」と述べた。
イタリア紙コリエレ・デラ・セラは9日、ウクライナの安全保障を欧米諸国が約束するのと引き換えに、ゼレンスキー氏が現在のロシア軍との境界線に沿って 停戦に応じる構えだと報じた。情報源は不明だ。
英紙フィナンシャル・タイムズは7日の社説で、ロシアが占領地を維持しつつ、ウクライナがNATOに加盟する案が水面下で議論されていると伝えた。
米紙ワシントン・ポストは10日、キーウ(キエフ)に駐在する複数の欧米外交官の見方を紹介した。ゼレンスキー氏は国土の2割以上を占領されていても、ロ シアとの交渉開始を受け入れる姿勢に傾いているという。
ゼ氏「25年中に戦争終結可能」(2024/10/17 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、最高会議(議会)で、対ロシア戦争の「勝利計画」について演説し、計画に今すぐ着手すれば、2025年中に戦争終結が可能だと主張した。計画の成否は「支援国にかかっている。世界の支援がなければ、われわれは敗北する」と強調した。ただ既に計画を示された欧米からは冷淡な反応が出ており、不透明感が強まっている。計画内容の公表は初めて。
ゼレンスキー氏によると、計画には、勝利に必要な兵器の数量や種類に関するリストが盛り込まれており、米国が消極的な長射程兵器によるロシア領の攻撃を容認するよう求めた。
ウクライナを北大西洋条約機構(NATO)加盟交渉に招待することも要求。ロシア西部クルスク州への越境攻撃の成果に触れ、ロシア領内への軍事的圧迫を強める重要性を強調した。国産のミサイルと無人機の製造能力増強に向けた投資の必要性を訴えた。
ぜレンスキー氏は北朝鮮が侵攻に「参戦している」と非難した。中国について「ロシアの侵略をやめさせる策を講じていない」と主張した。
計画の狙いは、欧米の支援を得てウクライナの軍事的優位を固めてロシアを交渉の席に着かせ、ウクライナ主導で和平を受け入れさせることだ。
ポドリヤク大統領府長官顧問は「必要な兵器の具体的な数量や種類などを含む付属文書は公には議論できない」と発言。ゼレンスキー氏の演説でも、詳細は明らかにしなかった。
ゼレンスキー氏は9月の訪米でバイテン大統領に、10月の英仏伊独歴訪で4力国首脳にそれぞれ勝利計画を説明した。ブリュッセルで17〜18日に開かれる欧州連合(EU)首脳会議でも計画を示す。
【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、最高会議(議会)で演説し、ロシアによる侵攻に北朝鮮が「参戦している」と述べた。プーチン大統領と同様の「犯罪者」と呼び非難した。ウクライナの情報機関筋は15日、ロシア軍が最大3千人の北朝鮮兵を含む部隊を編成していると共同通信に明らかにした。
北朝鮮兵の存在は、ウクライナ国境と接するロシア西部のクルスク州やブリヤンスク州で確認されたという。戦闘任務に就いているかどうかは不明。
ゼレンスキー政権はロシアと北朝鮮が軍事面の連携を強化していると繰り返し主張している。カービー米大統領補佐官は15日「事実であれば、ロ朝の軍事的な協力関係が著しく深まったことになる」と懸念を示した。
情報機関筋は、ウクライナ国境から約7キロのロシア領で、北朝鮮兵18人が任地から脱走したことも確認したと明らかにした。脱走の理由は分からないという。
北朝鮮兵と交戦「数日内」(2024/11/1 京都新聞)
【キーウ、ワシントン共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は10月31日放送の韓国KBSテレビのインタビューで、ロシアに派遣された北朝鮮兵とウクライナ軍との交戦が「数日内に起きる」との見方を明らかにした。ブリンケン米国務長官も同様の認識を示し、北朝鮮兵が戦場に入れば、ウクライナ軍の「正当な軍事標的」になると警告した。
北朝鮮兵との交戦が確認されれば、2022年2月にロシアが開始したウクライナ侵攻は新たな局面を迎える。
ゼレンスキー氏は10月30日実施のインタビューで、ウクライナ軍が越境攻撃をしているロシア西部クルスク州に北朝鮮兵の一部が入っているとして「戦闘参加の準備をしている」と述べた。
「北朝鮮兵はロシア兵よりも前面に押し出される」とし、多数の北朝鮮兵が犠牲になるだろうと指摘した。今後はウクライナ国内にも北朝鮮兵が投入されるどの見通しを語った。
ブリンケン氏はワシントンで開いた米韓外務・防衛閣僚協議(2プラス2)後の共同記者会見で、既に約1万人の北朝鮮兵がロシア入りしていると説明。このうち最大8千人がクルスク州にいるとした。ロシアが北朝鮮兵に無人機の使い方や基礎的な歩兵訓練を施しており「前線に投入する意図だ」と説明した。
ゼレンスキー氏は、北朝鮮が兵士に実戦経験を積ませて現代の戦術を学ばせようとしていると指摘した。
「金正恩朝鮮労働党総書記はプーチン大統領と同じように人命を重んじていない。実戦経験が軍の訓練の機会として極めて重要なのだ」と述べた。
また、北朝鮮は多数の市民をロシアに送り込み、軍需工場で働かせようとしていると主張した。
「命運握る」新大統領注視(2024/11/4 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナの戦死者遺族や現役兵士が、5日に迫った米大統領選の行方を注視している。民主党候補のハリス副大統領がウクライナ支援継続を明言する一方、共和党候補トランプ前大統領はロシアによる侵攻を交渉で終結させると主張。遺族らは大国の選挙結果に「命運を握られた状況」だとして無力感にさいなまれている。
「奪われた領土の放棄を迫られるのなら、怒りを感じる」。ビクトリア・ボリシュクさん(50)は涙ながらに訴えハリス氏の当選を願った。
夫セルギーさん(48)は今年3月、東部の激戦で亡くなった。2022年の侵攻直後に軍に動員され、帰還後も志願して再び戦地に赴いていた。
「夫は国を愛し、守り抜いた。歴史に名を刻んだ」。ボリシュクさんは自分に言い聞かせるように語る。トランプ氏が当選して「支援がなくな ってもウクライナは戦い続ける。だが武器が不足して犠牲は増える」と予想した。
侵攻初期に制圧された東部ドネツク州マリウポリ出身のアンナ・キシリシュナさん(51)は「米大統領選で戦争の重要な方向性が決まるが、私たちは関与できない」と嘆いた。
長男オレクシーさん(26)は侵攻直後からウクライナ側の軍事組織「アズフ連隊」に加わり、22年7月に戦闘で死亡した。キシリシュナさんは長男が生きていたら、領土を奪われたままでの終戦を断固拒否するだろう」と涙ぐんだ。
戦闘の前線にも心理的な影響がある。ドネツク州の激戦地から首都キーウ(キエフ)に一時帰還した兵士イワン・パトリチェンコさん(28)は、米欧供与の長射程兵器によるロシア領内への攻撃が容認されず、部隊で「怒りよりも悲しみが広がっている」と証言した。
パトリチェンコさんはロシア軍に対する電波妨害が任務で、車に乗ぴ込んで最前線で機器を操作する。敵から狙われやすく、仲間を数多く失った。最近はロシア側に押し込まれ、前線からの撤退も増えた。「戦場で支援に関する二ュースを耳にしても進展がなく、がっかりするばかり。米大統領選の『良い結果』を祈り、戦闘に集中するしかない」と語った。
衝突する「二つの真実」(2024/11/7 京都新聞)
【米国際政治学者 イアン・ブレマーさん】
共和党のトランプ前大統領が米大統領選を制した。選挙結果は米国と世界、日本に何をもたらすのか。米国際政治学者イアン・ブレマー氏が 語る。(聞き手は共同通信編集委員 ・川北省吾)
米国は今、自分自身と戦っている。国民が分かち合える「一つの事実(共通言語)」は消えうせた。共和党と民主党、保守派とリベラル派が互いに信じる「二つの異なる事実」がぷつかり合い、戦闘状態にある。
当選を決めた共和党候補のトランプ前大統領(78)と、民主党候補のハリス副大統領(60)は激戦を繰り広げた。これまで「二つの異なる事実」が語られ、これからも語られ統ける。
民主党が「極右が有権者を脅し、投票を妨害した」と言えば、共和党は「投票箱に偽の票を混入し、不法移民に投票させた」と言い返すかもしれない。両党は投票日後も言い争い、多くの訴訟が提起されるだろう。
ただ、訴訟合戦そのものは問題ではない。両党がこれからも「二つの異なる事実」を語り続けることで、本来なら自分たちが勝つはずの選挙が「やつらに盗まれた」と印象付けられてしまうことが問題なのだ。
敗れた民主党側はとりわけ「横取りされた」と感じるだろう。米国民のほぼ半数が選挙結果について「正統性を欠く」と見なす事態となる。
危うい状況と言うほかない。「二つの異なる事実」を増幅する偽情報が出回り、国民はますます二つの事実」を分かち合えなくなる。選挙 結果を共有できなければ、民主主義を維持していくのは極めて難しい。
そうなると、米国の民主主義は侵食され、政治体制はハイブリッド化していく。ハイブリッド化とはどういう意味か。完全な民主主義でもなければ、権威主義体制でもない。入り交じった性格を帯びることを指す。
トランプ氏が復権することで、ハイブリッド化の危険はより現実味を増す。意に反する官僚を排除し、自らを訴追した司法省を支配下に置 き、政敵を追い詰める意向を示しているからだ。
むろん、米国はまだまだ安定している。世界一の経済大国であり、ドルはなお強い。最強の軍隊を擁し、最高の大学や研究機関を持ち、天然資源にも恵まれている。今もほとんどの分野で超大国の座を保つ。
だが、政治的にはそうではない。分断は深まり、民主主義は傷つき、もはや他国の憧れの的ではない。世界は今後(2000年以降の四半世紀とは比べものにならない)米国の指導力低下を目にすることになる。
主導国を欠く「Gゼロ」世界はさらに悪化している。米国は(ガザ停戦に向けて)中東における影響力を十分行使していない。中国も(ウクライナ停戦へ)ロシアや北朝鮮に影響力を行使していない。
こうしたりリダーシップの不在こそ、最も懸念すべき問題だ。北朝鮮は大規模な部隊をロシアに派兵し、越境攻撃しているウクライナ軍と交戦した。10年前には想像もできなかったような展開だ。
完全な民主主義でもなければ、権威主義でもない米国。国際的指導力をさらに失う米国…。世界は今回の大統領選を経て、そんな「自分自身と戦う米国」と向き合う。日本も新たな環境に備えなければならない。
トランプ氏「ウクライナでの戦争拡大しないように」(2024/11/11 京都新聞)
【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は10日、トランプ次期大統領がロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナでの戦争を拡大しないよう忠告したと報じた。7日に実施されたという。トランプ氏の大統領選での勝利確定後、プーチン氏と話すのは初めてとしている。
同紙は関係者の話として、トランプ氏がプーチン氏に対し、欧州には多数の米軍が駐留していると念押ししたと伝えた。
両氏は欧州の平和について話し合い、トランプ氏は「ウクライナ戦争の早期解決」に関して、今後も協議を続ける意向を示したという。
トランプ氏は大統領選期間中、プーチン氏との関係が良好だと主張し「戦争を24時間で終わらせる」と主張してきたが、具体的な方法は示していない。同紙によると、ロシアが占領した一部の領土を維持する形での取引を支持する考えを示しており、プーチン氏にも簡単に提起したという。ウクライナ側は電話会談実施について通知されたが、異議は唱えなかった。
一方、前駐日大使でトランプ次期政権での国務長官就任も取り沙汰されるハガティ上院議員は10日、CBSテレビのインタビューで「米国の問題を優先しなければならない」と述べ、ウクライナへの軍事支援継続に消極的な姿勢を示した。
戦闘凍結案「非現実的」(2024/11/19 京都新聞)
【キーウ共同】ロシアに侵攻されるウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はトランプ次期米大統領の政権移行チーム内で検討中とされる戦闘凍結案について「ウクライナが領土と主権を断念しなければならない。筋が通らず、非現実的だ」と述べ、拒否する意向を示した。共同通信と12日会見した。ポドリヤク氏はゼレンスキー大統領の最側近の一人。
政権移行チーム内では前線を固定化して戦闘を凍結し、ウクライナが望む北大西洋条約機構(NATO)加盟を棚上げする案が浮上したと報じられた。トランプ氏は選挙戦で、来年1月20日の就任前に戦争を解決するなどと豪語してきたが、終結の見通しは立たない。
ポドリヤク氏はトランプ氏のウクライナ政策は公になっていないとした上で、凍結案は「ウクライナに犠牲を強いるだけで、ロシアに何も強制していない。侵略者を勢いづかせる」と批判し、ロシアに圧力をかけ譲歩を迫るべきだと主張した。
ポドリャク氏によると、ゼレンスキー氏は6日にトランプ氏と約30分間にわたって電話会談し、ウクライナの立場を説明した。戦争の状況を理解してもらうため、トランプ氏をキーウ(キエフ)に招待した。
トランプ氏はウクライナ軍事支援に否定的な発言を繰り返してきた。しかし、ポドリャク氏は「トランプ氏は軍事支援が雇用の創出など米国経済にも恩恵をもたらすことを明確に理解している」と主張し、支援拡大に強い期待を示した。
トランプ氏は9月にニューヨークでゼレンスキー氏と会談した際、提示された対ロシア戦争の「勝利計画」の一部に興味を示したという。中でも戦後、欧州駐留の米軍に代わってウクライナ軍を派遣する案や、ウクライナの天然資源開発への投資呼びかけに関心を寄せたとした。
インフラ一斉攻撃(2024/11/18 京都新聞)
【キーウ共同】ロシア軍は17日、ウクライナ全土をミサイルや無人機で一斉攻撃した。当局によると、少なくとも7人が死亡し、首都キーウ(キエフ)のほか、南部オデッサ、東部や西部の住宅とインフラに被害が出た。多くの電力施設が標的となり、各地で緊急の計画停電が実施された。本格的な冬の到来を前に、電力供給を不安定化させる狙いとみられる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「全土のエネルギーインフラが狙われた。約120発のミサイルと無人機約90機が使用された」と通信アプリに投稿。シビハ外相は「最大規模の空爆の一つ」と指摘した。隣国ポーランンドは、戦闘機を緊急発進させた。
ロシア国防省は17日、ウクライナの144地域で軍用飛行場やエネルギー施設などを攻撃したと発表した。
ウクライナ当局によると、東部ドニエプロペトロフスク州の鉄道施設が攻撃され従業員2人が死亡。オデッサ、南部ミコライウ、西部リビウの各州でも死者が出た。キーウでは1人が負傷した。
英紙フィナンシャル・タイムズは16日、北朝鮮が、ここ数週間でロシアに自走砲約50両と多連装ロケットシステム約20基を供与した可能性があると報道。ウクライナの情報機関は、一部がウクライナが越境攻撃を続けるロシア西部クルスク州に移送されたとみている。
ウクライナ政府高官によると、北朝鮮は1万人以上の兵士を同州に派遣し、ロシア兵と合わせて約5万人がウクライナ軍と交戦中。北朝鮮には兵士に実戦経験を積ませ、自国製兵器の性能を確認する狙いがありそうだ。
ロシア中部ウドムルト共和国の首都イジェフスクの工場に17日、無人機が飛来し1人が負傷した。ブレチヤロフ首長が明らかにした。ロシアメディアは公式に確認された同共和国への初の無人機攻撃と伝えた。
米、長射程兵器の使用容認(2024/11/18 京都新聞)
【ワシントン共同】米主要メディアは17日、バイテン米大統領がウクライナに米国製の長射程兵器を使ったロシア領への攻撃を容認したと報じた。ウクライナが一部制圧したロシア西部クルスク州の戦線には北朝鮮兵が投入されており、バイテン氏は危機感を強め政策を大きく転換した。ウクライナ支援に消極的なトランプ次期大統領の就任が迫っていることも背景にある。ウクライナのゼレンスキー大統領は17日の声明で、使用する意思を表明した。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、米高官はウクライナが射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」でクルスク州のロシア軍や北朝鮮兵を狙う可能性があると説明した。ゼレンスキー氏は声明で「攻撃は言葉ではしない。発表もない。ミサイル自体が雄弁に語るだろ う」と強調した。
バイテン氏はこれまでロシアを過度に刺激することを懸念し、ウクライナ側の再三の求めに応じてこなかった。米国は今回の政策転換で戦況を根本的に変えることよりも、北朝鮮に対して「重大な代償を払うことになる」とのメッセージを送り、これ以上の派兵をやめさせたい考えだ。
タス通信によると、ロシア下院のスルツキー国際問題委員長は17日、攻撃容認の報道を受け「深刻な結果を招くエスカレーションにつながる」と述べて批判した。
トランプ氏は支援継続に後ろ向きで交渉による侵攻の早期終結に意欲を見せる。ロシアがクルスク州奪還を目指して北朝鮮兵と共に大規模攻勢に出るとの見方もある。来年1月のトランプ氏就任を前に、バイテン氏にはウクライナが不利な立場に置かれるのを防ぐ思惑もありそうだ。
米政府によると、北朝鮮は1万人以上の兵士をロシアに派遣。大半がクルスク州に移動し、ロシア軍から無人機の扱い方や基本的な歩兵作戦の訓練を受けた。
バイテン氏は北朝鮮の口シア派兵を「大変危険な動きだ」と非難。政権は残りの任期中に、これまで議会で可決された軍事支援のう ち、まだ実行されていない分を迅速に届けるため全力を尽くすと表明している。
核使用条件をロシアが拡大(2024/11/20 京都新聞)
【モスクワ共同】ロシアのプーチン大統領は19日、核兵器使用の基準を定めた「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)の改定版を承認する大統領令に署名した。核攻撃に踏み切る軍事的脅威の条件を拡大し、無人機などがロシア領内に大規模に発射されるとの確度の高い情報を入手した場合でも核兵器使用の可能性があるとした。
プーチン氏が9月に公表していた案と同様の内容だが、バイテン米政権がウクライナに対し米国製の長射程兵器によるロシア領内攻撃を容認したタイミングでの指針改定は、ロシアによる対抗措置の意味合いもあるとみられる。
【モスクワ、キーウ共同】ロシア国防省は19日、西部ブリヤンスク州の軍事施設に米国製の地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」6発によるウクライナ軍の攻撃があったと発表した。19日未明の攻撃では、6発のうち5発を迎撃し、破壊された1発の破片が施設敷地内に落下し火災が発生した。死傷者はないという。タス通信が報じた。
バイテン米政権が、ウクライが長らく要求していた長射程兵器によるロシア領攻撃を容認したことが18日に明らかになったばかり。ロシア領内にATACMSが使用された初のケースとみられる。長射程兵器はウクライナ軍が8月から越境攻撃を続けているロシア西部クルスク州が対象との見方が出ていた。
米、対人地雷の供与容認(2024/11/21 京都新聞)
【ワシントン、キーウ共同】複数の欧米メディアは19日、バイテン政権が、ロシアに侵攻されるウクライナへの対人地雷供与を容認したと報じた。ロシアの攻勢を受け、ウクライナの防衛能力を強化する狙い。ただウクライナは対人地雷禁止条約(オタワ条約)に加盟しており、供与される地雷を使用すれば条約に違反することになる。供与容認に人権団体から批判が上がっている。
バイテン政権は最近、米国供与の長射程兵器によるロシア領攻撃についても容認に転じた。軍事支援に消極的とされ、交渉による早期の戦争終結を目指すトランプ次期大統領が来年1月20日に就任する前に、駆け込みで支援強化を図っている可能性がある。
米紙ワシントン・ポストによると、バイテン政権はウクライナ東部の前線でここ数週間、ロシアが攻勢を強めていることに懸念を深めている。米国防総省は対人地雷供与が、ロシアの進撃を遅らせる最も効果的な手段の一つだとみている。
供与されるのは、一定期間後に電池が切れると作動しなくなるタイプが想定されている。民間人に被害が拡大しないようにするためだとされるが、専門家は危険性が残ると指摘している。米当局者によると、ウクライナ政府の政策立案者は人口密集地に地雷を設置しないと確約したという。ウクライナ当局者は同紙に対し、供与を歓迎する意向を示した。
オタワ条約に加盟していないロシアは前線で対人地雷を大量に使用しており、領土奪還を目指すウクライナ軍の障害になっている。米国も条約に加盟していない。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)の担当者は供与容認について「衝撃的でひどい。民間人への脅威となる」と批判した。
【ワシントン共同】米メディアはバイテン政権がウクライナへの対人地雷供与を容認したと報じた。バイテン大統領は民間人に多大な影響を与える地雷使用を制限してきたが、ロシアによるウクライナ東部への攻勢に危機感を募らせ「禁じ手」に踏み込んだ。バイテン氏が掲げた軍縮の信念は骨抜きとなっている。
今回の容認には、トランプ次期大統領がウクライナに不利な条件で終戦に持ちこもうとしているとの焦りもありそうだ。対人地雷禁止条約(オタワ条約)加盟国のウクライナも、地雷使用を拡大すれば非難は免れない。
「ロシアは万死を顧みずウクライナ東部に大勢の軍を送り込んでいる。地雷は対抗するためだ」。米関係者は方針転換の背景について、ウクライナがこれ以上の攻勢に耐えられないとの判断があったと米紙に明かした。バイテン政権は2022年6月、トランプ前政権による対人地雷の使用規制緩和措置を転換し、オバマ元政権時と同様に使用を朝鮮半島に限定する規制強化策を発表。使用を抑制するという「バイテン氏の信念」を反映させたと説明していた。
国防総省に対しても、米国が将来的にオタワ条約に加盟することを視野に代替手段を模索するよう「真摯な努力」を指示。だが今回の措置は完全に逆行するもので「破滅的だ」(国際人権団体)と懸念が広がっている。
非人道的な兵器提供の動きは今回が初めてではない。
23年7月には殺傷能力の高いクラスター(集束)弾をウクライナに供与する方針に転じた。ロシア軍による使用を非難していたが、今は批判される側になった。
全土インフラ攻撃 ウクライナ大停電(2024/11/29 京都新聞)
【キーウ、モスクワ共同】ロシア軍は28日、ウクライナ全土をミサイルや無人機で攻撃した。多くの電力インフラが標的となり、西部や中部で計100万世帯以上が停電した。首都キーウ(キエフ)では迎撃したミサイルの破片で建物が破損。南部オデッサ州で負傷者も出た。ロシアのプーチン大統領は米国製の長射程兵器でウクライナ軍がロシア領を攻撃したことへの報復だと表明し、今後の政府中枢への攻撃も示唆した。
プーチン氏は27〜28日にミサイル90発、無人機100機で軍事施設など17力所を攻撃したと述べた。今後は21日に初めて発射した最新式中距離弾道ミサイル「オレシニク」を再び使うこともあり得るとし、キーウの意思決定機関を標的に含む可能性もあると警告した。訪問先カザフスタンでのロシア主導の軍事同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)首脳会議で戦況を説明した。
全領土の武力奪還困難(2024/12/3 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、首都キーウ(キエフ)で共同通信と単独会見した。ロシアが2014年に併合したクリミア半島を含む一部の占領地について、武力での奪還が困難だと率直に認め、外交で全領土回復を目指す必要があると述べた。全領土奪還を掲げ抗戦を続けてきたが、欧米の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)加盟が確約され、ロシアの侵略を抑止する環境が整えば一部領土は戦闘終結後に交渉で取り戻すことを容認する方針に転換した。
東部でロシア軍が前進し、戦況は極めて厳しいとの認識を表明。「わが軍はクリミアなどの一部領土を奪い返す力が欠けている。これは真実だ。外交解決を探らなければならない」と語った。同時に「ロシアが新たな侵略を仕掛けられないほどウクライナが強くなった時に初めて、外交的手段を考えることができる」と強調した。
対ロシア戦争の一刻も早い終結を望むとし、ウクライナの安全保障のためNATO早期加盟の道筋を付けることが重要だと強調した。ゼレンスキー氏はNATOに代わってウクライナの安全を守る枠組みは「存在しない」と述べ、加盟交渉入りを強く求めた。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟構想に反対し、22年2月に全面侵攻に踏み切ったとされる。ウクライナの最大支援国である米国のトランプ次期大統領の政権移行チームでは、加盟を棚上げする案が検討されており、加盟への道筋は不透明さを増している。
ゼレンスキー氏はまた、ロシア西部クルスク州に展開中の北朝鮮兵が戦闘で死亡したり負傷したりしていると明らかにした。今後、多数の北朝鮮兵が前線に送り込まれ、ロシア軍の「弾よけ」として使われるのは確実だとの見方を示し、ロ朝が軍事的連携を強める現状に強い懸念を示した。
日本については、ウクライナを支える米国やドイツと並んで「五大支援国の一つだ」と指摘。「ウクライナは日本が最も困難な時に共にいてくれたことを決して忘れず、絶えず日本と共にある」と強調した。
ウクライナのゼレンスキー大統領が1日の共同通信との単独会見で、全領土奪還までロシアと徹底して戦い続けるとの旗印を事実上、降ろし た。戦場での劣勢を踏まえ、現実路線にかじを切った。2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以来、戦争遂行に関する最大の方針転換と言える。
核大国を相手に2年9ヵ月の消耗戦を続けるウクライナは東部戦線でじりじり押し込まれている。ゼレンスキー氏は、ロシアが軍事拠点化を 進めるクリミア半島など一部領土について「奪還する十分な力はない」と認めざるを得なかった。
各国にウクライナ支援疲れが広がり、水面下で停戦圧力が高まっていることも背景にある。来年1月には早期終戦を唱えるトランプ次期米大 統領が就任し、風当たりがさらに強まる公算が大きい。実現困難な武力での全領土奪還にこだわり続ければ、果てしない戦争を危惧する欧米の支持と支援を失う恐れがある。
方針転換はトランプ氏に対するメッセージも込められている。ゼレンスキー氏は米国の後押しを受けて北大西洋条約機構(NATO)加盟の 道を確実にした上で、外交により全領土の回復を且指す考えだ。
ただNATO側では、ロシアとの戦争に巻き込まれる恐れが高まるとして、ウクライナの加盟には否定的な意見が根強い。プーチン大統領が クリミアを話し合いで手放す可能性は限りなく低い。早期終戦の実現は不透明なままだ。(キーウ共同)
地雷除去費 環境債で調達(2024/12/7 京都新聞)
【キーウ共同】国連開発計画(UNDP)は6日までに、ロシアから侵攻を受けるウクライナの復興に不可欠な地雷除去の資金調達 について、環境保全を目的として投資家から低利で資金を集められる環境債が有効だとする報告書を発表した。農地復興や再生可能エ ネルギー導入と組み合わせることで、経済回復につながると指摘した。
報告書が勧告した環境債は「サステナビリティー・リンク・ボンド」(SLB)と呼ばれる。一定規模の農地の地雷除去後、耕さずに作物を育てることで環境負荷を低減する農法を展開するなどの具体的な目標を掲げ、西側先進国などから幅広く必要な資金を集めることを目指す。目標未達なら発行体の利払い負担が増すことで達成を促す仕組みだ。
また、民間資金を活用する官民連携(PPP)方式で、地雷を取り除いた上で太陽光発電施設を建設する案も示した。民間部門は、売電などによる収入から投資資金の回収が期待できるとした。
報告書によると、今年8年時点でウクライナには国土の約4分の1に当たる14万4千平方キロメートルに地雷や不発弾が埋まる。ウクライナ政府は6月、地雷などによる農業部門の国内総生産(GDP)の損失額は年間110億ドル(約1兆6400億円)と発表。一方、地雷対策には340億ドル以上を要するとの試算もある。
ロシア、エネ施設攻撃(2024/12/14 京都新聞)
【キーウ、モスクワ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、国内にロシア軍の多数のミサイルと無人機による攻撃があったと発表し「エネルギー施設に対する最大規模の攻撃の一つだ」と訴えた。エネルギー最大手DTEKは火力発電所が「深刻な被害」を受けたと明らかにした。
ロシア国防省は13日、米国製長射程兵器によりロシア南部タガンログの軍用飛行場が11日に攻撃を受けた報復として、ウクライナのエネルギー施設に大規模な攻撃を行ったと発表した。目的を達成し、すべての対象を撃滅したとしている。
トランプ次期米大統領は19日公表の米誌のインタビューで、ウクライナ軍による長射程兵器でのロシア領攻撃が緊張を高めているとして「大きな過ちだ」と批判した。
ゼレンスキー氏によると、ロシア軍は巡航ミサイルや弾道ミサイルなど93発を発射し、少なくとも1発は北朝鮮製だったとされる。このうち81発を迎撃したと主張した。200機近くの無人機も飛来したという。
ウクライナ各地では13日朝、空襲警報が発令された。同国メディアによると、ロシア軍は西部リビウ州や南部オデッサ州など各地を攻撃。東部ハリコフ州には弾道ミサイルを発射、けが人が出ているもようだ。
ウクライナ空軍は通信アプリに、ロシア西部ニジェゴロド州サワスレイカの空軍基地からミグ31戦闘機が出撃したと投稿した。極超音速ミサイル「キンジャル」が使われた可能性もある。
ロシア軍中将、爆発で死亡(2024/12/18 京都新聞)
【モスクワ、キーウ共同】モスクワ東部の住宅入り口付近で17日朝、電動キックボードに仕掛けられた爆発物が爆発し、ロシア軍中将 のイーゴリ・キリロフ放射線化学生物学防護部隊長とその補佐官が死亡した。ロシア連邦捜査委員会は殺人とテロ容疑で捜査を開始したと発表した。インタファクス通信などが報じた。ウクライナ治安筋は同国保安庁が特殊作戦で殺害したと共同通信に明らかにした。
治安筋はキリロフ氏について「戦争犯罪者であり、完全に正当な標的だ」と述ぺた。禁止されている化学兵器でウクライナ軍を攻撃 するよう命令したとして「報復は免れない」と主張した。保安庁は事件発生前日の16日、キリロフ氏がウクライナ東部や南部の前線で、化学兵器の使用を命じた疑いがあると発表していた。キリロフ氏の命令によって化学兵器が使われたケースは、4800件に上るとした。
爆発はキリロフ氏らが午前6時ごろに自宅を出る際に発生。爆発の威力はTNT火薬200グラム相当だったという。
英、ウクライナに派兵示唆(2024/12/22 京都新聞)
【ロンドン共同】英国が来年にもウクライナに派兵し、同国軍を訓練する可能性が浮上している。18日に首都キーウ(キエフ)を訪問したビーリー英国防相が、英国内に原則限定していた訓練をウクライナに拡大する可能性を示唆。北大西洋条約機構(NATO)加盟国による本格的な訓練が実現すれば、侵攻開始後で初めてとみられ、ロシアへの圧力となりそうだ。
英紙タイムズは、NATO軍の事実上の配備開始を意味するとのウクライナ軍筋の見解を伝えた。一方、英国側に死傷者が出れば、英国が戦争に巻き込まれる可能性があるとの懸念を指摘した。
ウクライナは東部でロシアの猛攻に遭い、苦戦している。兵士の訓練不足が一因との見方があり、西側当局者はタイムズに「前線に近いほうが効率的だ」と述べ、ウクライナで訓練する意義を訴えた。
侵攻以降、英国は自国でウクライナ兵5万人以上を訓練し、新兵指導の主導的な役割を果たしてきた。
無人部隊で「ロ陣地攻略」(2024/12/23 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナ軍は22日までに、歩兵部隊の代わりに無人地上車両(UGV)と無人機(ドローン)だけを使った初の地上作戦を実施し、東部ハリコフ州での戦闘でロシア軍陣地を攻略したと発表した。米シンクタンク、戦争研究所は「技術革新を地上作戦に活用する取り組み」とし、兵力で勝るロシア軍への対抗策だと指摘した。
劣勢が目立つウクライナ軍には、新技術による戦果を強調する思惑がありそうだ。ただ「無人部隊」による作戦の時期や詳しい場所は明らかになっていない。
ハリコフ州方面に展開する旅団の報道官が20日、作戦の戦果を発表した。ハリコフ北方の村で機関銃を搭載したUGV数十台を動員し、地雷の敷設や撤去も実施。ロシア軍陣地を破壊したと語った。偵察用の無人機が支援した。歩兵は参加しなかった。
ウクライナメディアは一斉にこの戦果を大きく報道。戦争研究所は、兵員の犠牲をいとわないロシア軍に地上戦で対抗するため、ウクライナ軍は技術革新を重視していると分析した。
またウクライナ軍は20日、妨害電波を避けるために無線ではなく光ファイバーを利用して操縦するドローンの試験が完了したと発表。「この技術は敵にとって難題となる」と強調した。
北朝鮮兵は「訓練不足」(2024/12/24 京都新聞)
【スムイ共同】ウクライナ軍砲兵部隊の大尉らが22日。ロシア西部クルスク州で交戦中の「北朝鮮兵とみられる部隊」について証言し「最初の砲撃を受けると(恐怖心から)仲間同士で身を寄せ合うので、狙うのが簡単。実戦経験の不足が明らかだ」などと語った。前線に近いウクライナ北東部スムイで、共同通信の取材に応じた。
米国防総省によると、ロシア軍には約1万2千人の北朝鮮兵士が合流し、クルスク州などでウクライナ軍との戦闘に加わった。戦場での様子が明らかになるのは異例。
取材に応じたのは、ウクライナ軍第36独立海兵旅団の砲兵部隊に所属するパベル・サマリン大尉と、オレクサンドル・ボイツク曹長。今年10月からクルスク州で戦闘任務についている。
サマリン大尉は「(北朝鮮兵は)常に徒歩で移動し、車両も高性能兵器も使用しない。部隊の人数を増やすという点では効果があるかもしれないが、戦力としての効果は薄い」と指摘した。
2人の証言によると、同州のロシア軍陣地に11月ごろから「アジア系の顔立ちの兵士ら」が頻繁に姿を見せ始めた。偵察用ドローンが撮影した高精度映像で顔を確認した。「(身分証を見ておらず)100%の確証はないが、北朝鮮兵だろう。全員が歩兵。ロシア軍と同じ制服や記章、装備を使用している」という。
ロシア兵は1列縦隊で行軍するが、北朝鮮兵は横一列で行軍するなど動きに特徴があり、部隊運用は別々とみられる。2人は「(北朝鮮兵は)どこに移動して何をすべきなのか分かっていない印象だ」とも指摘した。
ウクライナ軍砲兵部隊はドローン映像で敵兵の動きを見ながら照準を定める。最初の砲撃を受けるとロシア兵は拡散して追撃を避けるが、北朝鮮兵は「まったく逆の行動を取る」という。
サマリン大尉は、北朝鮮兵が加わった背景に「兵士の遺体も収容できず、負傷兵の救出にも苦しむほどのロシア軍の人員不足」があると述べた。
北朝鮮兵「塹壕防御任務」(2024/12/26 京都新聞)
ウクライナ軍が8月から越境攻撃を続けるロシア西部クルスク州のスジヤ奪還作戦に参加するロシア軍関係者が25日までに共同通信の取材に応じ、北朝鮮兵が「塹壕の防御任務に就いている」と証言した。ロシア側から北朝鮮兵の任務の内容が明らかになるのは異例。ウクライナのゼレン スキー大統領は1日の共同通信との会見で、北朝鮮兵はロシア兵の「弾よけ」だと指摘。ウクライナ側では「突撃部隊」の役割を担うとの見方が強い。
スジヤにはウクライナ軍の司令部があり、ロシア軍は奪還を目指している。この関係者は「ようやく北朝鮮兵をこの目で見た」と話し、北朝鮮兵が突撃部隊には組み込まれず、塹壕の防御陣地を守るために使われていると明らかにした。ウクライナ側がドローンで撮影した画像に北朝鮮兵が写り込むのは「塹壕にいるのだから写って当然だ」と述べた。
ウクライナ側が主張する北朝鮮兵の「練度の低さ」については「まだドローン攻撃から生き延びる方法に慣れておらず、逃げ惑うのを見れば、そのような感想を持つのかもしれない」と指摘。さらに「現代のドローン戦争に放り込まれれば、米軍特殊部隊でも(最初は)ぷざまな格好をさらすと思う」と付け加えた。
北朝鮮兵の負傷者は前線近くの応急的な医療施設ではなく、負傷程度が軽くても州都クルスクの病院に運ばれていると説明し、ロシア兵よりも厚遇されていることを示唆した。この関係者が所属する部隊には連日、多数の遺体が運び込まれてくるが「北朝鮮兵の遺体は、まだ見たことがない」とも語った。
ロシアのプーチン政権は北朝鮮がロシアに派兵したことを公式には肯定も否定もしていない。米紙ニューヨークータイムズは23日、複数の米当局者の話として、派兵はロシア側ではなく北朝鮮側の発案で実現したと米情報機関が分析していると報じた。 (共同)
NATO加盟で終戦に支持(2025/1/5 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナのキーウ(キエフ)国際社会学研究所は3日、ロシアの侵攻に関して昨年12月に行った世論調査結果を発表した。ロシアが東部・南部4州とクリミア半島の占領を継続するものの、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟して真の安全保障を確保するとの戦争終結シナリオに64%が賛成すると回答した。
昨年6月の調査と比べて17ポイント増加した。「全く受け入れられない」とした回答は21%だった。同研究所は「安全保障を確保し、将来の侵略を防ぐことが優先事項になっている」と分析した。
別の設問では「平和を早期に実現し独立を保つために、領土の一部を断念してもよい」と回答した人が38%になり、2022年に全面 侵攻が始まって以降の調査で最多となった。「いかなる状況でも領土を断念すべきではない」とした回答は51%だった。調査はウクライナ国内の2千人を対象に電話で行った。
【キーウ共同】ウクライナの国家捜査局は3日までに、昨年創設された軍部隊から脱走者が相次いでいるとの報道を受け、事実関係の捜査に乗り出した。複数の地元メディアが報じた。
ウクライナメディア「センサー・ネット」の報道によると、この部隊は昨年3月ごろに新設された「第155機械化旅団」。昨年11月までに1700人以上の兵士が脱走したという。昨年10月に約1900人が訓練のためフランスに派遣された際にも、現地で約50人が脱走したとしている。
センサー・ネットは、経験の乏しい新兵がフランスでの訓練に派遣されたり、旅団に十分な兵器が配備されなかったりするなど、ゼレンスキー大統領や軍指導部の指揮に問題があったと指摘した。
北朝鮮兵捕虜「戦争ではなく訓練に行くと」(2025/1/13 京都新聞)
【キーウ共同】ウクライナ保安局は11日、ウクライナ軍がロシア西部クルスク州で捕虜にした北朝鮮兵±2人について、うち1人が事情聴取 に「ウクライナとの戦争ではなく、訓練に行くと考えていた」との趣旨の証言をしたと発表した。北朝鮮軍が兵士らにロシア派遣の理由を説明 しなかった可能性がある。
保安局は、ベッドに横になった兵士がストローで飲み物を摂取したり、何かを説明したりする様子を撮影した映像を公開した。2人は20 05年生まれのライフル兵と、1999年生まれの前哨狙撃兵だという。
ライフル兵は聴取に、2021年に北朝鮮軍に入り、戦争ではなく訓練に参加するつもりだったと説明した。
ロシア南部トウワ共和国で登録された別人名義のロシア軍身分証明書を携行していた。24年秋にロシアで受け取ったという。
前哨狙撃兵は16年に入隊したといい、身分証明書は持っていなかった。あごを負傷しており、聴取に筆談で回答することもあった。
2人は、ウクライナ軍の特殊作戦軍とパラシュート部隊がそれぞれ拘束した。うち1人は今月9日に捕虜になった。
2人ともロシア語やウクライナ語、英語を話さず、保安局は韓国の情報機関、国家情報院の支援を得て朝鮮語で聴取している。いずれもけ がを負い、ウクライナ側が必要な治療を施している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、記者が捕虜に取材できるよう保安局に対応を指示した。「世界は、何が起きているのか真実を知る必要がある」とX(旧ツイッター)に投稿した。